税金の基礎

iDeCoを満額かける個人事業主は19.3%。平均掛金は月2.7万円で、法人化後の枠に8割が収まる

結論

国民年金基金連合会の「iDeCoの加入等の概況」(令和8年8月末)では、第1号加入者41.8万人の平均掛金は27,086円(月額)です。毎月定額で拠出する41.1万人のうち、上限(月6.8万円)近くの6.5万円以上は19.3%にとどまり、1万円未満が25.5%、2万円台前半までで62.3%を占めます。法人化して第2号加入者(企業年金なし)になると、上限は今は月2.3万円で、令和8年12月から月6.2万円になります。改正後は、第1号加入者の79.4%(6万円未満の人)が今の掛金のまま続けられる計算です。

  • 第1号加入者の掛金は、1万円未満と6.5万円以上の両端に分かれている。満額で控除を使い切る人と、少額で始める人の二極
  • 改正前(今)の第2号の上限2.3万円に収まるのは62.3%。12月の改正で、法人化によってiDeCoの枠が縮んで困る人は2割程度に減る
  • 第1号の平均掛金27,086円を1年続けると32.5万円の所得控除。課税所得330万〜695万円の帯なら所得税・住民税は年9.9万円下がる

個人事業主のiDeCoの上限は月6.8万円で、会社員より大きな枠があります。法人化すると社長は厚生年金に入る第2号加入者になり、上限が下がるため、「法人化するとiDeCoの枠が縮む」ことは法人化のデメリットとしてよく挙げられます。では、個人事業主は実際にいくらかけているのか。国民年金基金連合会が毎月公表している加入の概況から、掛金の分布を確かめます。

平均は月27,086円。満額の人は5人に1人

令和8年8月末のiDeCo加入者は406.2万人で、そのうち第1号加入者は41.8万人です。毎月定額で拠出している第1号加入者41.1万人の掛金を階層別に並べると、次のとおりです。

掛金額(月額)第1号加入者割合累積
10,000円未満104,706人25.5%25.5%
10,000円~79,842人19.4%44.9%
15,000円~11,696人2.8%47.8%
20,000円~59,779人14.5%62.3%
25,000円~5,489人1.3%63.6%
30,000円~29,705人7.2%70.9%
35,000円~3,419人0.8%71.7%
40,000円~7,593人1.8%73.5%
45,000円~2,389人0.6%74.1%
50,000円~20,215人4.9%79.0%
55,000円~1,652人0.4%79.4%
60,000円~5,114人1.2%80.7%
65,000円~79,369人19.3%100.0%

※ 国民年金基金連合会「iDeCoの加入等の概況(令和8年8月末現在)」から当サイトが計算。年単位拠出の届出をしている加入者(第1号の1.7%)を除く

平均掛金は月27,086円で、上限の4割ほどです。分布は両端に分かれていて、1万円未満が25.5%、上限近くの6.5万円以上が19.3%です。間の3万円・5万円の階層にも小さな山があり、きりのよい金額を選ぶ人が多いことが分かります。

満額で所得控除を使い切っている個人事業主は、加入者の5人に1人です。逆に、半分近く(47.8%)は月2万円未満で拠出しています。iDeCoの利用率そのものも高くはなく、申告データでは小規模企業共済等掛金控除を使う事業所得者は24.5%でした(小規模企業共済・iDeCoを使う個人事業主の割合)。

法人化すると上限は2.3万円。12月から6.2万円に

法人化して役員報酬を受け取ると、社長は厚生年金の被保険者(国民年金の第2号被保険者)になり、iDeCoでは第2号加入者になります。会社に企業年金がなければ、上限は次のように変わります。

加入区分現在令和8年12月から
第1号(個人事業主など)月6万8,000円月7万5,000円
第2号(企業年金なし)月2万3,000円月6万2,000円

※ 令和7年の年金制度改正法による改正。第1号の上限は国民年金基金・付加保険料と合算。詳しくは個人事業主のiDeCoの上限

今の制度で法人化すると、上限は6.8万円から2.3万円へ下がります。統計でいえば、2万円台前半までに収まる62.3%の人は今の掛金を続けられますが、残りの37.7%は掛金を下げる必要があります。

