設立の手続き
認可外保育施設の法人成りは設置届の出し直し。無償化の確認も取り直し
結論
児童福祉法59条の2は、認可外保育施設の設置者に事業開始から1か月以内の届出を求めています。届出事項の変更は1か月以内の変更届ですが、茨城県の手引き(令和7年4月)は「既存の認可外保育施設の設置者に変更があったとき」を新たな施設設置届の対象とし、変更届で足りるのは単なる社名変更等としています。法人成りでは会社が設置届を出し、個人は廃止届を出すのが基本です。無償化の対象施設としての「確認」も設置者の申請で市町村長が行う(子ども・子育て支援法58条の2)ので、会社で申請し直します。
- 届出をしない、または虚偽の届出をすると50万円以下の過料(児童福祉法62条の5)。届出先は都道府県知事(指定都市・中核市は市長)
- 利用者との契約が成立したら、設置者の名称などを記載した書面を交付する(59条の2の4)。設置者が会社に替わると契約書面も会社名で交付し直す
- 東京23区・40歳未満・経費1,200万円の試算で、個人事業税がかからない場合の損益分岐は2,198万円、5%かかる場合は1,266万円
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
認可外保育施設やベビーシッター事業は、認可がなくても開業できる代わりに、都道府県知事(指定都市・中核市では市長)への届出が義務づけられています。法人成りでは、この届出と、幼児教育・保育の無償化の対象施設としての「確認」の両方を、会社で出し直すことになります。
この記事では、条文と県の手引きで届出の種類を確認し、無償化の確認を切らさない順番を整理します。最後に、個人事業税がかかるかどうかで大きく変わる損益分岐を計算エンジンで出します。
設置届は「事業開始から1か月以内」
児童福祉法59条の2第1項は、認可を受けていない保育施設(居宅訪問型保育などを含む)の設置者に、事業の開始の日から1か月以内に、次の事項を届け出るよう求めています。
- 施設の名称と所在地
- 設置者の氏名と住所(法人なら名称と所在地)
- 建物その他の設備の規模と構造
- 事業を開始した年月日
- 施設の管理者の氏名と住所
- その他内閣府令で定める事項
対象外になるのは、店舗の顧客の子どもだけを預かる施設、設置者の4親等内の親族の子どもだけを預かる施設、半年以内の臨時の施設などに限られます(施行規則49条の2)。届出をしない、または虚偽の届出をすると、50万円以下の過料の対象です(62条の5)。
設置者が替わると、変更届ではなく新たな設置届
届出事項に変更があったときは、変更の日から1か月以内に届け出ます。事業を廃止・休止したときも同じです(59条の2第2項)。変更届の対象事項には「設置者の氏名及び住所又は名称及び所在地」も含まれています(施行規則49条の4)。
条文だけを読むと、設置者欄を会社名に書き換える変更届で済むようにも見えます。しかし茨城県の「認可外保育施設の手引き」(令和7年4月)は、届出の種類を次のように分けています。
| 届出 | 手引きが挙げる場面 | 期限 |
|---|---|---|
| 施設設置届 | 新たに開設したとき、既存の施設の設置者に変更があったとき、休止していた施設を再開するとき | 事業開始の日等から1か月以内 |
| 変更届 | 名称・所在地、設置者の氏名・住所(単なる社名変更等)、設備、管理者の氏名などの変更 | 変更の日から1か月以内 |
| 休止・廃止届 | 施設を休止・廃止したとき | 休止・廃止の日から1か月以内 |
設置者が個人から会社に替わる法人成りは「設置者に変更があったとき」に当たり、会社が新たに設置届を出し、個人は廃止届を出すのが手引きに沿った扱いです。所管の自治体によって様式や運用が異なることがあるので、届出の種類は事前に確認しておきます。
掲示と契約書面も会社名に改める
設置者は、設置者の氏名・名称や管理者の氏名などを施設に掲示し、インターネットで公表します(59条の2の2)。利用契約が成立したときは、設置者の名称などを記載した書面を利用者に交付します(59条の2の4)。設置者が会社に替われば、掲示も契約書面も会社名に改める必要があります。毎年の運営状況の報告(59条の2の5)も、切替え後は会社が行います。
無償化の「確認」も、会社で申請し直す
認可外保育施設を利用する保護者は、一定の要件を満たせば施設等利用費(いわゆる無償化)を受けられます(子ども・子育て支援法30条の11)。その前提は、市町村長がその施設を施設等利用費の支給対象として確認していることです。
58条の2は、この確認を「施設の設置者又は事業を行う者の申請により、市町村長が行う」と定めています。確認は設置者に結びついているので、設置者が会社に替われば、会社として確認を申請します。確認のない期間に利用した分は施設等利用費の対象にならず、保護者の負担に跳ね返ります。
順番は次のようになります。
- 会社を設立する(定款の目的に保育施設の運営・居宅訪問型保育を入れる)
- 所管の自治体に、設置者変更に伴う設置届・廃止届の扱いと、市町村に無償化の確認の申請時期を確認する
- 切替日を月初などの区切りに決め、利用者に設置者の変更と新しい契約書面の交付を案内する
- 切替日から会社で運営を始め、1か月以内に会社の設置届と個人の廃止届を出す
- 会社として無償化の確認を申請し、切替日から確認が及ぶよう日程を合わせる
保育士などの職員は、個人事業から会社へ雇用が移ります。法人化すると社会保険の適用事業所になり、従業員の厚生年金・健康保険の加入も必要です。初めて人を雇う場合の負担は一人社長が初めて従業員を雇う費用で整理しました。
個人事業税がかかるかで、分岐点が900万円以上動く
