インボイス・消費税

法人成りで車を会社に売る消費税。税込経理と免税事業者で譲渡所得が変わる

結論

課税事業者が事業用の車を会社に売ると消費税がかかり、譲渡所得は事業所得と同じ経理方式で計算します(国税庁No.6931)。税抜300万円・取得費150万円(税込165万円)の車なら、譲渡所得の課税対象は税抜経理で100万円、税込経理で115万円ですが、税込経理では納める消費税30万円を事業所得から引けるので、所有5年超なら所得への影響は50万円と27.5万円に分かれます。免税事業者が売ると消費税はかからず、会社はインボイスがないので仕入税額の70%(21万円)しか控除できません。

  • 税込経理なら譲渡収入・取得費とも税込みで計算し、納付する消費税は事業所得の必要経費。廃業する年は未払計上でその年の必要経費にできる(No.6901)
  • 譲渡所得は特別控除50万円を引いた後、所有期間5年超なら2分の1だけが課税される。消費税の必要経費は2分の1にならない
  • 免税事業者からの購入は、令和8年10月1日〜令和10年9月30日の間、仕入税額相当額の70%を控除できる経過措置(インボイスQ&A問113-3)

法人成りで、個人で使っていた車や機械を会社に売る。手続きとしては簡単ですが、税金の上では個人の側に譲渡所得と消費税、会社の側に仕入税額控除が生じます。資産の引継ぎ方そのもの(売る・貸す・現物出資)は法人成りの資産引継ぎ。車・パソコンは時価で売るのかで整理しました。

この記事は、売ると決めたあとの計算です。同じ値段で売っても、個人が税込経理か税抜経理か、免税事業者かで、譲渡所得の課税対象と、家族全体で負担する消費税が変わります。

譲渡所得は、事業所得と同じ経理方式で計算する

国税庁No.6931は、課税事業者が事業用の資産を譲渡した場合の扱いを次のように示しています。

個人の立場消費税譲渡所得の計算納める消費税
課税事業者・税抜経理課税される譲渡収入・取得費とも税抜き仮受・仮払の清算で処理(所得に影響しない)
課税事業者・税込経理課税される譲渡収入・取得費とも税込み事業所得の必要経費
免税事業者課税されない収入は実際の譲渡価額、取得費は税込みの額なし

譲渡所得の経理方式は、その資産を使っていた事業所得と同じにします。事業所得を税込経理で記帳していれば、譲渡所得も税込みです。

車両や機械の譲渡所得は総合課税で、譲渡益から特別控除50万円を引きます。所有期間が5年を超える長期譲渡所得は、その2分の1だけが課税対象です(No.3105)。

税抜300万円で売ると、課税対象は100万〜115万円

個人が使っていた車を、税抜300万円(税込330万円)で会社に売るとします。個人の帳簿の未償却残高(取得費)は税抜150万円、税込165万円です。

個人が車を会社に売った場合(原則課税)

個人の立場譲渡収入取得費譲渡益課税対象(5年以内)課税対象(5年超)事業所得から引く消費税個人が納める消費税会社の仕入税額控除
課税事業者・税抜経理300.0万円150.0万円150.0万円100.0万円50.0万円—30.0万円30.0万円
課税事業者・税込経理330.0万円165.0万円165.0万円115.0万円57.5万円30.0万円30.0万円30.0万円
免税事業者330.0万円165.0万円165.0万円115.0万円57.5万円—0円21.0万円

消費税は売却分だけを見た額(その年の他の売上・仕入は含めない)。課税対象は特別控除50万円を引いた後、5年超は2分の1。会社は課税事業者・原則課税で、免税事業者からの購入は令和8年10月1日以後の引渡しとして経過措置70%。再計算は node scripts/houjinnari-joto-shotoku-shohizei.mjs。

税込経理は、消費税を全額引ける

税込経理では、譲渡収入に消費税30万円が含まれるので、譲渡益は税抜経理より15万円大きくなります。そのかわり、納める消費税30万円は事業所得の必要経費になります。