令和8年12月の改正後は、第2号の上限が6.2万円になります。6万円未満で拠出している79.4%の人は、法人化しても掛金を変えずに続けられます。枠が縮んで困るのは、6万円以上の約2割に絞られます。

満額の人にとっては、改正後も月1.3万円の差

上限近くまで拠出している19.3%の人にとっては、改正後も差が残ります。個人事業主のままなら12月から月7.5万円まで、法人化すると月6.2万円までで、差は月1.3万円(年15.6万円)です。

所得控除が年15.6万円減ると、所得税・住民税は課税所得の帯によって次のように増えます。

課税所得所得税+復興特別所得税+住民税の税率控除が年15.6万円減ったときの増税額
330万円超695万円以下30.42%4.7万円
695万円超900万円以下33.483%5.2万円
900万円超1,800万円まで43.693%6.8万円

※ 所得税の税率に復興特別所得税(2.1%)と住民税所得割10%を加えた税率で計算。法人化後は役員報酬の給与所得に対する税率になる

一方、平均の月27,086円を拠出している人なら、年32.5万円の所得控除です。課税所得330万〜695万円の帯で年9.9万円の所得税・住民税が下がり、改正後はこの効果を法人化してもそのまま保てます。

なお、当サイトの判定ツールはiDeCoの掛金を計算に入れていません。判定が僅差の場合は、iDeCoの枠の差を手で足し引きしてください。法人側で企業型確定拠出年金を導入する方法もあり、一人社長の企業型DCで上限と手間を整理しています。

法人化の判断で、iDeCoの重みは小さくなっていく

「法人化するとiDeCoの枠が4.5万円縮む」という説明は、今の制度で満額を拠出している人には当てはまります。しかし実際の第1号加入者の6割は2万円台前半までの掛金で、12月の改正後は8割が影響を受けません。

法人化の損得を左右するのは、iDeCoよりも、所得税・住民税と社会保険料、法人の税の差です。まず判定ツールで本体の差額を確かめ、そのうえで自分の掛金が法人化後の上限に収まるかを見てください。所得別の判断の目安は法人化の目安となる所得にまとめています。計算の前提は計算方法にあります。

まとめ

  • 令和8年8月末の第1号加入者は41.8万人、平均掛金は月27,086円
  • 上限近くの6.5万円以上は19.3%、1万円未満は25.5%。掛金は両端に分かれている
  • 法人化して第2号(企業年金なし)になると、上限は今は月2.3万円。62.3%の人は今の掛金のまま続けられる
  • 令和8年12月から第2号の上限は月6.2万円。6万円未満の79.4%は法人化しても掛金を変えずに済む
  • 満額の人は改正後も月1.3万円(年15.6万円)の差が残る。課税所得900万円超なら年6.8万円の増税に相当

よくある質問

iDeCoの第1号加入者は、個人事業主だけですか。

第1号加入者は国民年金の第1号被保険者でiDeCoに加入している人で、個人事業主のほか、学生や無職の人、会社員でない農業者なども含みます。統計の数字は個人事業主だけの平均ではありません。

法人化したら、iDeCoはどうなりますか。

社長が役員報酬を受け取って厚生年金に入ると、第2号加入者に変わります。加入者の種別を変更する届出をすれば口座はそのまま続けられますが、掛金の上限が第2号の上限に変わります。上限を超えている掛金は引き下げる必要があります。

国民年金基金とiDeCoの両方に入っている人は、統計に入っていますか。

iDeCoの加入者として数えられます。ただし第1号の上限月6.8万円は国民年金基金の掛金や付加保険料と合算した枠なので、国民年金基金に入っている人はその分だけiDeCoの掛金が低く出ます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。