インボイス・消費税

免税事業者の売上は税込で1,000万円判定。受取1,050万円で2年後に課税

結論

基準期間に免税事業者だった年の課税売上高は、受け取った金額の全額で判定し、税抜きにしません(消費税法基本通達1-4-5)。インボイス未登録の個人事業主が1年間に受け取った総額が1,050万円なら、110分の100にすれば954.5万円でも、2年後の年は課税事業者です。その年に同じ売上なら、一般課税で年83.5万円、簡易課税(第5種)でも47.7万円の消費税を納めます。

  • 免税事業者は売上に消費税を課されていないので、受け取った金銭の全額がそのまま課税売上高になる。税抜計算で1,000万円以下に見えても、受取総額で超えていれば課税
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、インボイス登録の2割特例(個人は令和8年分まで)と3割特例(令和9年分・10年分)も使えない
  • 個人事業の基準期間は法人に引き継がれない。法人を設立すれば、設立1期目・2期目は資本金1,000万円未満などの条件で基準期間がなく免税になる

インボイスに登録していない個人事業主が、売上1,000万円の線をどこで判定しているか。「消費税込みで1,050万円もらったから、税抜きなら954万円。まだ免税」という読み方は、免税事業者だった年については成り立ちません。

免税事業者の年は、受け取った全額が課税売上高になる

消費税の納税義務は、基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかで決まります(国税庁 No.6501)。この課税売上高は、原則として税抜きの金額です。

例外が、基準期間に免税事業者だった場合です。消費税法基本通達1-4-5は、免税事業者だった基準期間の売上には消費税等が課されていないため、収受した金銭等の全額がその基準期間の課税売上高になると定めています。

前々年の立場課税売上高の数え方受取総額1,050万円の場合
課税事業者だった税抜き(110分の100)954.5万円 → 免税
免税事業者だった受け取った全額1,050万円 → 課税

理屈はこうです。課税事業者が受け取る代金には、自分が納める消費税が含まれているので、売上から除いて考えます。免税事業者はそもそも消費税を納めていないので、請求書に「消費税相当額」と書いて受け取っていても、それは消費税ではなく代金の一部です。だから除く理由がありません。

受取総額別に、2年後に何が起きるか

インボイス未登録の個人事業主が、1年間に受け取った総額(請求書に消費税相当額を含めて受け取った額)ごとに、判定と2年後の納税額を並べました。2年後の年も同じ金額を受け取るものとしています。

受取総額税抜にすると正しい判定一般課税の納付額簡易課税(第5種)の納付額
950万円863.6万円免税のまま——
1,000万円909.1万円免税のまま(1,000万円以下)——
1,050万円954.5万円2年後は課税83.5万円47.7万円
1,100万円1,000万円2年後は課税88.0万円50.0万円

※ 2年後の年は受取総額を税込として扱う。一般課税は経費200万円(税抜)のうち6割が課税仕入れとした計算エンジンの近似。簡易課税はサービス業等の第5種(みなし仕入率50%)で、簡易課税制度選択届出書を事前に出している場合。2割・3割特例は使えない

受取総額1,000万円は「1,000万円以下」なので免税のままですが、1,050万円なら2年後に課税事業者になります。税抜にすると954.5万円でも、です。 線の位置を税抜で読み替えると、免税事業者の線は実質的に税抜909万円付近にあることになります。

課税事業者になったら、その年の売上は税込で受け取っている前提で消費税を計算します。一般課税なら売上税額95.45万円から仕入税額を引いて83.5万円、簡易課税でも47.7万円です。簡易課税を使うには、その年が始まる前に届出書を出しておく必要があります(国税庁 No.6505)。届出の期限と事業区分は簡易課税のみなし仕入率で扱いました。

1,000万円を超えると、2割・3割特例も外れる

インボイスに登録した個人事業主には、納付税額を売上税額の2割にする2割特例(令和8年9月30日を含む課税期間まで。個人は令和8年分まで)と、その後継の3割特例(令和9年分・10年分、個人のみ)があります。どちらも、基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、登録しなければ免税事業者だった人が対象です。

ここで税込判定が効いてきます。たとえば令和8年にインボイスに登録した人の令和9年分の判定は、基準期間である令和7年の課税売上高で行います。令和7年に免税事業者だったなら、令和7年の受取総額で判定します。

令和7年の受取総額(免税事業者)令和9年分の3割特例令和9年分の納付額(受取総額が同じ場合)
1,000万円使える27.3万円(売上税額の3割)
1,050万円使えない一般課税83.5万円/簡易課税47.7万円

