税金の基礎
法人化したらiDeCoの手続きは?第1号から第2号へ、上限と届出が変わる
結論
法人化して厚生年金に入ると、iDeCoは第1号加入者から第2号加入者に変わり、運営管理機関に「加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)」(K-032)を出します。会社の給与から掛金を払う事業主払込にするなら「事業主払込に関する証明書」(K-109A)も必要です。企業年金のない会社の上限は2026年11月分まで月2.3万円、12月分から月6.2万円で、第1号の月6.8万円(12月分から7.5万円)より下がります。届出をしないと掛金の口座振替が止まることがあります。
- iDeCo公式サイトは、就職などで被保険者種別が変わったときは加入区分の変更の届出が必要で、しないと口座振替が一時停止になることがあると案内している
- 2026年12月分から、第2号(企業年金なし)の上限は月2.3万円から6.2万円に上がる。法人化が12月より前か後かで、最初の数か月の上限が3倍近く違う
- 役員報酬月50万円なら、上限まで掛けた場合の所得税・住民税の軽減は月2.3万円で年5.6万円、月6.2万円で年13.9万円
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
法人化の手続きは、登記、税務署・自治体への届出、社会保険の新規適用と続きます。その陰で忘れられやすいのがiDeCoです。個人事業主のときに入ったiDeCoは、自分の会社の社会保険に入った時点で加入区分が変わり、届出が必要になります。
第1号から第2号へ、加入区分が変わる
iDeCoの加入区分は、国民年金の被保険者の種別で決まります。個人事業主は国民年金の第1号被保険者なので第1号加入者です。法人を作って役員報酬を受け、厚生年金に加入すると、国民年金の第2号被保険者になり、iDeCoも第2号加入者に変わります。
iDeCo公式サイトは、就職・転職・退職で被保険者の種別が変わったときは、iDeCoの加入区分も変わるため届出が必要だとしています。法人化して自分の会社の社会保険に入るのも、厚生年金の適用事業所に勤めることに当たります。
| 項目 | 個人事業主(第1号) | 法人化後(第2号・企業年金なし) |
|---|---|---|
| 掛金の上限(2026年11月分まで) | 月6.8万円(国民年金基金・付加保険料と合算) | 月2.3万円 |
| 掛金の上限(2026年12月分から) | 月7.5万円 | 月6.2万円(企業年金等と合算) |
| 掛金の払い方 | 個人の口座から引落し | 個人払込か、会社の給与から天引きする事業主払込 |
| 所得控除 | 小規模企業共済等掛金控除 | 同じ |
※ iDeCo公式サイト、当サイトの個人事業主のiDeCoは月6.8万円・iDeCoを満額かける個人事業主は19.3%による
出す届書は2種類
iDeCo公式サイトによると、第1号加入者が厚生年金の適用事業所に就職して第2号被保険者になった場合の届書は次のとおりです。
| 届書 | 番号 | いつ必要か |
|---|---|---|
| 加入者登録情報変更届(第2号被保険者用) | K-032 | 第2号になったとき |
| 事業主払込(登録・納付方法変更等)に関する証明書 | K-109A | 掛金を会社の給与から天引きして払う場合 |
※ iDeCo公式サイト「iDeCo加入者・運用指図者の方へ」
届書は、利用している運営管理機関(iDeCoの口座を開いた金融機関)に連絡して入手し、提出します。公式サイトは、加入区分の変更の手続きをしないと掛金の口座振替が一時停止になることがあると注意しています。
掛金額も同時に見直す
加入区分が変わると上限も変わるため、掛金額の変更が必要になることがあります。第1号で月6.8万円を掛けていた人は、第2号の上限を超えてしまいます。公式サイトは、この場合は加入区分の変更の届出とあわせて掛金額の変更を届け出るとし、毎月定額で拠出する第2号加入者は同じK-032で掛金額も届け出るとしています。
通常の掛金額の変更は、12月分から翌年11月分までの1年に1回に限られます。加入区分の変更に伴う変更は、これとは別に行えます。
法人化が12月より前か後かで、上限が3倍近く違う
2026年12月分から、iDeCoの上限が引き上げられます。企業年金のない会社の第2号加入者は月2.3万円から月6.2万円へ、第1号は月6.8万円から月7.5万円へ上がります。
このため、2026年中に法人化する人は、時期によって最初の数か月の上限が変わります。
