設立の手続き

フランチャイズ加盟店の法人成り。加盟金の残りとロイヤリティの分岐

結論

加盟金のうちノウハウの提供を受ける対価は、20万円以上なら繰延資産として5年で償却します。法人成りで個人の加盟契約を終えると、その年分までの償却費に加えて、未償却残高を資産損失としてその年の必要経費にできます(所得税法51条1項・同法施行令140条)。法人化の損益分岐は事業所得1,266万円で、ロイヤリティが売上の5%、その他の経費が70%の店なら売上5,064万円に当たります。

  • 所得税基本通達50-3は「ノーハウの頭金等」の償却期間を5年とする。契約が5年未満で、更新のたびに一時金を払うことが明らかなら、その契約期間
  • 売上5,000万円・その他の経費率70%の店で、ロイヤリティが3%なら法人化の実質差額は年+8.6万円、5%なら−1.5万円(東京23区・独身)
  • 法人で加盟金を払い直す場合、事業所得1,500万円では加盟金100万円が実質差額の4.2年分に当たる

フランチャイズ加盟店の法人成りでは、普通の個人事業主にはない論点が2つ加わります。加盟時に払った加盟金の償却がまだ残っていることと、毎月払うロイヤリティで事業所得が圧縮されていることです。

前者は「個人の加盟契約を終えて法人で結び直すのか、契約上の地位を法人へ移すのか」で処理が分かれます。後者は、法人化の損益分岐を売上に直すと、同じ所得でも必要な売上が大きく変わることを意味します。順に、政令・通達と当サイトの計算エンジンで確かめます。

加盟金は「ノウハウの頭金等」として5年で償却する

所得税法施行令7条1項3号ハは、「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」で支出の効果が1年以上に及ぶものを繰延資産としています。所得税基本通達2-28は、ノーハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金がこれに当たるとしています。法人も同じで、法人税法施行令14条1項6号ハと法人税基本通達8-1-6が同じ内容を定めています。

本部の経営ノウハウの提供を受けるために払う加盟金は、この「ノウハウの頭金等」の典型です。償却期間は通達が決めています。

項目個人法人
繰延資産になる根拠所得税法施行令7条1項3号ハ、所得税基本通達2-28法人税法施行令14条1項6号ハ、法人税基本通達8-1-6
償却期間5年(所得税基本通達50-3)5年(法人税基本通達8-2-3)
契約が5年未満で、更新時にまた一時金を払うことが明らかな場合その契約期間の年数同左
20万円未満の場合支出した年に全額必要経費(所得税法施行令139条の2)損金経理で支出した事業年度に全額損金(法人税法施行令134条)

20万円未満かどうかは、所得税基本通達50-7により契約ごとに支出する金額で判定します。個人の償却費は月割で、繰延資産の額を60か月で割り、その年に業務を行った月数を掛けます(所得税法施行令137条1項2号)。

加盟時に払う金銭を性質で分ける

加盟時の支払いがすべて繰延資産になるわけではありません。返還される保証金は預け金なので償却しません。通達のただし書きにより、頭金のうち使用料(ロイヤリティ)に充当される部分は前払費用として処理できます。店舗の備品代は、減価償却資産として別に扱います。

分けるための材料は、本部から受け取る書面にあります。中小小売商業振興法11条は、商標などを使わせて加盟金・保証金を徴収するチェーン(特定連鎖化事業)に対し、契約前に書面を交付して説明することを義務づけています。同法施行規則11条は、加盟時に徴収する金銭について**「加盟金、保証金、備品代その他の徴収する金銭の性質」と「返還の有無及びその条件」**を書くよう定めています。この書面の内訳が、そのまま税務の区分の出発点になります。

ただし、この法律の対象は、主として中小小売商業者に商品を販売・あっせんし、経営指導を行う連鎖化事業です。サービス業のフランチャイズでは同じ書面が交付されないことがあるので、その場合は契約書で金銭の性質を確かめます。

法人成りで個人の契約が終われば、残りは廃業年の必要経費

法人成りで加盟契約をどうするかは、本部の約款しだいです。施行規則11条は、書面に「契約更新の条件及び手続き」「契約解除の要件及び手続き」を記載するよう定めています。法人への名義変更の扱いが書かれていなければ、本部に確認するしかありません。

