税金の基礎
法人成りで設備を会社に売ると、償却資産税の評価は取得価額からやり直し
結論
償却資産の評価は所有者ごとに取得年月・取得価額から計算するので、法人成りで設備を会社に売ると、会社は譲渡価額を取得価額として評価をやり直します。令和4年に600万円で買った耐用年数8年の設備を令和8年4月に帳簿価額300万円で会社へ移すと、令和9年度の評価額は個人のままなら166.1万円のところ262.5万円になり、令和9〜10年度の税額は個人のまま2.3万円に対し6.4万円になります(東京都の計算方法)。
- 賦課期日は毎年1月1日。法人成りした年度は個人に課税され、会社は翌年1月1日の所有分から申告・課税される
- 前年中に取得した資産は、取得月にかかわらず半年分だけ減価する。評価額は定率で下がり、取得価額の5%が下限
- 免税点150万円は同一の者ごとに判定する(地方税法351条)。個人と会社は別の納税義務者になる
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
法人成りで個人の設備を会社に移すとき、話題になるのは売値と所得税・消費税です。償却資産税(固定資産税の償却資産)は見落とされがちですが、評価の仕組み上、引き継いだ時点で金額が変わります。
理由は単純で、償却資産は所有者ごとに、その人の取得年月と取得価額から評価するからです。会社が個人から買えば、会社にとっての取得価額は譲渡価額、取得年月は譲渡した月になり、評価が最初から始まります。
償却資産は「取得年月・取得価額」で一品ごとに評価する
東京都主税局の案内によると、償却資産の評価と税額は次のように計算します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 納税義務者 | 毎年1月1日(賦課期日)現在の所有者 |
| 前年中に取得した資産 | 取得価額×A(取得月にかかわらず半年分を償却) |
| 前年前に取得した資産 | 前年度評価額×B(1年分を償却) |
| 下限 | 取得価額の5% |
| 税額 | 課税標準額(1,000円未満切捨て)×1.4%。150万円未満は課税しない |
| 申告 | 1月1日現在の資産の内容を1月31日までに申告 |
AとBは耐用年数ごとの減価残存率で、耐用年数8年なら減価率0.250、Aは0.875、Bは0.750です。帳簿の減価償却を定額法でしていても、償却資産の評価は定率で下がっていきます。
償却資産税の基本(150万円の免税点は評価額の合計、40万円未満の即時償却資産も申告対象)は償却資産税は150万円未満でも申告で扱っています。
600万円の設備を、帳簿価額300万円で会社に移した例
個人事業主が令和4年4月に600万円で取得した設備(耐用年数8年)を、令和8年4月に会社へ帳簿価額で売るとします。個人の帳簿は定額法(償却率0.125)で、令和8年3月末の帳簿価額は300万円です。
償却資産の評価額と税額(東京都の計算方法)
| 年度 | 個人のまま持ち続けた場合の評価額 | 税額 | 法人成りした場合の所有者 | 評価額 | 税額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 525.0万円 | 73,500円 | 個人 | 525.0万円 | 73,500円 |
| 令和6年度 | 393.8万円 | 55,100円 | 個人 | 393.8万円 | 55,100円 |
| 令和7年度 | 295.3万円 | 41,300円 | 個人 | 295.3万円 | 41,300円 |
| 令和8年度 | 221.5万円 | 30,900円 | 個人 | 221.5万円 | 30,900円 |
| 令和9年度 | 166.1万円 | 23,200円 | 会社 | 262.5万円 | 36,700円 |
| 令和10年度 | 124.6万円 | 0円 | 会社 | 196.9万円 | 27,500円 |
| 令和11年度 | 93.4万円 | 0円 | 会社 | 147.7万円 | 0円 |
| 令和12年度 | 70.1万円 | 0円 | 会社 | 110.7万円 | 0円 |
| 合計 | 224,000円 | 265,000円 |
この設備1つだけを持つ場合。評価額は円未満を切り捨て、課税標準額は1,000円未満、税額は100円未満を切り捨てた。東京都の電算システムは率の処理で小数点以下第4位を四捨五入するため、実際の決定額と数円ずれることがある。再計算は
