社会保険

自立支援医療(精神通院)は所得割23.5万円で対象外。法人化で戻る帯

結論

売上800万〜1,500万円・経費200万円・単身の個人事業主は、市民税所得割額が24.4万〜64.3万円で23.5万円以上となり、自立支援医療(精神通院)は「重度かつ継続」でなければ対象外です。法人化して最適報酬(月42万〜54万円)にすると所得割額は14.6万〜20.3万円に下がり、中間所得2として窓口負担1割の対象に戻ります。

  • 所得区分は市民税所得割額3.3万円・23.5万円が境目。税率6%で、住宅ローン控除や寄附金控除を足し戻した額で見る(横浜市)
  • 23.5万円以上で「重度かつ継続」の人を対象にする扱いは、国の経過的特例で令和9年3月31日まで
  • 「世帯」は住民票ではなく医療保険の単位。国保から協会けんぽに移ると、合算する家族が変わる

自立支援医療(精神通院医療)は、うつ病・統合失調症・てんかんなどで通院している人の窓口負担を、原則3割から1割にする制度です。ただし医療保険の世帯の市民税所得割額が23.5万円以上だと、原則として対象外になります。

個人事業主は、この23.5万円を思ったより低い売上で越えます。一方で法人化して役員報酬にすると、同じ売上でも所得割額が下がり、対象に戻る帯があります。

所得区分は所得割額3.3万円と23.5万円で分かれる

静岡市の案内による、月額負担上限額の区分です。課税世帯が入るのは下の3つです。

所得区分市民税所得割額重度かつ継続重度かつ継続でない
中間所得13.3万円未満5,000円医療保険の自己負担限度額
中間所得23.3万円以上23.5万円未満1万円医療保険の自己負担限度額
一定所得以上23.5万円以上2万円(経過的特例)対象外

市民税非課税の世帯は、本人収入により月2,500円または5,000円、生活保護は0円です。中間所得でも「重度かつ継続」でない人は、窓口負担が1割になり、月の上限は医療保険の高額療養費の限度額です。

「重度かつ継続」は、統合失調症・気分障害(うつ病など)・てんかんなどの診断、医療保険の多数該当(12か月で4回以上の高額療養費)、医師の認定のいずれかに当たる人です。

23.5万円以上の特例は令和9年3月まで

横浜市によると、一定所得以上の世帯で「重度かつ継続」の人を月2万円の上限で対象にしているのは、国が令和9年3月31日までの経過的特例として定めた扱いです。延長されなければ、令和9年4月1日以降は一定所得以上の世帯の人は全員が対象外になります。

この期限がある分、23.5万円の線の意味は大きくなります。これまで「重度かつ継続」で対象だった人も、所得割額が23.5万円を下回らなければ3割負担に戻ります。

判定に使うのは「6%で計算し、税額控除を足し戻した」所得割額

横浜市は、通知書に書かれた市民税所得割額を「8で割って6をかけた金額」が目安だと案内しています。政令指定都市の市民税の税率は8%ですが、判定は改正前の6%で行うためです。

さらに住宅ローン控除や寄附金控除などがある人は、その控除額を足した額で判定します。ふるさと納税をしても、住宅ローン控除を受けても、区分は下がりません。区分を動かせるのは所得そのものと、所得控除だけです。

売上別:800万〜1,500万円は法人化で対象に戻る

判定ツールと同じ計算エンジンで、個人のままと、法人化して手取りが最大になる役員報酬にしたときの所得割額を並べました。

売上(経費200万円)個人の所得割額区分法人化後の役員報酬法人化後の所得割額区分
600万円137,600円中間所得2月28万円80,300円中間所得2
800万円244,000円一定所得以上月42万円146,200円中間所得2
1000万円350,500円一定所得以上月54万円203,000円中間所得2
1200万円463,900円一定所得以上月54万円203,000円中間所得2
1500万円643,100円一定所得以上月54万円203,000円中間所得2
2000万円943,100円一定所得以上月90万円428,700円一定所得以上
3000万円1,570,400円一定所得以上月100万円497,000円一定所得以上

前提:横浜市・40歳未満・単身・扶養なし・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。所得割額は市町村民税分を税率6%・調整控除後で計算し、税額控除は考慮していない(判定でも足し戻されるため)。

売上800万円・経費200万円で、個人のままの所得割額は24.4万円です。23.5万円をわずかに越えて一定所得以上になります。法人化して月42万円の役員報酬にすると14.6万円で、中間所得2に入ります。

