税金の基礎
東京都の児童育成手当は所得413.8万円で止まる。ひとり親の社長は報酬月49万円まで
結論
東京都の児童育成手当(育成手当は子1人月13,500円)は、申請者の所得額が限度額以上だと支給されません。区の案内による限度額は扶養親族等1人で413.8万円で、所得額は事業所得や給与所得から一律8万円(給与所得はさらに10万円)を引いて計算します。子1人のひとり親の個人事業主は売上−経費486.8万円で止まり、法人化すると役員報酬月49万円まで受給できます。報酬を最適な月54万円から月49万円に下げると手取りは年5.2万円減りますが、手当は年16.2万円です。
- 手当の所得額は、所得から社会保険料相当として一律8万円、給与所得・公的年金等がある人はさらに10万円を引く。実際に払った社会保険料は引けない
- 判定に使うのは前年の所得。令和8年6月分から令和9年5月分までは令和7年中の所得で判定する(練馬区)
- 子2人なら限度額は451.8万円で、最適な役員報酬の月54万円がちょうど線を越える。月53万円に下げれば手取りの減少は年2.5万円で、手当は年32.4万円
東京都に住むひとり親には、国の児童扶養手当とは別に、区市町村の条例による児童育成手当があります。所得の限度額は児童扶養手当よりかなり高く、売上数百万円の個人事業主でも受け取れる帯があります。その線の位置が、法人化して役員報酬にすると大きく動きます。
育成手当は子1人月13,500円。限度額は扶養1人で413.8万円
東京都福祉局の手当のあらまし(令和8年改訂版)によると、児童育成手当には2種類あります。
| 手当の種類 | 対象 | 手当額(月額) |
|---|---|---|
| 育成手当 | ひとり親家庭などの18歳到達年度末までの児童 | 児童1人につき13,500円 |
| 障害手当 | 一定の障害のある20歳未満の児童 | 児童1人につき15,500円 |
※ 東京都福祉局「手当のあらまし(令和8年改訂版)」。区市町村の条例に基づくため、取扱いが異なる場合がある
所得の限度額は育成手当・障害手当で共通です。中央区・練馬区が示している限度額は次のとおりです。
| 扶養親族等の数 | 所得制限額 |
|---|---|
| 0人 | 375.8万円 |
| 1人 | 413.8万円 |
| 2人 | 451.8万円 |
| 3人以上 | 1人につき38万円加算 |
※ 中央区「児童育成手当(育成)」。練馬区は一律控除8万円を加えた額(0人383.8万円など)で示している。老人扶養親族は1人10万円、特定扶養親族は1人25万円の加算がある。東京都福祉局の手当のあらまし(令和8年改訂版)は、令和7年6月以後の月分の限度額を0人366.1万円・1人404.1万円としており、区の案内と差があるため、申請先の区市町村で確認してください
申請者の所得額が限度額以上だと、手当は支給されません。児童扶養手当のように一部支給の段階はなく、線を越えると0円になります。
手当の所得額は、所得から8万円と10万円を引く
ここでいう「所得額」は、所得税の課税所得とは別の計算です。中央区・練馬区の案内をまとめると次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出発点 | 収入から給与所得控除または必要経費を引いた所得(確定申告書の所得金額) |
| 一律控除 | 社会保険料相当として8万円(実際の社会保険料は引かない) |
| 給与所得・公的年金等がある場合 | さらに10万円(合計額が10万円未満ならその額) |
| その他の控除 | 医療費控除・小規模企業共済等掛金控除などの控除相当額、障害者控除27万円、特別障害者控除40万円、ひとり親控除35万円、寡婦控除27万円など |
実際に払った国民健康保険料や国民年金保険料は引けません。 一律8万円に置き換わります。この構造は児童扶養手当と同じで、児童扶養手当と法人化で詳しく扱いました。
一方、給与所得には給与所得控除がかかり、さらに10万円を引けます。同じ事業の利益でも、事業所得として受け取るか、役員報酬の給与所得として受け取るかで、手当の所得額が大きく変わります。
個人事業主は売上−経費486.8万円で止まる
子1人のひとり親(40歳未満・東京23区)で、個人事業主のままの場合と、法人化して手取りが最大になる役員報酬を取った場合を計算しました。
子1人(扶養親族等1人・限度額413.8万円)
| 売上−経費 | 個人:事業所得 | 個人:手当の所得額 | 判定 | 法人化:最適な役員報酬 | 法人化:給与所得 | 法人化:手当の所得額 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 335万円 | 327万円 | 支給 | 月28万円 | 227.2万円 | 209.2万円 | 支給 |
| 500万円 | 435万円 | 427万円 | 支給なし | 月36万円 | 301.6万円 | 283.6万円 | 支給 |
| 600万円 | 535万円 | 527万円 | 支給なし | 月42万円 | 359.2万円 | 341.2万円 | 支給 |
| 700万円 | 635万円 | 627万円 | 支給なし | 月48万円 | 416.8万円 | 398.8万円 | 支給 |
| 800万円 | 735万円 | 727万円 | 支給なし | 月54万円 | 474.4万円 | 456.4万円 | 支給なし |
| 1,000万円 | 935万円 | 927万円 | 支給なし | 月54万円 | 474.4万円 | 456.4万円 | 支給なし |
子2人(扶養親族等2人・限度額451.8万円)
