税金の基礎

補助金100万円で増える負担は個人42.8万円・法人37.1万円

結論

固定資産の取得に充てる補助金は、法人なら圧縮記帳(法人税法42条)、個人なら総収入金額不算入(所得税法42条)で課税を繰り延べられます。対象にならない経費補助100万円では、売上800万円の個人で42.8万円、法人で37.1万円の負担増になり、差の大半は国民健康保険料の10.6万円です。

  • 圧縮記帳も総収入金額不算入も課税の免除ではなく繰延べ。取得価額が減るぶん翌年以降の減価償却費が小さくなる
  • 対象は固定資産の取得・改良に充てる補助金だけ。広報費や人件費に充てる補助金・助成金は全額が課税対象になる
  • 補助金100万円で個人の国民健康保険料は最大10.6万円増えるが、法人は役員報酬が変わらないため社会保険料は増えない

補助金や助成金は、受け取ったら課税されます。ここまでは多くの記事に書かれています。書かれていないのは、同じ補助金でも個人事業と法人で増える負担の中身が違うことです。税額だけでなく、社会保険料の動き方が違います。

固定資産に充てた補助金は、法人も個人も課税を繰り延べられる

条文は別ですが、仕組みは対になっています。

法人個人事業
根拠法人税法42条所得税法42条
名称国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入国庫補助金等の総収入金額不算入
処理帳簿価額を損金経理で減額、または積立金として積み立て総収入金額に算入しない
手続確定申告書に損金算入の明細の記載確定申告書に適用を受ける旨などの記載

どちらも、対象は固定資産の取得または改良に充てるための国または地方公共団体の補助金・給付金等です。そして、その事業年度末(個人は12月31日)までに返還を要しないことが確定していることが条件になります。交付決定は出たが実績報告の審査が終わっていない、という状態では適用できません。

法人側には方法が2つあります。帳簿価額を直接減らす損金経理と、決算で圧縮積立金を積む方法です。会計上の利益を落としたくない場合に積立金方式が使われます。個人側にこの選択はなく、総収入金額に算入しないという一本の処理です。

繰り延べているだけで、減っているわけではない

圧縮記帳を「補助金が非課税になる制度」と説明している記事がありますが、正確ではありません。

100万円の補助金で300万円の機械を買い、圧縮記帳を使うと、帳簿価額は200万円になります。その年の課税はなくなりますが、以後の減価償却費は300万円分ではなく200万円分しか出ません。 償却期間を通した損金の合計は100万円小さくなります。

つまり、この制度が動かしているのは税額の合計ではなく、課税の時期です。補助金を受け取った年に一度に課税されると、設備を買った直後に納税資金が要るという事態になります。それを防ぐための仕組みです。

減価償却そのものの法人と個人の違いは減価償却は法人が任意償却、個人は強制償却で扱っています。

経費に充てる補助金・助成金は、この制度の対象にならない

条文が対象にしているのは固定資産の取得・改良に充てる補助金だけです。次のようなものは対象外で、全額が課税対象になります。

  • 広報費、展示会出展費、外注費などの経費に充てた部分
  • 雇用関係の助成金(雇用の改善を図ったことにより交付を受ける奨励金等)
  • 家賃や人件費の補塡を目的とする給付金

法人税基本通達2-1-42は、休業手当や賃金、職業訓練費等の経費を補塡するために交付を受ける給付金等について、事業年度末に金額が確定していなくても見積もって益金に算入するとしています。注書きでは、雇用の改善を図ったことなどにより交付を受ける奨励金等は、支給決定があった日の属する事業年度の益金に算入するとされています。

入金日ではありません。決算月の直前に支給決定が出た助成金は、入金が翌期でもその期の利益になります。

対象外だった100万円で、負担はいくら増えるか

固定資産に充てられず全額が課税対象になった補助金100万円について、増える負担を当サイトの計算エンジンで計算しました。個人は所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料の増加額、法人は法人税等の増加と、法人に残った利益を個人へ移す際のコストを含めた手取りの目減りです。

売上(経費200万円)個人の事業所得個人の負担増うち国民健康保険料法人の負担増
600万円335万円32.5万円10.6万円37.1万円
800万円535万円42.8万円10.6万円37.1万円
1,000万円735万円42.8万円10.6万円37.1万円
1,200万円935万円38.6万円0.3万円37.1万円
1,500万円1,235万円48.7万円0円38.6万円

