税金の基礎
小規模企業共済は法人成り後も継続できる。1年以内に通算
個人事業主から小規模な会社の役員へ法人成りした場合、小規模企業共済は同一人通算で継続できます。加入資格、1年以内の期限、部分的な法人化との違いを解説します。
個人事業を完全に廃止して法人成りしても、設立した会社の役員として加入資格を満たせば、小規模企業共済は同一人通算で続けられます。
手続きでは、いったん生じた共済金等を請求せず、新しい会社役員の地位で共済契約を結び、個人事業主時代の掛金納付月数を通算します。申出は事由発生日から1年以内です。
「そのまま名義変更」ではなく同一人通算
法人成りすると、共済契約者本人は同じでも事業上の地位が「個人事業主」から「会社等役員」へ変わります。中小機構は、共済金等を請求せず、新旧契約の掛金納付月数を通算する手続きを同一人通算と呼んでいます。
次の条件をすべて確認します。
- 個人事業の廃止または法人成りという共済事由が発生した
- 新しい会社の役員として小規模企業共済の加入資格がある
- 共済金、準共済金、解約手当金を請求していない
- 事由発生日から1年以内に同一人通算を申し出る
- 中小企業退職金共済などの被共済者ではない
使用する中心書類は「納付月数通算申出書兼契約申込書(同一人通算用・様式小141)」です。法人成りを証明する書類や会社の登記事項証明書など、案内された添付書類をそろえ、登録取扱機関等を通じて手続きします。
「1年あるから後でよい」と考えず、個人事業の廃業と会社役員就任の書類がそろった段階で進めます。先に共済金等を請求すると、同じ掛金月数を通算する前提が崩れます。
新会社が加入資格を満たすかを先に確認
通常の株式会社や合同会社の役員なら誰でも通算できるわけではありません。役員として登記され、事業に従事し、会社が小規模企業の従業員数要件を満たす必要があります。
| 主たる事業 | 常時使用する従業員数の上限 |
|---|---|
| 建設、製造、運輸、不動産、農業など | 20人以下 |
| 宿泊・娯楽サービス | 20人以下 |
| 卸売、小売 | 5人以下 |
| 宿泊・娯楽以外のサービス | 5人以下 |
株式会社は取締役・監査役、合同会社は「業務執行社員」として登記されている社員などが対象です。相談役や顧問として実質的に経営していても、役員登記がなければ加入できません。
医療法人、一般社団法人、NPO法人など直接営利を目的としない法人の役員は、通常の会社役員と同じ加入資格が認められず、同一人通算できないと中小機構は案内しています。この場合は、個人事業廃止による共済金請求を検討します。
36か月を捨てずに96か月へつなぐ
月額7万円を個人事業主として36か月納付し、法人成り後の会社役員としてさらに60か月納付する例を scripts/shokibo-kyosai-houjinnari-tsusan.mjs で集計しました。
| 期間 | 掛金納付月数 | 掛金合計 |
|---|---|---|
| 法人成り前(個人事業主) | 36か月 | 2,520,000円 |
| 法人成り後(会社等役員) | 60か月 | 4,200,000円 |
| 同一人通算後の合計 | 96か月 | 6,720,000円 |
これは共済金の予定額ではなく、納付月数と実際の掛金だけの集計です。同一人通算の効果は、個人事業主時代の36か月を切らず、会社役員の期間へつなぐことにあります。
任意解約して新規加入すると、新しい契約の納付月数はゼロから始まります。任意解約は掛金納付月数240か月未満で元本割れするため、小規模企業共済のデメリットで受取額と税区分を先に確認してください。
掛金は役員個人の所得控除、会社の損金ではない
小規模企業共済の掛金月額は1,000円から7万円まで、500円単位で設定できます。支払った掛金は全額、契約者本人の小規模企業共済等掛金控除です。
月額7万円なら年額84万円を役員個人の所得から控除します。法人成り後に給与所得者になっても、加入資格のある会社役員として契約を継続していれば、年末調整または確定申告で控除します。
| 支払方法 | 会社側 | 役員個人側 |
|---|---|---|
| 役員の個人口座から支払う | 損金なし | 支払掛金を全額所得控除 |
| 会社が役員分を負担する | 役員給与の論点 | 給与課税後、掛金控除の対象 |
中小機構は、掛金を契約者本人の収入から納付し、事業上の損金または必要経費には算入できないと案内しています。法人の節税商品へ変わるわけではありません。
会社が掛金を代わりに払えば自動的に福利厚生費になる、という処理は避けます。国税庁は、使用者が負担した小規模企業共済等掛金は給与等として課税され、本人の掛金控除の対象になるとしています。役員給与の定期同額要件も含めて処理を確認します。
個人事業を一部残すなら同一人通算ではない
複数の個人事業のうち一部だけを会社化し、別の個人事業を継続する場合は扱いが違います。中小機構は、完全廃業ではないため共済金の請求事由が発生せず、原則として個人事業主の地位のまま契約を続けると案内しています。
| 法人成り後の状態 | 基本的な手続き |
|---|---|
| 個人事業を全部廃止し、加入資格のある会社役員になる | 1年以内に同一人通算 |
| 個人事業を一部残し、その事業を継続する | 個人事業主の地位のまま継続 |
| 新会社が人数要件を超える | 同一人通算不可、共済金等を検討 |
| 医療法人・一般社団法人等の役員になる | 同一人通算不可、共済金等を検討 |
税務署へ廃業届を出したかだけでなく、事業の実態が全部廃止か一部継続かを整理します。法人成り時の個人事業廃業手続きと日付をそろえてください。
法人成り前後のチェックリスト
- 個人事業を全部廃止するか、一部残すかを決める
- 新会社の主たる業種と常時使用する従業員数を確認する
- 自分が対象となる役員として登記されるか確認する
- 共済金等を先に請求しない
- 事由発生日と役員就任日を証明する書類をそろえる
- 事由発生から1年以内に小141で同一人通算を申し出る
- 掛金振替口座と月額を確認する
- 法人成り後も役員個人の所得控除として処理する
加入資格の判定は会社形態、業種、従業員、役員登記で変わります。境界にある場合は、共済金を請求する前に中小機構の窓口へ確認します。
まとめ
- 個人事業を完全廃止して加入資格のある会社役員になれば、同一人通算で共済を継続できます
- 同一人通算は共済金等を請求せず、事由発生日から1年以内に申し出ます
- 商業・一般サービスは従業員5人以下、建設・製造等は20人以下が基本要件です
- 個人事業を一部残す場合は、原則として個人事業主の地位のまま継続します
- 掛金は役員個人の所得控除であり、会社の損金ではありません
- 会社負担は役員給与として課税される問題があるため、個人契約として処理します
- 共済金等を請求する前に、通算可否を確認することが重要です
よくある質問
個人事業を法人成りしても小規模企業共済を継続できますか?
設立会社の役員として加入資格を満たせば、共済金等を請求せず、事由発生から1年以内に同一人通算を申し出ることで納付月数を引き継げます。
法人成り後も個人事業を一部残す場合は同一人通算しますか?
完全廃業でなければ請求事由が発生しないため、原則として個人事業主の地位のまま契約を継続し、同一人通算は行いません。
法人成り後の小規模企業共済掛金は会社の経費になりますか?
なりません。契約者本人の収入から払い、全額を本人の小規模企業共済等掛金控除にします。会社負担は給与課税の問題が生じます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。