税務上は、大きく2つの道に分かれます。

法人成りでの加盟契約個人の加盟金の未償却残高法人側
個人の契約を終え、法人で新たに契約する廃業年の償却費に加え、残高を資産損失として廃業年の必要経費にする(所得税法51条1項・同法施行令140条)新たに払う加盟金を繰延資産として5年で償却
契約上の地位を法人へ移す対価を受けて移すなら資産の譲渡。51条の損失には当たらない地位を引き継ぐ対価の扱いを個別に確認

所得税法51条1項は、事業用の固定資産「その他これに準ずる資産」の除却などで生じた損失を、損失が生じた年の必要経費にするとしています。所得税法施行令140条は、この「準ずる資産」を事業に係る繰延資産のうちまだ必要経費に算入されていない部分と定めています。個人の加盟契約が終われば、加盟金で受けていた効果もそこで終わるので、残りはこの規定で落とすことになります。ただし、51条1項は資産の譲渡により、またはこれに関連して生じた損失を除いています。地位を有償で法人に移す場合は、この規定ではなく譲渡として扱いを考える必要があります。

償却途中で法人成りした場合の残高

仮に、加盟金150万円を4月に払って開業し、3年目の6月末で個人事業を廃止した場合を当サイトのスクリプトで計算しました。

年業務を行った月数必要経費になる償却費年末(廃業時)の未償却残高
1年目(4月に支払い・開業)9か月22.5万円127.5万円
2年目12か月30.0万円97.5万円
3年目(6月末で個人事業を廃止)6か月15.0万円82.5万円

※ 加盟金150万円は仮の金額で、相場を示すものではありません。5年(60か月)で償却し、月数は暦に従って1か月未満の端数は1か月とします(所得税法施行令137条2項)

個人の契約を終える場合、3年目は償却費15.0万円と未償却残高82.5万円の合計97.5万円が必要経費の候補になります。翌年以降は個人の事業所得がないので、廃業年の申告で落とし忘れると持ち越す先がありません。一括償却資産や開業費の残りも同じ年に精算するので、まとめて確認します(法人成りの年の一括償却資産と開業費)。返還される加盟金がある契約なら、その部分の扱いも合わせて確認します。

取引先や賃貸借の契約を法人に移す一般的な方法と、承諾が取れない場合の影響は法人成りの契約の地位移転で扱っています。

法人で加盟金を払い直すと、差額の何年分が消えるか

個人の契約を終えて法人で新たに契約する場合、加盟金を改めて求められるかどうかも約款によります。求められるなら、その金額は法人化で得られる年間の差額と比べる必要があります。

法人化の実質差額(税理士報酬の差を引いた3年目以降の値)で、仮の加盟金を割った年数です。

事業所得実質差額(定常・年)加盟金100万円加盟金200万円加盟金300万円
1,500万円+23.9万円4.2年分8.4年分12.6年分
2,000万円+67.3万円1.5年分3.0年分4.5年分
2,500万円+136.1万円0.7年分1.5年分2.2年分

※ 加盟金の額は仮の値。加盟金の償却による法人税の減少は含めない。東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・役員報酬は手取り最大の額。2026年(令和8年)分基準

事業所得1,500万円の帯では、加盟金100万円の払い直しで4年分を超える差額が消えます。払い直した加盟金は法人で5年かけて損金になるので、実際の負担はこれより小さくなります。それでも、損益分岐の近くにいる加盟店ほど、再契約の条件が判定を左右します。

ロイヤリティを入れると、損益分岐は売上でこう変わる

ロイヤリティは毎年の経費なので、法人化の損益分岐を「事業所得」で見る限り、ほかの経費と変わりません。当サイトの計算では、東京23区・独身・インボイス登録済みの損益分岐は事業所得1,266万円で、経費の額によって動きません。

違いが出るのは、これを売上に直したときです。加盟店は仕入原価や人件費に加えてロイヤリティを払うので、同じ所得に届くのに必要な売上が大きくなります。

ロイヤリティ(売上比)その他の経費率60%その他の経費率70%その他の経費率80%
0%3,165万円4,220万円6,330万円
3%3,422万円4,689万円7,447万円
5%3,617万円5,064万円8,440万円
10%4,220万円6,330万円12,660万円

