税金の基礎

法人化した年に届く住民税は個人事業の額。下がるのは早くて翌年6月

個人住民税は前年の所得に課税されるため、法人成りした年の6月に届く納付書は個人事業のときの金額です。事業所得800万円なら59.3万円。役員報酬だけの34.4万円になるのは、年の途中で法人化した場合は2年後の6月からです。

法人化して手取りが増えても、住民税の納付書はすぐには軽くなりません。個人住民税は前年の所得に対して課税されるからです。事業所得800万円だった人が法人成りすると、その年の6月に届くのは個人事業のときの59.3万円のほうです。役員報酬だけを前提にした34.4万円に下がるのは、年の途中で法人化した場合は2年後の6月からになります。

法人成りした年の6月に届くのは、個人事業のときの住民税

個人住民税は、1月1日現在の住所地の区市町村が、前年1年間の所得に対して課税します(東京都主税局「個人住民税」)。所得割は前年の所得金額に応じて計算し、都民税4%・区市町村民税6%の合計10%です。これに均等割が定額で乗ります。

つまり、2026年に個人事業を廃業して会社を作った人に2026年6月から届く納付書は、2025年の事業所得に対するものです。廃業したこと、法人になったことは、この金額に影響しません。

納め方も個人事業のときと同じです。給与所得者でも公的年金受給者でもない人は、区市町村から送られる納税通知書で年4回に分けて納めます(普通徴収)。納期は6月・8月・10月・12月または1月で、区市町村によって月が異なります。

下がった金額になるのがいつからかは、いつ法人化したかで1年ずれます。1月1日から役員報酬だけに切り替われば、翌年6月分から役員報酬に対する金額になります。年の途中で法人成りすると、その年は事業所得と役員報酬が混ざるため、役員報酬だけを前提にした金額になるのは2年後の6月からです。

所得税の側にも似た時間差がありますが、向きが逆です。所得税の予定納税はその年の税額を先に払う仕組みで、予定納税はいくらから?個人事業主の入口は事業所得482万円で扱っています。住民税は逆に、前年分を後から払います。法人成りの年は、先払いの所得税と後払いの住民税が同じ年に重なることになります。

いくら下がるのか。所得別に計算した

法人化して役員報酬だけを受け取る状態に落ち着くと、個人住民税は給与所得に対する額まで下がります。判定ツールと同じ計算エンジンで、事業所得別に出しました。

事業所得個人のままの住民税(年)最適な役員報酬法人化後の住民税(年)下がる割合
400万円235,300円月28万円139,000円−96,300円40.9%
600万円414,200円月42万円248,800円−165,400円39.9%
800万円593,000円月54万円343,600円−249,400円42.1%
1,000万円777,400円月54万円343,600円−433,800円55.8%
1,200万円976,900円月54万円343,600円−633,300円64.8%
1,500万円1,276,900円月54万円343,600円−933,300円73.1%
1,800万円1,576,900円月90万円719,900円−857,000円54.3%
2,100万円1,876,900円月95万円776,800円−1,100,100円58.6%
2,500万円2,290,900円月100万円833,800円−1,457,100円63.6%
3,000万円2,822,400円月100万円833,800円−1,988,600円70.5%

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 個人住民税の所得割+均等割(森林環境税1,000円を含む5,000円)。法人が納める法人住民税の均等割は含まない

読み取れることが1つあります。下がる割合は、所得が高いほど大きくなるわけではありません。 事業所得1,500万円の73.1%が最大で、そこから1,800万円になると54.3%まで戻ります。

理由は最適な役員報酬の動き方にあります。事業所得800万円から1,500万円までは、手取りが最大になる役員報酬が月54万円で止まります。事業所得が増えても報酬は増えず、超えた分は法人に残るため、個人側の住民税は343,600円のまま動きません。ところが1,800万円になると最適報酬が月90万円に跳ね、給与所得が一段増えて住民税は719,900円に倍増します。報酬の決め方そのものは役員報酬はいくらが最適か。96通り計算して分かった決め方で扱っています。

なお、どこまで下がっても均等割の5,000円は残ります。所得割がゼロでも、その区市町村に住んでいる限りかかるためです。これは会社に対してかかる法人住民税の均等割は赤字でも年7万円とは別の税で、法人化すると個人の5,000円と法人の7万円を両方負担します。

