設立の手続き

法人成りで許認可は引き継げるか。古物商は取り直し19,000円

結論

許認可が法人へ引き継げるかは業法ごとに違います。古物商許可には承継の規定がなく、個人の営業を廃止して許可証を返納し、法人が新規に申請します(手数料19,000円)。建設業許可は事前の認可を受ければ承継でき、飲食店などの営業許可は営業の譲渡により当然に承継され、届出だけで済みます。

  • 古物営業法8条1項1号は、古物営業を廃止したときは許可証を返納しなければならないと定めている
  • 建設業許可は譲渡・譲受けについてあらかじめ認可を受ければ地位を承継する(建設業法17条の2)。新規に取り直すと知事許可で9万円
  • 飲食店などの営業許可は営業の譲渡により許可営業者の地位を承継し、遅滞なく届け出る(食品衛生法56条)

法人化の費用として案内されるのは、定款認証と登録免許税です。合同会社なら約10万円、株式会社なら約25万円。ところが許認可が必要な事業では、ここにもう一つの実費が乗ることがあります。

個人で取った許可は、法人には自動では移りません。そして移せるかどうかは、業法によって扱いがまったく違います。

同じ「許可」でも、承継の規定があるものとないものがある

3つの代表的な許可を条文で確認しました。

許可根拠個人→法人の承継手続き
古物商許可古物営業法3条規定なし個人は廃止して許可証を返納、法人が新規申請
建設業許可建設業法3条事前の認可で承継できる(17条の2)譲渡・譲受けについてあらかじめ認可を受ける
飲食店などの営業許可食品衛生法55条譲渡により当然に承継(56条)遅滞なく都道府県知事へ届出

同じ「個人事業を法人にする」という行為に対して、何もしなくてよいもの、事前の認可が要るもの、取り直しになるものの3段階があります。

古物商許可には承継の条文がない

古物営業法3条は、古物営業を営もうとする者は都道府県公安委員会の許可を受けなければならないと定めています。そして同法8条1項は、許可証の交付を受けた者が次に該当することとなったときは遅滞なく許可証を返納しなければならないとし、その1号に「その古物営業を廃止したとき」を挙げています。

個人事業をやめて法人に移すなら、個人としての古物営業は廃止です。許可証は返納することになります。

同法には、相続・合併・分割・事業譲渡による承継の規定がありません。法人が古物営業を続けるには、法人として新たに許可を受ける必要があります。

手数料は、地方公共団体の手数料の標準に関する政令に定められています。古物営業法3条の規定に基づく古物営業の許可の申請に対する審査は1万9,000円です。

建設業許可は、事前の認可で地位が移る

建設業法17条の2は、建設業者が許可に係る建設業の全部の譲渡を行う場合において、譲渡人および譲受人があらかじめその譲渡・譲受けについて認可を受けたときは、譲受人は譲渡及び譲受けの日に、譲渡人の建設業者としての地位を承継すると定めています。

同法17条の3は相続の場合を定めており、被相続人の死亡後30日以内に申請して認可を受けることとされています。

条件は「あらかじめ」です。法人を設立して事業を移した後から申請するのでは間に合いません。認可を受けずに法人として工事を請け負えば、法人は無許可営業になります。

認可を使わず法人で新規に取り直す場合、同じ政令によれば知事許可の新規申請の審査は9万円(既に同じ区分の許可を受けている場合は5万円)、更新は5万円です。

飲食店の営業許可は届出だけで移る

食品衛生法56条1項は、許可営業者が当該営業を譲渡し、または相続・合併・分割があったときは、営業を譲り受けた者等が許可営業者の地位を承継すると定めています。同条2項は、承継した者は遅滞なくその事実を証する書面を添えて都道府県知事に届け出なければならないとしています。

事前の認可ではなく、事後の届出です。3つの中でもっとも軽い扱いになっています。

取り直しの手数料は、初年度の差額に直接乗る

許認可の費用は、設立費用と同じく初年度だけ発生する固定費です。当サイトの判定は、初年度は設立費用、2年目以降は税理士報酬を差し引いた実質差額を出しています。

売上1,000万円・経費200万円・東京23区・単身・インボイス登録済み・合同会社という条件で計算すると、次のようになります。

金額
2年目以降の実質差額−24.1万円
初年度の実質差額(設立費用10万円を差し引き後)−34.1万円

前提:2026年(令和8年)分の税率・保険料率。40歳未満・青色申告特別控除65万円(e-Tax)。設立費用は合同会社の10万円。

ここに古物商の1万9,000円が乗れば初年度は−36.0万円、建設業の9万円が乗れば−43.1万円です。建設業許可を取り直す場合、合同会社の設立費用とほぼ同額が初年度に追加でかかります。

法人化そのものの費用の内訳は法人化にかかる費用、合同会社と株式会社の差は合同会社と株式会社の費用で扱っています。

順番を間違えると、営業できない期間が出る

許可が必要な事業では、法人設立日と営業開始日を分けて考える必要があります。

  1. 個人の許可が有効なうちは、個人として営業を続ける
  2. 法人を設立し、法人名義で許可を申請する(または承継の認可を受ける)
  3. 許可が下りてから、法人名義の取引に切り替える
  4. 個人の営業を廃止し、許可証を返納する

法人を設立した日に個人の廃業届を出してしまうと、法人の許可が下りるまで営業できない期間が生まれます。 個人の廃業手続きそのものは法人成りの廃業手続きで扱っています。

許可の下りるまでの期間は行政庁によって違います。古物商許可は標準処理期間が定められており、建設業許可はそれより長くなるのが一般的です。法人設立日を決める前に、管轄へ期間を確認しておくと段取りが崩れません。

許可を持つ事業で法人化する場合、判定ツールが出す初年度の差額に、この取り直し費用を足して見てください。2年目以降の差額は変わりませんが、初年度に戻せるかどうかの見え方が変わります。

まとめ

  • 許認可が法人へ引き継げるかは業法ごとに違う。何もしなくてよいもの、事前の認可が要るもの、取り直しになるものがある
  • 古物商許可には承継の規定がない。個人は営業廃止として許可証を返納し(古物営業法8条1項1号)、法人は新規申請。手数料は1万9,000円
  • 建設業許可はあらかじめ認可を受ければ地位が承継される(建設業法17条の2)。取り直すと知事許可の新規申請は9万円
  • 飲食店などの営業許可は譲渡により当然に承継され、遅滞なく届け出る(食品衛生法56条)
  • 取り直し費用は初年度の実質差額に直接乗る。売上1,000万円の条件では−34.1万円が−36.0万円(古物商)や−43.1万円(建設業)になる

よくある質問

許可の名義だけを個人から法人に変更する手続きはありますか。

業法に承継の規定がある場合に限られます。古物営業法にはその規定がないため、名義変更という形はとれません。法人として新たに許可を受けることになります。

法人の許可が下りるまで、営業を止める必要がありますか。

許可が必要な営業を無許可で行うことはできません。個人の許可が有効なうちは個人として営業を続け、法人の許可が下りてから法人名義の取引に切り替えるという順序になります。法人設立日と営業開始日をそろえる必要はありません。

建設業許可の承継の認可は、どのくらい前に申請しますか。

建設業法17条の2は「あらかじめ」認可を受けたときに承継すると定めており、譲渡の日より前に認可を受けている必要があります。審査期間は許可行政庁によって異なるため、法人の設立日を決める前に管轄へ確認してください。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。