インボイス・消費税
1期目が短い法人の3期目の消費税。基準期間の売上は12か月に換算して判定
結論
前々事業年度が1年未満の法人は、基準期間の課税売上高を「その期間の売上÷月数×12」に換算して1,000万円と比べます(消費税法9条2項2号)。設立1期目が2か月で売上300万円なら換算1,800万円で、3期目は課税事業者です。月に均すと83.3万円が境目なので、年間売上が1,000万円未満の事業でも、繁忙期の数か月だけで1期目を締めると3期目が課税になることがあります(インボイス未登録で設立1〜2期を免税で過ごす会社の場合)。
- 換算の月数は暦で数え、1か月未満の端数は1か月にする(消費税法9条3項)
- 免税事業者だった1期目の売上は、受け取った額を税抜きにせずそのまま数える
- 4期目の基準期間は2期目(12か月)に戻るので、換算で課税になるのは3期目だけということもある
このテーマの全体像 法人成りと消費税・インボイス
法人の消費税は、2期前の事業年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら免税になります。法人化した会社は1期目と2期目に基準期間がなく、資本金1,000万円未満などの条件を満たせば免税で過ごせます。問題は3期目です。3期目の基準期間は1期目ですが、1期目が1年に満たないことがほとんどだからです。
インボイスに登録している会社は最初から課税事業者なので、この記事の話は関係ありません。インボイス未登録で設立1〜2期の免税を使う会社が対象です(法人化とインボイス・消費税の免税)。
3期目の基準期間は1期目。短ければ12か月に換算
消費税法2条1項14号は、法人の基準期間を「前々事業年度」とし、前々事業年度が1年未満の場合は「その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間」としています。設立1期目が短い場合、3期目の基準期間は通常その1期目になります。
そして9条2項2号は、基準期間が1年でない法人の課税売上高を次のように計算すると定めています。
基準期間中の課税売上高 ÷ 基準期間に含まれる事業年度の月数 × 12
月数は暦に従って数え、1か月に満たない端数は1か月にします(同条3項)。1期目が短くても、売上が少なく見えることはありません。月平均で見て年1,000万円のペースを超えていれば、3期目は課税です。
1期目の月数と売上で見る、3期目の判定
1期目の月数と売上を組み合わせて、換算後の額と3期目の判定を出しました。
| 1期目の月数 | 売上100万円 | 300万円 | 500万円 | 700万円 | 900万円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1か月 | 1,200.0万円(課税) | 3,600.0万円(課税) | — | — | — |
| 2か月 | 600.0万円(免税) | 1,800.0万円(課税) | 3,000.0万円(課税) | — | — |
| 3か月 | 400.0万円(免税) | 1,200.0万円(課税) | 2,000.0万円(課税) | 2,800.0万円(課税) | 3,600.0万円(課税) |
| 6か月 | 200.0万円(免税) | 600.0万円(免税) | 1,000.0万円(免税) | 1,400.0万円(課税) | 1,800.0万円(課税) |
| 9か月 | 133.3万円(免税) | 400.0万円(免税) | 666.7万円(免税) | 933.3万円(免税) | 1,200.0万円(課税) |
| 11か月 | 109.1万円(免税) | 327.3万円(免税) | 545.5万円(免税) | 763.6万円(免税) | 981.8万円(免税) |
| 12か月 | 100.0万円(免税) | 300.0万円(免税) | 500.0万円(免税) | 700.0万円(免税) | 900.0万円(免税) |
※ 「—」は月300万円を超える組み合わせで省略。1,000万円ちょうどは「1,000万円以下」なので免税。表は scripts/kijun-kikan-tanki-kansan.mjs で再生成できる
境目は月平均83万3,333円です。1期目が何か月であっても、1期目の売上をその月数で割った額がこれを超えれば3期目は課税になります。
免税事業者だった1期目の売上は、受け取った金額をそのまま数え、110分の100にして税抜きにはしません。インボイス未登録で消費税相当額を上乗せして受け取っていれば、その分も基準期間の売上に入ります(免税事業者の売上は税込で1,000万円判定)。
季節で売上が偏る事業は、設立月で結果が変わる
年間の売上が1,000万円未満でも、1期目が繁忙期だけで終わると換算後の額が膨らみます。年960万円(月平均80万円)で、3〜4月と10月に売上が集中する事業を、3月末決算で設立した場合を計算しました。
| 設立月 | 1期目の月数 | 1期目の売上 | 12か月換算 | 3期目 |
|---|---|---|---|---|
| 1月1日 | 3か月 | 240.0万円 | 960.0万円 | 免税 |
| 2月1日 | 2か月 | 180.0万円 | 1,080.0万円 | 課税 |
| 3月1日 | 1か月 | 120.0万円 | 1,440.0万円 | 課税 |
| 4月1日 | 12か月 | 960.0万円 | 960.0万円 | 免税 |
| 7月1日 | 9か月 | 680.0万円 | 906.7万円 | 免税 |
| 10月1日 | 6か月 | 480.0万円 | 960.0万円 | 免税 |
※ 月売上は1月から順に60・60・120・140・80・60・60・60・80・100・80・60万円(年960万円)の設例
2月か3月に設立して3月末で1期目を締めると、繁忙期の3月が1期目の月平均を押し上げ、3期目が課税になります。同じ事業でも4月1日設立なら1期目は12か月で、換算後も960万円のままです。
このケースで課税になるのは3期目だけです。4期目の基準期間は12か月ある2期目です。2期目の売上は年間と同じ960万円なので、4期目は再び免税に戻ります。
設立月の決め方への影響
1期目を長く取るほど、免税で過ごせる期間が長くなることは知られています(法人の決算月の決め方)。3期目の換算まで考えると、もう1つ見るべき点が加わります。
- 1期目を短くすると、免税の期間が短くなるうえ、その短い期間の売上が12倍で3期目の判定に使われる
- 季節で売上が偏る事業は、1期目に繁忙期だけが入らないかを確かめる
- 1期目に大口の入金が1回あるだけでも、期間が短いと換算で1,000万円を超えやすい
設立1〜2期目そのものの免税が崩れる条件(資本金、特定期間、支配関係)は新設法人の「2期免税」が崩れる条件にまとめています。法人化の判定ツールは、設立1〜2期の免税の効果を初年度と2年目の差額に織り込んでいます。インボイス未登録の条件で、自分の売上と経費を入れて確かめてください。
まとめ
- 前々事業年度が1年未満の法人は、基準期間の課税売上高を「売上÷月数×12」に換算して判定する(消費税法9条2項2号)
- 境目は月平均83万3,333円。1期目が短くても売上が少なく見えることはない
- 免税だった1期目の売上は、受け取った額のまま数える
- 季節変動がある事業は、繁忙期だけの短い1期目にすると、年1,000万円未満でも3期目が課税になる
- 4期目の基準期間は2期目に戻るので、換算で課税になるのが3期目だけのこともある
よくある質問
1期目が短ければ、3期目の基準期間の売上も少なくなって免税になりますか。
なりません。前々事業年度が1年未満の法人は、基準期間の売上を月数で割って12を掛けた額で判定します。期間が短いほど売上が少なく見える効果は、換算で打ち消されます。
1期目が1か月未満のときは何か月で割りますか。
消費税法9条3項で、月数は暦に従って数え、1か月に満たない端数は1か月とします。たとえば20日間の1期目は1か月として12倍します。
インボイス登録済みの会社にも関係しますか。
関係しません。適格請求書発行事業者は基準期間の売上にかかわらず課税事業者なので、換算後の額が1,000万円以下でも免税になりません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。