税金の基礎

保育料は法人化で年36万円下がる。動くのは0〜2歳児クラスだけ

認可保育所の保育料は市町村民税の所得割額で決まります。法人化して役員報酬にすると所得割額が下がり、負担区分が動きます。横浜市の令和8年度の実額で、売上別・役員報酬別に下がる額を計算しました。住宅ローン控除やふるさと納税では1円も動かない理由も扱います。

認可保育所の保育料は、世帯の市町村民税の所得割額で決まります。法人化して所得を役員報酬に変えると、この所得割額が下がります。

横浜市の令和8年度の表で計算すると、売上1,200万円・経費200万円の人が法人化した場合、負担区分はD27からD13へ14段下がり、保育料は月7万7,500円から月4万7,500円になります。年間で36万円です。

ただし効くのは0歳から2歳児クラスの間だけです。

3歳からは無償。動くのは0〜2歳児クラスだけ

こども家庭庁は、幼児教育・保育の無償化について「3歳から5歳までの全てのこどもたちの利用料が無償化されます」としています。0歳から2歳までは「住民税非課税世帯を対象として利用料が無償化されます」です。

子どもの年齢認可保育所の利用料
3歳児クラス〜5歳児クラス無償
0歳児クラス〜2歳児クラス世帯の所得に応じた保育料。住民税非課税世帯は無償

つまり保育料の話が金額として意味を持つのは、子どもが0歳から2歳児クラスにいる最長3年間です。多子軽減もあり、最年長の子を第1子と数えて、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無償になります。

なお通園送迎費・食材料費・行事費は無償化の対象外で、保護者の負担のままです。年収360万円未満相当世帯と、全世帯の第3子以降については副食費が免除されます。

保育料を決めているのは、税額控除を引く前の所得割額

保育料の根拠は子ども・子育て支援法施行令4条2項です。ここで使う額を同令は「市町村民税所得割合算額」と呼び、教育・保育給付認定保護者と同一世帯の者の市町村民税の所得割の額を合算したものと定めています。

横浜市はこの計算式を次のように示しています。

(合計所得金額(総所得金額等)− 所得控除)× 市民税率6% − 調整控除額 − 所得割の調整措置の額

ここに3つの落とし穴があります。

1つ目は、税額控除を引く前の額を使うことです。 横浜市は「住宅ローンやふるさと納税などにかかる【税額控除】の適用を受ける前の『市民税所得割額』を用います」と明記しています。対象は住宅借入金等特別税額控除・配当控除・寄附金税額控除・外国税額控除・配当割額または株式等譲渡所得割額の控除です。施行令も、これらの控除額があるときは「当該金額を加算した額とする」としています。

実際に納める住民税は下がっても、保育料の判定額は下がりません。保育料を動かせるのは所得控除までで、税額控除では1円も動きません。 住宅ローン控除の効き方は住宅ローン控除は法人化で年3.5万円使えなくなる、ふるさと納税の上限はふるさと納税の上限は法人化で下がるで扱いました。どちらも保育料には効きません。

2つ目は、税率が6%で固定されていることです。 政令指定都市は平成30年度から市民税の税率が6%から8%になりましたが、横浜市は「利用料における市民税所得割課税額は6%の税率を用いて算出しています」としています。住んでいる市が政令指定都市かどうかで保育料の判定額が変わらないようにするためです。

3つ目は、世帯で合算することです。 保護者とその配偶者の所得割額を足した額で判定します。共働きなら二人分です。

国の基準は6段階

施行令4条2項が定める、満3歳未満の子どもについての国の基準額です。市町村はこの額を上限として、自分の市の保育料を条例等で決めます。

市町村民税所得割合算額国の基準額(保育標準時間)保育短時間
市町村民税世帯非課税0円0円
0円以上 48,600円未満19,500円19,300円
48,600円以上 97,000円未満30,000円29,600円
97,000円以上 169,000円未満44,500円43,900円
169,000円以上 301,000円未満61,000円60,100円
301,000円以上 397,000円未満80,000円78,800円
397,000円以上104,000円102,400円

