税金の基礎

法人成りの車の名義変更、2026年4月に消えた税と残る自動車税

自動車税環境性能割は令和8年3月31日で廃止され、車を法人名義に移すときの取得時の課税はなくなりました。残るのは4月1日の所有者に年度分を全額課税する自動車税で、名義変更では月割になりません。年3.6万円が法人化の判定にどれだけ効くかを所得別に計算しました。

車を法人名義に移すときの税金は、2026年(令和8年)4月に1つ減りました。取得時にかかっていた自動車税環境性能割が令和8年3月31日をもって廃止されたためです。名義変更は税務上「所有権の取得」に当たるので、それまでは法人成りの引継ぎでも課税対象になり得ました。

残っているのは保有に対する自動車税です。こちらは4月1日現在の所有者に年度分を全額課税する仕組みで、名義変更では月割になりません。つまり名義変更の日付をいつに置いても年額は動かず、意味を持つのは4月1日をまたぐかどうかの一点だけです。

環境性能割は令和8年3月31日で廃止された

自動車税環境性能割は、自動車の燃費性能等に応じて、三輪以上の小型自動車と普通自動車を取得したときに課税される税でした。東京都主税局は「自動車の取得」を自動車の所有権の取得と説明しており、納める方は「自動車を取得した方(個人・法人は問いません。)」とされていました。個人事業主が使っていた車を法人名義へ移す移転登録も、この取得に当たります。

税額は取得価額(1,000円未満切り捨て)に税率を掛けて計算し、取得価額が50万円以下のときは課税されませんでした。中古車の取得価額は、初回新規登録を受けたときの通常の取得価額に、初回新規登録からの経過年数に応じた残価率を乗じた金額とされていました。導入時(2019年10月1日)の自家用乗用車の税率は、燃費基準の達成度に応じて非課税・1.0%・2.0%・3.0%の4段階だったと総務省は説明しています。

ここでの50万円は、廃止前の環境性能割の免税点です。後半で出てくる譲渡所得の特別控除50万円とは別の制度なので、混同しないでください。

令和8年3月31日をもって、自動車税環境性能割と軽自動車税環境性能割はどちらも廃止されました。すでに取得した分については、東京都主税局は廃止後も修正申告や期限後申告を受け付けるとしています。納めた税額が過大だった場合の更正請求ができる期間は、登録日から5年間です。

名称も「自動車税種別割」から「自動車税」に戻った

環境性能割の廃止に合わせて、名称も変わりました。東京都主税局は令和8年4月1日より、自動車税種別割は自動車税へ名称が変更されたと案内しています。2019年10月に「自動車税」が「自動車税種別割」へ変わり、取得時の環境性能割と保有時の種別割の2本立てになっていたものが、取得時の課税がなくなったことで1本に戻った形です。

読者にとっての実害はありませんが、検索で出てくる記事の年代を見分ける手がかりにはなります。「種別割」という語で税額を説明している記事は、2019年10月から2026年3月までの期間に書かれたものです。

名義変更では月割にならない

自動車税を納めるのは、4月1日現在、自動車検査証(車検証)に所有者として登録されている人です。東京都の場合、5月上旬に納税通知書が送られ、納期限は5月末日です。年度の途中で登録が動いた場合の扱いは、登録の種類によって分かれます。

登録の状況課税の取り扱い
新規登録月割課税(登録の月の翌月から年度末までの月数)
廃車(抹消登録)月割課税(4月から抹消登録の月までの月数)
所有者変更・転出・転入年課税(4月1日現在の所有者にその年度分を全額課税)

出典:東京都主税局「自動車税」

法人成りでの名義変更は、この表の3行目に当たります。**4月1日に個人が所有していれば、その年度の自動車税は個人が全額納めます。**7月に法人名義へ移しても、個人に還付はありませんし、法人に月割で課税されることもありません。法人が納税義務者になるのは、翌年度の4月1日を所有者として迎えてからです。

月割の還付があるのは抹消登録のときだけで、名義を移す移転登録では還付されません。売買の当事者間で日割り精算をするかどうかは契約の問題であって、課税そのものが動くわけではないという点が要注意です。

