法人化の判断
所得別の法人化率。年収400万円台で半数が会社、1,000万円超でも4割は個人のまま
結論
令和4年就業構造基本調査で、役員÷(役員+自営業主)で計算した法人化率は、主な仕事からの収入・収益が300万円未満で24.5%、400万〜499万円で52.4%、1,000万〜1,249万円で74.1%でした。大企業の役員が多く含まれる管理的職業従事者を除くと、600万〜699万円の60.7%から先はほぼ横ばいで、1,500万円以上でも58.4%にとどまります。法人化の損益分岐点(東京23区・単身で事業所得1,266万円)を超える所得帯でも、4割は個人事業主のままです。
- 役員の所得は役員報酬だけで、会社に残した利益は入らない。手取り最大の報酬が月54万円(年648万円)になる人は600万円台に数えられるため、法人化した人は実際より低い所得帯に寄って見える
- 専門的・技術的職業従事者では、所得1,000万円以上でも法人化率は48.0%。医師・弁護士など、個人で高い所得を得る資格職が多いためと考えられる
- 所得300万円未満の自営業主は全体の約7割。法人化率が低い帯に、自営業主の大半がいる
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
職業別・年齢別の法人化率では、所得が大きい職業や年代ほど会社を選ぶ人が多いことが見えてきました。では、所得そのもので区切ると、どこから会社を選ぶ人が多数派になるのか。総務省の就業構造基本調査は、職業・従業上の地位・所得を組み合わせた表を公表していて、所得階級別の法人化率を計算できます。
400万円台で半数を超え、1,000万円以上で74.1%
法人化率は、会社などの役員÷(役員+自営業主)で計算しました。第42表は雇用者の内訳に役員を置いていないため、役員の数は雇用者から正規・非正規の職員・従業員を引いて求めています(合計は第21表の役員の数と一致)。
| 主な仕事からの年間収入・収益 | 会社などの役員 | 自営業主 | 法人化率 | 法人化率(管理的職業従事者を除く) |
|---|---|---|---|---|
| 総数 | 3,547,200 | 5,108,100 | 41.0% | 32.9% |
| 50万円未満 | 156,600 | 1,045,900 | 13.0% | 10.7% |
| 100~149万円 | 224,100 | 558,700 | 28.6% | 23.9% |
| 200~249万円 | 218,500 | 440,700 | 33.1% | 27.7% |
| 300~399万円 | 412,100 | 507,500 | 44.8% | 38.4% |
| 400~499万円 | 340,500 | 309,500 | 52.4% | 46.5% |
| 500~599万円 | 237,900 | 198,600 | 54.5% | 47.8% |
| 600~699万円 | 256,900 | 125,400 | 67.2% | 60.7% |
| 700~799万円 | 186,000 | 76,400 | 70.9% | 62.4% |
| 800~899万円 | 141,600 | 66,800 | 67.9% | 56.6% |
| 900~999万円 | 131,500 | 59,100 | 69.0% | 58.9% |
| 1000~1249万円 | 257,200 | 89,700 | 74.1% | 62.3% |
| 1250~1499万円 | 99,000 | 34,400 | 74.2% | 58.9% |
| 1500万円以上 | 303,200 | 94,700 | 76.2% | 58.4% |
※ 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」第42表(e-Stat)から当サイトが計算。役員=雇用者−正規の職員・従業員−非正規の職員・従業員。自営業主は内職者を含む。一部の階級を省略。総数には所得不詳を含む
全職業で見ると、法人化率は所得とともに上がり、400万円台で52.4%と半数を超えます。1,000万円以上では74.1〜76.2%です。
ただし、全職業の数字には大企業の役員が含まれます。経営や管理が主な仕事の役員は「管理的職業従事者」という職業に分類されるので、これを除くと、自分の仕事を主にしている役員と自営業主の比較に近づきます。その場合、法人化率は600万円台の60.7%から先、1,500万円以上(58.4%)までほぼ横ばいです。
1,000万円を超えても、4割は個人のまま
法人化の損益分岐点は、東京23区・40歳未満・単身で事業所得1,266万円、配偶者(収入なし)がいれば1,016万円です(当サイトの計算エンジン、2026年分基準)。この線を超える1,250万〜1,499万円の帯でも、管理的職業従事者を除いた法人化率は58.9%で、残りの4割は個人事業主のままです。