段が6つしかないので、国基準だけを見ると所得割額が大きく動かないと保育料も動きません。実際の市町村はこれをもっと細かく刻んでいます。

横浜市は27段階に刻んでいる

令和8年度の横浜市の負担区分です。認可保育所・第1子・保育標準時間の月額を載せています。

負担区分市民税所得割額認可保育所・第1子・保育標準時間
A生活保護世帯0円
B市民税非課税0円
C市民税均等割のみ6,700円
D10円 〜 10,000円8,200円
D210,001円 〜 48,600円10,000円
D348,601円 〜 50,400円12,500円
D450,401円 〜 57,700円14,500円
D557,701円 〜 77,100円16,500円
D677,101円 〜 97,000円20,400円
D797,001円 〜 102,600円25,000円
D8102,601円 〜 120,600円29,000円
D9120,601円 〜 138,600円34,000円
D10138,601円 〜 169,000円38,000円
D11169,001円 〜 174,900円41,500円
D12174,901円 〜 192,900円44,500円
D13192,901円 〜 211,200円47,500円
D14211,201円 〜 228,900円50,200円
D15228,901円 〜 246,700円53,000円
D16246,701円 〜 255,700円55,000円
D17255,701円 〜 264,700円57,000円
D18264,701円 〜 273,700円58,000円
D19273,701円 〜 282,700円59,000円
D20282,701円 〜 291,700円60,000円
D21291,701円 〜 301,000円61,000円
D22301,001円 〜 309,700円64,500円
D23309,701円 〜 335,800円68,000円
D24335,801円 〜 361,300円71,500円
D25361,301円 〜 387,700円73,600円
D26387,701円 〜 397,000円75,600円
D27397,001円以上77,500円

出典:横浜市「令和8年度横浜市子ども・子育て支援新制度利用料(保育料)(月額)」。データは data/official/hoikuryo-yokohama-r08/ に保存し、scripts/hoikuryo-yokohama.py で公式PDFから再生成できます。小規模保育事業等は別の金額です。第2子は同じ区分でも大幅に下がり、第3子以降は無料です。

最高区分のD27でも月7万7,500円で、国の基準額10万4,000円より2万6,500円低くなっています。保育料の実額は国の基準ではなく、住んでいる市の表で決まります。

売上別に、いくら下がるか

横浜市・40歳未満・青色申告65万円・インボイス登録済み・合同会社という条件で、個人事業のままの場合と、法人化して最適な役員報酬にした場合を比べます。

売上(経費200万円)個人の所得割額負担区分保育料(月)法人化後の役員報酬法人化後の所得割額負担区分保育料(月)差(年)
800万円244,000円D1553,000円月42万円146,200円D1038,000円180,000円
1000万円350,500円D2471,500円月54万円203,000円D1347,500円288,000円
1200万円463,900円D2777,500円月54万円203,000円D1347,500円360,000円
1500万円643,100円D2777,500円月54万円203,000円D1347,500円360,000円
2000万円943,100円D2777,500円月90万円428,700円D2777,500円0円

保護者1人分の所得割額で計算しています。配偶者に所得があればその額が加算されます。表は scripts/hoikuryo-yakuin-hoshu.mjs で再生成できます。

売上1,200万円から1,500万円の帯で年36万円。当サイトが計算する法人化の手取り差と同じ桁か、それ以上になります。

差が出る理由は、法人化すると個人の所得が役員報酬で頭打ちになるからです。売上1,200万円でも1,500万円でも最適な役員報酬は月54万円で止まるので、所得割額も20万3,000円で変わりません。一方、個人事業のままなら売上がそのまま所得に乗り、最高区分に張り付きます。

売上2,000万円になると最適な役員報酬が月90万円まで上がり、所得割額42万8,700円で個人と同じD27になります。この帯では保育料は動きません。

配偶者に所得がある場合は、その所得割額が両側に加算されます。個人事業側はすでに最高区分なので変わらず、法人化側だけが上がります。共働きなら差は表より縮む方向にしか動きません。