所得への影響を足し引きすると次のとおりです。

個人の立場5年以内に売った場合5年超で売った場合
課税事業者・税抜経理100.0万円50.0万円
課税事業者・税込経理85.0万円(115万円−30万円)27.5万円(57.5万円−30万円)
免税事業者115.0万円57.5万円

税込経理のほうが所得への影響が小さくなるのは、譲渡所得には特別控除と2分の1課税がかかるのに、事業所得から引く消費税は全額だからです。特に長期譲渡では差が開き、税抜経理50万円に対して税込経理27.5万円です。

ただし、納める消費税を必要経費にするのは原則として申告書を提出した年です。法人成りで事業をやめた個人は翌年に事業所得がないので、No.6901が認めるとおり、廃業する年の決算で未払金として計上しておく必要があります。

免税事業者から買うと、会社は70%しか控除できない

個人が免税事業者なら、車の売却に消費税はかかりません。会社が税込330万円を払っても、個人が国に納める消費税はゼロです。

会社の側は、個人がインボイス発行事業者でないので適格請求書を受け取れません。それでも、区分記載請求書と同様の記載のある請求書と、一定の記載をした帳簿を保存すれば、経過措置で仕入税額相当額の一定割合を控除できます。国税庁のインボイスQ&A問113-3によると、その割合は次のとおりです。

課税仕入れの時期控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日30%

資産の譲受けの時期は原則として引渡しの日なので、令和8年10月以後に引き渡せば70%です。この例では30万円の70%、21万円を会社が控除できます。

家族全体で見ると、課税事業者の個人から買えば、個人が30万円を納めて会社が30万円を控除するので、消費税の負担は差し引きゼロです。免税事業者の個人から買えば、個人は納めず、会社が21万円を控除するので、家族全体では21万円が手元に残ります。そのかわり個人の譲渡所得は税込みの330万円で計算されます。

法人成りの年の消費税は、売却だけでは決まらない

ここまでは車の売却分だけを取り出した計算です。実際には、法人成りの年の個人の消費税は、その年の売上と仕入の全体で計算します。会社に売った車の売上も課税売上高に入るので、免税事業者の判定(基準期間の課税売上高)や、2年後の課税にも影響します。法人成り後も個人に消費税の納税義務が残る仕組みは法人成りしても社長個人の消費税は2年残るで扱っています。

消費税とインボイスが法人化の判断にどう効くかの全体像は法人成りと消費税・インボイスにまとめています。資産の売値や経理方式の選び方は個別の事情で結論が変わるので、売却の前に自分の帳簿の数字で確かめてください。

まとめ

  • 課税事業者が事業用の車を会社に売ると消費税がかかり、譲渡所得は事業所得と同じ経理方式(税込・税抜)で計算する(No.6931)
  • 税抜300万円・取得費150万円の車なら、譲渡所得の課税対象は税抜経理100万円、税込経理115万円(5年以内)
  • 税込経理では納める消費税30万円を事業所得から全額引けるので、所有5年超なら所得への影響は50万円対27.5万円になる
  • 廃業する年は、納める消費税を未払計上しないと必要経費にする年がなくなる
  • 免税事業者から買うと、会社は令和8年10月1日以後の引渡しなら仕入税額の70%(この例で21万円)を控除できる

よくある質問

個人の車を会社に売るときに、消費税はかかりますか?

個人が課税事業者で、事業用の車を対価を得て売る場合は、事業に付随する資産の譲渡として消費税が課税されます。免税事業者が売る場合や、生活用の資産を売る場合は課税されません。

簡易課税を選んでいる個人が車を売ったら、消費税はどう計算しますか?

事業用の車の売却も課税売上げに入り、簡易課税ではみなし仕入率で納付税額を計算します。経理処理は国税庁のコード6513「簡易課税制度の適用と経理処理」で扱われています。この記事の計算は原則課税の場合です。

会社は個人から買った車の消費税をいつ控除しますか?

資産の譲受けの課税仕入れの時期は、原則として引渡しのあった日です。経過措置の割合も、その日で70%か80%かを判断します。令和8年10月1日以後の引渡しなら70%です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。