前提:2026年(令和8年)分の税率・保険料率。東京23区・単身・40歳未満・青色申告特別控除65万円(e-Tax)・インボイス登録済み。法人は合同会社で、役員報酬はその売上で手取りが最大になる額(月28万〜54万円)に固定し、補助金の前後で変えていません。法人側の負担増には、法人に残った利益を個人が使えるようにするまでのコスト20%を含みます。

目を引くのは国民健康保険料の列です。売上600万〜1,000万円の帯では、補助金100万円のうち10.6万円が国民健康保険料に消えます。 一方、売上1,200万円では0.3万円、1,500万円では0円です。事業所得がすでに賦課限度額に届いているため、それ以上は増えようがないからです。

法人側の負担増は、売上600万〜1,200万円のどこでも37.1万円で変わりません。役員報酬を変えなければ、社会保険料は1円も増えないからです。 補助金は法人の利益になりますが、標準報酬月額は報酬で決まるので影響しません。

逆転するのは売上600万円の行だけ

この表で個人のほうが負担が軽いのは、売上600万円の行だけです。事業所得335万円では所得税率が低く、補助金が乗っても上の税率帯に届きません。一方、法人側は法人税等に加えて取り出しコストが常にかかるため、所得が小さいほど不利に見えます。

売上800万円以上では個人のほうが重くなります。差の中身は国民健康保険料と個人事業税です。個人事業税は補助金100万円あたり5万円(税率5%の業種)増えます。国民健康保険料の高さそのものは国民健康保険料が高い理由で扱っています。

設備投資の税額控除とは別に考える

補助金で買った設備が、中小企業投資促進税制の対象になることがあります。この制度には、機械装置なら1台160万円以上、ソフトウエアなら70万円以上といった取得価額の要件があります。

租税特別措置法関係通達(法人税編)42の6-3は、その資産が圧縮記帳の適用を受けたものであるときは、圧縮記帳後の金額で取得価額要件を判定するとしています。

ここで順番が効きます。補助金100万円を受けて200万円の機械を買い、圧縮記帳を使うと帳簿価額は100万円です。160万円の要件を満たさなくなり、特別償却も税額控除も使えません。圧縮記帳を使わなければ200万円のまま要件を満たしますが、その年に補助金100万円が課税されます。

200万円の機械(補助金100万円)取得価額要件の判定額160万円以上か
圧縮記帳を使う100万円満たさない
圧縮記帳を使わない200万円満たす

補助金が出る設備ほど、この判定が境目に寄ります。設備投資の税額控除そのものは中小企業投資促進税制で扱っています。

補助金を受け取る年に法人化を予定しているなら、個人で受けるか法人で受けるかによって、負担額の表のどちらの側になるかが決まります。自分の売上と経費で法人化の差額がどう動くかは、条件を入れて確かめてください。

まとめ

  • 固定資産の取得・改良に充てる補助金は、法人は圧縮記帳(法人税法42条)、個人は総収入金額不算入(所得税法42条)。どちらも事業年度末までに返還不要が確定していることが条件
  • どちらも課税の繰延べであって免除ではない。取得価額が減るぶん、以後の減価償却費が小さくなる
  • 経費に充てた補助金や雇用関係の助成金は対象外。支給決定があった事業年度の益金になり、入金日ではない
  • 対象外の補助金100万円では、売上800万〜1,000万円の個人で42.8万円、法人で37.1万円の負担増
  • 個人は国民健康保険料が最大10.6万円増えるのに対し、法人は役員報酬が変わらないかぎり社会保険料が増えない

よくある質問

補助金に消費税はかかりますか。

補助金は対価を得て行う取引ではないため、消費税の課税対象になりません。ただし補助金の交付側が、補助対象経費に含まれる消費税のうち仕入税額控除ができる部分の返還を求める制度を設けている場合があります。これは税ではなく補助金制度側のルールなので、交付要綱で確認してください。

圧縮記帳を使うと、補助金は非課税になるのですか。

なりません。圧縮記帳は資産の帳簿価額を減らす処理なので、その年の課税は消えますが、翌年以降の減価償却費もそのぶん小さくなります。払う税金の合計ではなく、払う時期が動く仕組みです。

補助金の入金が翌期になった場合、どちらの年の収益になりますか。

法人税基本通達2-1-42は、雇用の改善を図ったことなどにより交付を受ける奨励金等について、支給決定があった日の属する事業年度の益金に算入するとしています。休業手当などの経費を補塡する給付金は、その事実があった事業年度に金額を見積もって益金に算入します。入金日ではありません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。