社会保険
法人成りの月の保険料は国保か社保か。月末設立で1か月分重くなる
保険料は月単位で、健康保険・厚生年金は資格を取得した月から、国保は喪失した月の前月までかかります。法人成りの月を二重に払うことはありませんが、どちらで払うかは資格取得日がその月に入るかで決まり、事業所得800万円なら1か月で6.8万円違います。均等割と合わせた設立日の置き方も試算します。
保険料は日割りではなく月単位です。法人成りした月については、健康保険・厚生年金は資格を取得した月から、国民健康保険はやめた月の前月分までかかるので、同じ月を両方で払うことはありません。国民年金も、厚生年金に加入して第2号被保険者になれば別に払う必要がなくなります。
ただし、その月を国保・国民年金で払うか、健康保険・厚生年金で払うかで金額は変わります。事業所得800万円の人が役員報酬を月54万円にする場合、1か月分で健康保険・厚生年金のほうが6.8万円高くなります。資格取得日が月末1日だけその月に入るかどうかで、この1か月分が動きます。
どの月をどちらで払うかは「月単位」で決まる
3つの保険料の数え方を並べると次のとおりです。
| 保険 | いつから・いつまで | 根拠 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 資格を取得した月から。喪失日の属する月の前月分まで | 日本年金機構 FAQ |
| 国民健康保険 | 資格が発生した月から。やめた月の前月分まで | 新宿区・横浜市 |
| 国民年金(第1号) | 厚生年金に加入して第2号になると、厚生年金の保険料以外は不要 | 日本年金機構 用語集 |
日本年金機構は、入社日に資格を取得し、保険料は月単位で計算するので資格取得した月の保険料から支払う必要があるとしています。横浜市は、国民健康保険をやめた場合の保険料はやめた月の前月分までと案内しています。
たとえば7月中に健康保険・厚生年金の資格を取得すると、7月は健康保険・厚生年金、国保と国民年金は6月分までです。7月1日でも7月31日でも、7月は健康保険・厚生年金の1か月分になります。7月31日の1日だけでも日割りにはなりません。
反対に、資格取得日が8月1日なら、7月は国保と国民年金を払い、健康保険・厚生年金は8月からです。
1か月分の保険料はどれだけ違うか
法人成りの月1か月分を、国保+国民年金で払う場合と、健康保険・厚生年金で払う場合を比べました。健康保険・厚生年金は、当サイトの最適役員報酬に対する本人負担と会社負担の合計です。
| 事業所得 | 役員報酬 | 標準報酬月額 | 国保(月) | 国民年金(月) | 個人側の計 | 健保・厚年 本人負担 | 会社負担 | 会社側の計 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 月28万円 | 28万円 | 31,334円 | 17,920円 | 49,254円 | 39,732円 | 40,740円 | 80,472円 | 31,218円 |
| 600万円 | 月42万円 | 41万円 | 48,967円 | 17,920円 | 66,887円 | 58,179円 | 59,655円 | 117,834円 | 50,947円 |
| 800万円 | 月54万円 | 53万円 | 66,601円 | 17,920円 | 84,521円 | 75,207円 | 77,115円 | 152,322円 | 67,801円 |
| 1,000万円 | 月54万円 | 53万円 | 79,663円 | 17,920円 | 97,583円 | 75,207円 | 77,115円 | 152,322円 | 54,739円 |
| 1,200万円 | 月54万円 | 53万円 | 80,000円 | 17,920円 | 97,920円 | 75,207円 | 77,115円 | 152,322円 | 54,402円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | 53万円 | 80,000円 | 17,920円 | 97,920円 | 75,207円 | 77,115円 | 152,322円 | 54,402円 |
※ 東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)度の料率 ※ 国保は年額÷12(前年も同じ事業所得だった前提)。役員報酬は当サイトの最適報酬、会社負担には子ども・子育て拠出金を含む ※ 差=切替月を健保・厚年で払う場合に増える額(プラスなら健保・厚年のほうが高い)
差が最も大きいのは事業所得800万円の6.8万円で、1,000万円からは5.4万円台に縮みます。役員報酬の最適額は月54万円で止まるので健康保険・厚生年金の側は横ばいですが、国保は所得とともに上がり、1,200万円で賦課限度額に達するためです。
健康保険・厚生年金の1か月分には、会社負担の7.7万円(事業所得800万円)が含まれます。会社負担分は法人の損金になり、厚生年金の加入月が1か月増えれば将来の老齢厚生年金にも反映されます。単純な負担増ではありませんが、その月の現金の出方としてはこの差があります。
設立日の置き方で、均等割と保険料が同時に動く
役員の資格取得日を設立日と同じ日に置いた場合、設立日は法人住民税の均等割にも効きます。均等割は第1期の月数で月割され、1か月に満たない端数は切り捨てです(東京都主税局)。3月決算・事業所得800万円で比べました。