保育事業は、地方税法72条の2が列挙する法定業種に名前が挙がっていません。事業の実態に応じて都道府県が判断するため、ここでは個人事業税がかからない場合と第1種(5%)に当たる場合の両方を計算しました。保育士の人件費・家賃・給食費などの経費を年1,200万円と置いています。
まず、個人事業税がかからない場合です。
| 事業所得(売上−経費) | 最適な役員報酬 | 2年目以降 | 初年度(設立費用込み) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 月42万円 | −53.1万円 | −63.1万円 |
| 800万円 | 月54万円 | −49.6万円 | −59.6万円 |
| 1,000万円 | 月54万円 | −50.2万円 | −60.2万円 |
| 1,200万円 | 月54万円 | −52.1万円 | −62.1万円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | −36.6万円 | −46.6万円 |
| 2,000万円 | 月90万円 | −18.2万円 | −28.2万円 |
※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 1200 --business exempt --age under40 --note '法定業種に当たらない場合(非課税)' で再生成)で算出。経費1,200万円、東京都・東京23区、単身・40歳未満、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は法定業種に当たらない場合(非課税)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算
事業所得2,000万円でも、法人化は年18.2万円の持ち出しです。損益分岐(事業所得・青色申告特別控除の前)を、個人事業税の扱いで比べると次のとおりです。
| 個人事業税 | 2年目以降 | 初年度(設立費用込み) |
|---|---|---|
| かからない | 2,198万円 | 2,416万円 |
| 第1種(5%)に当たる | 1,266万円 | 1,364万円 |
※ 上と同じスクリプトで --business type1 に変えて算出
個人事業税は、法人化すると消える税です。もともとかかっていない事業では、法人化で消える税がない分だけ分岐点が高くなります。自分の事業がどちらかは、事業所得が事業主控除の290万円を超えている年に、都道府県から個人事業税の納税通知書が届いているかで確かめられます。業種ごとの扱いは個人事業税は業種でいくら変わるかにまとめました。
自分の売上と経費で判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。法人でなければ指定を受けられない障害福祉サービスの場合は、障害福祉サービスの指定と法人格を参照してください。
まとめ
- 認可外保育施設の設置者は、事業開始から1か月以内に設置届を出す。怠ると50万円以下の過料
- 茨城県の手引きは、設置者が替わる場合を新たな設置届、単なる社名変更を変更届と区別している。法人成りは会社の設置届と個人の廃止届が基本
- 無償化の対象施設の確認は設置者の申請で市町村長が行うので、会社で申請し直し、切替日から確認が及ぶよう日程を合わせる
- 掲示・契約書面・運営状況の報告も会社名で行う
- 東京23区・40歳未満の試算で、損益分岐は個人事業税がかからなければ2,198万円、5%かかれば1,266万円
よくある質問
個人で出した設置届の「設置者」欄を会社名に書き換える変更届で済みませんか。
法律上、設置者の氏名・名称は変更届の対象事項に入っています(施行規則49条の4)。ただ茨城県の手引きは、設置者そのものが替わる場合を新たな設置届、単なる社名変更等を変更届と区別しています。個人から会社への切替えは設置者が替わる場合に当たるので、所管の自治体に届出の種類を確認してから出すのが確実です。
無償化の対象施設の確認は、会社に引き継がれますか。
子ども・子育て支援法58条の2は、確認を施設の設置者の申請により市町村長が行うと定めています。設置者が会社に替われば、会社として確認を申請することになります。確認がない期間の利用分は施設等利用費の対象にならないので、切替日の前に市町村と日程を詰めておく必要があります。
ベビーシッター(居宅訪問型)も届出の対象ですか。
児童福祉法6条の3第11項の居宅訪問型保育の業務を目的とするものも59条の2の届出の対象で、県の手引きも事業所型・個人型の居宅訪問型の設置届様式を設けています。
出典
- e-Gov法令検索 児童福祉法 第59条の2(認可外保育施設の届出)・第59条の2の2(掲示)・第59条の2の4(書面の交付)・第59条の2の5(運営状況の報告)・第62条の5(過料)
- e-Gov法令検索 児童福祉法施行規則 第49条の2(届出の対象外となる施設)・第49条の4(変更の届出事項)
- e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法 第30条の11(施設等利用費の支給)・第58条の2(特定子ども・子育て支援施設等の確認)
- 茨城県福祉部子ども政策局子ども未来課 認可外保育施設の手引き(令和7年4月)
- e-Gov法令検索 地方税法 第72条の2(個人の行う事業に対する事業税の納税義務者等)・第72条の49の17(個人事業税の税率)
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。