税金の基礎

小規模企業共済・iDeCoを使う個人事業主は24.5%。所得別の利用率を数えた

結論

国税庁の令和6年分の申告所得税標本調査を当サイトで再集計すると、小規模企業共済等掛金控除を受けた事業所得者は24.5%で、1人当たりの控除額は54.6万円です。利用率は合計所得700万円超1,000万円以下で40.0%、1,000万円超1,500万円以下でも46.5%にとどまり、法人化を検討する所得帯でも半数以上が使っていません。

  • 利用率は合計所得200万円以下の4.9%から3,000万円超の65.2%まで、所得とともに上がる
  • 使っている人の1人当たり控除額は、3,000万円超でも78.9万円。小規模企業共済とiDeCoを両方上限まで使う年165.6万円には遠い
  • 事業所得700万円の人が掛金を年84万円払うと、所得税・住民税は年25.6万円減る。国民健康保険料は変わらない

「法人化の前に、小規模企業共済とiDeCoを使い切る」という順番は、個人事業主の節税の定石として紹介されます。では、実際に申告している個人事業主のうち、どれだけの人がこの2つを使っているのでしょうか。

国税庁の申告所得税標本調査には、所得控除の種類ごとに、控除を受けた人数と金額が所得階級別に出ています。事業所得者の分を数え直すと、定石はそれほど実行されていませんでした。

利用率は24.5%。所得700万円超でも半数に届かない

国税庁「令和6年分 申告所得税標本調査」第3表(所得控除表)から、事業所得者の小規模企業共済等掛金控除を所得階級別にまとめ直しました。分母の事業所得者数は、同じ調査の第6表の納税者数(青色申告者と白色申告者の合計)です。

合計所得事業所得者小規模企業共済等掛金控除を受けた人利用率1人当たりの控除額
200万円以下166,169人8,178人4.9%13.3万円
200万円超300万円以下232,000人28,792人12.4%32.1万円
300万円超400万円以下199,937人36,430人18.2%42.4万円
400万円超500万円以下146,140人35,707人24.4%47.9万円
500万円超700万円以下175,423人56,170人32.0%53.9万円
700万円超1,000万円以下113,175人45,315人40.0%61.3万円
1,000万円超1,500万円以下64,446人29,992人46.5%67.8万円
1,500万円超3,000万円以下52,348人30,801人58.8%74.5万円
3,000万円超24,427人15,938人65.2%78.9万円
計1,174,065人287,323人24.5%54.6万円

※ 国税庁「令和6年分 申告所得税標本調査」第3表(所得控除表)・第6表(専従者表)の事業所得者を当サイトで再集計。対象は申告納税額のある人だけ。小規模企業共済等掛金控除には、小規模企業共済・iDeCo(個人型確定拠出年金)・心身障害者扶養共済の掛金が合算されている。合計所得は青色申告特別控除後

事業所得者全体では**24.5%**です。所得が上がるほど利用率も上がりますが、法人化が話題になり始める合計所得700万円超1,000万円以下でも40.0%、1,000万円超1,500万円以下でも46.5%です。法人化を検討する所得帯でも、半数以上は小規模企業共済もiDeCoも使っていません。

この控除には、小規模企業共済・iDeCo・心身障害者扶養共済の掛金がまとめて入っています。統計からは内訳を分けられないので、「小規模企業共済の加入率」「iDeCoの加入率」を個別に言うことはできません。どちらか一方でも使っていれば、表の「控除を受けた人」に入ります。

使っている人も、上限までは払っていない

使っている人の1人当たり控除額は、3,000万円超の層でも78.9万円です。

掛金の上限は、小規模企業共済が月7万円(年84万円)、個人事業主のiDeCoが月6.8万円(年81.6万円)です。iDeCoは令和8年12月から月7.5万円に上がります(個人事業主のiDeCoは月6.8万円)。両方を上限まで払うと年165.6万円になります。

平均が78.9万円ということは、高所得の層でも、両方を上限まで使っている人は多くないと読めます。小規模企業共済だけを上限の84万円で払っている人が多い、という形とも矛盾しません。ただし統計は平均しか出していないので、分布までは分かりません。