※ 3割特例は売上税額(受取総額×10/110)の30%。その他の前提は上の表と同じ

受取総額が50万円違うだけで、3割特例の27.3万円から簡易課税の47.7万円へ、納付額が20万円以上動きます。3割特例そのものの内容は2割特例の終了と3割特例にまとめています。

もう1つの線、特定期間は「給与」で外せる

基準期間とは別に、前年の前半6か月(特定期間)でも納税義務を判定します。国税庁 No.6501 によると、個人事業者の特定期間はその年の前年の1月1日から6月30日までで、この期間の課税売上高が1,000万円を超えると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者になります。

ただし、特定期間の1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等の支払額の合計額で行うこともでき、どちらで判定するかは納税者が選べます。

立場特定期間給与等の支払額で判定した場合
従業員のいない個人事業主前年1月〜6月給与の支払いが0円なので1,000万円を超えず、特定期間では課税にならない
設立2期目の法人(1期目が1年)1期目の開始から6か月社長の役員報酬も給与等に含まれる。6か月で1,000万円を超えるのは月167万円以上の報酬を払った場合

※ 国税庁 No.6501。前事業年度が1年未満の法人は特定期間の取り方が異なる場合がある。国外事業者は給与等の支払額で判定できない

前半6か月だけ売上が大きい年でも、給与の支払いが少なければ給与等の支払額を選んで特定期間の判定を外せます。2期目の法人でも、手取りが最大になる役員報酬(月54万円)なら6か月で324万円で、1,000万円には届きません。設立直後の免税の条件は次の節で触れます。

法人化すると、個人の基準期間は引き継がない

ここで法人化の判断とつながります。法人の納税義務は法人自身の基準期間で判定するため、個人事業の売上が1,000万円を超えていたことは法人に引き継がれません。新たに設立した法人は、1期目と2期目に基準期間がないので、原則として免税事業者です(国税庁 No.6503)。

ただし、次のどれかに当たると、法人でも設立直後から課税になります。

  • 期首の資本金が1,000万円以上
  • 特定新規設立法人に当たる(課税売上高5億円超の会社などが株式の50%超を持つ場合など)
  • 前事業年度の開始から6か月(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額が、いずれも1,000万円を超える
  • インボイスに登録している

最後の点が最も重要です。インボイスに登録すれば、法人でも免税にはなりません。 取引先がインボイスを求めるなら、法人化しても消費税は納めることになります。法人化と消費税の関係はインボイス登録済みなら法人化しても免税にならない、設立直後の免税の条件は新設法人の免税の条件で扱いました。

判定ツールは「税抜売上」で近似している

当サイトの判定ツールは、入力された年間売上(税抜)が1,000万円を超えるかどうかで、個人事業主の消費税の課税・免税を近似しています。インボイス未登録で、消費税相当額を上乗せして請求している人は、受取総額を1.1で割った額を売上に入れると、免税の判定が甘くなることに注意してください。受取総額が1,000万円を超えているなら、2年後には課税になる前提で、ツールのインボイス「あり」の結果とあわせて見るのが安全です。計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 基準期間に免税事業者だった年の課税売上高は、受け取った全額で判定し、税抜きにしない(消費税法基本通達1-4-5)
  • インボイス未登録で受取総額1,050万円なら、税抜954.5万円でも2年後は課税事業者。同じ売上なら一般課税で83.5万円、簡易課税(第5種)で47.7万円を納める
  • 免税事業者の1,000万円の線は、税抜に読み替えると909万円付近にある
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、2割特例・3割特例も使えない。受取総額1,000万円と1,050万円で、令和9年分の納付額は27.3万円から47.7万円以上に動く
  • 個人の基準期間は法人に引き継がれないが、インボイスに登録していれば法人でも免税にはならない

よくある質問

免税事業者のときに「消費税込み」で請求していた場合、その消費税分は売上から除けますか。

除けません。免税事業者には消費税が課されていないため、請求書に消費税相当額を書いていても、受け取った金額の全額が課税売上高になります。消費税法基本通達1-4-5は、収受した金銭等の全額が基準期間の課税売上高になると定めています。

基準期間の途中からインボイス登録をした場合はどうなりますか。

登録日以後は課税事業者として消費税を納める期間になり、その部分の売上は税抜きで計算します。登録前の免税事業者だった部分は税込のまま数えるため、1年の中で扱いが分かれます。境目に近い場合は、税務署か専門家に計算を確認する価値があります。

法人化すると、個人の売上が1,000万円を超えていた事実は消えますか。

法人の納税義務は法人自身の基準期間で判定するため、個人事業の売上は引き継ぎません。ただし資本金1,000万円以上の法人や、設立1期目の前半6か月(特定期間)の売上と給与がいずれも1,000万円を超えた場合などは、基準期間がなくても課税になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。