※ 表の値は、事業所得が1,266万円に届くのに必要な年間売上(税抜)。その他の経費率は仕入原価・人件費・家賃などロイヤリティ以外の経費の売上比。条件は上の表と同じ

その他の経費率が80%の店では、ロイヤリティが5%なら売上8,440万円、10%なら1億2,660万円でようやく損益分岐です。「年商5,000万円を超えたら法人化」といった売上基準の目安は、利益率の低い加盟店には当てはまりません。

売上5,000万円の店で比べる

売上5,000万円、ロイヤリティ以外の経費を70%に固定し、ロイヤリティ率だけを変えました。

ロイヤリティ(売上比)ロイヤリティ額事業所得個人の手取り法人化の手取り実質差額(定常)
0%0万円1,500万円928.2万円972.0万円+23.9万円
3%150万円1,350万円851.2万円879.8万円+8.6万円
5%250万円1,250万円799.9万円818.4万円−1.5万円
8%400万円1,100万円718.4万円725.3万円−13.1万円
10%500万円1,000万円657.1万円662.4万円−14.7万円

※ 実質差額は税理士報酬の差を引いた3年目以降の値。条件は上の表と同じ

同じ売上でも、ロイヤリティ率が3%と5%の間で実質差額の符号が入れ替わります。ロイヤリティ率は法定開示書面の「加盟者から定期的に徴収する金銭」の項目(算定方法・性質・時期)に書かれています(施行規則11条)。自分の店の率で、売上ではなく事業所得から判定してください。

消費税では、加盟金もロイヤリティも課税仕入れ

消費税法基本通達5-4-2は、商標などの工業所有権等の使用や、業務に繰り返し使えるまでに形成されたノウハウの提供を「資産を使用させる一切の行為」、つまり資産の貸付けに当たるとしています。国内の本部に払うロイヤリティは課税仕入れです。

加盟金は所得税・法人税では5年で償却しますが、消費税は違います。消費税法基本通達11-3-4は、繰延資産に係る課税仕入れは課税仕入れを行った日の課税期間に仕入税額控除するとしています。原則課税で申告していれば、払った期に加盟金の消費税をまとめて控除します。

簡易課税を選んでいる場合は、仕入税額を売上から計算するので、加盟金やロイヤリティの額は納税額に影響しません。法人成りの直後に法人で加盟金を払い直す場合、その期が原則課税か簡易課税か、免税事業者かで、加盟金の消費税が控除できるかが変わります。インボイス登録と設立直後の免税の関係は、判定ツールでも条件として入れられます。

まとめ

  • 加盟金のうちノウハウの提供を受ける対価は、20万円以上なら繰延資産で償却期間5年。20万円未満の判定は契約ごと
  • 法人成りで個人の加盟契約を終えるなら、廃業年の償却費に加えて未償却残高をその年の必要経費にできる。地位を有償で法人に移す場合は譲渡として扱いを考える
  • 法人で加盟金を払い直すと、事業所得1,500万円では100万円で実質差額の4.2年分が消える
  • 損益分岐は事業所得1,266万円で変わらないが、売上に直すとロイヤリティ率とその他の経費率で3,165万円から1億円超まで開く
  • 加盟金の消費税は払った期に一括で控除する(原則課税の場合)。簡易課税なら納税額に影響しない

ロイヤリティを払った後の事業所得で、自分の店の条件を判定ツールに入れて確かめてください。

よくある質問

加盟金を分割で払う契約の場合、総額を一度に繰延資産にできますか?

個人の場合、所得税基本通達50-5は、繰延資産となる費用を分割で払う場合は総額が確定していても未払金に計上して償却することはできないとしています。ただし分割で払う期間がおおむね3年以内の短期間なら、総額を計上して償却を始めることができます。

加盟金の一部が最初の数か月分のロイヤリティに充てられる契約はどうなりますか?

所得税基本通達2-28・法人税基本通達8-1-6のただし書きにより、頭金のうち使用料に充当される部分や、頭金の支払いで使用料を払わない期間に対応する部分は、繰延資産ではなく前払費用として処理できます。

保証金も加盟金と同じように償却しますか?

契約終了時に返還される保証金は預け金なので、償却も必要経費算入もしません。返還されない部分があれば、その部分は加盟金と同じく性質に応じて扱いを判断します。法定開示書面では金銭ごとに性質と返還の有無を記載することになっています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。