効くのは日付ではなく「4月1日をまたぐか」

法人成りのコストは、日付の置き方で動くものが多くあります。社会保険料は月単位なので、月末に設立すると資格取得月の1か月分が丸ごと乗ります(法人成りの月の保険料は国保か社保か)。法人住民税の均等割も、事業年度の月数で按分されます。

自動車税はこの型に当てはまりません。賦課期日が4月1日の一点に固定されているので、3月31日までに法人名義へ移せば翌年度から法人が納税義務者になり、4月2日に移せばその年度は個人が全額を負担します。**1日の違いで、法人が自分の税として納める自動車税が0円と1年分に分かれます。**その間の364日は、どこで移しても結果が同じです。

賦課期日が4月1日という点は軽自動車税も同じで、納税義務者は軽自動車等の所有者だと総務省は説明しています。登録車か軽かにかかわらず、意識すべき日付は1つです。

自動車税1年分は、判定が僅差な帯でだけ重い

では、自動車税の1年分はどの程度の金額なのか。東京都主税局の税率表では、自家用乗用車で令和元年10月1日以後に初回新規登録を受けたものの年額は、1.5リットル超2リットル以下で36,000円、2リットル超2.5リットル以下で43,500円です(グリーン化特例の適用を受けない場合)。

この3.6万円が、法人化の判定に対してどれだけの重さを持つかを計算しました。判定ツールと同じエンジンで、事業所得別の実質差額を出し、そこに占める割合を並べたものです。

事業所得実質差額(2年目以降)実質差額(初年度)自動車税3.6万円が差額に占める割合
400万円−48.6万円−58.6万円7%
600万円−37.6万円−47.6万円10%
800万円−24.1万円−34.1万円15%
1,000万円−14.7万円−24.7万円24%
1,200万円−6.6万円−16.6万円55%
1,500万円+23.9万円+13.9万円15%
1,800万円+47.0万円+37.0万円8%
2,100万円+80.6万円+70.6万円4%
2,500万円+136.1万円+126.1万円3%
3,000万円+197.2万円+187.2万円2%

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 初年度の差額は合同会社の設立費用10万円を差し引いた後の金額 ※ 自動車税3.6万円は自家用乗用車(1.5リットル超2リットル以下・令和元年10月1日以後初回新規登録)の年額

右端の列の動きが直感と逆になります。金額が大きい人ほど車の税金は軽く感じられそうですが、実際は**事業所得1,200万円で55%と最も重く、400万円では7%、3,000万円では2%**にとどまります。

理由は分母にあります。実質差額は損益分岐点に近づくほど0へ寄るので、分岐点の手前で分母が薄くなり、同じ3.6万円の比率が跳ね上がります。この条件では2年目以降の差額が0を超えるのが事業所得1,265万円、初年度(設立費用10万円を含む)では1,364万円です。1,200万円はちょうどその手前で、差額が6.6万円しか残っていません。

**車1台の自動車税が判定に効くのは、判定が僅差な人だけです。**差が数十万円ついている人にとっては誤差で、迷っている人にとっては無視できない、という分かれ方をします。

年数万円の固定費は、分岐点を10倍動かす

もう1つ、法人側にだけ固定費が乗る場合の感度も測りました。法人名義にすると、自動車保険を法人契約に切り替える、駐車場を法人で借りるなど、個人のままなら発生しなかった費用が出ることがあります。その規模感を、自動車税の税率表を目盛りとして使って計算したものが次の表です。

自家用乗用車の総排気量自動車税(年額)分岐点既定との差
1リットル以下・電気自動車25,000円1,290万円+25万円
1リットル超〜1.5リットル以下30,500円1,296万円+31万円
1.5リットル超〜2リットル以下36,000円1,301万円+36万円
2リットル超〜2.5リットル以下43,500円1,308万円+43万円
3リットル超〜3.5リットル以下57,000円1,321万円+56万円

※ 分岐点は、年額分だけ法人側に固定費が増えたものとして1万円刻みで再計算した事業所得。既定の分岐点は1,265万円 ※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準