役員報酬をどこまで下げると、どこまで落ちるか

売上1,200万円のまま、役員報酬だけを変えたときの負担区分です。

役員報酬(月)住民税の課税所得市民税所得割額負担区分保育料(月)国の基準額
月10万円0円0円C6,700円19,500円
月20万円828,600円48,100円D210,000円19,500円
月30万円1,497,900円88,300円D620,400円30,000円
月40万円2,270,136円134,700円D934,000円44,500円
月54万円3,409,296円203,000円D1347,500円61,000円
月70万円4,883,916円291,400円D2060,000円61,000円

役員報酬を月54万円から月30万円へ下げると、保育料は月4万7,500円から月2万400円へ、年32万5,200円下がります。ただし報酬を下げれば会社に利益が残り、法人税等が増えます。役員報酬をいくらにするかの計算は役員報酬はいくらが最適かにまとめています。

保育料だけを最小にする報酬額は、手取りを最大にする報酬額とは一致しません。0〜2歳児クラスの期間だけの話なので、その数年に限った判断になります。

効いてくるのは、法人化した翌年の9月から

施行令は、判定に使う市町村民税を「特定教育・保育のあった月の属する年度(4月から8月までの場合は前年度)分」としています。保育料は年度の途中で切り替わります。

保育料の月判定に使う市町村民税もとになる所得
4月〜8月前年度分前々年の所得
9月〜翌年3月当年度分前年の所得

2026年に法人化した場合、2026年分の所得が反映されるのは2027年度の市町村民税です。保育料に効いてくるのは2027年9月分からになります。法人化した年の保育料は、個人事業だった年の所得のままです。

住民税そのものが1年遅れで来る仕組みは法人化した年に届く住民税は個人事業の額で扱いました。保育料はさらにその先にあります。

判定に入れるべきか

当サイトの判定ツールは保育料を計算に含めていません。0〜2歳児クラスの子どもがいるかどうか、住んでいる市の表、世帯の構成で額が変わりすぎるためです。前提は計算方法についてに置いています。

該当する人にとっては、年18万〜36万円は無視できない額です。ただし次の3点で見方が変わります。

  • 効くのは0歳から2歳児クラスの間だけ。3歳児クラスからは無償で差が消える
  • 額は市町村ごとに違う。上の表は横浜市の令和8年度のもの
  • 共働きなら世帯合算で差は縮む

自分の市の表を見て、いま住んでいる市の負担区分に自分の所得割額を当てはめてください。所得割額は毎年6月ごろに届く住民税の決定通知書で確認できます。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

まとめ

  • 保育料が発生するのは0歳から2歳児クラスだけ。3歳児クラスからは無償化されている
  • 判定に使うのは税額控除を引く前の市町村民税所得割額。住宅ローン控除もふるさと納税も1円も効かない
  • 政令指定都市でも**税率6%**で算定する
  • 横浜市は27段階。最高区分D27で月7万7,500円、国の基準額10万4,000円より2万6,500円低い
  • 売上1,200万〜1,500万円の帯では、法人化でD27からD13へ14段下がり、年36万円下がる
  • 売上2,000万円では最適な役員報酬が月90万円まで上がるため、差は0円
  • 反映されるのは法人化した翌年の9月分から

よくある質問

法人化すると保育料は安くなりますか?

0歳から2歳児クラスの子どもがいる場合は下がることがあります。保育料は市町村民税の所得割額で決まり、法人化して役員報酬にすると個人の所得が下がるためです。3歳児クラス以降は無償化されているので、保育料自体が発生せず影響もありません。

住宅ローン控除やふるさと納税をすれば保育料も下がりますか?

下がりません。保育料の算定に使う所得割額は、住宅借入金等特別税額控除・寄附金税額控除・配当控除・外国税額控除などの税額控除を適用する前の額です。所得割額を動かせるのは所得控除までで、税額控除は保育料に効きません。

法人化したら、いつから保育料に反映されますか?

4月から8月までの保育料は前年度分、9月から翌年3月までは当年度分の市町村民税で判定します。2026年に法人化した場合、その所得が反映されるのは2027年度の市町村民税なので、保育料に効いてくるのは2027年9月分からです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。