設立の手続き

法人成りでやること一覧。設立日から逆算する期限つきの手続きと切り替え

結論

法人化の手続きは、設立の登記をした日(設立日)を起点に、期限の短い順に、社会保険の新規適用届(5日以内)、国民健康保険の脱退(14日以内・自治体の案内)、都道府県・市区町村への法人設立届(東京都は15日以内)、給与支払事務所等の開設届(1か月以内)、個人事業税の事業廃止申告(1か月以内)、税務署への法人設立届出書(2か月以内)、青色申告の承認申請(3か月以内か1期目終了のいずれか早い日の前日)と続きます。個人の廃業届は、廃業した年の確定申告期限までです。

  • 設立の実費は、株式会社が約25万円(登録免許税15万円+定款認証など)、合同会社が約10万円(登録免許税6万円+実費)
  • 会社は設立の登記をした日に成立する。法務局の開庁日だけが設立日になる
  • 個人事業の廃業届は「1か月以内」ではなく、廃業した年分の確定申告期限まで(国税庁)。期限が短いのは社会保険・国保・自治体・個人事業税の側

法人化の手続きは、会社を作る側と、個人事業をやめる側の2本立てです。どちらも届出ごとに期限が違い、起点もまちまちなので、混ぜて覚えると取りこぼします。ここでは設立日(設立の登記をした日)を起点にして、期限の短い順に1本の時系列に並べます。

届出のほかに、口座・役員報酬・インボイス・共済やiDeCo・事業用資産・許認可のように、届出書の一覧には出てこないが放っておくと損をする切り替えがあります。後半の「届出以外にやること」にまとめました。

設立日までにやること

会社は、本店の所在地で設立の登記をした日に成立します(会社法第49条・第579条)。それまでに決めること・やることは次のとおりです。

順番やることポイント
1会社の形を決める株式会社か合同会社か。設立費用は株式会社が約25万円、合同会社が約10万円
2基本事項を決める商号・本店所在地・事業目的・資本金・決算月・役員
3定款を作る株式会社は公証役場で認証が必要。合同会社は不要
4資本金を払い込む会社の口座はまだないので、発起人(合同会社は社員)の口座に払い込み、払込みを証明する書面を作る
5設立の登記を申請する申請した日が設立日。法務局の開庁日だけ

設立費用の内訳は、株式会社が登録免許税15万円と定款認証などで約25万円、合同会社が登録免許税6万円と実費で約10万円です(当サイトの判定ツールの前提)。手順の細部と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。

資本金の額は、消費税の免税(1,000万円未満)や均等割(1,000万円以下で年7万円)にかかわります。実際の会社がいくらで設立しているかは会社設立の資本金は300万円未満が6割、設立日・決算月の選び方は会社設立が多いのは10月と4月で扱っています。

設立日から:期限の短い順の時系列

設立の登記が終わったら、会社側と個人側の届出を並行して進めます。期限の短い順に並べると次のとおりです。

期限届出提出先側
5日以内健康保険・厚生年金保険 新規適用届(あわせて社長の資格取得届)年金事務所会社
14日以内国民健康保険の資格喪失の届出住所地の市区町村個人
15日以内(東京都)法人設立・設置届出書都税事務所(他の道府県・市町村は条例の期限)会社
1か月以内給与支払事務所等の開設届出書税務署会社
1か月以内(廃止の日から)個人事業税の事業廃止の申告都道府県税事務所個人
1か月以内(廃止の日から)給与支払事務所等の廃止届出書(給与を払っていた場合)税務署個人
速やかに消費税の事業廃止届出書(課税事業者・インボイス登録者)税務署個人
2か月以内法人設立届出書税務署会社
3か月以内(1期目の終了の日が早ければその前日まで)青色申告の承認申請書税務署会社
廃業した年の確定申告期限まで個人事業の開業・廃業等届出書税務署個人
同上所得税の青色申告の取りやめ届出書税務署個人

※ 会社側の期限は設立日から。個人側は個人事業を廃止した日(または職場の健康保険に入った日)から。国保の14日は住所地の市区町村の案内による

最初に来るのは社会保険の5日以内です。添付する登記事項証明書は提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものが必要なので、登記が完了したらすぐ取得します。社長1人の会社でも社会保険には加入します(法人化すると社会保険は強制加入)。

協会けんぽに入っても、国民健康保険の資格は自動では消えません。自分で市区町村に届け出ます。設立が月末か月初かで、その月の保険料がどちらにかかるかも変わります(法人成りの月の保険料は国保か社保か)。

廃業届は「1か月以内」ではない

よく「個人事業の廃業届は1か月以内」と言われますが、国税庁の案内では、個人事業の開業・廃業等届出書は、事業の廃止等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出します。1か月以内が期限なのは、給与支払事務所等の廃止届と、都道府県への個人事業税の事業廃止の申告(地方税法第72条の55)のほうです。

個人事業税の申告には、法人成りで事業用資産を会社に売ったときの譲渡損失を書けば、その分を事業の所得から引けます(法人成りで資産を会社に売った損は個人事業税から引ける)。個人側の届出の詳しい扱いは法人成りで個人事業をやめる手続きにまとめています。

