設立の手続き

源泉所得税の納付遅れ、不納付加算税は5%と10%のどちらか

源泉所得税の納付が遅れると不納付加算税がかかります。割合は10%と5%の2通りで、1か月以内に納めれば徴収されない場合もあります。令和8年分の税額表を使い、役員報酬の水準ごとに毎月納付と納期の特例で負担がどう変わるかを計算しました。

源泉所得税の納付が法定納期限を1日過ぎると、不納付加算税がかかります。割合は納付税額の10%、税務署の告知を受ける前に自分で納めたときは5%です。遅れた日数では変わりません。

ただし、告知を受ける前に自分で納め、その遅れが1か月以内で、直前1年間に告知も納付遅れもなければ、不納付加算税は徴収されません。役員報酬が月54万円の一人会社では、納期の特例の半年分13万3,860円を1日遅れて納めた場合の負担が、この条件を満たすかどうかで0円と1万3,000円に分かれます。

割合を分けるのは、日数ではなく「告知の前か後か」

不納付加算税の計算式は次のとおりです。

  • 通常の場合:納付税額または納税の告知に係る税額 × 10%
  • 調査による納税の告知の予知なしに納付した場合:納付税額 × 5%

計算の基礎となる税額は1万円未満の端数を切り捨て、全額が1万円未満なら全額を切り捨てます(国税通則法118条3項)。出てきた加算税の額が5,000円未満のときは、その全額を切り捨てます(同法119条4項)。

5%が使えるのは、納税の告知を受けることなく法定納期限後に自主的に納付し、かつその納付が調査による告知を予知してされたものでない場合です。国税庁が示している加算税賦課決定通知書の様式にも、この区分がそのまま書かれています。

予知に当たるかどうかの線引きは、事務運営指針にあります。臨場調査や取引先への反面調査など、調査があったことを知った後の自主納付は、原則として「予知してされたもの」に当たります。一方で、次の3つは原則として予知に当たりません。

  • 臨場のための日時の連絡を行った段階で自主納付された場合
  • 納付確認(臨場によるものを除く)を行った結果、自主納付された場合
  • 説明会等により一般的な説明を行った結果、自主納付された場合

税務署から電話で「納付はお済みですか」と確認を受けて気づき、その場で納めたケースは2番目に当たります。連絡が来た後でも、5%で済む場面があるということです。

なお、事実を仮装または隠蔽していた場合は、不納付加算税に代えて35%の重加算税が徴収されます。逆に、不納付加算税が徴収されない場合には重加算税も徴収されません(同法68条3項の括弧書)。

1か月以内に納めれば、徴収されない場合がある

源泉徴収した所得税が納税の告知を受けることなく法定納期限後に自主的に納付された場合で、次の両方を満たすときは、不納付加算税は徴収されません(同法67条3項)。

  1. その国税が法定納期限から1か月を経過する日までに納付されたこと
  2. 法定納期限までに納付する意思があったと認められる一定の場合に当たること

2の「一定の場合」は政令で決まっていて、その納付に係る法定納期限の属する月の前月の末日から起算して1年前までの間に法定納期限が到来する源泉所得税について、次のどちらにも当たらないことをいいます(国税通則法施行令27条の2第2項)。

  • 納税の告知を受けたことがある場合
  • 納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付された事実がある場合

起算日の読み方は事務運営指針に例が置かれています。「前月の末日」が6月30日である場合、「一年前の日」は前年の6月30日です。7月10日納期の分を遅れて納めたなら、前年6月30日以降に一度も遅れがなければこの要件を満たします。

法人成りの1年目は、この要件を自然に満たす

設立したばかりの会社には、過去1年間に法定納期限が到来した源泉所得税そのものが存在しません。告知を受けたことも、遅れて納めた事実もないため、上の2つのいずれにも当たりません。設立1年目に1回だけ納付を落とした場合は、告知を受ける前に自分で気づいて1か月以内に納めれば、不納付加算税は徴収されないことになります。

この扱いには経緯があります。平成18年12月25日の改正前は、事務運営指針が「偶発的納付遅延等によるものの特例」として同じ内容を定めており、そこには「新たに源泉徴収義務者となった者の初回の納期に係るもの」という項目が明示されていました。平成18年度の税制改正で法律の側に規定が移ったため、事務運営指針の該当項は廃止されています。条文には「初回」の文字は残っていませんが、直前1年の実績で判定する仕組みのため、結果として同じところに落ち着きます。