| 設立日 | 第1期の月数(均等割) | 第1期の均等割 | 7月分の保険料 | 7月分の内訳 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 7月1日 | 9か月 | 52,500円 | 152,322円 | 健保・厚年(労使合計) | 204,822円 |
| 7月2日 | 8か月 | 46,600円 | 152,322円 | 健保・厚年(労使合計) | 198,922円 |
| 7月31日 | 8か月 | 46,600円 | 152,322円 | 健保・厚年(労使合計) | 198,922円 |
| 8月1日 | 8か月 | 46,600円 | 84,521円 | 国保+国民年金 | 131,121円 |
※ 均等割は年額×月数÷12(1か月未満の端数切捨て、100円未満切捨て)。年額は東京23区の最小区分 ※ 7月分の保険料は上の表と同じ前提。8月以降と6月以前はどの設立日でも同じ
読み取れることは2つです。
- 7月2日から7月31日までは、均等割も保険料も同じ。 7月2日設立でも端数が切り捨てられて第1期は8か月になり、7月は健康保険・厚生年金の月になります
- 8月1日にずらすと、均等割は変わらずに7月分の保険料だけが6.8万円下がる。 月末設立と翌月1日設立の違いは、1日の差で保険料1か月分です
7月1日設立は、7月2日以降より均等割が5,900円多くなります。「月初に設立すると均等割が1か月分増える」という話と、「月末に設立するとその月の社会保険料がかかる」という話は、同じ設立日の選び方の裏表です。
事業所得400万円でも順序は同じで、7月31日設立と8月1日設立の差は3.1万円でした。
資格取得日は届出で選ぶ日ではない
この表は、役員の資格取得日を設立日と同じ日に置いた場合の比較です。健康保険・厚生年金の資格取得日は、会社に使用されるようになった日という事実で決まり、届出書の日付を好きに選べるものではありません。役員報酬をいつから支払うかも含めて、設立前に年金事務所で確認しておきます。
役員報酬がない期間は、そもそも被保険者にならない扱いがあります(役員報酬0円と社会保険)。設立月の報酬をどうするかは、定期同額給与の開始時期とも関係します(役員報酬の期中変更)。
国保をやめる手続きと精算
健康保険・厚生年金に加入しても、国保は自動的には終わりません。自分で資格喪失の届出をする必要があります。大阪市は、資格喪失の届出後に資格喪失日に遡って保険料を計算し直すと案内しています。届出が遅れて国保料を払い続けていた月の分は、この再計算で精算されます。
国民年金は、厚生年金に加入すると第2号被保険者に切り替わり、厚生年金の保険料以外に負担する必要はありません。口座振替や前納で国民年金を払っている場合は、切替月以降の分の扱いを年金事務所で確認します。
届出の期限と窓口は法人成りの廃業手続きにまとめています。
同じ月に加入して抜けた場合
日本年金機構は、厚生年金の資格を取得した月にその資格を喪失した場合も、その月の厚生年金保険料が必要としています。ただし、同じ月にさらに国民年金(第2号を除く)などに加入した場合は、先に喪失した厚生年金の保険料は不要という例外があります。設立直後に役員を退くような場面でなければ、法人成りで出てくることはまずありません。
移行年の差なので、判定ツールには入っていない
この1か月分の違いは、法人成りの年にだけ出る移行の費用です。判定ツールは通常年の比較なので入っていません(計算方法)。年の途中で法人化する時期の考え方は法人化のタイミングで扱っています。
設立日を決める前に、まず自分の売上と経費で通常年の差額を確かめ、そのうえで設立日と役員報酬の開始日を1か月単位で並べてみてください。
まとめ
- 保険料は月単位。健康保険・厚生年金は資格取得月から、国保はやめた月の前月まで、国民年金は第2号になれば不要
- 法人成りの月を二重に払うことはないが、その月をどちらで払うかで、事業所得800万円なら6.8万円違う
- 差は800万円で最大。1,000万円以上は国保が賦課限度額に近づくため5.4万円台に縮む
- 3月決算なら7月2日〜7月31日設立は均等割も保険料も同じ。8月1日にずらすと保険料だけ1か月分下がる
- 資格取得日は事実で決まるので、報酬の開始日とあわせて設立前に年金事務所で確認する
よくある質問
法人成りした月は、国保と社会保険の両方を払うことになりますか?
同じ月を両方で払うことはありません。健康保険・厚生年金は資格を取得した月から、国民健康保険はやめた月の前月分までなので、資格取得日がある月は健康保険・厚生年金だけになります。国民年金も、厚生年金に加入して第2号被保険者になると別に保険料を払う必要はありません。
月末に社会保険に加入しても、その月の保険料は1か月分かかりますか?
かかります。保険料は日割りではなく月単位で、日本年金機構は資格取得した月の保険料から支払う必要があるとしています。月末1日だけの加入でも、その月は1か月分です。
国保を先払いしていた分はどうなりますか?
国保をやめる手続きをすると、資格喪失日に遡って保険料が計算し直されます。やめた月以降の分を払っていれば、過払いとして精算されます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。