役員報酬

資本金1千万円未満の会社の役員給与は1人404.5万円。利益の7割を報酬で取る

結論

財務省の法人企業統計(2025年度)では、資本金1千万円未満の会社221.3万社の役員給与は、役員1人あたり404.5万円、1社あたり597.1万円でした。1社あたり経常利益は244.6万円で、役員給与と経常利益を合わせた額のうち70.9%を役員給与に回しています。この割合は2000年度には95.9%で、25年で25ポイント下がりました。

  • 1社あたりの役員数は1.94人(2000年度)から1.48人(2025年度)に減った。一人会社・夫婦会社の比重が増えている
  • 役員給与÷(役員給与+経常利益)は資本金が大きいほど下がり、1千万〜2千万円で48.8%、5千万〜1億円で18.3%
  • 計算エンジンの最適報酬で同じ割合を出すと、事業所得1,000万円で71.4%。統計上の小さな会社の平均とほぼ同じ水準になる

役員報酬の決め方を調べると、「利益は全部報酬で取るな」「社会保険料が増えるから報酬は抑えろ」と、方向の違う助言が並びます。実際の小さな会社は、利益のうちどれだけを役員給与にして、どれだけを会社に残しているのか。財務省の法人企業統計を資本金階級別に開くと、その答えが年度ごとに出ます。

法人企業統計は、会社の損益計算書から役員給与を集める

役員報酬の統計としてよく引用されるのは国税庁の民間給与実態統計調査で、こちらは役員1人ひとりの給与の分布を見るのに向いています(役員報酬の平均は762万円?小さな会社に絞ると665万円)。

財務省の法人企業統計は、見る向きが違います。会社の決算書から売上高・経常利益・役員給与・役員数などを集め、資本金の階級ごとに合計した推計値を出しています。同じ会社の中で、役員給与と利益がどう分かれているかを見られるのはこちらです。

この記事では、e-Stat で公開されている時系列データ(金融業・保険業以外の全産業、原数値)から、2000年度から2025年度までの値を取り出して再集計しました。2025年度は、この記事を書いた時点で公表されている最新の年度です。

資本金1千万円未満の会社は、役員1.48人・役員給与1人404.5万円

まず2025年度の資本金階級別の値です。

資本金社数1社あたり役員数役員1人あたり役員給与1社あたり役員給与1社あたり経常利益役員給与÷(役員給与+経常利益)
1千万円未満221.3万社1.48人404.5万円597.1万円244.6万円70.9%
1千万〜2千万円59.4万社2.13人565.1万円1,205.6万円1,267.4万円48.8%
2千万〜5千万円19.4万社2.73人729.5万円1,991.9万円4,526.1万円30.6%
5千万〜1億円6.5万社3.14人901.5万円2,826.5万円12,657万円18.3%
全規模309.7万社1.75人520.6万円909.2万円4,030.3万円18.4%

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データ(年次別・金融業、保険業以外の業種・原数値)から当サイトが計算。役員給与に役員賞与は含めない。経常利益は赤字の会社を含めた合計を社数で割った平均

法人化したばかりの一人会社の多くは、資本金1千万円未満に入ります。金融業・保険業を除く法人の71.5%にあたる221.3万社がこの階級で、1社あたりの役員は1.48人。社長1人か、社長と配偶者の2人という会社が中心だと読める数字です。

役員1人あたりの役員給与は404.5万円、1社あたりでは597.1万円でした。

業種によってこの水準は大きく違います。情報通信業や専門・技術サービス業など、一人会社に近い業種の数字は業種別に見た小さい会社の役員給与にまとめています。

役員給与と利益の分け方は、規模で大きく変わる

右端の列は、役員給与と経常利益を合わせた額のうち、役員給与にどれだけ回しているかの割合です。役員給与は経費なので、経常利益はそれを払った後に会社に残った利益です。2つを足すと「役員に払う前の利益」の目安になります。

資本金1千万円未満の会社は、その70.9%を役員給与にしています。資本金が大きくなるほど割合は下がり、1千万〜2千万円で48.8%、5千万〜1億円で18.3%です。従業員が増え、利益の規模が役員の取り分を大きく上回る会社では、役員給与の比重は小さくなります。

小さな会社が利益の大半を役員給与で取るのは、税と社会保険の仕組みから見て自然な結果です。会社に利益を残すと法人税がかかり、残した利益を個人が受け取るには配当や退職金といった別の課税を通ります。役員給与なら給与所得控除が使えます。この点は役員報酬と配当のどちらで受け取るかで比べています。

2000年度は95.9%。25年で25ポイント下がった

資本金1千万円未満に絞って推移を見ると、分け方は大きく変わっていました。

年度社数1社あたり役員数役員1人あたり役員給与1社あたり役員給与1社あたり経常利益役員給与÷(役員給与+経常利益)
2000年度136.0万社1.94人395.5万円766.6万円32.8万円95.9%
2005年度154.1万社1.83人360.5万円659.2万円61.4万円91.5%
2010年度165.8万社1.67人362.6万円607.1万円21.2万円96.6%
2015年度175.8万社1.58人373万円589万円138.2万円81.0%
2020年度192.5万社1.56人358.5万円560万円143.2万円79.6%
2022年度203.2万社1.49人374.9万円560.1万円206.6万円73.1%
2023年度209.1万社1.52人380.8万円578.6万円258.7万円69.1%
2024年度215.3万社1.52人405.4万円617.3万円219.4万円73.8%
2025年度221.3万社1.48人404.5万円597.1万円244.6万円70.9%

