設立の手続き

放課後等デイサービス・就労継続支援は個人事業主で開業できない?指定の法人要件

結論

障害福祉サービス(就労継続支援など)と障害児通所支援(放課後等デイサービスなど)の指定は、法律が都道府県の条例に委ね、条例が従う省令の基準が「法人であること」と定めているため、個人事業主のままでは受けられません。例外は療養介護と、病院・診療所が行う短期入所・児童発達支援などに限られます。法人が前提なので比べるべきは役員報酬で、売上3,000万・経費2,100万円(東京・独身)の試算では最適は月54万円です。

  • 障害者総合支援法36条3項1号・4項と同法施行規則34条の21、児童福祉法21条の5の15と同法施行規則18条の34が法人要件の根拠
  • 障害福祉サービス事業・障害児通所支援事業は第二種社会福祉事業で、そのサービスの提供は消費税が非課税
  • 売上3,000万・経費2,100万円では役員報酬月54万円で手取り合計599.5万円、月80万円なら515.8万円まで下がる(概算)

放課後等デイサービスや就労継続支援で独立しようとすると、「まず法人を作ってください」と言われます。これは自治体の運用ではなく、法律・省令・条例が段階的に定めている要件です。

この業種では、「法人化すべきか」という問いは成り立ちません。比べるべきは、法人にした後の役員報酬の額と、法人の形態にかかる固定費です。ここでは条文の構造を確認したうえで、計算エンジンで報酬額ごとの手取りを並べます。

法律・省令・条例の3段で「法人であること」が決まっている

障害福祉サービスの事業所は、都道府県知事(指定都市・中核市では市長)の指定を受けて初めて、給付の対象になるサービスを提供できます。指定を拒否する場合を定めているのが、次の条文です。

段階障害者向け(就労継続支援など)障害児向け(放課後等デイサービスなど)
法律障害者総合支援法36条3項1号「申請者が都道府県の条例で定める者でないとき」は指定してはならない児童福祉法21条の5の15第3項1号に同じ文言
法律同条4項:条例は主務省令で定める基準に従い定める同条4項:内閣府令で定める基準に従い定める
省令同法施行規則34条の21:基準は法人であること児童福祉法施行規則18条の34:基準は法人であること
条例例:栃木県条例3条は、条例で定める者を施行規則34条の21に定めるところによるとする各都道府県・指定都市等の条例

ポイントは4項の「従い」です。条例に委ねられているとはいえ、省令の基準に従うことが求められるため、都道府県が独自に「個人でもよい」と緩めることは想定されていません。

指定は6年ごとに更新が要る

障害者総合支援法41条により、指定障害福祉サービス事業者の指定は6年ごとに更新を受けなければ効力を失います。施行規則34条の21第2項は、法人であることの基準を更新にも準用しています。法人であることは、開業時だけでなく事業を続ける間の前提です。

欠格事由は役員にも及ぶ

36条3項には、申請者が過去に指定を取り消された場合などの欠格事由も並んでいます。法人で申請する場合、取消しを受けた法人の役員だった人が役員にいると対象になり得ます。一人会社でも、役員個人の経歴が審査に関わる点は押さえておく必要があります。

例外は医療機関が行う一部のサービスだけ

省令のただし書きには、法人要件を外す例外があります。

サービス法人要件
就労継続支援・生活介護・居宅介護など必要
放課後等デイサービス・児童発達支援(下の例外を除く)必要
療養介護不要
短期入所(病院・診療所が行うもの)不要
児童発達支援(病院・診療所が行うもの)不要
給付の対象外の自費サービス指定自体が不要

例外は医療機関によるものに限られ、福祉職出身の個人が始める場合には使えません。構造は介護保険の訪問介護と同じで、介護保険側の要件は訪問介護は個人事業主では開業できない?で扱っています。

消費税は非課税:インボイスの論点がほぼ消える

社会福祉法2条3項は、障害者総合支援法の障害福祉サービス事業と、児童福祉法の障害児通所支援事業を第二種社会福祉事業としています。国税庁のタックスアンサー(No.6201)は、第二種社会福祉事業などの社会福祉事業等によるサービスの提供を非課税取引に挙げています。

このサイトの判定では、インボイス登録済みだと「法人化しても消費税の免税が受けられない」という形で結論が動きます。しかし売上の大半が給付費の事業では、そもそも課税売上がほとんどないため、この論点はほぼ効きません。試算もインボイス未登録で行っています。

なお、利用者側から見た負担上限は世帯の所得割で決まります。経営者自身の子が利用者になる場合の扱いは、障害福祉サービスの負担上限と法人化にまとめています。

法人前提で比べるのは役員報酬の額

法人格が必須の業種では、「個人のままの手取り」は参考値にすぎません。実際に選べるのは役員報酬の額です。計算エンジンで、売上3,000万円・経費2,100万円(役員報酬・社会保険料の前)の場合を出しました。

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円572.2万円102.8万円469.4万円33.4万円
月20万円581.0万円196.3万円384.7万円68.1万円
月30万円589.3万円289.1万円300.2万円102.2万円
月40万円592.4万円378.8万円213.6万円139.6万円
月50万円596.8万円468.6万円128.2万円170.3万円
月54万円 ←最適599.5万円504.8万円94.8万円180.5万円
月60万円590.7万円547.8万円42.9万円200.9万円
月70万円561.2万円625.4万円-64.1万円228.6万円
月80万円515.8万円704.8万円-189.0万円238.3万円
月90万円470.0万円784.4万円-314.4万円249.2万円
月100万円419.7万円860.2万円-440.4万円261.3万円

※ 経費2,100万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス未登録・合同会社/2026年(令和8年)分基準。法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額。参考:個人のままの手取りは598.0万円(この業種では指定を受けられないため選べない)

利益900万円の水準では、最適な月54万円と月80万円とで手取り合計に年83.7万円の差が出ます。報酬を利益いっぱいまで上げると、法人に残る額がマイナスになり、社会保険料と所得税の累進が効いてくるためです。役員報酬の考え方は役員報酬はいくらが最適かも参考にしてください。

報酬は事業年度の途中で変えにくい

定期同額給与の扱いにより、役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内にしか改定できません。給付費は利用者数や加算の取得で月ごとに動くため、初年度は保守的に設定し、翌期に見直す前提で考えると無理がありません。

まとめ

  • 障害福祉サービス・障害児通所支援の指定は、法律→省令→条例の3段で申請者が法人であることが基準になっている
  • 例外は療養介護と、病院・診療所が行う短期入所・児童発達支援などに限られる
  • 第二種社会福祉事業のサービス提供は消費税が非課税で、インボイスの論点はほぼ効かない
  • 法人前提なので比べるのは役員報酬。売上3,000万・経費2,100万円では最適は月54万円(概算)

一般論の数字ではなく、自分の見込み売上と人件費を入れて、役員報酬ごとの手取りを確かめてください。

よくある質問

放課後等デイサービスは合同会社でも開業できますか?

省令の基準は「法人であること」で、法人の種類は限定されていません。合同会社や株式会社などの営利法人でも申請はできます。人員・設備の基準を満たすことは別に必要です。

個人事業主として障害福祉の事業を始め、後から法人にできますか?

指定を受ける時点で法人であることが求められるため、個人のまま指定事業所として始めることはできません。指定を受けない自費のサービスなら個人でも提供できますが、利用者は給付を受けられません。

障害福祉サービスの報酬に消費税はかかりますか?

障害福祉サービス事業や障害児通所支援事業は社会福祉法の第二種社会福祉事業で、そのサービスの提供は消費税が非課税です。給付の対象外の物品販売などは課税になることがあります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。