| 売上−経費 | 個人:手当の所得額 | 判定 | 法人化:最適な役員報酬 | 法人化:手当の所得額 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 427万円 | 支給 | 月36万円 | 283.6万円 | 支給 |
| 600万円 | 527万円 | 支給なし | 月42万円 | 341.2万円 | 支給 |
| 700万円 | 627万円 | 支給なし | 月48万円 | 398.8万円 | 支給 |
| 800万円 | 727万円 | 支給なし | 月54万円 | 456.4万円 | 支給なし |
※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・15歳以下の子・青色申告(e-Tax)65万円・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。手当の所得額は一律8万円(給与所得は加えて10万円)だけを引き、ひとり親控除などのその他の控除は引かない(scripts/jido-ikusei-teate-tokyo.mjs で再計算できる)
個人事業主のままでは、子1人なら事業所得421.8万円(売上−経費486.8万円)、子2人なら事業所得459.8万円(売上−経費524.8万円)で手当が止まります。法人化すると、子1人なら役員報酬月50万円、子2人なら月54万円から止まります。
最適な報酬を少し下げると、手当のほうが大きい
計算エンジンが手取り最大とする役員報酬は、売上−経費800万〜1,500万円の帯で月54万円です。この報酬では、子1人でも子2人でも手当は止まります。報酬を線の内側まで下げた場合の差し引きを計算しました。
| 世帯 | 報酬の変更 | 手取りの減少(年) | 受け取れる手当(年) | 差し引き |
|---|---|---|---|---|
| 子1人 | 月54万円→月49万円 | 5.2万円 | 16.2万円 | +11.0万円 |
| 子2人 | 月54万円→月53万円 | 2.5万円 | 32.4万円 | +29.9万円 |
※ 売上−経費800万円・1,000万円のどちらでも手取りの減少は同じ。手取りは役員個人の手取りと、法人に残る額(引出コスト20%控除後)の合計。手当は育成手当13,500円×12か月×子の数
子2人の場合、報酬を月1万円下げるだけで、年29.9万円の差が出ます。 判定ツールは手当の受給を計算に入れていないため、ひとり親の社長が最適な報酬をそのまま採用すると、この差を取り逃がすことがあります。
ただし、手当の判定は前年の所得で行い、毎年6月分の手当から判定に使う年が切り替わります。練馬区は、令和8年6月分から令和9年5月分までは令和7年中の所得で判定するとしています。今年の報酬を下げた効果が手当に出るのは、翌年6月分からです。
児童扶養手当とは線の高さが違う
同じひとり親向けの手当でも、国の児童扶養手当は限度額がずっと低く、全部支給は扶養1人で所得107万円未満、一部支給は246万円未満です(東京都福祉局の手当のあらまし)。児童育成手当の413.8万円は、その倍近い高さにあります。
| 手当 | 扶養1人の限度額(所得額) | 線を越えたとき |
|---|---|---|
| 児童扶養手当(全部支給) | 107万円 | 一部支給に下がる |
| 児童扶養手当(一部支給) | 246万円 | 支給停止 |
| 児童育成手当 | 413.8万円 | 支給なし |
※ 東京都福祉局「手当のあらまし(令和8年改訂版)」、中央区
売上−経費500万〜800万円の個人事業主は、児童扶養手当はすでに止まっていても、児童育成手当は法人化すれば受け取れる帯にいます。障害手当(月15,500円)も同じ限度額なので、障害のある子を育てる世帯では同じ計算が当てはまります。ひとり親控除の500万円の線はひとり親控除の500万円ラインと法人化で扱いました。
判定ツールで自分の売上と経費から最適な報酬を出し、この記事の線の内側に収まるかを確かめてください。計算の前提は計算方法にまとめています。
まとめ
- 東京都の児童育成手当は、育成手当が子1人月13,500円、障害手当が月15,500円。申請者の所得額が限度額以上だと支給されない
- 中央区・練馬区の案内による限度額は扶養1人で413.8万円、2人で451.8万円。所得額は所得から一律8万円(給与所得はさらに10万円)を引いて計算する
- 子1人のひとり親の個人事業主は売上−経費486.8万円で止まり、法人化すると役員報酬月50万円から止まる
- 最適な役員報酬(月54万円)では止まる帯でも、子1人は月49万円、子2人は月53万円に下げれば受給でき、差し引きは年11.0万円・29.9万円のプラス
- 判定は前年の所得で、6月分から切り替わる。法人化した年の報酬が効くのは翌年6月分から
よくある質問
児童扶養手当と児童育成手当は両方受け取れますか。
受け取れます。東京都の手当のあらましでは、児童扶養手当(国の制度)と児童育成手当(区市町村の条例による制度)は別の手当として並んでいます。ただし所得の限度額や計算の細部が違うため、一方は受給でき他方は受給できない、ということが起こります。
ひとり親控除35万円は、手当の所得額から引けますか。
中央区や練馬区の控除一覧には、ひとり親控除35万円・寡婦控除27万円などが掲載されています。申請者本人にどの控除が適用されるかは区市町村によって確認が必要です。この記事の計算は、一律8万円と給与所得の10万円以外の控除を差し引かない前提です。
法人化した年の役員報酬は、いつから判定に使われますか。
児童育成手当の判定は前年の所得で行い、毎年6月分の手当から判定に使う年が切り替わります。法人化した年の役員報酬は、翌年の6月分からの判定に使われます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。