法人化の判断

法人化率は60〜64歳の50.3%が頂点。女性は39.0%で、若い世代ほど男性との差が大きい

結論

令和2年国勢調査(農林漁業を除く)の法人化率は、20代24.2%、30代35.9%、40代45.0%、50代49.4%、60〜64歳50.3%と年齢とともに上がり、65〜69歳42.7%、75歳以上37.1%と下がります。女性は全体で39.0%と男性(45.1%)より低く、30代では14.4ポイントの差がありますが、65歳以上では女性のほうが高い年代もあります。計算エンジンの損益分岐点は40〜59歳で事業所得1,243万円、60〜64歳では国民年金がなくなるため1,362万円に上がり、法人化率の山とは逆の動きです。

  • 65歳以降に法人化率が下がるのは、役員が減るからではなく、定年後に個人で仕事を始める業主が増えるため。雇人のない業主は60〜64歳の38.1万人から65〜69歳の52.0万人へ増える
  • 60代前半の法人化率の高さは、若いときに作った会社を続けている人の積み重ねを映していて、60歳で新たに法人化する人が多いことを示すものではない
  • 60歳を過ぎてからの法人化は、国民年金がない分だけ損益分岐点が上がる。年齢で判定が変わる仕組みは自分の生年月日で確かめる

法人化の損益分岐点は、年齢によって変わります。40歳になると介護保険料が加わり、60歳を過ぎると国民年金の保険料がなくなるからです。では、実際に会社を選んでいる人の割合は、年齢でどう変わるのか。国勢調査の年齢別・男女別の従業上の地位から計算しました。

20代24.2%から、60〜64歳の50.3%まで上がる

法人化率は、役員÷(役員+雇人のある業主+雇人のない業主)で、個人で営むのが基本の農林漁業を除いて計算しています(職業別の法人化率と同じ式)。

年齢役員+業主法人化率(総数)男女
20〜29歳183,950人24.2%26.9%19.4%
30〜39歳621,430人35.9%40.5%26.1%
40〜49歳1,340,770人45.0%47.5%38.1%
50〜59歳1,570,880人49.4%51.4%44.0%
60〜64歳837,070人50.3%51.3%47.4%
65〜69歳874,950人42.7%42.3%43.8%
70〜74歳872,520人39.8%39.4%40.7%
75歳以上801,300人37.1%38.0%34.9%
総数7,112,640人43.4%45.1%39.0%

※ 総務省統計局「令和2年国勢調査」第2表(e-Stat、全国・常住地)から当サイトが計算。農林漁業(産業大分類「農業,林業」「漁業」)を除く。雇人のない業主は家庭内職者を含む

20代は4人に1人、50代と60代前半はほぼ2人に1人が会社の役員です。年齢とともに上がるのは、事業を続けるうちに売上が伸び、途中で法人化する人が積み重なっていくためと考えられます。

65歳を過ぎると下がるのは、個人で始める人が増えるから

65歳以上で法人化率が下がるのは、役員がやめていくからではありません。役員と業主の人数を年齢ごとに見ると、役員は60〜64歳の42.8万人から65〜69歳の38.0万人へ緩やかに減るだけですが、雇人のない業主は38.1万人から52.0万人へ大きく増えます(いずれも農林漁業を含む人数)。

定年退職したあとに、それまでの経験を生かして個人で仕事を受ける人が加わるためです。顧問業や技術指導などで独立する場合、売上が大きくないうちは個人事業主のまま始めるのが一般的です。65歳以上の会社役員が増え続けていることは、労働力調査で見た自営業主と役員の推移でも確かめています。

計算上の分岐点は、60歳を過ぎると上がる

当サイトの計算エンジンで、年齢区分ごとの損益分岐点を出しました。

年齢区分損益分岐となる事業所得変わる理由
40歳未満1,266万円基本
40〜59歳1,243万円個人も法人も介護保険料がかかる
60〜64歳1,362万円国民年金の保険料がなくなる(法人化で消える負担が小さい)
65歳以上1,384万円同上。介護保険料は国保・健康保険から外れ、市区町村が別に徴収する

