税金の基礎

認定NPOへの寄附の税額控除は法人化で縮む。所得税額25%の上限

結論

事業利益800万円(東京都・単身)の個人事業主なら所得税額は68.2万円で、税額控除の上限(25%)は17.0万円、寄附42.8万円までは40%がそのまま効きます。法人化して役員報酬を月45万円にすると所得税額は10.7万円、上限は2.7万円に下がり、満額効く寄附は6.9万円までです。30万円を寄附した場合の所得税の減少額は、12.2万円から2.7万円に縮みます。

  • 税額控除は(寄附額−2,000円)×40%、上限はその年の所得税額(復興特別所得税を含まない)の25%。公益社団法人等への寄附の税額控除と同じ25%枠を分け合う
  • 法人化後、事業利益800万〜1,500万円の帯では寄附が約44万円を超えると所得控除のほうが所得税が減る。個人事業主のままなら85万〜194万円まで税額控除が上回る
  • 住民税の控除は、自治体が条例で指定した寄附金に限り所得税の選択とは別に決まる。所得税で税額控除を選んでも住民税側は変わらない

個人事業主のときは所得税額が大きいので、25%の上限はあまり意識されません。法人化して役員報酬を抑えると、所得税額そのものが数分の一になり、上限が一気に下がります。

寄附の額を変えないまま法人化すると、同じ寄附で戻る所得税が数万円単位で減ります。どの帯で税額控除と所得控除の有利不利が入れ替わるのかを、当サイトの計算エンジンで出した所得税額から確かめます。

税額控除の式と、25%の上限

認定NPO法人等(認定・特例認定を受けたNPO法人)への寄附は、所得税で次のどちらかを選びます(国税庁タックスアンサー No.1263)。

方式計算何から引くか
所得控除(寄附金控除)寄附額 − 2,000円総所得金額等
税額控除(認定NPO法人等寄附金特別控除)(寄附額 − 2,000円)× 40%(100円未満切捨て)所得税の額

税額控除には上限が2つあります(租税特別措置法41条の18の2第2項)。

  • 寄附額は、総所得金額等の40%までしか計算に入らない(所得控除も同じ。所得税法78条)
  • 控除額は、その年分の所得税の額の25%(100円未満切捨て)まで

所得控除の効き目は「限界税率」で決まります。所得税の限界税率は課税所得が1,800万円を超えない限り33%どまりなので、上限に当たらない限り税額控除のほうが所得税は減ります。逆に言えば、税額控除が負けるのは25%の上限に当たったときです。

25%は公益社団法人等の税額控除と共通の枠

同じ40%・25%の税額控除は、公益社団法人・学校法人・社会福祉法人などへの寄附にもあります(措法41条の18の3、No.1266)。両方を使う年は、認定NPO側の25%から公益社団法人等の控除額を差し引いた残りが上限です。

政党・政治資金団体への寄附は別の制度で、控除率は30%、上限は同じく所得税額の25%です(措法41条の18第2項)。こちらは指定期間が令和11年12月31日までと条文に書かれています。

復興特別所得税も一緒に減る

25%の基準になる「所得税の額」には、復興特別所得税は含みません。一方、復興特別所得税は税額控除を引いた後の基準所得税額に2.1%を掛けて計算します(復興財源確保法10条・13条)。このため、実際に減る税金は控除額の約1.021倍になります。以下の表の「減少額」はこの分を含めています。

法人化で所得税額は数分の一になる

個人事業主は事業所得(青色申告特別控除65万円の後)に課税されます。法人化すると、役員本人に課税されるのは役員報酬から給与所得控除を引いた給与所得だけです。会社に残した利益には法人税がかかり、個人の所得税額には入りません。

