法人化の判断
年収1,000万円以上の自営業主は12年で26万→33万人。自営業主全体は55万人減
結論
労働力調査(詳細集計)では、自営業主は2013年の554万人から2025年の499万人へ55万人減りましたが、仕事からの年間収入が1,000万円以上の自営業主は26万人から33万人へ7万人増えました。雇人のない業主(一人で事業をする人)に限ると8万人から13万人です。年収500万円未満の層が69万人減り、500万円以上の層が23万人増えていて、自営業主は「数は減り、稼ぐ人は増えた」形に変わっています。1,000万円以上で会社の役員が占める割合(法人化率)は66.7%から69.2%で、ほぼ横ばいです。
- 年収1,000万円以上の役員は52万人から74万人へ22万人増えた。自営業主の増加(7万人)より大きいが、比率で見た法人化率は3ポイントほどしか動いていない
- 自営業主の収入分布で、500万〜699万円・700万〜999万円はそれぞれ8万人ずつ増えた。法人化を検討し始める所得帯の人数が厚くなっている
- 東京23区・40歳未満・単身の損益分岐点は事業所得1,266万円。年収1,000万円以上の自営業主33万人の多くは、分岐点の近くか上にいる
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
自営業主の数が減っていることは、労働力調査で見た自営業主と役員の推移で確かめました。では、収入の面ではどう変わったのか。労働力調査の詳細集計は、2013年から毎年、仕事からの年間収入の階級別に自営業主の数を公表しています。法人化を考える所得帯の人が、増えているのか減っているのかを見ます。
年収1,000万円以上の自営業主は26万→33万人
自営業主と会社などの役員について、年間収入1,000万円以上の人数を年ごとに並べました。役員の人数は、雇用者から役員を除く雇用者を差し引いて求めています。
| 年 | 自営業主 | うち1,000万円以上 | うち雇無業主 | 役員 | うち1,000万円以上 | 1,000万円以上の法人化率 | 全体の法人化率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2013年 | 554 | 26 | 8 | 344 | 52 | 66.7% | 38.3% |
| 2015年 | 543 | 26 | 9 | 348 | 57 | 68.7% | 39.1% |
| 2017年 | 528 | 28 | 10 | 350 | 61 | 68.5% | 39.9% |
| 2019年 | 531 | 27 | 10 | 335 | 57 | 67.9% | 38.7% |
| 2021年 | 521 | 28 | 10 | 343 | 67 | 70.5% | 39.7% |
| 2023年 | 512 | 27 | 11 | 337 | 68 | 71.6% | 39.7% |
| 2024年 | 505 | 31 | 13 | 344 | 72 | 69.9% | 40.5% |
| 2025年 | 499 | 33 | 13 | 349 | 74 | 69.2% | 41.2% |
※ 総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」年平均 表2-12-3・2-12-4(e-Stat)から当サイトが計算。単位は万人。役員=雇用者−役員を除く雇用者。法人化率=役員÷(役員+自営業主)。公表値が万人単位のため、差し引いた値には誤差がある
自営業主は12年で55万人減りましたが、年収1,000万円以上の自営業主は26万人から33万人へ増えました。このうち雇人のない業主、つまり一人で事業をしている人は8万人から13万人で、6割増えています。
同じ期間に、年収1,000万円以上の役員は52万人から74万人へ22万人増えました。役員の増え方のほうが大きいものの、自営業主も増えているため、1,000万円以上の層での法人化率は66.7%から69.2%と、3ポイントほどの動きにとどまります。
減ったのは年収500万円未満、増えたのは500万円以上
自営業主の収入の分布を、2013年と2025年で比べました。
| 年間収入 | 2013年 | 2025年 | 増減 | 2025年の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 100万円未満 | 136 | 124 | −12 | 26.1% |
| 100~199万円 | 107 | 82 | −25 | 17.2% |
