社会保険

子どもの手術の育成医療、親の所得割23.5万円で対象外。法人化で戻る帯

結論

単身の親で売上800万〜1,500万円・経費200万円の個人事業主は、市民税所得割額が24.4万〜64.3万円で23.5万円以上となり、子の育成医療は(重度かつ継続でなければ)対象外です。法人化して最適報酬(月42万〜54万円)にすると所得割額は14.6万〜20.3万円に下がり、中間所得2として自己負担の上限は月1万円になります。売上1,000万円なら医療費100万円の手術月で、自己負担は高額療養費の18万3,130円から1万円に下がります。

  • 一定所得以上の判定は、住宅借入金等特別税額控除・寄附金控除の前の市民税所得割額23.5万円(同一保険の世帯)で行う(横浜市)
  • 育成医療は課税世帯でも、所得割額3.3万円未満は月5,000円・23.5万円未満は月1万円の上限。これは令和9年3月31日までの経過的特例
  • 国保は加入者全員の所得割額を合算し、健康保険は被保険者(親)の分で判定する。法人化で合算の範囲も変わる

育成医療は、18歳未満の子どもの身体の障害を手術などで軽くしたり治したりする治療について、窓口負担を原則1割にし、月の上限を設ける制度です。心臓の手術、口蓋裂の手術と歯科矯正、人工透析、斜視や難聴の治療などが対象になります。

ただし、同じ医療保険の世帯の市民税所得割額が23.5万円以上だと、原則として対象外です。個人事業主の親は、この線を思ったより低い売上で越えます。

23.5万円の線と、育成医療だけの低い上限

横浜市は、一定所得以上(住宅借入金等特別税額控除・寄附金控除の前の市民税所得割額が23万5,000円以上)の世帯(同一保険)で「重度かつ継続」に該当しない場合は、公費負担の対象外になると案内しています。

課税世帯の上限額は、札幌市と厚生労働省の案内によるとこうなります。

市民税所得割額育成医療(重度かつ継続でない)重度かつ継続
3.3万円未満月5,000円月5,000円
3.3万円以上23.5万円未満月1万円月1万円
23.5万円以上対象外月2万円

市民税非課税の世帯は月2,500円または5,000円、生活保護は負担なしです。

自立支援医療のうち精神通院医療や更生医療では、課税世帯で重度かつ継続に当たらない人の上限は医療保険の自己負担限度額です。育成医療だけは、受給者に若い世帯が多いことを踏まえて、月5,000円・1万円という低い上限が設けられています。

どちらも令和9年3月31日までの経過的特例

厚生労働省は、「育成医療の中間所得」の上限と「重度かつ継続の一定所得以上」を対象にする扱いを、令和6年3月31日までの経過的特例から令和9年3月31日まで延長したとしています。延長されなければ、令和9年4月以降は中間所得の上限が医療保険の自己負担限度額に戻り、23.5万円以上の世帯は重度かつ継続でも対象外になります。

「重度かつ継続」は、育成医療では腎臓機能障害・小腸機能障害・心臓や肝臓の移植後の抗免疫療法・HIVによる免疫機能障害か、直近12か月以内に子の健康保険から3回以上高額療養費の支給を受けている場合です(横浜市)。

売上別:800万〜1,500万円は法人化で対象に戻る

判定ツールと同じ計算エンジンで、個人のままと、法人化して手取りが最大になる役員報酬にしたときの所得割額を並べました。

売上(経費200万円)個人の所得割額区分法人化後の役員報酬法人化後の所得割額区分
600万円137,600円月1万円月28万円80,300円月1万円
800万円244,000円対象外月42万円146,200円月1万円
1000万円350,500円対象外月54万円203,000円月1万円
1200万円463,900円対象外月54万円203,000円月1万円
1500万円643,100円対象外月54万円203,000円月1万円
2000万円943,100円対象外月90万円428,700円対象外
3000万円1,570,400円対象外月100万円497,000円対象外

前提:横浜市・40歳未満・配偶者なし・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。所得割額は市町村民税分を税率6%・調整控除後で計算し、税額控除は考慮していない(判定でも足し戻されるため)。「重度かつ継続」には該当しない場合。16歳未満の子には扶養控除がないため、子がいても親の所得割額は単身と同じ計算になる。