| 法人化して第2号になった時期 | 2026年11月分までの上限 | 2026年12月分からの上限 |
|---|---|---|
| 2026年10月 | 月2.3万円(10月・11月分) | 月6.2万円 |
| 2026年12月以降 | — | 月6.2万円 |
改正後は、第1号の7.5万円と第2号の6.2万円の差は月1.3万円です。以前の「法人化するとiDeCoの枠が3分の1になる」という話は、2026年12月以降は当てはまらなくなります。法人化でiDeCoの枠がどれだけ縮むかの比較は、個人事業主のiDeCoは月6.8万円。12月から7.5万円に上がるでも扱っています。
所得税・住民税はいくら軽くなるか
第2号になっても、掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引かれます。事業主払込にしても、控除を受けるのは役員個人で、会社の経費にはなりません。役員報酬の月額ごとに、上限まで掛けた場合の軽減額を計算しました。
| 役員報酬(月額) | 月2.3万円を掛けた場合 | 月6.2万円を掛けた場合 |
|---|---|---|
| 30万円 | 年4.2万円 | 年11.2万円 |
| 40万円 | 年4.2万円 | 年11.2万円 |
| 50万円 | 年5.6万円 | 年13.9万円 |
| 70万円 | 年8.4万円 | 年22.6万円 |
※ 掛金を12か月拠出した場合の所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の軽減額。扶養なし・東京都・40歳未満/2026年(令和8年)分基準。scripts/ideco-houjinka-tetsuzuki.mjs で計算
役員報酬が月30万円と40万円で軽減額が同じなのは、どちらも所得税率5%・住民税10%の帯に収まっているためです。報酬が上がるほど税率が上がり、同じ掛金でも軽減額が大きくなります。
一緒に見直すもの
法人化でiDeCoと同時に扱いが変わる制度があります。
| 制度 | 法人化後の扱い |
|---|---|
| 国民年金基金 | 第1号被保険者でなくなるので資格を失う。掛金は戻らない(国民年金基金は法人成りで自動脱退) |
| 小規模企業共済 | 役員として続けられる(小規模企業共済は法人成り後も継続できる) |
| 企業型DC | 会社で導入すると、iDeCoと合わせて上限月6.2万円(2026年12月分から)(一人社長の企業型DC) |
| iDeCo+ | 従業員が厚生年金加入者でないと使えない(iDeCo+は一人会社で使えない) |
法人化で国民年金・国民健康保険から社会保険へ移ると何がどう変わるかの全体像は、個人事業主の法人化の目安は「所得800万円」?から各制度の記事へたどれます。
まとめ
- 法人化して厚生年金に入ると、iDeCoは第1号から第2号加入者に変わる
- 運営管理機関に加入者登録情報変更届(K-032)を出す。事業主払込なら証明書(K-109A)も。届出をしないと口座振替が止まることがある
- 企業年金のない会社の上限は2026年11月分まで月2.3万円、12月分から月6.2万円。第1号の月6.8万円で掛けていた人は掛金額も変える
- 2026年12月以降は、第1号(7.5万円)との差は月1.3万円に縮む
- 役員報酬月50万円なら、月6.2万円を掛けて所得税・住民税は年13.9万円軽くなる
法人化で変わるのは税金と社会保険だけではありません。自分の売上と経費で法人化の損得を確かめたうえで、iDeCoの届出も忘れずに済ませてください。
よくある質問
一人社長が事業主払込にする場合、証明書は誰が書くのですか?
事業主払込に関する証明書(K-109A)は、掛金を給与から天引きして納付する事業主が作成する書類です。一人会社では、代表者であるあなたが会社として作成します。個人の口座から引き落とす個人払込のままにすることもできます。
法人化したら国民年金基金はどうなりますか?
国民年金基金は国民年金の第1号被保険者のための制度なので、厚生年金に入ると資格を失います。iDeCoは第2号として続けられますが、国民年金基金の掛金は戻りません。
会社で企業型DCを始めると、iDeCoの上限はどうなりますか?
2026年12月分からは、企業型DCなどの企業年金の掛金と合わせて月6.2万円が上限になります。企業型DCに多く拠出すれば、その分iDeCoに掛けられる額は減ります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。