税金の基礎
青色事業専従者給与の平均は254万円。所得別に国税庁の統計で数えた
結論
国税庁の令和6年分の申告所得税標本調査を当サイトで再集計すると、青色申告の事業所得者の33.9%が専従者を置いており、専従者1人当たりの給与は平均254.4万円です。合計所得200万円以下では133.3万円、700万円超1,000万円以下では246.6万円、1,000万円超1,500万円以下では307.7万円と、所得が上がるほど高くなります。
- 専従者を置く人の割合は、合計所得200万円以下の16.2%から3,000万円超の58.7%まで、所得とともに上がる
- 白色申告の専従者控除は1人当たり平均76.8万円。配偶者86万円・その他の親族50万円の上限に張り付いている
- 対象は申告納税額のある人だけ。納税額が0円の人や給与所得が主の人は入っていない
家族に払う青色事業専従者給与は、「103万円」「130万円」といった年収の壁に合わせて決める、と説明されることがよくあります。では、実際に申告している個人事業主はいくら払っているのでしょうか。
国税庁の申告所得税標本調査には、専従者の人数と給与の総額を所得階級別にまとめた表があります。1人当たりに直すと、平均は壁の額を大きく超えていました。
専従者1人当たりの給与は、所得とともに上がる
国税庁「令和6年分 申告所得税標本調査」第6表(専従者表)から、事業所得者の分を合計所得の階級ごとにまとめ直しました。事業所得者とは、事業所得がほかの所得の合計より大きい人のことです。
【青色申告の事業所得者】
| 合計所得 | 納税者数 | 専従者のいる人 | 割合 | 専従者の数 | 専従者1人当たりの給与 | 1世帯当たりの専従者給与 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 200万円以下 | 85,054人 | 13,795人 | 16.2% | 15,537人 | 133.3万円 | 150.1万円 |
| 200万円超300万円以下 | 140,231人 | 33,564人 | 23.9% | 39,130人 | 148.4万円 | 173.0万円 |
| 300万円超400万円以下 | 133,300人 | 37,649人 | 28.2% | 44,994人 | 169.3万円 | 202.3万円 |
| 400万円超500万円以下 | 107,698人 | 34,533人 | 32.1% | 42,254人 | 186.5万円 | 228.2万円 |
| 500万円超700万円以下 | 141,560人 | 52,645人 | 37.2% | 66,667人 | 210.8万円 | 266.9万円 |
| 700万円超1,000万円以下 | 98,242人 | 42,368人 | 43.1% | 56,532人 | 246.6万円 | 329.0万円 |
| 1,000万円超1,500万円以下 | 58,311人 | 28,871人 | 49.5% | 40,064人 | 307.7万円 | 427.0万円 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 49,119人 | 26,927人 | 54.8% | 35,539人 | 436.5万円 | 576.1万円 |
| 3,000万円超 | 23,527人 | 13,810人 | 58.7% | 16,247人 | 713.1万円 | 839.0万円 |
| 計 | 837,042人 | 284,162人 | 33.9% | 356,964人 | 254.4万円 | 319.5万円 |
【白色申告の事業所得者(専従者控除)】 納税者337,023人のうち専従者のいる人32,691人(9.7%)、専従者36,118人、専従者控除額の1人当たり76.8万円
※ 国税庁「令和6年分 申告所得税標本調査」第6表(専従者表)の事業所得者を当サイトで再集計。対象は申告納税額のある人だけで、合計所得は青色申告特別控除後。金額は百万円単位の公表値から計算
青色申告の事業所得者のうち、専従者を置いている人は**33.9%**です。所得が上がるほど割合は上がり、合計所得1,000万円を超えると半数近くが家族に給与を払っています。
1人当たりの給与は、合計所得200万円以下の133.3万円から、700万円超1,000万円以下の246.6万円、3,000万円超の713.1万円まで上がります。専従者給与は事業主の所得から引かれるので、表の「合計所得」は給与を払った後の額です。払う前の事業の利益は、この階級よりさらに大きいことになります。
平均は「年収の壁」よりずっと上にある
専従者給与を103万円や130万円に抑えるという考え方は、専従者本人の所得税や社会保険の扶養を気にしたものです。ところが統計では、合計所得200万円以下の層ですら1人当たり133.3万円で、130万円を超えています。
平均なので、壁の手前に抑えている人も一定数いるはずです。ただ、合計所得500万円を超える層では平均が210万円を超えます。多くの家庭は、壁より「世帯全体の税負担」を基準に額を決めていると読むのが自然です。
