法人化の判断
自営業主は23年で171万人減、会社役員も48万人減。増えたのは65歳以上の役員だけ
結論
総務省の労働力調査(年平均)では、自営業主は2002年の670万人から2025年の499万人へ171万人(25.5%)減りました。会社などの役員も397万人から349万人へ48万人(12.1%)減っており、個人事業主が法人成りして役員に移った分を数えても、自分で事業をする人の総数は縮んでいます。年齢別では65歳未満の役員が329万人から240万人に減る一方、65歳以上の役員は68万人から109万人に増え、役員の31.2%を占めるようになりました。
- 人を雇う自営業主(雇有業主)は170万人から104万人へ38.8%減。一人で事業をする雇無業主は500万人から395万人へ21.0%減
- 役員÷自営業主の比は0.59から0.70に上がった。自営業主の減り方のほうが速い
- 65歳以上の一人社長は国民年金がない分、個人事業主との比較で法人化の分岐点が上がる。計算エンジンでは40歳未満1,266万円に対し65歳以上1,384万円
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
「最近は法人成りする人が多い」とよく言われます。実際に合同会社の設立登記はこの10年で約1.9倍に増えました(会社の解散件数と設立の推移)。では、自分で事業をしている人は全体として増えているのか。総務省の労働力調査は、毎月の調査を年平均にして、働く人を自営業主・家族従業者・雇用者(うち役員)に分けて数えています。個人事業主と会社の役員を、同じ調査で同じ年に並べられる長期の統計です。
自営業主は2002年から171万人減った
労働力調査の長期時系列から、自営業主と会社などの役員の人数を並べました。自営業主は人を雇っているかどうかで「雇有業主」と「雇無業主」に分かれます。
| 年 | 自営業主 | うち雇有業主 | うち雇無業主 | 会社などの役員 | 役員÷自営業主 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2002年 | 670万人 | 170万人 | 500万人 | 397万人 | 0.59 |
| 2005年 | 650万人 | 164万人 | 486万人 | 400万人 | 0.62 |
| 2010年 | 582万人 | 154万人 | 428万人 | 370万人 | 0.64 |
| 2015年 | 546万人 | 131万人 | 415万人 | 349万人 | 0.64 |
| 2020年 | 527万人 | 118万人 | 409万人 | 345万人 | 0.65 |
| 2023年 | 512万人 | 109万人 | 403万人 | 337万人 | 0.66 |
| 2024年 | 505万人 | 109万人 | 396万人 | 344万人 | 0.68 |
| 2025年 | 499万人 | 104万人 | 395万人 | 349万人 | 0.70 |
※ 総務省「労働力調査」長期時系列データ(年平均)から当サイトが計算。自営業主・雇有業主は基本集計の表4(1)、雇無業主は自営業主から雇有業主を引いた値。役員は詳細集計の表10(1)の雇用者から役員を除く雇用者を引いた値で、基本集計とは推計の方法が異なる
自営業主は23年で171万人(25.5%)減りました。1953年以降の最多は1957年の1,038万人で、その半分以下になっています。
減り方は、人を雇う自営業主のほうが速く、雇有業主は170万人から104万人へ38.8%減りました。一人で(または家族と)事業をする雇無業主は500万人から395万人へ21.0%の減少です。
役員も48万人減っている
法人成りした人は、自営業主の区分から抜けて「会社などの役員」に入ります。法人成りが自営業主の減少の主な理由なら、役員はその分増えているはずです。
ところが役員も、2002年の397万人から2025年の349万人へ48万人(12.1%)減っていました。2023年の337万人を底に、2024年・2025年はわずかに増えていますが、2002年の水準には戻っていません。
自営業主と役員を足すと、2002年の1,067万人から2025年の848万人へ219万人減ったことになります。法人成りがあったとしても、自分で事業をする人の総数そのものが縮んでいるというのが、この統計の示す姿です。役員÷自営業主の比が0.59から0.70に上がったのは、役員が増えたからではなく、自営業主の減り方のほうが速かったからです。
一方で、会社の数は増えています。財務省の法人企業統計では、資本金1千万円未満の会社は2000年度の136.0万社から2025年度の221.3万社へ増え、1社あたりの役員数は1.94人から1.48人に減りました(資本金1千万円未満の会社の役員給与)。会社は増えたのに役員は減った、という2つの統計を合わせると、役員の少ない会社、つまり一人会社や夫婦会社が増えたと読むのが自然です。
増えたのは65歳以上の役員だけ
役員を年齢別に開くと、動きはさらにはっきりします。
| 年齢 | 2002年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総数 | 397万人 | 349万人 | −48万人 |