個人のままでいる理由は、統計からは分かりません。ただ、職業大分類ごとに分けると手がかりがあります。
| 職業 | 300万円未満 | 300万〜599万円 | 600万〜999万円 | 1,000万円以上 | 全体 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総数 | 24.5% | 49.4% | 68.6% | 75.1% | 41.0% |
| 専門的・技術的職業従事者 | 16.5% | 38.6% | 50.2% | 48.0% | 30.3% |
| 販売従事者 | 32.7% | 56.1% | 69.5% | 68.5% | 46.7% |
| サービス職業従事者 | 11.9% | 32.2% | 48.6% | 58.2% | 18.8% |
| 建設・採掘従事者 | 15.7% | 29.5% | 53.9% | 64.3% | 29.4% |
※ 出典・計算方法は上の表と同じ
専門的・技術的職業従事者は、1,000万円以上でも48.0%と、半分以上が個人のままです。この区分には医師・弁護士・税理士などの資格職が含まれ、開業医は医療法人、士業は士業法人でしか業務を法人化できないといった制約があります(一人で作る士業法人)。所得が大きくても、一般の会社のように法人化できるとは限りません。
役員の所得は報酬だけ。法人化した人は低い帯に寄って見える
この表を読むときに、もう1つ大事な注意があります。役員の所得は役員報酬だけで、会社に残した利益は含まれません。
当サイトの計算エンジンでは、事業所得1,000万〜1,500万円の一人会社が手取りを最大にする役員報酬は月54万円(年648万円)前後です。このとき、事業の利益が1,500万円あっても、統計では600万〜699万円の役員として数えられます。管理的職業従事者を除いた法人化率が600万円台で急に上がって横ばいになるのは、この報酬額のあたりに一人社長が集まるためと考えられます。
逆に言えば、1,000万円以上の帯にいる役員は、役員報酬だけで1,000万円を超える人です。事業の規模で比べると、法人化している人の割合は表の数字より高いところにあるはずです。会社に残す利益と報酬の分け方は小さい会社の内部留保で、報酬の決め方は役員報酬の最適額で扱っています。
自営業主の7割は、所得300万円未満
自営業主の側から見ると、所得300万円未満の人が全体の約7割を占めます。この帯の法人化率は24.5%で、所得の小さい事業では個人のまま続けるのが一般的です。所得の分布そのものは一人で働く業主と会社役員の所得分布で詳しく見ています。
統計が示しているのは、所得が上がるほど会社を選ぶ人が増えるが、損益分岐点を超えても全員が法人化しているわけではない、ということです。法人化で手取りが増えるかどうかは、所得の線だけでなく家族構成や業種で変わります。所得別の目安は法人化の目安となる所得に、計算の前提は計算方法にまとめています。
まとめ
- 令和4年就業構造基本調査の法人化率(役員÷(役員+自営業主))は全体で41.0%。所得400万円台で52.4%と半数を超える
- 経営・管理職を除くと、600万円台の60.7%から先は横ばいで、1,500万円以上でも58.4%。損益分岐点を超える所得帯でも4割は個人のまま
- 専門的・技術的職業従事者は1,000万円以上でも48.0%。資格職の法人化の制約が影響していると考えられる
- 役員の所得は報酬だけなので、法人化した人は実際の事業規模より低い所得帯に数えられる
- 統計の割合ではなく、自分の所得・家族・業種で法人化したときの手取りを確かめる
よくある質問
第42表には役員の区分がないのに、どうやって役員の数を出したのですか。
雇用者の数から、正規の職員・従業員と非正規の職員・従業員の数を引きました。就業構造基本調査の雇用者は会社などの役員とそれ以外に分かれ、役員以外が正規と非正規に分かれるためです。全職業・全所得の合計は354万7,200人で、第21表の会社などの役員の数と一致します。
所得が高いほど法人化している人が多いなら、所得が上がったら法人化すべきですか。
統計は法人化している人の割合を示すだけで、損得を示すものではありません。損得は所得のほか、家族、年齢、住んでいる自治体の国保、業種で変わります。東京23区・40歳未満・単身なら事業所得1,266万円が分かれ目です。
自営業主の「収益」は売上ですか。
売上ではありません。用語の解説では、自営業主の所得は売上総額から必要経費を差し引いた収益です。確定申告の青色申告特別控除の前の事業所得に近い考え方です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。