※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。3年目以降の実質差額がプラスに転じる事業所得

個人事業主の国民年金の保険料は20歳から60歳までで、60歳以降はかかりません。法人化すれば70歳まで厚生年金の保険料がかかるので、60歳を過ぎてからの法人化は、法人化で消える負担が小さく、増える負担はそのまま残ります。その分、分岐点が119万円上がります。

一方で、統計の法人化率は60〜64歳が最も高くなっています。計算の分岐点と統計の山は、逆の向きです。

60代前半の高さは、若いときに作った会社の積み重ね

この食い違いは、統計が「いま会社の役員である人」の割合を表していることで説明できます。60代前半の役員の多くは、40代や50代で法人化し、その会社を続けている人です。60歳になってから新しく会社を作る人が多いことを示す数字ではありません。

60歳以降は、法人化の判断の材料が変わります。国民年金がなくなることに加えて、厚生年金に入ると老齢厚生年金が増える一方、65歳以降は役員報酬の額によって年金の一部が止まることがあります(在職老齢年金と役員報酬)。60歳前後で法人化を考えるときは、60歳以降の国民年金の任意加入と法人化もあわせて確かめてください。

女性の法人化率は39.0%。30代で14.4ポイントの差

女性は全体で39.0%と、男性の45.1%より6.1ポイント低くなっています。役員と業主を合わせた独立して働く人のうち、女性は27.3%です。

年齢別に見ると、差が大きいのは若い世代です。30代は男性40.5%・女性26.1%で14.4ポイント、40代でも9.4ポイントの差があります。60〜64歳では3.9ポイントまで縮み、65〜69歳と70〜74歳では女性のほうが高くなります。

国勢調査のこの表からは理由までは分かりません。職業によって法人化率は3%から67%まで違うため(職業別の法人化率)、男女で就いている職業の構成が違えば、それだけで法人化率に差が出ます。

年齢で判定が変わる。自分の年齢区分で計算する

統計の法人化率は、どの年齢でも半分前後かそれ以下です。年齢が上がると法人化している人は増えますが、60歳を境に計算上の損益分岐点は上がります。同じ所得でも、59歳と61歳では法人化の結論が入れ替わることがあります。

判定ツールでは年齢区分を選んで計算できます。所得別の判断の目安は法人化の目安となる所得に、計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 令和2年国勢調査(農林漁業を除く)の法人化率は、20代24.2%から上がり、60〜64歳の50.3%が最高。75歳以上は37.1%
  • 65歳以降に下がるのは、定年後に個人で仕事を始める業主が増えるため(雇人のない業主は60〜64歳38.1万人→65〜69歳52.0万人)
  • 計算エンジンの損益分岐点は、60〜64歳で1,362万円と40〜59歳(1,243万円)より119万円高い。統計の山とは逆の向き
  • 女性の法人化率は39.0%で男性より6.1ポイント低い。30代の差は14.4ポイントで、60代後半以降は女性のほうが高い
  • 60歳前後は判定が変わりやすい。自分の年齢区分と生年月日で計算する

よくある質問

60歳を過ぎてから法人化すると不利ですか。

不利とは限りませんが、損益分岐点は上がります。60歳以降は個人事業主でも国民年金の保険料がかからないため、法人化で消える負担が小さくなるからです。計算エンジンでは単身・東京23区で40〜59歳の事業所得1,243万円に対し、60〜64歳は1,362万円です。

女性の法人化率が低いのはなぜですか。

国勢調査の年齢・男女別の表からは理由まで分かりません。法人化率は職業によって大きく違うため、男女で職業の構成が違うことが差の一部になっている可能性があります。

65歳以上で会社を続けると、社会保険はどうなりますか。

役員報酬を受け取る限り、70歳までは厚生年金、75歳までは健康保険に加入し続けます。70歳で厚生年金、75歳で健康保険から外れ、後期高齢者医療制度に移ります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。