税金の基礎
UR賃貸の収入基準は法人化で変わる?月収33万・40万円に届く売上を計算
結論
URの平均月収額は、個人事業主なら青色申告特別控除後の事業所得、一人社長なら役員報酬の額面を12で割った額です。当サイトの試算(東京・単身・40歳未満)では、家賃20万円以上の住戸に必要な月収40万円に届く売上−経費は、個人(青色65万円)が545万円、法人化して最適な役員報酬にした場合が576万円でした。その間の帯では、法人化すると最適報酬が月39万円にとどまり基準を下回ります。
- 世帯の基準月収額は、家賃8万2,500円未満なら家賃の4倍、20万円未満なら33万円、20万円以上なら40万円(単身は6万2,500円未満で4倍、20万円未満で25万円)
- 会社に残した利益や法人の預金は、申込者本人の月収にも貯蓄額にも入らない。売上−経費1,000万円でも報酬を月30万円にすると、世帯で申し込める家賃は7万5,000円まで
- 法人名義の社宅契約は、法人税の納税証明書(その1)などで審査する。設立1年未満で決算前のため利益が確認できない法人は、断られることがある
URの基準は「年収」でも「所得」でもなく、申込者本人の平均月収額です。URは平均月収額を、給与収入や事業所得など将来も継続すると認められる収入の、原則として過去1年間の合計額を12で割った額と定めています。
この定義のなかで、給与は「収入」、事業は「所得」と書き分けられています。一人社長は役員報酬の額面で見られ、個人事業主は経費と青色申告特別控除を引いた後の額で見られます。物差しが違うので、法人化すると基準に届く売上の位置がずれます。
基準月収額は家賃で3段階に分かれる
URの「お申込み資格」が定める基準月収額は次のとおりです。
| 家賃 | 世帯で申し込む場合 | 家賃 | 単身で申し込む場合 |
|---|---|---|---|
| 8万2,500円未満 | 家賃の4倍 | 6万2,500円未満 | 家賃の4倍 |
| 8万2,500円以上20万円未満 | 33万円(固定額) | 6万2,500円以上20万円未満 | 25万円(固定額) |
| 20万円以上 | 40万円(固定額) | 20万円以上 | 40万円(固定額) |
判定するのは申込者本人の平均月収額です。配偶者の収入は、本人の月収が基準の2分の1以上あるときに合算できる特例の扱いになります。
基準を平均月収額の側から読み直すと、申し込める家賃の上限になります。
| 平均月収額 | 世帯で申し込める家賃 | 単身で申し込める家賃 |
|---|---|---|
| 20万円 | 50,000円まで | 50,000円まで |
| 24万円 | 60,000円まで | 60,000円まで |
| 28万円 | 70,000円まで | 20万円未満 |
| 32万円 | 80,000円まで | 20万円未満 |
| 33万円 | 20万円未満 | 20万円未満 |
| 39万円 | 20万円未満 | 20万円未満 |
| 40万円 | 上限なし | 上限なし |
特例・貯蓄基準・一時払いを使わず、平均月収額だけで判定した場合。
世帯では、月収32万円と33万円の間に段差があります。32万円なら家賃8万円までですが、33万円あれば20万円未満の住戸まで広がります。月1万円の差で、申し込める住戸の範囲が大きく変わるのがURの基準の特徴です。
個人事業主は所得、一人社長は額面で見られる
URが求める収入の証明書類は、収入の形で分かれています。
| 収入の形 | URが求める書類 | 平均月収額に入る額 |
|---|---|---|
| 給与収入(一人社長の役員報酬を含む) | 前年分の源泉徴収票と、本年度の課税証明書(または住民税決定通知書) | 役員報酬の額面 |
| 個人事業主 | 前年分の納税証明書(その2) | 事業所得(売上−経費−青色申告特別控除) |
納税証明書(その2)は、国税庁の区分で「所得金額の証明」です。事業所得は、青色申告特別控除を引いた後の額で計算されます。e-Taxで申告して65万円の控除を受けている人は、その65万円の分だけ、URから見た月収が月5.4万円低く見えます。
一方の一人社長は、役員報酬の額面がそのまま月収になります。給与所得控除も、本人が負担する社会保険料も引かれません。そのかわり、会社に残した利益は社長個人の収入ではないので入りません。
同じ「所得と額面の書き分け」は、住宅ローンの審査にもあります。【フラット35】の年収の扱いはフラット35の年収と法人化で計算しました。
売上−経費別:月収40万円に届く売上は法人化で31万円上がる
判定ツールと同じ計算エンジンで、個人のままの事業所得÷12と、法人化して手取りが最大になる役員報酬(月額)を出しました。
| 売上−経費 | 個人:事業所得÷12 | 区分 | 法人化:最適な役員報酬(月額) | 区分 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 195,833円 | 25万円未満 | 200,000円 | 25万円未満 |
| 350万円 | 237,500円 | 25万円未満 | 240,000円 | 25万円未満 |
| 400万円 | 279,166円 | 25万円以上 | 280,000円 | 25万円以上 |