ただし免除されるのは加算税だけです。延滞税は別に計算されます。

役員報酬別に見ると、納期の特例が負担を作る

一人会社の源泉所得税は、役員報酬の額でほぼ決まります。令和8年分の源泉徴収税額表(月額表・甲欄)と、当サイトの計算エンジンの社会保険料を使って、報酬額ごとの本税と不納付加算税を出しました。

役員報酬(月額)その月の源泉徴収税額毎月納付:1回分の加算税(10%)納期の特例:半年分の本税半年分の加算税(10%)半年分の加算税(5%)
月10万円0円0円0円0円0円
月20万円3,340円0円20,040円0円0円
月30万円6,430円0円38,580円0円0円
月40万円11,000円0円66,000円6,000円0円
月50万円18,100円0円108,600円10,000円5,000円
月54万円22,310円0円133,860円13,000円6,500円
月60万円30,640円0円183,840円18,000円9,000円
月70万円45,950円0円275,700円27,000円13,500円
月80万円63,590円6,000円381,540円38,000円19,000円

※ 東京・40歳未満・扶養親族等0人・定期同額給与・年末調整前の通常月/2026年(令和8年)分基準

読み取れるのは、毎月納付の列がほとんど0円で埋まることです。1か月分の源泉徴収税額は、報酬が月70万円でも4万5,950円です。1万円未満を切り捨てた4万円に10%を掛けると4,000円で、5,000円に届きません。加算税は5,000円未満なら全額切り捨てられるので、結果は0円になります。

これが半年分になると変わります。同じ月40万円の会社でも、6回分をまとめた6万6,000円に10%を掛けると6,000円が残ります。事務を減らすための納期の特例が、遅れたときに加算税が発生する側へ会社を移すという関係です。

発生し始める報酬額を1,000円刻みで探すと、境目がはっきり出ます。

納付の区分加算税の割合加算税が発生し始める役員報酬そのときの本税加算税
毎月納付(1か月分)10%月72.2万円50,360円5,000円
納期の特例(6か月分)10%月36.3万円51,300円5,000円
毎月納付(1か月分)5%月額表の範囲では発生しない
納期の特例(6か月分)5%月48万円101,280円5,000円

毎月納付なら月72.2万円まで加算税は出ませんが、納期の特例では月36.3万円で出ます。納期の特例を使うと、加算税が発生する報酬水準がちょうど半分になるわけです。年12回の納付事務を年2回に減らす代わりに、1回落としたときの金額が6倍になるためです。

自主納付で5%が適用される場合は、毎月納付なら月額表に載っている範囲(社会保険料等控除後74万円未満)ではそもそも発生しません。自分で気づいて納めるか、告知を受けてから納めるかで、結果が0円と数万円に分かれます。

表に月54万円を入れているのは、この条件で手取りが最大になる報酬額だからです。売上1,200万円・経費200万円の会社で報酬額だけを動かすと、次のようになります。

売上1,200万円・経費200万円(事業所得1,000万円)の場合

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円632.5万円102.8万円529.6万円33.4万円
月20万円642.4万円196.3万円446.1万円68.1万円
月30万円650.8万円289.1万円361.6万円102.2万円
月40万円654.8万円378.8万円276.1万円139.6万円
月50万円659.7万円468.6万円191.1万円170.3万円
月54万円 ←最適662.4万円504.8万円157.6万円180.5万円
月60万円653.6万円547.8万円105.8万円200.9万円
月70万円646.8万円625.4万円21.4万円228.6万円
月80万円615.8万円704.8万円-89.0万円238.3万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額

手取りを最大にする報酬額を選ぶと、納期の特例で加算税が発生する側に入ります。報酬額の決め方そのものは役員報酬はいくらが最適かで、源泉徴収が始まる境目は源泉徴収はいくらから必要かで扱っています。

延滞税は日割りだが、少額なら0円で止まる

不納付加算税とは別に、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて延滞税がかかります。令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、その翌日以後が年9.1%です。令和4年から令和7年までは年2.4%・年8.7%だったので、令和8年に上がっています。