これは税の仕組みから説明がつきます。専従者給与は事業主の必要経費になり、専従者本人には給与所得控除が付きます。事業主の限界税率が高いほど、所得の一部を家族に移したときに減る税額は大きくなります。当サイトの計算では、事業所得1,000万円の人が配偶者に年178万円を払うと、世帯の手取りは年49.6万円増えました(専従者給与と役員報酬、家族に払うならどちらが有利か)。
ただし、専従者給与を払うと配偶者控除は使えません。国税庁のNo.2075は、青色事業専従者として給与を受ける人は同一生計配偶者や扶養親族になれないとしています。少額しか払わないなら、配偶者控除を使うほうが有利になる帯があります。
白色申告の専従者控除は、上限に張り付いている
白色申告の人は、家族に給与を払っても必要経費にできません。代わりに事業専従者控除として、配偶者なら最高86万円、それ以外の親族なら1人最高50万円を差し引けます。
統計の専従者控除額は1人当たり76.8万円でした。配偶者の86万円と、親族の50万円の間に収まっています。上限まで使っている人が多いと考えられる数字です。
白色申告で専従者控除を使っている人は、事業所得者の9.7%にとどまります。青色申告の33.9%と比べて低いのは、控除額が小さく、しかも事業所得を専従者の数に1を足した数で割った額が上限になるためです。家族への所得分散を本格的に使えるのは青色申告だけです。
専従者給与を払っている人ほど、法人化の効き目は小さい
法人化の手取り効果の一部は、役員報酬を家族に分けて所得を分散できることから来ています。統計では、法人化を検討する所得帯(合計所得700万円超)の青色申告者の4〜6割が、すでに専従者給与で所得を分散しています。
こうした世帯では、法人化しても分散による上積みは小さくなります。専従者給与を年178万円払っている人の損益分岐点は1,890万円で、払っていない人の970万円から大きく後退するという試算もあります。平均の246.6万円を払っている世帯では、個人のままでさらに多くの所得を分散していることになります。
当サイトの判定ツールは、配偶者を「無収入で扶養に入る」前提で計算しています。専従者給与を払っている世帯では、ツールの結果は法人化に有利な側に出ます。配偶者の給与を含めた比較は、上の記事の計算と合わせて見てください(計算の前提)。
統計を読むときの3つの注意
この表には、読み方の注意が3つあります。
- 申告納税額のある人だけが対象です。還付申告の人や、納税額が0円の人は入っていません
- 令和6年分は定額減税があった年です。当サイトの別の集計では、申告納税者が前年から大きく減っており、所得の低い層ほど抜けています。低い階級の割合は、実態より小さく出ている可能性があります
- 専従者は配偶者に限りません。15歳以上の子や親も含まれます。「配偶者に払っている額の平均」ではありません
令和6年分の事業所得者の所得分布は、法人化が有利な個人事業主は何%かで同じ調査の第1表から数えています。
まとめ
- 青色申告の事業所得者の33.9%が専従者を置き、1人当たりの専従者給与は平均254.4万円
- 1人当たりの額は、合計所得200万円以下の133.3万円から3,000万円超の713.1万円まで、所得とともに上がる。多くの世帯は年収の壁ではなく世帯の税負担で額を決めていると読める
- 白色申告の専従者控除は1人当たり76.8万円で、配偶者86万円・親族50万円の上限に張り付いている
- 法人化を検討する所得帯の4〜6割は、すでに専従者給与で所得を分散している。その分、法人化の上積みは小さくなる
判定ツールの結果は、配偶者が無収入である前提の数字です。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費、そして家族に払っている給与を前提に確かめてください。
よくある質問
専従者給与はいくらまでなら認められますか?
金額の上限は定められておらず、労務の対価として相当であると認められる金額が必要経費になります。過大とされる部分は必要経費になりません。統計の平均額は、認められる上限の目安にはなりません。
専従者給与を払うと、配偶者控除は使えなくなりますか?
使えなくなります。国税庁のNo.2075は、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は同一生計配偶者や扶養親族になれないとしています。給与の額が少なくても、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の対象から外れます。
年の途中から専従者給与を払い始めることはできますか?
できます。1月16日以後に新たに専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内に「青色事業専従者給与に関する届出書」を出します。通常はその年の3月15日が期限です。給与を増やすときは変更届出書を遅滞なく出す必要があります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。