法人化の判断
配偶者がいる人の法人化率は48.3%、未婚は26.9%。どの年齢でも差がある
結論
令和2年国勢調査(農林漁業を除く)で、役員÷(役員+業主)で計算した法人化率は、配偶者がいる人48.3%、未婚の人26.9%でした。年齢をそろえても差は消えず、30代で14.1ポイント、40代で19.5ポイント、50代で24.8ポイント、60〜64歳で29.0ポイント、有配偶のほうが高くなっています。計算エンジンでも、配偶者(収入なし)がいると法人化の損益分岐点は40〜59歳で事業所得1,243万円から865万円に下がります。ただし統計の有配偶の役員には、家族会社の役員になっている配偶者本人も含まれます。
- 配偶者がいると分岐点が下がるのは、法人化で配偶者が健康保険の被扶養者・国民年金の第3号被保険者になり、配偶者の国民年金と国保の均等割がなくなるため
- 男性だけで比べても、40代は未婚32.6%・有配偶51.9%、50代は31.0%・56.1%で、ほぼ同じ差がある
- 統計の差は、所得の大きさや家族で事業をしているかどうかなど、配偶者以外の要因も含む。法人化で得になるかは自分の条件で計算する
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
職業別・都道府県別の法人化率に続いて、家族の状況で違いがあるかを確かめます。法人化の損得の計算では、配偶者がいるかどうかが損益分岐点を大きく動かすことが分かっています。実際に会社を選んでいる人の割合にも、その差は表れているのでしょうか。
有配偶48.3%、未婚26.9%
国勢調査の第2表は、従業上の地位を年齢・配偶関係・男女別に集計しています。ここでは、個人で営むのが基本の農林漁業を除いて、法人化率(役員÷(役員+雇人のある業主+雇人のない業主))を計算しました。農林漁業を除いた全体の法人化率は43.4%です。
| 年齢 | 未婚 | 有配偶 | 差 | 男・未婚 | 男・有配偶 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20〜29歳 | 21.8% | 30.8% | 9.0ポイント | 23.7% | 35.2% |
| 30〜39歳 | 26.8% | 40.9% | 14.1ポイント | 30.6% | 45.7% |
| 40〜49歳 | 30.4% | 49.9% | 19.5ポイント | 32.6% | 51.9% |
| 50〜59歳 | 30.1% | 54.8% | 24.8ポイント | 31.0% | 56.1% |
| 60〜64歳 | 25.9% | 54.9% | 29.0ポイント | 26.4% | 55.0% |
| 65〜69歳 | 21.2% | 45.9% | 24.7ポイント | 20.2% | 44.6% |
| 総数 | 26.9% | 48.3% | 21.4ポイント | 28.8% | 48.6% |
※ 総務省統計局「令和2年国勢調査」第2表(e-Stat、全国・常住地)から当サイトが計算。農林漁業(産業大分類「農業,林業」「漁業」)を除く。雇人のない業主は家庭内職者を含む
全体では、配偶者がいる人の法人化率は48.3%で、未婚の人(26.9%)の約1.8倍です。
未婚の人は若い世代に多く、若い人ほど法人化率が低いので、年齢の違いだけで差が出ている可能性もあります。そこで年齢をそろえて比べると、差は消えるどころか、年齢が上がるほど広がります。30代で14.1ポイント、40代で19.5ポイント、50代で24.8ポイント、60〜64歳では29.0ポイントです。
男性だけに絞っても、40代は未婚32.6%・有配偶51.9%、50代は31.0%・56.1%で、男女の構成の違いでもないことが分かります。
計算でも、配偶者がいると分岐点は下がる
当サイトの計算エンジンで、配偶者(収入なし)がいる場合といない場合の損益分岐点を出しました。
| 条件 | 配偶者なし | 配偶者あり(収入なし) | 下がる幅 |
|---|---|---|---|
| 40歳未満(配偶者も40歳未満) | 1,266万円 | 1,016万円 | 250万円 |
| 40〜59歳(配偶者も40〜59歳) | 1,243万円 | 865万円 | 378万円 |