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令和8年度までは、1月1日に個人が持っていたので個人に課税されます。会社に課税されるのは令和9年度からで、評価は会社の取得価額300万円×0.875=262.5万円から始まります。
個人のまま持ち続けていれば令和9年度の評価額は166.1万円で、令和10年度には150万円を下回って税額0円でした。法人成りした場合は、令和10年度も196.9万円で課税され、2年間で4.1万円多くなります。
評価が上がるのは、帳簿価額が評価額より高いから
差が出たのは、会社の取得価額(帳簿価額300万円)が、その時点の個人の評価額(令和8年度221.5万円)より高かったからです。帳簿は定額法で毎年同じ額ずつ減り、償却資産の評価は定率で最初に大きく減るので、取得から数年は帳簿価額のほうが高くなりがちです。
逆に、時価が帳簿価額より低い設備を時価で売れば、会社の取得価額は下がり、評価も低いところから始まります。ただし、個人から会社への売値は所得税・消費税にも響きます。売値の決め方は法人成りの資産引継ぎ。車・パソコンは時価で売るのかで整理しています。
免税点は、個人と会社で別々に判定する
償却資産の免税点150万円は、地方税法351条で「同一の者について」判定するとされています。個人と会社は別の納税義務者なので、免税点も別々です。
法人成りの際に、設備の一部を会社に売り、残りを個人が持って会社に貸す形を取ると、個人と会社がそれぞれ150万円の免税点を持つことになります。合計で300万円近い評価額の資産を持っていても、分かれていれば両方とも課税されない場合があります。
一方で、売らずに個人が貸すと、個人には賃貸料の収入が生じ、会社は賃借料を経費にします。償却資産税だけで所有の形を決めるのは、税額の小ささからみて筋がよくありません。法人化するかどうかは、まず自分の売上と経費で手取りの差を確かめ、資産の移し方はそのあとで考えてください(個人事業主の法人化の目安と損益分岐点)。
法人成りの年の申告で気を付けること
1月1日の所有者に課税されるので、法人成りした年度の償却資産税は個人が払います。年の途中で会社に移しても、月割で精算する仕組みはありません。
翌年1月には、個人と会社の両方に申告の手続きが生じます。個人は資産が減少したこと、会社は新たに取得した資産を、それぞれ1月31日までに申告します。会社の申告では、取得年月を譲渡を受けた月、取得価額を譲渡価額として書きます。
まとめ
- 償却資産は毎年1月1日の所有者に、取得年月・取得価額・耐用年数から一品ごとに評価して課税される
- 法人成りで設備を会社に売ると、会社は譲渡価額を取得価額として評価を最初からやり直す。前年中の取得は半年分だけ減価する
- 600万円の設備を帳簿価額300万円で移した例では、令和9〜10年度の税額が個人のまま2.3万円から6.4万円に増える
- 帳簿(定額法)の価額が償却資産の評価額(定率)より高いと、引継ぎで評価が上がる
- 免税点150万円は個人と会社で別々に判定する。法人成りした年度は個人に課税され、会社は翌年度から
よくある質問
法人成りした年の償却資産税は、個人と会社のどちらが払いますか?
1月1日(賦課期日)現在の所有者に課税されます。たとえば令和8年4月に会社へ移した設備は、令和8年1月1日には個人が持っていたので令和8年度は個人に課税され、会社は令和9年1月1日の所有分として令和9年度から課税されます。
会社が設備を引き継いだら、償却資産の申告は必要ですか?
必要です。償却資産を持つ人は、毎年1月1日現在の資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数など)を1月31日までに申告します。会社は自分の取得年月・取得価額で申告し、個人は資産が減少したことを申告します。
設備を会社に売らず、個人が会社に貸したらどうなりますか?
所有者は個人のままなので、償却資産の評価は個人の取得年月・取得価額で続きます。免税点150万円は同一の者ごとに判定するので、個人に残した資産と会社が持つ資産は別々に150万円を判定します。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。