次の表は、事業利益ごとに、個人事業主のままと法人化(手取りが最大になる役員報酬)の所得税額、その25%、40%が満額効く寄附額の上限を並べたものです。

事業利益個人:所得税の額個人:25%上限個人:満額効く寄附額法人化:役員報酬法人化:所得税の額法人化:25%上限法人化:満額効く寄附額
600万円32.0万円8.0万円20.2万円月42万円9.1万円2.3万円5.8万円
800万円68.2万円17.0万円42.8万円月45万円10.7万円2.7万円6.9万円
1000万円106.3万円26.6万円66.7万円月45万円10.7万円2.7万円6.9万円
1200万円156.1万円39.0万円97.7万円月54万円17.8万円4.4万円11.3万円
1500万円255.1万円63.8万円159.6万円月54万円17.8万円4.4万円11.3万円
2000万円420.1万円105.0万円262.7万円月90万円95.2万円23.8万円59.7万円

※ 事業利益は売上−経費(青色申告特別控除の前)。個人は青色65万円(e-Tax)、法人化は最適役員報酬で役員本人の給与所得から所得税を計算。東京都・40〜64歳・単身・扶養なし・インボイス登録あり・合同会社、ほかの所得控除・税額控除なし。所得税の額は復興特別所得税を含まない額(25%上限の基準)。scripts/nintei-npo-kifu-zeigaku-kojo.mjs で再生成。

事業利益800万円から1,500万円では、法人化後の役員報酬が月45万〜54万円に収まり、所得税額は10万〜18万円台です。税額控除が満額効く寄附は、年7万〜11万円までに下がります。

事業利益800万円と1,000万円で法人化後の数字が同じなのは、最適な役員報酬がどちらも月45万円だからです。利益が増えても、増えた分は会社に残す方が手取りが大きくなるため、役員本人の所得税額は動きません。

寄附額別に見ると、30万円で9万円以上の差

事業利益800万円のとき、寄附額ごとに所得税(復興特別所得税を含む)がいくら減るかを計算しました。◎は2つの方式のうち減少額が大きいほうです。

寄附額個人:税額控除個人:所得控除法人化:税額控除法人化:所得控除
10万円40,100円 ◎20,100円27,400円(上限) ◎10,000円
30万円121,700円 ◎60,900円27,400円(上限) ◎20,200円
50万円173,900円(上限) ◎101,700円27,400円(上限)30,400円 ◎
100万円173,900円(上限)203,800円 ◎27,400円(上限)55,900円 ◎

30万円の寄附で、個人事業主なら12万1,700円減る所得税が、法人化後は2万7,400円しか減りません。差は9万4,300円です。法人化の判定で年10万円前後の差を争っている人にとっては、無視できない額です。

事業利益1,200万円でも傾向は同じです。

寄附額個人:税額控除個人:所得控除法人化:税額控除法人化:所得控除
10万円40,000円 ◎33,000円40,000円 ◎10,000円
30万円121,700円 ◎100,400円45,300円(上限) ◎30,400円
50万円203,300円 ◎156,100円45,300円(上限)50,900円 ◎
100万円398,200円(上限) ◎273,500円45,300円(上限)91,800円 ◎

事業利益1,200万円なら、10万円の寄附は法人化しても上限に当たらず、戻る所得税は個人事業主のときと同じ4万円です。上限に当たり始める寄附額は、事業利益800万円で6.9万円、1,200万円で11.3万円です。寄附が年10万円前後を超える人から、法人化の影響が出ます。

所得控除が逆転する寄附額は、法人化で約44万円に下がる

上限に当たった後も寄附を増やすと、所得控除の減少額だけが伸び続け、どこかで税額控除を追い越します。1,000円刻みで探した逆転点が次の表です。

事業利益個人事業主法人化
600万円40.3万円45.5万円
800万円85.4万円44.2万円
1000万円126.6万円44.2万円
1200万円153.2万円44.6万円
1500万円193.5万円44.6万円
2000万円318.5万円119.3万円

前提は上の表と同じです。

個人事業主のままなら、事業利益1,000万円で寄附126万円まで税額控除が有利です。法人化すると、事業利益800万〜1,500万円の帯ではどれも寄附44万円前後で所得控除が上回ります。