※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。3年目以降、税理士報酬を引いた実質差額がプラスに転じる事業所得
配偶者がいると分岐点が下がるのは、法人化すると配偶者が社長の健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者になれるからです。個人事業主のままなら、配偶者にも国民年金保険料(月17,920円)と国保の均等割がかかります。法人化するとそれがなくなり、40〜59歳なら配偶者の介護分もなくなります。仕組みは配偶者がいると法人化の分岐点が下がる理由で詳しく計算しています。
統計の傾向は、この計算の方向と一致しています。40〜59歳の差(378万円)が40歳未満(250万円)より大きいことも、年齢が上がるほど法人化率の差が広がる統計の形と同じ向きです。
ただし、統計の差には配偶者以外の要因も混ざっている
この統計を「配偶者がいると会社を作る人が増える」と読むときは、3つの注意が要ります。
- 配偶者本人が役員になっている:家族で事業をする会社では、夫婦がともに役員になることがよくあります。この場合、配偶者本人も「有配偶の役員」として数えられ、有配偶の法人化率を押し上げます。個人事業では配偶者は事業専従者や家族従業者になり、業主には数えられません
- 所得の大きさ:所得の大きい人ほど結婚している割合が高い傾向があれば、所得の違いが法人化率の差として表れます。国勢調査には所得の項目がないため、ここでは確かめられません
- 配偶者の働き方:配偶者が会社員として自分で社会保険に入っている場合、法人化しても配偶者の保険料は変わらず、計算上の分岐点はほとんど下がりません。統計の有配偶には、こうした共働きの世帯も含まれます
1の点は、配偶者を役員にするか従業員にするかという法人化後の設計にもつながります。役員報酬を夫婦に分けると手取りがどう変わるかは、夫婦で役員報酬を分けた場合の総当たりで計算しています。
家族の状況は、自分の条件で入力する
統計の差は、配偶者がいる人の多くにとって法人化の損益分岐点が下がる、という計算の結果と同じ向きを示しています。ただし、その幅は配偶者の年齢と働き方で大きく変わります。配偶者が国民年金と国保に入っているのか、会社員として自分の保険があるのかで、分岐点は数百万円動きます。
判定ツールでは、配偶者の有無と年齢区分を入れて計算できます。所得別の判断の目安は法人化の目安となる所得に、計算の前提は計算方法にまとめています。
まとめ
- 令和2年国勢調査(農林漁業を除く)の法人化率は、有配偶48.3%、未婚26.9%
- 年齢をそろえても差は消えず、40代19.5ポイント、50代24.8ポイント、60〜64歳29.0ポイント。男性だけでも同じ傾向
- 計算エンジンでは、配偶者(収入なし)がいると損益分岐点は40歳未満で1,266万→1,016万円、40〜59歳で1,243万→865万円に下がる
- 統計の差には、家族会社の役員になっている配偶者本人や、所得の違いも含まれる
- 配偶者の年齢と働き方で分岐点は大きく動くため、自分の家族の条件で計算する
よくある質問
国勢調査の「有配偶」には事実婚も入りますか。
含まれます。国勢調査の配偶関係は届出の有無にかかわらず実際の状態で区分していて、届出をしていなくても配偶者のある人は有配偶です(用語の解説)。税や社会保険の扶養の扱いとは基準が違う点に注意が必要です。
配偶者に収入があっても、法人化で分岐点は下がりますか。
配偶者が会社員として自分で健康保険・厚生年金に入っている場合は、法人化しても配偶者の保険料は変わらないため、分岐点はほぼ下がりません。下がるのは、配偶者が国保と国民年金に入っていて、法人化で被扶養者になれる場合です。
配偶者を役員にすると、さらに有利になりますか。
配偶者に役員報酬を払うと、所得を夫婦に分けて所得税の累進を下げられる場合があります。一方で、報酬の額によっては配偶者が被扶養者から外れて社会保険料がかかります。報酬の分け方ごとの手取りは別記事で総当たりしています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。