| 450万円 | 320,833円 | 25万円以上 | 320,000円 | 25万円以上 |
| 500万円 | 362,500円 | 33万円以上 | 360,000円 | 33万円以上 |
| 550万円 | 404,166円 | 40万円以上 | 390,000円 | 33万円以上 |
| 600万円 | 445,833円 | 40万円以上 | 420,000円 | 40万円以上 |
| 700万円 | 529,166円 | 40万円以上 | 480,000円 | 40万円以上 |
| 800万円 | 612,500円 | 40万円以上 | 540,000円 | 40万円以上 |
| 1,000万円 | 779,166円 | 40万円以上 | 540,000円 | 40万円以上 |
前提:東京23区・40歳未満・配偶者なし・経費200万円・インボイス登録済み・合同会社。個人は青色申告特別控除65万円(e-Tax)。役員報酬は月5万〜100万円を1万円刻みで総当たりした最適額。配偶者ありでも最適報酬は同じ額だった。
売上−経費が500万円までは、個人と法人化後の月収がほぼ同じです。個人の側は青色申告特別控除の65万円で低く見え、法人の側は会社が負担する社会保険料と法人住民税の均等割の分だけ報酬に回せる額が減ります。この2つが、ほぼ打ち消し合っています。
差が開くのは550万円の行です。個人の月収は40万円を超えますが、法人化の最適報酬は月39万円で、家賃20万円以上の住戸の基準に届きません。
各基準に初めて届く売上−経費を、1万円刻みで探しました。
| 判定に使う額 | 25万円に届く売上−経費 | 33万円に届く売上−経費 | 40万円に届く売上−経費 |
|---|---|---|---|
| 個人(青色65万円) | 365万円 | 461万円 | 545万円 |
| 個人(青色10万円) | 310万円 | 406万円 | 490万円 |
| 個人(白色) | 300万円 | 396万円 | 480万円 |
| 法人化(最適報酬) | 359万円 | 471万円 | 576万円 |
前提は上の表と同じ。
40万円の線では、個人(青色65万円)の545万円に対して、法人化は576万円です。31万円の帯で、法人化すると基準を下回ります。33万円の線でも、461万円から470万円までの10万円の帯が同じ関係です。
逆に25万円の線(単身の家賃20万円未満)だけは、法人化のほうが6万円早く届きます。青色申告特別控除の65万円が、この所得帯では会社側の負担より大きく効くためです。
届かない帯で報酬を基準まで上げると、手取りはいくら減るか
最適報酬が基準に1万円足りない帯で、報酬を基準額ちょうどまで上げた場合を計算しました。
| 売上−経費 | 個人:事業所得÷12 | 個人の手取り | 最適報酬 | 手取り(最適報酬) | 基準額の報酬 | 手取り(基準額) | 最適との差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 461万円 | 330,000円 | 344.7万円 | 月32万円 | 315.1万円 | 月33万円 | 312.5万円 | -2.6万円 |
| 470万円 | 337,500円 | 350.7万円 | 月32万円 | 320.7万円 | 月33万円 | 318.7万円 | -2.1万円 |
| 545万円 | 400,000円 | 400.5万円 | 月39万円 | 373.7万円 | 月40万円 | 365.2万円 | -8.5万円 |
| 560万円 | 412,500円 | 404.4万円 | 月39万円 | 383.1万円 | 月40万円 | 378.4万円 | -4.7万円 |
| 575万円 | 425,000円 | 413万円 | 月39万円 | 392.5万円 | 月40万円 | 387.9万円 | -4.6万円 |
前提は上の表と同じ。法人化の手取りは、社長個人の手取りに、会社に残る利益を役員退職金・配当で引き出すコストを差し引いて加えた額(判定ツールと同じ評価)。
報酬を月1万円上げるだけで、手取りは年2万〜8万円ほど減ります。545万円の行で減り方が大きいのは、月40万円にすると標準報酬月額の等級が上がり、社会保険料が一段まとめて増えるためです。
ただし、この帯はそもそも個人のままのほうが手取りが多い帯です。545万円の行では、個人の手取り400.5万円に対し、法人化は最適報酬でも373.7万円です。基準に届かない帯が出るのは、手取りの面でも法人化を急ぐ理由が薄い所得帯だと読めます。
報酬を低く抑えて会社に残すと、申し込める家賃が下がる
所得帯が上がると、最適報酬はどの条件でも月40万円を超えます。問題になるのは、会社に利益を残すために報酬を最適額より低く設定した場合です。売上−経費1,000万円で、報酬だけを動かしました。
| 役員報酬(月額) | URの区分 | 世帯で申し込める家賃 | 手取り(会社に残る分を含む) | 最適報酬との差 |
|---|---|---|---|---|
| 月15万円 | 25万円未満 | 37,500円まで | 638.9万円 | -23.5万円 |
