社会保険

障害福祉サービスの負担上限、法人化で月3万7,200円→4,600円になる帯

結論

障害のある子の親が売上1,000万〜1,500万円・経費200万円の個人事業主なら、所得割額は35万〜64万円で28万円を超え、負担上限月額は一般2の3万7,200円です。法人化して最適報酬(月54万円)にすると所得割額は20.3万円になり、横浜市の区分では一般1の月4,600円に下がります。障害者本人の区分(16万円)では、法人化で下がるのは売上800万円前後の帯に限られます。

  • 負担上限月額は市町村民税課税世帯で一般1が9,300円(18歳未満は4,600円)、一般2が3万7,200円。一般1の線は所得割16万円未満、障害児は28万円未満
  • 所得を判断する世帯は、18歳以上の障害者は本人と配偶者、障害児は保護者の住民基本台帳上の世帯。加入する医療保険では変わらない
  • 上限額は1割負担の月の合計にかかる。利用量が少なく1割負担が4,600円に届かない月は、区分が下がっても差は出ない

障害福祉サービスや、障害のある子どもが使う放課後等デイサービス・児童発達支援は、利用料の1割を負担し、月の合計に上限があります。その上限を決めるのが市町村民税の所得割額です。

医療費助成と違い、線は1本だけで、越えると上限が一気に上がります。障害者本人なら16万円、障害児の保護者なら28万円です。法人化で所得割額が下がると、この1本の線をまたぐ帯があります。

上限月額は4区分。課税世帯は一般1と一般2だけ

厚生労働省と横浜市の案内による区分です。

区分世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯0円
一般1市町村民税課税世帯で、所得割16万円未満(障害児は28万円未満)9,300円(横浜市は18歳未満4,600円)
一般2上記以外3万7,200円

20歳以上の入所施設利用者とグループホーム利用者は、課税世帯なら所得割額にかかわらず一般2です。

厚生労働省は、所得割16万円未満の世帯を「収入が概ね670万円以下の世帯」と説明しています。ただこれは給与収入を前提にした目安です。個人事業主は給与所得控除がない分、同じ手取りでも所得割額が大きくなり、この目安より低い売上で線を越えます。

判定の世帯は保険ではなく「配偶者」と「住民票」

医療費助成(指定難病や自立支援医療)では、判定の世帯は加入している医療保険の単位でした。障害福祉サービスは違います。

利用者所得を判断する世帯の範囲
18歳以上の障害者(施設に入所する18・19歳を除く)障害のある本人とその配偶者
障害児(施設に入所する18・19歳を含む)保護者の属する住民基本台帳での世帯

障害児の場合、父母が同じ住民票の世帯にいれば両親の所得割額を合計します。親が法人化して協会けんぽに移っても、配偶者が別の保険に入っていても、合算する範囲は変わりません。法人化で変わるのは、合計に入る社長自身の所得割額だけです。

障害児の保護者:売上1,000万〜1,500万円で28万円を下回る

判定ツールと同じ計算エンジンで、個人のままと、法人化して手取りが最大になる役員報酬にしたときの所得割額を並べました。区分は障害児の基準(28万円)で判定しています。

売上(経費200万円)個人の所得割額区分法人化後の役員報酬法人化後の所得割額区分
600万円137,600円一般1(4,600円)月28万円80,300円一般1(4,600円)
800万円244,000円一般1(4,600円)月42万円146,200円一般1(4,600円)
1000万円350,500円一般2(3万7,200円)月54万円203,000円一般1(4,600円)
1200万円463,900円一般2(3万7,200円)月54万円203,000円一般1(4,600円)
1500万円643,100円一般2(3万7,200円)月54万円203,000円一般1(4,600円)
2000万円943,100円一般2(3万7,200円)月90万円428,700円一般2(3万7,200円)
3000万円1,570,400円一般2(3万7,200円)月100万円497,000円一般2(3万7,200円)

前提:横浜市・40歳未満・配偶者なし(保護者1人の世帯)・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。所得割額は市町村民税分を税率6%・調整控除後で計算し、税額控除は考慮していない。一般1の上限額は横浜市の18歳未満の額。16歳未満の子には扶養控除がないため、子がいても親の所得割額は単身と同じ計算になる。