判定ツールの数字は定常状態。移行期は入っていない

判定ツールが出す比較は、法人化が落ち着いたあとの1年を切り出したものです。

事業所得個人のまま法人化(最適報酬)最適な役員報酬実質差額(年)判定
400万円303.1万円274.5万円月28万円−48.6万円個人のまま有利
600万円427.3万円409.7万円月42万円−37.6万円個人のまま有利
800万円540.7万円536.6万円月54万円−24.1万円個人のまま有利
1,000万円657.1万円662.4万円月54万円−14.7万円ほぼ互角
1,200万円774.2万円787.6万円月54万円−6.6万円ほぼ互角
1,500万円928.2万円972.0万円月54万円+23.9万円法人化が有利
1,800万円1082.1万円1149.1万円月90万円+47.0万円法人化が有利
2,100万円1232.0万円1332.6万円月95万円+80.6万円法人化が有利
2,500万円1395.0万円1551.1万円月100万円+136.1万円法人化が有利
3,000万円1599.6万円1816.8万円月100万円+197.2万円法人化が有利

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額

この表の「法人化」側に入っている住民税は、1つ前の表の右側の金額です。法人成りした年に実際に払う住民税は左側なので、初年度の現金の出方はこの表より重くなります。差額そのものが変わるわけではありません。個人のままでも同じ納付書は届くからです。変わるのは、それをどの財布から払うかです。

個人事業なら、事業の入金と生活費は同じ財布でした。法人化すると会社と個人の財布が分かれ、前年分の住民税は役員報酬の手取りから払うことになります。その重さを計算しました。

事業所得法人成りした年に届く住民税定常状態の住民税役員報酬の手取り(年)前者が手取りに占める割合
400万円235,300円139,000円2,705,716円8.7%(定常時 5.1%)
600万円414,200円248,800円3,998,552円10.4%(定常時 6.2%)
800万円593,000円343,600円5,047,516円11.7%(定常時 6.8%)
1,000万円777,400円343,600円5,047,516円15.4%(定常時 6.8%)
1,200万円976,900円343,600円5,047,516円19.4%(定常時 6.8%)
1,500万円1,276,900円343,600円5,047,516円25.3%(定常時 6.8%)
1,800万円1,576,900円719,900円7,843,576円20.1%(定常時 9.2%)
2,100万円1,876,900円776,800円8,222,736円22.8%(定常時 9.4%)
2,500万円2,290,900円833,800円8,601,696円26.6%(定常時 9.7%)
3,000万円2,822,400円833,800円8,601,696円32.8%(定常時 9.7%)

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 「役員報酬の手取り」は役員報酬から社会保険料の本人負担分・所得税・住民税を引いた額。法人に残る利益は含まない

事業所得1,500万円で法人化した人は、初年度に役員報酬の手取りの4分の1にあたる127.7万円を住民税として納めます。定常状態の6.8%とは別の景色です。役員報酬を手取りが最大になる水準に置くと、超過分は法人に残ります。法人に残った利益をすぐ個人に戻せば別の税負担が生じるため、この年の個人側の資金繰りは事前に見ておく必要があります。

翌年は、給与から引かれる分と自分で納める分に分かれる

年の途中で法人成りすると、その年は個人事業の所得と役員報酬の両方が発生します。翌年の住民税は、この2つを合算した所得に対して1つの税額として計算されます。徴収の方法だけが分かれます。

  • 給与所得に対する分 … 会社が給与から差し引きます(特別徴収)。選べません
  • 給与以外の所得に対する分 … 「特別徴収」と「自分で納付」を選べます

この選択は確定申告書第二表の「住民税に関する事項」で行います。国税庁の説明では、給与から差し引くことを希望する場合は「特別徴収」欄に、給与から差し引かず自分で納付することを希望する場合は「自分で納付」欄に記入します。一方、給与所得に対する分については「給与から差し引かれます」と明記されており、こちらは選択の対象外です。

この合算年の税額そのものは、法人成りした月・廃業までの売上・その年の国民健康保険料の月割など、条件で大きく変わります。当サイトの計算エンジンは通年の姿を計算するもので、年の途中で保険が国保から協会けんぽに切り替わる年を再現していません。根拠のない概算を出さないため、この年の金額は載せていません。 廃業年の側の手続きと期限は法人成りしたら、個人事業の店じまいに5つの期限があるに整理してあります。

一人社長の会社は「総従業員数が2人以下」で普通徴収にできる

住民税の特別徴収は事業主の義務です。地方税法第321条の4により、所得税の源泉徴収義務がある給与支払者は特別徴収義務者に指定されます。京都市は対象を「パート・アルバイト、役員等を含むすべての従業員等」と説明しており、社長1人の会社でも社長自身が対象です。本人が「自分で納めたい」と希望しても、それを理由に普通徴収にすることはできません。