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データから当サイトが計算

読み取れることは3つあります。

1つ目は、1社あたりの役員数が1.94人から1.48人に減ったことです。社数は136.0万社から221.3万社へ1.6倍に増えましたが、増えたのは役員の少ない会社でした。

2つ目は、役員1人あたりの役員給与はほとんど動いていないことです。2000年度の395.5万円に対し、2025年度は404.5万円。この間、360万〜405万円の範囲に収まっています。

3つ目が、役員給与に回す割合が下がり、会社に残す利益が増えたことです。1社あたり経常利益は2000年度の32.8万円から2025年度は244.6万円になり、割合は95.9%から70.9%へ25ポイント下がりました。2010年代半ばに80%台に下がり、2020年代に70%前後で落ち着いています。

この間に法人税の基本税率は30%から23.2%へ、中小法人の軽減税率は22%から15%へ下がっています。会社に利益を残すことの税負担が軽くなったのと同じ時期に、小さな会社が利益を残すようになった、という並びです。統計だけで因果までは言えませんが、税率の推移が法人化の損益分岐にどう効くかは法人税率の推移と損益分岐で試算しています。

計算エンジンの最適報酬だと、事業所得1,000万円で71.4%

では、手取りが最大になる役員報酬を選ぶと、利益はどう分かれるのか。判定ツールの計算エンジンで、一人社長の最適報酬を事業所得別に出し、同じ割合を計算しました。

事業所得最適な役員報酬(年)法人の税引前利益役員報酬÷(役員報酬+税引前利益)
600万円504万円24.4万円95.4%
800万円648万円59.5万円91.6%
1,000万円648万円259.5万円71.4%
1,266万円648万円525.5万円55.2%
1,500万円648万円759.5万円46.0%
2,000万円1,080万円792.6万円57.7%

※ 東京23区・40歳未満・単身・インボイス登録済み・合同会社・経費200万円。税引前利益は役員報酬と会社負担の社会保険料を引いた後。法人企業統計の経常利益とは定義が完全には一致しない

事業所得600万〜800万円では、利益のほぼすべてを役員報酬で取るのが最適です。1,000万円を超えると最適報酬は月54万円(年648万円)で頭打ちになり、増えた利益は会社に残すほうが手取りが多くなります。標準報酬月額の等級と給与所得控除の段差の位置関係で決まる水準で、詳しくは役員報酬はいくらが最適かで96通りを並べています。

事業所得1,000万円の71.4%は、統計上の資本金1千万円未満の平均70.9%とほぼ同じです。平均の会社がこの最適化をしているとは限りませんが、2000年度の95.9%のように「全部を報酬で取る」配分は、所得が高い会社ほど手取りを減らします。

平均を自分の会社に当てはめないために

この統計で注意したい点を挙げておきます。

  • 数字は推計値の合計を社数や役員数で割った平均で、中央値ではありません。経常利益の平均は、少数の利益の大きい会社に引き上げられています
  • 役員数は期中平均で、非常勤の役員も含みます。社長1人あたりの報酬とは一致しません
  • 役員給与には役員賞与を含めていません。2025年度の資本金1千万円未満で役員賞与を足すと、役員1人あたり417.6万円です
  • 経常利益は法人税などを払う前の利益です。会社に残る額は、ここから法人税・住民税・事業税を引いたものになります

残した利益をいずれ個人が受け取るときの負担まで含めて、自分の事業所得での最適な分け方を確かめるのが先です。判定ツールは役員報酬を月5万〜100万円まで1万円刻みで計算し、手取りが最大になる額と、そのときに会社に残る利益を表示します。

まとめ

  • 財務省の法人企業統計(2025年度)で、資本金1千万円未満の会社は221.3万社、1社あたり役員1.48人、役員1人あたり役員給与404.5万円
  • 役員給与と経常利益の合計のうち70.9%を役員給与に回している。資本金が大きいほどこの割合は下がる
  • 資本金1千万円未満の割合は2000年度の95.9%から25ポイント下がり、1社あたり経常利益は32.8万円から244.6万円に増えた
  • 役員1人あたりの役員給与は25年間360万〜405万円でほぼ横ばい
  • 計算エンジンの最適報酬では、事業所得1,000万円で71.4%と統計の平均に近い。所得が低いほど報酬で取る割合が高くなる

統計の平均ではなく、自分の売上と経費で、役員報酬と会社に残す利益の分け方を判定ツールで確かめてください。

よくある質問

法人企業統計の「役員給与」には何が含まれますか。

役員に支払った給与・手当で、役員賞与は別の項目になっています。この記事の金額は役員賞与を含めていません。2025年度の資本金1千万円未満では、役員賞与を足すと役員1人あたり417.6万円です。

国税庁の民間給与実態統計調査の役員の平均と、数字が違うのはなぜですか。

調べ方が違うからです。民間給与実態統計調査は1年を通じて勤務した給与所得者の給与を集計し、法人企業統計は会社の損益計算書の役員給与を期中平均役員数で割ります。非常勤の役員や期中に就任・退任した役員の扱いが違い、資本金の区分も違うので、同じ数字にはなりません。

1社あたり経常利益の244.6万円は、ふつうの小さな会社の利益ですか。

違います。赤字の会社も含めた合計を社数で割った平均です。黒字の会社の中には大きな利益を出す会社が少数あり、平均はその影響を受けます。ふつうの会社の利益を表す中央値は公表されていません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。