売上2,000万円以上では、最適報酬が月90万円以上と高くなり、法人化しても23.5万円を下回りません。

1割と3割の差はいくらか

窓口負担の差は通院の頻度と薬の量で決まります。たとえば医療費(10割)が月2万円なら、3割負担は6,000円、1割負担は2,000円で、差は月4,000円・年4.8万円です。医療費が月5万円なら、差は月1万円・年12万円になります。

法人化の損得そのものに比べれば小さな額ですが、治療が何年も続く場合は積み重なります。

役員報酬別:月60万円までは中間所得2

売上1,000万円・経費200万円で、役員報酬を動かしたときです。

役員報酬(月)給与所得住民税の課税所得市町村民税所得割額区分
月15万円1,060,000円373,956円20,800円中間所得1
月20万円1,600,000円828,600円48,100円中間所得2
月30万円2,440,000円1,497,900円88,300円中間所得2
月40万円3,400,000円2,270,136円134,700円中間所得2
月50万円4,360,000円3,076,500円183,000円中間所得2
月60万円5,380,000円3,942,876円235,000円一定所得以上
月70万円6,460,000円4,883,916円291,400円一定所得以上

前提は上の表と同じ。

月60万円の所得割額はちょうど23.5万円で、「以上」なので一定所得以上に入ります。月50万円台までが対象の範囲です。境目のすぐ上に報酬を置いている場合、社会保険料控除の小さな差でも区分が変わります。

役員報酬は事業年度の途中で自由に変えられません。区分を意識するなら、期首に報酬を決める段階で確かめておく必要があります。変更の制約は役員報酬の期中変更で扱いました。

「世帯」は医療保険の単位。法人化で合算する家族が変わる

横浜市は、自立支援医療の「世帯」は住民票ではなく医療保険の単位で認定すると明記しています。異なる医療保険に入っている家族は、同居していても別世帯です。

誰の所得割額を合算するか個人事業主(国保)法人化後(協会けんぽ)
本人が患者同じ国保に入っている家族全員本人(被保険者)のみ
扶養の家族が患者同上被保険者である本人

夫婦ともに国保で所得がある場合、個人事業主のうちは2人分の合計で23.5万円と比べられます。法人化して配偶者を扶養に入れると、判定は社長1人分になります。所得割額で区分が決まる医療費助成には指定難病もあり、同じ構造を難病の医療費助成と法人化で計算しています。

障害福祉サービスの利用者負担も所得割額で決まりますが、世帯の範囲は医療保険ではなく本人と配偶者(障害児は住民票の世帯)です。障害福祉サービスの負担上限と法人化で扱いました。

子どもの手術などに使う育成医療も同じ23.5万円の線で対象外になります。育成医療と法人化で計算しました。

まとめ

  • 自立支援医療(精神通院)は、市民税所得割額23.5万円以上だと「重度かつ継続」以外は対象外。重度かつ継続の特例は令和9年3月31日まで
  • 所得割額は税率6%で、住宅ローン控除・寄附金控除を足し戻した額で判定する
  • 売上800万〜1,500万円・経費200万円・単身は、個人のままでは対象外、最適報酬で法人化すると中間所得2に戻る
  • 役員報酬は月50万円台までが対象の範囲。世帯は医療保険単位なので、国保から協会けんぽへの移行で合算する家族も変わる

所得割額は経費や家族構成で動きます。まず判定ツールで自分の条件の最適報酬を確かめ、その額が23.5万円の線のどちら側に来るかを見てください。

よくある質問

所得が高いと自立支援医療(精神通院)は使えませんか?

医療保険の世帯の市民税所得割額が23.5万円以上だと、「重度かつ継続」に該当しない人は対象外です。該当する人は月2万円の上限で対象になっていますが、これは令和9年3月31日までの経過的特例です。

住宅ローン控除やふるさと納税で住民税が下がれば、区分も下がりますか?

下がりません。横浜市は、通知書の市民税所得割額に住宅ローン控除や寄附金控除などの控除額を足した額で判定すると案内しています。区分を動かすのは所得と所得控除までです。

法人化したら、すぐに対象に戻りますか?

役員報酬が判定に使われるのは、その報酬に対する住民税が課税された後です。法人化した年の所得は翌年度の住民税になるため、更新でその年度の所得割額が使われる時点から区分が変わります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。