売上1,000万〜1,500万円・経費200万円の帯で、一般2から一般1に下がります。配偶者にも所得割額がある場合は、その分を足して28万円と比べてください。

実際の差は利用量で決まる

上限額は「1割負担の合計がこれ以上にならない」という天井です。放課後等デイサービスや児童発達支援の1割負担が月4,600円を超えている世帯では、上限の差がそのまま効き、最大で月3万2,600円、年39万1,200円の差になります。

利用日数が少なく、1割負担が月4,600円に届かない世帯では、区分が下がっても実際の負担は変わりません。自分の世帯の毎月の1割負担額を、受給者証の上限管理票で確かめるのが確実です。

障害者本人・配偶者:16万円の線は法人化でも越えやすい

18歳以上の障害者本人(または配偶者)の場合は、線が16万円まで下がります。

売上(経費200万円)個人の所得割額区分法人化後の役員報酬法人化後の所得割額区分
600万円137,600円一般1(9,300円)月28万円80,300円一般1(9,300円)
800万円244,000円一般2(3万7,200円)月42万円146,200円一般1(9,300円)
1000万円350,500円一般2(3万7,200円)月54万円203,000円一般2(3万7,200円)
1200万円463,900円一般2(3万7,200円)月54万円203,000円一般2(3万7,200円)
1500万円643,100円一般2(3万7,200円)月54万円203,000円一般2(3万7,200円)
2000万円943,100円一般2(3万7,200円)月90万円428,700円一般2(3万7,200円)
3000万円1,570,400円一般2(3万7,200円)月100万円497,000円一般2(3万7,200円)

前提は上の表と同じ(一般1の上限額は18歳以上の9,300円)。

最適報酬のままで一般1に下がるのは売上800万円前後の帯だけです。売上1,000万円以上では、最適報酬の月54万円でも所得割額は20.3万円で、16万円を上回ります。

役員報酬別に見ると、一般1に収まるのは月40万円(所得割額13.5万円)までで、月45万円(16.0万円)で一般2に上がります。月54万円から月40万円に下げると上限の差は月2万7,900円ですが、その分の利益は会社に残って法人税がかかります。報酬を下げた場合の手取り全体の変化は、判定ツールの役員報酬別の結果で確かめてください。

障害者控除(本人・配偶者・扶養親族が障害者の場合)を受けていれば、所得割額はこの表より小さくなります。控除の効き方は障害者控除と法人化で扱いました。

所得割額で決まる他の負担とは線が違う

同じ「市町村民税所得割額」でも、制度ごとに線と世帯の範囲が違います。

制度線(所得割額)世帯の範囲
障害福祉サービス(障害者)16万円本人と配偶者
障害児の通所支援など28万円保護者の住民票の世帯
自立支援医療(精神通院)3.3万円・23.5万円医療保険の世帯
指定難病・小児慢性特定疾病7.1万円・25.1万円医療保険の世帯

医療費助成の側は自立支援医療(精神通院)と法人化と難病の医療費助成と法人化で計算しています。

まとめ

  • 障害福祉サービスの上限月額は、所得割16万円(障害児は28万円)未満で一般1、以上で一般2の3万7,200円
  • 判定の世帯は、障害者なら本人と配偶者、障害児なら保護者の住民票の世帯。医療保険の切り替えでは変わらない
  • 障害児の保護者は、売上1,000万〜1,500万円・経費200万円の帯で、法人化により一般2から一般1に下がる
  • 障害者本人の16万円の線は低く、最適報酬のままで下がるのは売上800万円前後の帯に限られる

上限額の差が実際にいくらになるかは、毎月の利用量で決まります。まず判定ツールで自分の条件の最適報酬を出し、その報酬額での所得割額を上の表に当てはめてください。

よくある質問

放課後等デイサービスの利用料は、親が法人化すると安くなりますか?

親の市町村民税所得割額が28万円以上から未満に下がると、負担上限月額が3万7,200円から一般1の額(横浜市では18歳未満4,600円)に下がります。ただし実際の負担が下がるのは、1割負担の月額がその上限を超えている場合です。

共働きの場合、夫婦の所得割額は合算しますか?

合算します。障害児の場合は保護者の属する住民基本台帳上の世帯、18歳以上の障害者の場合は本人と配偶者の所得で判断します。加入している医療保険が別でも合算の範囲は変わりません。

所得割額16万円未満はどのくらいの年収ですか?

厚生労働省は、所得割16万円未満の世帯を「収入が概ね670万円以下の世帯」と説明しています。事業所得と給与所得では控除の構造が違うため、同じ売上でも個人事業主と役員報酬では所得割額が変わります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。