| 月20万円 | 25万円未満 | 50,000円まで | 642.4万円 | -20万円 |
| 月25万円 | 25万円以上 | 62,500円まで | 644.1万円 | -18.3万円 |
| 月30万円 | 25万円以上 | 75,000円まで | 650.8万円 | -11.6万円 |
| 月33万円 | 33万円以上 | 20万円未満 | 650.2万円 | -12.2万円 |
| 月40万円 | 40万円以上 | 上限なし | 654.8万円 | -7.5万円 |
| 月54万円 | 40万円以上 | 上限なし | 662.4万円 | 0万円 |
前提は上の表と同じ。個人のままなら事業所得÷12は779,166円で、どの住戸にも申し込める。
個人事業主のときは月77.9万円と見られていた人が、報酬を月30万円にすると、世帯で申し込める家賃は7万5,000円までになります。会社の預金がいくらあっても、URの平均月収額にも貯蓄基準にも入りません。貯蓄基準は「申込者本人の貯蓄額」が家賃の100倍以上あることなので、見られるのは社長個人の預貯金です。
この試算では、報酬を低く抑えること自体が手取りを減らしています。会社に残した利益を後で引き出すときの税金まで含めると、報酬を極端に下げる設定は得になりにくいからです。役員報酬の決め方は、役員報酬の最適額の探し方で詳しく扱っています。
法人化した翌年の申込みと、法人名義の社宅契約
法人化した翌年は「継続する収入」と「1年未満の給与」が重なる
URの平均月収額は、将来も継続すると認められる収入で計算します。法人化して個人事業を廃業すると、前年の事業所得はこの先続く収入ではなくなります。一方で役員報酬は、法人化した年の途中からしか受け取っていません。
URは、採用後1年に満たない給与収入の人にはUR指定様式の収入証明書を使うよう案内しています。法人化した直後の社長がどの書類で、どの期間の収入を見られるかは公開情報には書かれていません。申込み前にUR営業センターで確認が必要です。
なお、公営住宅は逆に「収入が基準以下」であることが条件で、同じ役員報酬でも給与所得控除後の額で判定します。こちらは公営住宅の収入基準と法人化で計算しました。
社宅として法人名義で借りる場合
URには法人名義の社宅契約もあります。社宅向けの案内では、法人事業者に求める書類は次のとおりです。
- UR所定の申込書と会社概要書
- 前年分の法人税の納税証明書(その1)。法人税が0円なら、最近2か年の貸借対照表と損益計算書も
- 登記簿謄本(現在事項全部証明書)と法人の印鑑登録証明書(いずれも発行から3か月以内)
個人の平均月収額の基準は、法人名義の書類には出てきません。ただし設立1年未満の法人については、決算を迎えておらず証明が難しい場合や利益を確認できない場合は断ることがある、とURのFAQに書かれています。法人名義の契約では家賃等の一時払い制度は使えず、部屋を事務所として使うことや事務所の登記もできません。
案内は入居者を「社員」と書いており、一人社長本人が法人名義の部屋に住めるかは明記されていません。法人契約から個人契約へ切り替えるときは、個人の申込資格をあらためて確認するとされています。役員社宅にしたときの家賃の税務は役員社宅の家賃と法人化の分岐点にまとめました。
まとめ
- URの平均月収額は、個人事業主なら青色申告特別控除後の事業所得、一人社長なら役員報酬の額面を12で割った額
- 世帯の基準は家賃の4倍・33万円・40万円の3段階。月32万円と33万円の間で、申し込める家賃が8万円から20万円未満に広がる
- 当サイトの試算(東京・単身)では、月収40万円に届く売上−経費は個人545万円、法人化576万円。その間の31万円の帯は法人化で基準を下回るが、手取りでも個人のほうが多い帯だった
- 会社に残した利益は月収にも貯蓄基準にも入らない。報酬を低く抑えると、申し込める家賃の上限が下がる
- 法人名義の社宅契約は法人税の納税証明書などで審査され、設立1年未満で利益が確認できない法人は断られることがある
URの基準に届くかどうかは、売上−経費と役員報酬の決め方で変わります。一般論の目安ではなく、自分の売上と経費で、法人化したときの最適報酬がいくらになるかを判定ツールで確かめてください。
よくある質問
個人事業主のURの収入は、売上で見ますか?
売上ではありません。URは個人事業主に前年分の納税証明書(その2)の提出を求めており、これは所得金額の証明です。必要経費と青色申告特別控除を引いた後の事業所得を12で割った額が平均月収額になります。
法人化した会社の利益は、社長のURの収入に入りますか?
入りません。URの平均月収額は申込者本人の収入で、一人社長の場合は源泉徴収票の役員報酬(額面)です。貯蓄基準の貯蓄額も申込者本人の預貯金なので、法人口座の残高は含まれないと考えられます。
収入が基準に届かないと、URには申し込めませんか?
家賃等の一時払い制度を使えば収入要件は問われません。また、月額家賃の100倍以上の貯蓄があれば貯蓄基準で代えられ、月収が基準の2分の1以上なら同居親族の収入との合算などの特例もあります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。