法人化後は、どちらを選んでも戻りが小さい

逆転点が下がるのは、所得控除が有利になったからではありません。法人化後の役員の課税所得は200万円前後で、限界税率は10%です(事業利益800万円の例で課税所得204.8万円)。所得控除の戻りも、個人事業主の限界税率20%のときより小さくなっています。

両方の戻りが縮むなかで、税額控除のほうが25%の天井に早く当たる、という構図です。50万円以上を毎年寄附する人は、法人化後に申告の選択を見直さないと、所得控除なら減ったはずの税金を取りこぼします。

法人化した年と、会社からの寄附

法人成りの年は所得税額が2つの所得の合計で決まる

年の途中で法人化した年は、設立前の事業所得と設立後の役員報酬(給与所得)を合算して所得税額を計算します。25%の上限もこの合算後の所得税額が基準です。寄附をその年に寄せるか翌年に回すかで、上限が変わります。

会社が寄附するのは別の制度

会社が認定NPO法人等へ寄附すると、法人税で一般枠とは別の特別損金算入限度額が使えます。ただし損金算入は「経費になる」だけで、40%の税額控除はありません。会社の寄附の扱いは法人の寄附金は全額損金にならないで整理しています。

役員個人が負担すべき寄附を会社が払うと、役員への給与と扱われます。個人の寄附か会社の寄附かを、寄附の名義と支払元で揃える必要があります。

住民税は所得税の選択と切り離されている

住民税には寄附金の所得控除がなく、条例で指定された寄附金に限り税額控除があります(地方税法37条の2・314条の7)。

項目内容
対象認定NPO法人等への寄附のうち、住所地の都道府県・市区町村が条例で定めたもの
控除額(寄附額 − 2,000円)× 都道府県4%+市区町村6%(指定都市は2%+8%)
寄附額の上限総所得金額等の30%
控除額の上限所得割の額

所得税でどちらを選んでも、住民税側の計算は変わりません。ただし控除額の上限は所得割額なので、法人化で所得割額が下がる点は所得税と同じです。所得割額が法人化でどう動くかは、ふるさと納税の上限の記事で計算しています。ふるさと納税と違い、こちらは寄附先が条例で指定されていなければ住民税の控除は受けられません。

まとめ

  • 認定NPO法人等への寄附の税額控除は(寄附額−2,000円)×40%で、上限はその年の所得税額の25%
  • 事業利益800万円・単身の例では、法人化で所得税額が68.2万円から10.7万円に下がり、40%が満額効く寄附は42.8万円から6.9万円に縮む
  • 30万円の寄附で戻る所得税は、個人事業主12.2万円・法人化後2.7万円。差は9.4万円
  • 法人化後、事業利益800万〜1,500万円では寄附約44万円を超えると所得控除のほうが所得税が減る
  • 住民税の寄附金税額控除は条例指定の寄附金に限られ、所得税の選択とは別に決まる

寄附の額が大きい人ほど、法人化の損得に寄附の戻りの差が乗ります。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で役員報酬と所得税額を出してから、寄附の計画と申告方式を決めてください。

よくある質問

認定NPO法人への寄附は、税額控除と所得控除を寄附ごとに使い分けられますか?

所得税では、その年に認定NPO法人等へ支出した寄附金について、税額控除の適用を受けるなら所得控除(寄附金控除)の対象から外れます(租税特別措置法41条の18の2第1項)。一部を税額控除、残りを所得控除という分け方は条文上想定されていません。

一人社長が役員報酬から寄附した場合、年末調整で控除されますか?

されません。認定NPO法人等寄附金特別控除は、確定申告書に控除額の記載と計算明細書・受領証などの添付がある場合に限り適用されます。寄附金控除(所得控除)を選ぶ場合も確定申告で受けます。

25%の上限を超えた分は翌年に繰り越せますか?

繰り越しの規定はありません。租税特別措置法41条の18の2第2項は、控除額がその年分の所得税の額の25%を超えるときは25%相当額を限度とする、と定めるだけです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。