インボイスは法人として取り直す

インボイス(適格請求書発行事業者)の登録番号は、個人と法人で別です。個人で登録していた人は、法人として新たに登録申請をし、取引先に新しい番号を伝えます。設立日から登録する方法は法人成りでインボイス番号は変わるで扱っています。

届出以外にやること:お金と契約の切り替え

届出書の一覧には出てきませんが、法人成りで切り替えが必要なものです。期限があるものから順に並べます。

時期やること期限・押さえどころ詳しく
設立後すぐ法人口座を開く会社が成立してからでないと開けない(登記事項証明書が要る)。口座がなくても届出の期限は止まらない法人口座が作れない理由
設立から3か月以内役員報酬を決める設立日から3か月を経過する日までに決めれば、定期同額給与として損金になる。その後は原則として年1回しか変えられない設立1期目の役員報酬はいつまでに決める?・最適額の早見表
第1期中法人としてインボイスの登録を申請する個人の登録番号は引き継げない。新設法人は第1期中に申請すれば設立日にさかのぼって登録できる法人成りでインボイス番号は変わる
最初の報酬を払う前源泉所得税の納期の特例を申請する給与の支給人員が常時10人未満なら、納付を年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめられる。自動では適用されない一人会社の源泉所得税は年2回にできる
厚生年金に入ったらiDeCoの加入者区分を変える第1号から第2号加入者に変わる。運営管理機関に「加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)」を出す法人化したらiDeCoの手続きは?
厚生年金に入った日国民年金基金は自動で脱退手続きは不要だが、それまでの掛金は返ってこない。社会保険料控除もその分なくなる国民年金基金は法人成りで自動脱退
事由発生日から1年以内小規模企業共済の継続を申し出る会社の役員として加入資格を満たせば、納付月数を引き継げる。共済金等を請求していないことが条件小規模企業共済は法人成り後も継続できる
営業を始める前許認可を引き継ぐか取り直す業法ごとに違う。古物商は取り直し、建設業は事前の認可で承継、飲食店の営業許可は営業の譲渡で承継し届出法人成りで許認可は引き継げるか
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資産を移すとき車・設備・在庫を会社に売るか貸すか決める個人が課税事業者なら、会社への売却にも賃貸の家賃にも消費税がかかる。株式会社が成立後2年以内に、成立前からあって事業に使い続ける財産を純資産額の5分の1を超える対価で買うと、株主総会の特別決議が要る(純資産額は500万円が下限なので、小さい会社では対価100万円超が境目)法人成りの資産引継ぎ・車を会社に売る消費税・事後設立
口座と番号が決まったら取引先に振込先・インボイス番号を伝え、契約を会社へ移す個人で結んだ契約は会社に移らない。契約ごと移すには、個人と会社の合意に加えて取引先の承諾が要る法人成りで取引先との契約は移らない

個人として最後に処理するもの

個人事業をやめた年の申告では、法人成りに特有の処理がいくつかあります。

翌年に来るもの:個人の確定申告と後払いの税

設立日から1年のうちに、もう1つ大きな節目が来ます。翌年の3月15日までの、個人としての最後の確定申告です。

  • 1月1日から廃業日までの事業所得(個人事業の分)
  • 会社から受け取った役員報酬(給与所得)。年末調整を受けていても、事業所得があるので確定申告が必要

この申告の内容で、翌年度の住民税が決まります。個人事業時代の所得にかかる住民税・個人事業税は法人化した後に後払いで来るため、法人化1年目は会社の立ち上げ資金と個人の税金の支払いが重なります。その年の申告の仕方は法人成りした年の個人の確定申告で扱っています。

会社のほうは、1期目の決算日の翌日から2か月以内に法人税などの申告をします。期限を1か月延ばす手続きは法人の申告期限を1か月延長で扱っています。

まとめ

  • 設立前:会社の形と基本事項を決め、定款・資本金の払込み・設立登記。設立費用は株式会社約25万円、合同会社約10万円
  • 5日以内:社会保険の新規適用届。最も期限が短い
  • 14日〜1か月:国保の脱退、自治体への法人設立届(東京都は15日)、給与支払事務所の開設届、個人事業税の事業廃止の申告
  • 2〜3か月:税務署への法人設立届出書、青色申告の承認申請
  • 確定申告期限まで:個人の廃業届と青色申告の取りやめ届。翌年3月に個人として最後の確定申告
  • 届出以外:法人口座、役員報酬(3か月以内)、インボイスの登録申請、源泉所得税の納期の特例、iDeCo・小規模企業共済、許認可、資産と取引先の切り替え

手続きに入る前に、法人化で手取りが本当に増えるかを、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

法人化の手続きで、いちばん期限が短いものは何ですか。

健康保険・厚生年金保険の新規適用届で、事実が発生した日から5日以内です。法人の登記事項証明書(提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)を添付して年金事務所に出します。

個人事業の廃業届は1か月以内に出さないといけませんか。

国税庁の案内では、個人事業の開業・廃業等届出書は、事業の廃止等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出します。1か月以内が期限なのは、給与支払事務所等の廃止届や個人事業税の事業廃止申告のほうです。

法人化した翌年の確定申告はどうなりますか。

個人として、1月1日から廃業日までの事業所得と、会社から受け取った役員報酬(給与所得)をあわせて確定申告します。会社のほうは、決算日の翌日から2か月以内に法人税の申告をします。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。