掛金84万円で、所得税・住民税は年12.7万〜36.7万円減る

掛金は全額が所得控除になります。個人事業主のままで掛金を払ったとき、所得税と住民税がいくら減るかを判定ツールの計算エンジンで出しました。

事業所得(青色控除後)掛金 年24万円掛金 年84万円(小規模企業共済の上限)掛金 年165.6万円(小規模企業共済+iDeCoの上限)
300.0万円3.6万円(15%)12.7万円(15%)23.7万円(14%)
500.0万円7.3万円(30%)19.7万円(23%)35.9万円(22%)
700.0万円7.3万円(30%)25.6万円(30%)50.4万円(30%)
900.0万円8.0万円(34%)26.4万円(31%)51.2万円(31%)
1,200.0万円10.5万円(44%)36.7万円(44%)67.7万円(41%)
1,500.0万円10.5万円(44%)36.7万円(44%)72.4万円(44%)

※ 東京23区・40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分基準。減る額は所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の合計で、カッコ内は掛金に対する割合。国民健康保険料は所得控除の影響を受けないため変わらない。iDeCoの上限は令和8年11月までの月6.8万円で計算

事業所得700万円なら、掛金84万円で年25.6万円、両方を上限まで払えば年50.4万円の税が減ります。掛金は将来受け取るお金なので、この減税額はそのまま手取りの上積みです。ただし受け取るときには、一時金なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得として課税されます。

国民健康保険料は下がりません。所得割は所得控除を引く前の所得で計算するからです。ここは役員報酬の社会保険料とも性質が違います。

判定ツールの結果は、共済を使っていない前提

当サイトの判定ツールは、個人事業主の側で小規模企業共済やiDeCoを使っていない前提で計算しています(計算の前提)。すでに掛金を払っている人は、個人のままの税額がツールより低くなり、ツールの結果は法人化に有利な側に出ます。

法人化しても小規模企業共済は役員として続けられ、役員報酬から払う掛金も控除できます(小規模企業共済は法人成り後も継続できる)。一方、iDeCoは厚生年金の被保険者になると上限が下がります。どちらにしても、節税の順番としては法人化より先に来る手段です(個人事業主の節税は順番がある)。

統計が示しているのは、その「先に来る手段」を使わずに法人化を検討している人が少なくないということです。所得700万円で掛金を満額にしたときの年25.6万円は、判定ツールで法人化が有利に転じる所得帯の差額(年数十万円)と同じ桁です。

統計を読むときの注意

  • 対象は申告納税額のある人だけです。納税額が0円の人や、給与所得が主で事業所得のほうが小さい人は入っていません
  • 令和6年分は定額減税があった年で、所得の低い層ほど申告納税者から抜けています
  • 小規模企業共済等掛金控除には心身障害者扶養共済の掛金も含まれます。内訳は公表されていません

同じ調査からは、家族に払う青色事業専従者給与の平均も数えています(青色事業専従者給与の平均は254万円)。

まとめ

  • 小規模企業共済等掛金控除を受けた事業所得者は24.5%、1人当たりの控除額は54.6万円
  • 利用率は所得とともに上がるが、合計所得700万円超1,000万円以下でも40.0%。法人化を検討する所得帯でも半数以上が使っていない
  • 使っている人の控除額は3,000万円超でも平均78.9万円で、小規模企業共済+iDeCoの上限165.6万円には遠い
  • 事業所得700万円なら、掛金84万円で所得税・住民税が年25.6万円減る。国民健康保険料は変わらない

判定ツールは共済を使っていない前提の数字です。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で法人化の差額を出し、共済の掛金で減る税額と並べて確かめてください。

よくある質問

小規模企業共済等掛金控除には、どの掛金が入っていますか?

国税庁のNo.1135によれば、小規模企業共済の掛金、確定拠出年金の企業型年金加入者掛金と個人型年金(iDeCo)の掛金、地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金の3つです。統計ではこれらが合算されているため、小規模企業共済とiDeCoを分けて数えることはできません。

掛金を払うと国民健康保険料も下がりますか?

下がりません。国民健康保険料の所得割は、所得控除を引く前の所得(旧ただし書き所得)で計算するため、小規模企業共済やiDeCoの掛金は保険料に影響しません。減るのは所得税と住民税です。

法人化すると小規模企業共済は続けられますか?

法人成りして役員になった場合は、小規模企業共済を続けられます。役員報酬から払う掛金も小規模企業共済等掛金控除の対象です。iDeCoは第1号被保険者から第2号被保険者に変わるため、掛金の上限が下がります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。