| 200~299万円 | 84 | 63 | −21 | 13.2% |
| 300~399万円 | 68 | 59 | −9 | 12.4% |
| 400~499万円 | 42 | 40 | −2 | 8.4% |
| 500~699万円 | 37 | 45 | +8 | 9.5% |
| 700~999万円 | 22 | 30 | +8 | 6.3% |
| 1000~1499万円 | 13 | 17 | +4 | 3.6% |
| 1500万円以上 | 13 | 16 | +3 | 3.4% |
※ 出典は上の表と同じ(自営業主、単位は万人)。割合の分母は収入階級の合計
年収500万円未満の自営業主は437万人から368万人へ69万人減り、500万円以上は85万人から108万人へ23万人増えました(階級の合計で計算)。自営業主の減少は、収入の少ない層で起きています。後継者のいない小さな商店や、高齢で事業をやめる人が減少の中心と考えられます。
一方で、500万〜699万円と700万〜999万円はそれぞれ8万人ずつ増えました。法人化を検討し始める所得帯の自営業主が、人数として厚くなっています。
法人化の損益分岐点の近くにいる自営業主
当サイトの計算エンジンでは、法人化で手取りが増え始める事業所得(損益分岐点)は次のとおりです。
| 条件 | 損益分岐となる事業所得 |
|---|---|
| 40歳未満・単身 | 1,266万円 |
| 40〜59歳・単身 | 1,243万円 |
| 40〜59歳・配偶者あり(収入なし) | 865万円 |
※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。3年目以降の定常状態
統計の「仕事からの収入」は確定申告の事業所得と同じものではありませんが、年収1,000万円以上の自営業主33万人の多くは、損益分岐点の近くか、それを超えたところにいると考えられます。配偶者を扶養している人なら、700万〜999万円の30万人の一部も分岐点を超えます。
それでも、この層の法人化率は7割前後で、3割の人は個人事業主のまま続けています。所得の階級ごとの法人化率は、就業構造基本調査で計算した所得別の法人化率でも、1,000万円を超えると頭打ちになる形が出ています。
稼ぐ自営業主が増えた今、判断の材料をそろえる
自営業主は数を減らしながら、稼ぐ人の割合を増やしてきました。2025年には、自営業主の22.7%が年収500万円以上です(2013年は16.3%)。法人化を検討する所得帯にいる個人事業主は、この12年で確実に増えています。
ただし、法人化で手取りが増えるかどうかは、収入の階級ではなく、家族構成や年齢、住んでいる自治体の国保で決まります。自分の売上と経費で、個人のままと法人化を比べてください。所得別の判断の目安は法人化の目安となる所得に、計算の前提は計算方法にまとめています。
まとめ
- 労働力調査で、自営業主は2013年554万人→2025年499万人(−55万人)
- 年収1,000万円以上の自営業主は26万→33万人、うち雇人のない業主は8万→13万人
- 年収500万円未満の自営業主が69万人減り、500万円以上が23万人増えた。減少は収入の少ない層で起きている
- 年収1,000万円以上の役員は52万→74万人に増えたが、この層の法人化率は66.7%→69.2%とほぼ横ばい
- 稼ぐ自営業主は増えている。法人化の損得は収入の階級ではなく、家族・年齢・自治体の条件で計算する
よくある質問
労働力調査の「仕事からの収入」は、自営業主の場合は売上ですか。
統計表は「仕事からの収入(年間)」として、調査票で回答された仕事からの年間の収入を階級別に集計しています。自営業主の売上なのか、経費を引いた額なのかは統計表の上では区別されていないため、確定申告の事業所得と同じものとして読まないほうが安全です。総務省の就業構造基本調査では、自営業主の所得を売上から必要経費を差し引いた収益としています。
役員の人数はどうやって出したのですか。
表2-12-4の「雇用者」から「役員を除く雇用者」を差し引きました。公表値は万人単位で丸められているため、差し引いた役員の人数には±1万人程度の誤差があります。
年収1,000万円以上の自営業主は、法人化したほうが得ですか。
収入だけでは決まりません。家族構成、年齢、住んでいる自治体の国保、業種で損益分岐点は数百万円動きます。配偶者(収入なし)がいて40〜59歳なら、東京23区で事業所得865万円から法人化が有利になる計算です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。