役員報酬

小さい会社の役員賞与は5年で約4倍。役員報酬に占める割合は3.1%

結論

財務省の法人企業統計では、資本金1千万円未満の会社の役員賞与は2020年度の1,091億円から2025年度の4,266億円へ3.9倍に増えました。役員給与と役員賞与の合計に占める割合は1.0%から3.1%に上がっています。ただし役員1人あたりでは年13.1万円で、役員給与404.5万円と比べると小さく、資本金10億円以上の会社(17.8%)とは大きな差があります。

  • 役員賞与の割合は資本金が大きいほど高い。1千万〜2千万円4.3%、1億〜10億円11.0%、10億円以上17.8%
  • 役員賞与は2006年度以前は利益処分の項目で、費用としての役員賞与と連続しない。比較は2007年度以降(2007年度は0.5%)
  • 一人社長が賞与を損金にするには事前確定届出給与の届出が要る。月額報酬を賞与に寄せると、厚生年金の標準賞与額の上限(1回150万円)で社会保険料が下がることがある

一人社長の報酬は、月額を毎月同じ額で払う「定期同額給与」が基本です。そこに、事前に届け出た日と額で賞与を払う「事前確定届出給与」を組み合わせる方法もあり、社会保険料の負担が変わることから関心が高まっています。実際の小さな会社は、役員報酬のうちどれだけを賞与で払っているのか。財務省の法人企業統計で確かめます。

小さい会社の役員賞与は、報酬の3.1%

法人企業統計は、会社の損益計算書から役員給与と役員賞与を分けて集めています。2025年度の資本金階級別の値です。

資本金役員賞与÷(役員給与+役員賞与)役員1人あたり役員賞与役員1人あたり役員給与
1千万円未満3.1%13.1万円404.5万円
1千万〜2千万円4.3%25.1万円565.1万円
2千万〜5千万円6.8%53.4万円729.5万円
5千万〜1億円7.0%68.1万円901.5万円
1億〜10億円11.0%151.4万円1,229万円
10億円以上17.8%455.8万円2,106.7万円
全規模5.1%27.7万円520.6万円

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データ(年次別・金融業、保険業以外の業種・原数値)から当サイトが計算。役員数は常勤・非常勤を問わず給与を受ける期中平均人員

資本金1千万円未満の会社では、役員賞与は役員報酬全体の3.1%、役員1人あたり年13.1万円でした。資本金が大きいほど割合は上がり、10億円以上では17.8%です。大企業の役員報酬に業績連動の賞与が多く含まれるのに対し、小さな会社の役員報酬はほぼ月額で払われています。

2020年度から5年で3.9倍に増えた

役員賞与の扱いは平成18年度調査の前後で変わっているため(それ以前は利益処分の項目)、2007年度以降で推移を並べます。

年度資本金1千万円未満全規模資本金1千万円未満の役員賞与(総額)
2007年度0.5%2.7%510億円
2010年度0.3%2.0%304億円
2013年度1.0%2.2%1,043億円
2016年度0.7%2.7%743億円
2019年度1.1%3.0%1,285億円
2020年度1.0%2.8%1,091億円
2021年度1.6%3.7%1,823億円
2022年度2.4%4.3%2,790億円
2023年度2.4%4.4%2,924億円
2024年度2.5%4.5%3,459億円
2025年度3.1%5.1%4,266億円

※ 割合は役員賞与÷(役員給与+役員賞与)。役員賞与・役員給与は会計上の費用の額で、税務上の損金算入の可否とは別

資本金1千万円未満の会社の役員賞与は、2019年度まで1%前後で推移していましたが、2021年度から上がり始め、2025年度は3.1%、総額4,266億円になりました。2020年度の1,091億円から5年で3.9倍です。全規模でも2.8%から5.1%に上がっており、小さな会社に限った動きではありません。

統計からは理由を分けられませんが、この期間は企業の利益が増えた時期で、資本金1千万円未満の会社の役員給与で見たとおり1社あたり経常利益も増えています。利益が出た年に賞与で役員に配る会社が増えた、と読むのが自然です。

一人社長の賞与は、届け出ないと損金にならない

一人社長が賞与を受け取るときに必ず押さえておきたいのは、損金にするための条件です。国税庁 No.5211 によると、役員給与のうち損金に算入されるのは、定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与に当たるものです。業績連動給与は同族会社では原則として使えないため、一人社長の賞与は通常、事前確定届出給与として税務署に支給時期と金額を届け出て、そのとおりに払う必要があります。

決算で利益が出たのを見てから賞与を決めても、損金にはなりません。統計の役員賞与にはこうした損金にならない賞与も含まれている点に注意が必要です。届出の期限と、届け出た額と違う額を払った場合の扱いは事前確定届出給与で社会保険料は下がるかで扱っています。

賞与に寄せると、厚生年金の保険料が下がることがある

小さな会社で役員賞与が増えている背景として考えられるのが、社会保険料の計算方法の違いです。月額報酬の保険料は標準報酬月額で、賞与の保険料は標準賞与額(1,000円未満切捨て)で計算します。厚生年金の標準賞与額は1回の支給につき150万円が上限で、それを超える賞与には厚生年金の保険料がかかりません(日本年金機構)。

当サイトの試算では、売上1,400万円・経費200万円の一人社長が年648万円の役員報酬を、月54万円の定期同額で払う場合と、月18万円+賞与432万円で払う場合とでは、社会保険料が年180.5万円から132.3万円へ48.2万円下がりました。一方で健康保険の標準賞与額は年度の累計573万円までかかるため、健康保険料はほとんど変わりません。将来の厚生年金も保険料に応じて少なくなります。仕組みと金額の詳細は上の記事で計算しています。

役員報酬全体の決め方は役員報酬はいくらが最適かにまとめています。判定ツールは月額報酬だけを動かして最適額を探しており、賞与の組み合わせまでは含めていません。

まとめ

  • 資本金1千万円未満の会社の役員賞与は、役員給与と役員賞与の合計の3.1%、役員1人あたり年13.1万円(2025年度)。資本金10億円以上では17.8%
  • 資本金1千万円未満の役員賞与は2020年度の1,091億円から2025年度の4,266億円へ3.9倍に増え、割合も1.0%から3.1%に上がった
  • 役員賞与は2006年度以前は利益処分の項目で、比較は2007年度以降に限る
  • 一人社長の賞与を損金にするには、事前確定届出給与として支給時期と金額を事前に届け出る必要がある
  • 賞与に寄せると厚生年金の標準賞与額の上限(1回150万円)で社会保険料が下がることがあるが、健康保険料はほとんど変わらず、将来の年金も減る

役員報酬の月額と会社に残す利益の分け方は、自分の売上と経費で判定ツールにかけて確かめてください。

よくある質問

法人企業統計の役員賞与には、損金にならない賞与も入っていますか。

入っています。統計の役員賞与は会社の損益計算書に費用として計上した額で、税務上損金に算入できたかどうかは区別していません。事前確定届出給与として届け出ていない賞与も含まれます。

一人社長が決算後に賞与を出して、損金にできますか。

できません。役員の賞与を損金にするには、あらかじめ支給時期と金額を税務署に届け出る事前確定届出給与にするなど、法人税法の要件を満たす必要があります。利益が出たから後で賞与を出す、という形は損金になりません。

2006年度以前の役員賞与と比べられないのはなぜですか。

財務省の算式の注記によると、役員賞与は平成18年度調査以前は利益処分の項目として扱われていました。費用として計上される役員賞与とは性格が違うため、この記事では2007年度以降で比べています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。