| 15〜24歳 | 2万人 | 2万人 | ±0万人 |
| 25〜34歳 | 26万人 | 14万人 | −12万人 |
| 35〜44歳 | 62万人 | 42万人 | −20万人 |
| 45〜54歳 | 114万人 | 87万人 | −27万人 |
| 55〜64歳 | 124万人 | 95万人 | −29万人 |
| 65歳以上 | 68万人 | 109万人 | +41万人 |
※ 詳細集計の表10(1)から、年齢階級ごとに雇用者−役員を除く雇用者で計算。四捨五入のため年齢階級の合計は総数と一致しないことがある
65歳未満の役員は329万人から240万人へ27.1%減り、65歳以上の役員だけが68万人から109万人へ増えました。役員に占める65歳以上の割合は**17.1%から31.2%**になっています。社長の高齢化と、退任せずに役員を続ける人が増えたことの両方が考えられますが、この統計からは分けられません。
65歳以上の一人社長は、法人化の分岐点が上がる
65歳以上で法人化を考える人には、若い世代とは違う計算が必要です。計算エンジンで年齢区分ごとの損益分岐点を出すと、次のようになります。
| 年齢区分 | 損益分岐点(事業所得) | 売上1,200万円のときの最適報酬(月) | 売上1,200万円のときの実質差額(3期目以降・年) |
|---|---|---|---|
| 40歳未満 | 1,266万円 | 54万円 | −14.7万円 |
| 40〜59歳 | 1,243万円 | 45万円 | −10万円 |
| 60〜64歳 | 1,362万円 | 45万円 | −24.3万円 |
| 65歳以上 | 1,384万円 | 54万円 | −29万円 |
※ 東京23区・単身・インボイス登録済み・合同会社・経費200万円。事業所得は青色申告特別控除前。年金の受給や在職老齢年金による支給停止は含めていない
60歳以上では分岐点が上がります。個人事業主は60歳で国民年金の保険料を払わなくなるのに対し、一人社長は70歳になるまで厚生年金の保険料を払い続けるためです。個人のままの負担が軽くなるぶん、法人化で得られる差が小さくなります。
65歳以上で老齢厚生年金を受け取りながら役員報酬を受け取ると、在職老齢年金で年金の一部が止まる場合もあります(在職老齢年金の基準が65万円へ)。70歳・75歳で社会保険料がどう変わるかは一人社長の社会保険料は70歳と75歳で2段階に消えるにまとめています。
法人化するかどうかは、全体の流れではなく自分の数字で
自営業主も役員も減っている中で、会社の数だけが増えている。この統計から言えるのは、事業をする人のうち、法人という器を選ぶ人の割合が上がっているということです。ただ、それは「法人化したほうが得だから」とは限りません。取引先の要件、信用、相続や事業承継の準備など、税以外の理由で法人を選ぶ人もいます。
税と社会保険の損得だけで見れば、分岐点は所得・年齢・家族構成で大きく動きます。法人化の目安の全体像は法人化の目安は所得いくらかにまとめています。
役員と業主を合わせた中で会社の役員が占める割合を年齢別・男女別に見た結果は、年齢・男女別の法人化率で国勢調査から計算しています。
同じ労働力調査の詳細集計で、自営業主の収入の分布がどう変わったかは年収1,000万円以上の自営業主の推移にまとめています。
まとめ
- 自営業主は2002年の670万人から2025年の499万人へ171万人(25.5%)減った。雇有業主は38.8%、雇無業主は21.0%の減少
- 会社などの役員も397万人から349万人へ48万人(12.1%)減っており、法人成りだけでは自営業主の減少を説明できない
- 会社の数は増え、1社あたりの役員数は減っている。一人会社や夫婦会社が増えた姿と整合する
- 65歳未満の役員は27.1%減り、65歳以上の役員だけが68万人から109万人に増えた(役員の31.2%)
- 60歳以上は国民年金の保険料がなくなるため、法人化の分岐点が上がる。65歳以上は1,384万円(40歳未満は1,266万円)
自分の年齢と売上・経費で、法人化した場合との差を判定ツールで確かめてください。
よくある質問
労働力調査の「会社などの役員」には、どんな人が入りますか。
会社の社長・取締役・監査役、団体・公益法人などの理事・監事といった役職にある人で、雇用者の内訳として扱われます。一人社長も大企業の役員も同じ区分に入ります。
自営業主が減ったのは、法人成りが増えたからではないのですか。
法人成りした人は自営業主から役員に移りますが、同じ期間に役員も48万人減っています。法人成りがあったとしても、それを上回る数の自営業主と役員が減っており、法人成りだけでは説明がつきません。
2002年より前の役員の人数は分かりますか。
役員は詳細集計の長期時系列(2002年以降)から、雇用者と役員を除く雇用者の差で計算しています。基本集計の長期時系列には役員の区分がないため、それ以前は同じ方法では比べられません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。