延滞税も、計算の基礎となる本税は1万円未満を切り捨てます。出てきた延滞税は100円未満を切り捨て、全額が1,000円未満なら全額を切り捨てます。

役員報酬が月54万円、納期の特例の上半期分13万3,860円を令和8年7月10日の法定納期限に納め損ねた場合で計算しました。

納付した日遅れた日数延滞税不納付加算税10%合計
2026-07-111日0円13,000円13,000円
2026-07-177日0円13,000円13,000円
2026-08-0930日0円13,000円13,000円
2026-09-1062日0円13,000円13,000円
2026-09-1163日0円13,000円13,000円
2026-10-0890日1,500円13,000円14,500円
2026-11-07120日2,400円13,000円15,400円
2026-12-31174日4,200円13,000円17,200円

※ 令和9年1月1日以後の期間の割合はまだ告示されていないため、令和8年内に収まる日数までを計算しています

2か月を過ぎても延滞税が0円のままなのは、日割りの計算結果が1,000円に届かず全額切り捨てになるためです。この規模の会社では、2か月遅れても負担の全額が不納付加算税という形になります。日数を気にするより、遅れたかどうかで結果が決まる税だと考えたほうが実態に合います。

延滞税は本税だけを対象に課され、加算税には課されません。上の表の延滞税は、13万3,860円の本税に対するものだけです。

この論点は、法人化して初めて発生する

個人事業主が一人で事業をしている限り、源泉徴収義務者にはなりません。源泉徴収義務者は給与や一定の報酬を「支払う」側に生じるもので、支払う相手がいなければ義務も生じないためです。所得税は年1回の確定申告で納めるだけで、毎月の納付事務そのものがありません。

給与について源泉徴収義務を持たない個人が支払う弁護士報酬・税理士報酬などについては、源泉徴収をする必要がありません。従業員のいない個人事業主が顧問税理士に報酬を払っても、源泉徴収は発生しないということです。

法人化すると、役員報酬を自分に払う時点で会社が源泉徴収義務者になります。給与を支払う事務所を開設してから1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出し、そこから毎月または年2回の納付が始まります。納期の特例を申請すれば回数は減りますが、1回の金額は6倍になります。

なお個人側でも、令和8年1月1日以後に開業した場合は、個人事業の開業等届出書とは別に給与支払事務所等の開設届出書の提出が必要になりました。従業員を雇う個人事業主は、法人と同じ届出をすることになります。

納付そのものを落とさない仕組みとしては、e-Taxの自動ダイレクトがあります。徴収高計算書のデータを送信する画面で「自動ダイレクトを利用する」にチェックを入れると、法定納期限当日に口座引落しで納付されます。ただし法定納期限当日に手続をした場合の引落しは翌取引日になるため、当日に操作しても遅れることがあります。

この納付事務は、法人化のコストの一部です。役員報酬をいくらにすると手取りが最大になるかは条件で変わるので、一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

まとめ

  • 不納付加算税は納付税額の10%、告知を受ける前の自主納付で予知がなければ5%。遅れた日数では変わらない
  • 計算の基礎は1万円未満切捨て、加算税が5,000円未満なら全額切捨て。10%なら本税5万円未満で結果は0円
  • 法定納期限から1か月以内の納付で、直前1年間に遅れがなければ徴収されない。設立1年目はこの要件を自然に満たす
  • 毎月納付なら月72.2万円の役員報酬まで加算税は出ないが、納期の特例では月36.3万円で出る
  • 延滞税は令和8年で年2.8%・年9.1%。少額なら1,000円未満切捨てで0円になり、負担の中心は加算税になる

よくある質問

源泉所得税を1日だけ遅れて納めた場合、いくらかかりますか?

遅れが1日でも、不納付加算税は納付税額の10%または5%で計算されます。日数では変わりません。ただし税務署の告知を受ける前に自分で納め、それが法定納期限から1か月を経過する日までであり、直前1年間に告知も納付遅れもなければ、不納付加算税は徴収されません。

不納付加算税がかからない金額の目安はありますか?

加算税の額が5,000円未満のときは全額が切り捨てられます。10%で計算する場合、計算の基礎となる本税が5万円未満であれば結果は0円になります。

納付を忘れたことに自分で気づいて納めた場合も10%ですか?

納税の告知を受けることなく自主的に納付し、その納付が調査による告知を予知したものでなければ5%です。税務署から告知を受けた後の納付は10%になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。