ただし、事業主の側から申し出る例外があります。給与支払報告書を提出するとき、次の理由に当たる人は普通徴収に切り替えられます。東京都と都内62区市町村が使っている符号です。

符号普通徴収にできる理由
普A事業所の総従業員数が2人以下(普B〜普Fに該当する人を除いた人数)
普B他の事業所で特別徴収
普C給与が少なく税額が引けない
普D給与の支払が不定期
普E事業専従者(個人事業主のみ対象)
普F退職者または退職予定者(5月末日まで)

出典:東京都・都内区市町村「個人住民税 特別徴収の事務手引き」(令和8年1月)

一人社長の会社は普Aに当たります。 受給者が社長1人なら総従業員数は2人以下だからです。同じ符号はさいたま市の令和8年度(令和7年分)の様式にもあり、東京都だけの運用ではありません。ただし符号の内容や運用は区市町村ごとに定められているので、提出先に確認してください。

手続きは、給与支払報告書の個人別明細書の摘要欄に符号を書き、普通徴収切替理由書に人数を記入して出す形です。この理由書を出さなければ、原則どおり特別徴収の対象になります。

住民税の納期の特例は、所得税のものとは別の申請

特別徴収を選んだ場合、徴収期間は6月から翌年5月までの12か月で、納期限は差し引いた月の翌月10日です。給与の支払いを受ける者が常時10人未満の事業所は、申請して区市町村長の承認を受けると、年2回の納入に変更できます。

ここは混同しやすいところです。所得税の源泉徴収と住民税の特別徴収では、納期の特例の申請先も納期限も違います。

源泉所得税個人住民税の特別徴収
申請先税務署区市町村
納期限(特例あり)7月10日/翌年1月20日12月10日/6月10日
対象期間1月〜6月分/7月〜12月分6月〜11月分/12月〜翌年5月分

源泉所得税の側は一人会社の源泉所得税は年2回にできる。納期の特例で扱っています。どちらも「常時10人未満」が条件ですが、片方を申請しても、もう片方は自動では適用されません。 承認後に10人未満でなくなったときは、区市町村長に届け出る必要があります。

なお、この特例は納期をまとめる制度であって、毎月の給与から差し引く事務がなくなるわけではありません。差し引いた税は従業員からの預り金なので、納期までの間に使ってしまわないよう分けて管理します。

住民税の所得割額は、納める税額としてだけでなく、保育料を決める物差しとしても使われます。0歳から2歳児クラスの子どもがいる場合、法人化で所得割額が下がると保育料の負担区分も下がります。横浜市の実額で計算した額は保育料は法人化で年36万円下がるにまとめました。

まとめ

  • 個人住民税は前年の所得に対する課税なので、法人成りした年の6月に届く納付書は個人事業のときの金額。事業所得800万円で59.3万円
  • 役員報酬だけを前提にした金額(同じ条件で34.4万円)になるのは、年の途中で法人化した場合は2年後の6月から
  • 下がる割合が最大なのは事業所得1,500万円の73.1%。1,800万円では最適な役員報酬が月90万円に跳ぶため54.3%まで戻る
  • 判定ツールの実質差額は定常状態の数字。初年度は同じ差額でも、住民税を役員報酬の手取りから払うぶん資金繰りが重い
  • 一人社長の会社は「総従業員数が2人以下」(普A)に当たるため、給与支払報告書の提出時に普通徴収へ切り替えられる

一般論の金額ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。判定ツールは定常状態を計算します。初年度の資金繰りを見るときは、そこに前年分の住民税を足して考えてください。計算の前提は計算方法についてにまとめてあります。

よくある質問

法人化したら、個人事業のときの住民税は払わなくてよくなりますか?

いいえ。個人住民税は前年の所得に対して課税されるため、廃業しても前年分の納付書は翌年に届きます。法人化や廃業によって免除される仕組みはありません。

会社を作ったら、住民税は役員報酬から天引きされますか?

給与所得に対する分は特別徴収として給与から差し引かれます。ただし切り替わるのは会社が給与支払報告書を提出した後の6月分からで、法人成りの直後は普通徴収の納付書が届きます。

個人住民税の均等割と、法人住民税の均等割は同じものですか?

別のものです。個人住民税の均等割は年5,000円(森林環境税1,000円を含む)で住んでいる限りかかり、法人住民税の均等割は会社に対して年7万円からかかります。法人化すると両方を負担します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。