役員報酬別では、月50万円の所得割額が18.3万円、月60万円がちょうど23.5万円です。月50万円台までが対象の範囲で、月60万円に上げると対象外になります。

医療費100万円の手術月で、自己負担はいくら違うか

育成医療の対象外になると、自己負担の上限は医療保険の高額療養費の限度額です。医療費(10割)100万円の手術があった月で比べます。

売上(経費200万円)個人のまま(国保・育成医療の対象外)法人化後(協会けんぽ・育成医療)差
800万円区分ウ:92,940円月1万円82,940円
1,000万円区分イ:183,130円月1万円173,130円

高額療養費は令和8年8月診療分からの限度額。個人のままは旧ただし書き所得(事業所得−43万円)で区分を判定(売上800万円は492万円で区分ウ、1,000万円は692万円で区分イ)。区分イ=179,100円+(医療費−597,000円)×1%、区分ウ=85,800円+(医療費−286,000円)×1%。入院時の食事代は含まない。

法人化後の役員報酬が月54万円だと、協会けんぽの高額療養費は区分イです。ただ育成医療の対象になるので、上限は区分イの限度額ではなく月1万円です。高額療養費の区分と法人化の関係は高額療養費の区分は法人化で変わるで扱いました。

実際には、自治体の子ども医療費助成で窓口負担がさらに軽くなることがあります。その場合、ここまでの差は出ません。子ども医療費助成の対象年齢や所得制限は自治体ごとに違うので、住んでいる市区町村の制度と組み合わせて確かめてください。

判定の世帯は医療保険の単位。国保から協会けんぽへ

育成医療の「世帯」も、精神通院医療と同じく同じ医療保険の単位です。横浜市は、申請書類として子と被保険者の保険情報、国保の場合は加入している家族全員分を求めています。

誰の所得割額を合算するか個人事業主(国保)法人化後(子が協会けんぽの被扶養者)
親が1人働いている親の所得割額親(被保険者)の所得割額
夫婦とも国保で所得がある夫婦の所得割額の合計被保険者である親の所得割額だけ

夫婦ともに国保で所得がある場合、国保のままなら2人分の合計で23.5万円と比べます。社長が法人化して子を健康保険の扶養に入れれば、判定は社長1人分になります。

同じ23.5万円の線は、精神通院の自立支援医療にもあります。自立支援医療(精神通院)と法人化で計算しました。子の慢性疾患の医療費助成は小児慢性特定疾病と法人化で扱っています。

まとめ

  • 育成医療は、同一保険の世帯の市民税所得割額(税額控除前)23.5万円以上だと、重度かつ継続でなければ対象外
  • 課税世帯でも所得割額23.5万円未満なら月5,000円・1万円の上限。これと重度かつ継続の一定所得以上の扱いは、令和9年3月31日までの経過的特例
  • 単身の親で売上800万〜1,500万円・経費200万円なら、個人のままは対象外、最適報酬で法人化すると月1万円の上限で対象に戻る
  • 売上1,000万円なら医療費100万円の手術月で、自己負担は18万3,130円から1万円に下がる(子ども医療費助成がない場合)

手術の時期が先に分かっていても、所得割額に反映されるのは翌年度からです。まず判定ツールで自分の売上と経費での最適報酬を確かめ、その所得割額が23.5万円の線のどちら側に来るかを見てください。

よくある質問

育成医療は所得が高いと使えませんか?

同じ医療保険の世帯の市民税所得割額(税額控除前)が23.5万円以上だと、「重度かつ継続」に該当しない場合は対象外です。該当する場合は月2万円の上限で対象になりますが、これは令和9年3月31日までの経過的特例です。

課税世帯の育成医療の上限額はいくらですか?

所得割額3.3万円未満なら月5,000円、3.3万円以上23.5万円未満なら月1万円です。本来は医療保険の自己負担限度額が上限ですが、受給者に若い世帯が多いことなどから経過的特例として低い上限が設けられています。期限は令和9年3月31日です。

手術が決まってから法人化しても間に合いますか?

間に合いません。判定に使う所得割額は、治療開始の時期に応じた課税年度のもので、法人化した年の役員報酬は翌年度の住民税になってから使われます。育成医療は原則として事前申請も必要です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。