年3.6万円で分岐点が36万円、年5.7万円で56万円うしろへ動きます。おおむね10倍の増幅です。これは分岐点付近で実質差額の傾きが緩いためで、税理士報酬のしきい値を動かしたときにも同じ構造が出ています(法人の決算申告を自分でやると分岐点はどこまで動くか)。

ただし、自動車税そのものが純増になるわけではありません。事業に使う車なら、個人事業主のままでも必要経費になります(社用車を経費にすると法人化の分岐点はどう動くか)。この表は「法人側にだけ年◯万円が乗ったら分岐点がどこへ動くか」を測る目盛りとして読んでください。

個人側に残るのは譲渡所得と消費税

取得時の課税が消えたのは法人側の話です。車を法人へ売る個人の側では、譲渡所得の計算が残ります。

国税庁は、譲渡所得の対象となる資産に機械器具などを挙げる一方、課税されない譲渡所得として「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得」を挙げています。事業の必要経費として減価償却してきた車は、この生活用動産とは区分が異なります。

総合課税の譲渡所得は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を引き、さらに特別控除50万円を差し引いて計算します。所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、その2分の1が総合課税の対象です。5年以内なら短期譲渡所得で、全額が対象になります。

価格の決め方には制限があります。国税庁は、法人に対して時価の2分の1を下回る価額で売った場合、時価を収入金額として譲渡所得を計算するとしています(所得税法第59条、同法施行令第169条)。帳簿価額が小さいからといって形式的に安く売ると、時価で課税される可能性があります。時価の根拠の残し方と消費税の扱いは法人成りの資産引継ぎ。車・パソコンは時価で売るのかで詳しく扱っています。法人側で引き継いだ車を何年で償却するかは4年落ちの中古車は耐用年数2年を参照してください。

名義変更をしないまま放置すると

東京都主税局は、譲り受けや廃車の登録・申告をしないと「前の所有者に引き続き課税されることがあります」と注意を促しています。法人成りの前後は登記や許認可の手続きが立て込むため、車の移転登録が後回しになりがちです。

名義が個人のまま、費用だけを法人で処理している状態は、経費の業務関連性の説明が難しくなります。名義を移さずに法人へ貸す形を選ぶなら、使用料を決めて契約を残すという別の整理になります。どちらの形にするかを引継ぎの前に決めておくと、年度をまたいでから辻褄を合わせずに済みます。

まとめ

  • 自動車税環境性能割は令和8年3月31日で廃止され、2026年4月以降に車を法人名義へ移しても取得時の課税はありません
  • 令和8年4月1日から、自動車税種別割は自動車税へ名称が戻りました
  • 自動車税は4月1日現在の所有者に年度分を全額課税し、名義変更では月割にも還付にもなりません。効くのは4月1日をまたぐかどうかの一点です
  • 自動車税3.6万円が実質差額に占める割合は、事業所得1,200万円で55%、400万円で7%、3,000万円で2%。判定が僅差な帯でだけ重くなります
  • 個人側では譲渡所得の計算が残ります。法人へ時価の2分の1未満で売ると、時価で課税される可能性があります

ここで使った数字は、経費200万円・東京23区・独身という前提で計算した概算です。前提が変われば分岐点も自動車税の重みも動きます。計算の前提は計算の根拠にまとめてあるので、一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

2026年4月より前に名義変更した分の環境性能割はどうなりますか

東京都主税局は、廃止後も自動車税事務所などで修正申告や期限後申告を受け付けるとしています。納めた税額が過大だった場合の更正請求も、登録日から5年間は可能とされています。

軽自動車を法人名義にする場合も同じですか

軽自動車税環境性能割も令和8年3月31日で廃止されています。軽自動車税の賦課期日も4月1日で、納税義務者は軽自動車等の所有者だと総務省は説明しています。4月1日をまたぐかどうかで年度分の納税義務者が決まる点は、登録車と同じ構造です。

車を個人名義のままにして、法人から使用料を払う方法もありますか

名義を移さずに法人へ貸す形にすると、受け取る使用料は個人の所得になります。どちらが有利かは走行距離や車両の残存価額で変わるため、条件を決めてから概算で比べる形になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。