社会保険

一人社長の社会保険料はいくら?会社負担込みで計算

一人社長の社会保険料を、役員報酬月5万〜100万円で計算。本人負担・会社負担・労使合計の早見表と、標準報酬月額から自分で計算する4ステップ、報酬を下げても年26.3万円で下げ止まる理由をまとめました。

一人社長の社会保険料は、給与明細から引かれる額だけを見てはいけません。健康保険と厚生年金には、ほぼ同額の会社負担分があります。会社も自分のものだからこそ、労使合計を法人化後のコストとして数える必要があります。

東京・40歳未満の一人社長が役員報酬を月50万円にすると、2026年の社会保険料は本人負担85万1,400円、会社負担85万1,400円、合計170万2,800円です。給与額面600万円に対して、労使合計で28.4%に相当します。

報酬を下げれば保険料も下がりますが、どこまでも下がるわけではありません。役員報酬を月5万円にしても、労使合計で年26万3,405円が残ります。

「会社が半分払う」は、一人社長には半額という意味ではない

会社員なら、会社負担分は勤務先のコストであり、本人の給与口座から直接は減りません。一人社長も制度上は同じで、会社が本人負担分と会社負担分を合わせて納付します。

ただし経済的な見方は違います。会社の預金も含めて自分の事業から残る額を比較するなら、会社負担分も無視できません。

たとえば年間の役員報酬が600万円でも、会社側では役員報酬600万円に加えて会社負担の社会保険料85万1,400円が必要です。会社の資金流出は685万1,400円になります。

会社負担分は損金にできるため、その全額が最終的な手取り減になるわけではありません。会社の課税所得を下げ、法人税等を減らす効果があるからです。それでも、最初から存在しない費用として扱うことはできません。

役員報酬別の年間社会保険料【早見表】

当サイトの計算エンジンで、役員報酬月5万〜100万円を比較しました。東京支部、40歳未満、2026年3月分以降の健康保険料率9.85%、子ども・子育て支援金率0.23%、厚生年金保険料率18.3%を使っています。

役員報酬本人負担会社負担労使合計額面年収に対する割合
月5万円13.2万円13.2万円26.3万円43.9%
月10万円16.7万円16.7万円33.4万円27.8%
月15万円25.5万円25.5万円51.1万円28.4%
月20万円34.1万円34.1万円68.1万円28.4%
月30万円51.1万円51.1万円102.2万円28.4%
月40万円69.8万円69.8万円139.6万円29.1%
月50万円85.1万円85.1万円170.3万円28.4%
月54万円90.2万円90.2万円180.5万円27.9%
月60万円100.5万円100.5万円200.9万円27.9%
月80万円119.1万円119.1万円238.3万円24.8%
月100万円130.6万円130.6万円261.3万円21.8%

※ 東京支部・40歳未満・賞与なし・2026年(令和8年)分。端数処理後の年額。雇用保険、労災保険、後述の子ども・子育て拠出金は含みません。

報酬が上がるほど割合が一定に増え続けないのは、保険料を実際の報酬そのものではなく、標準報酬月額の等級に当てはめて計算するためです。さらに厚生年金には標準報酬月額の上限があります。

月40万円の割合が隣の行より高いことも、等級制の影響です。境界をまたぐと標準報酬月額がまとめて上がるため、実際の報酬に対する割合は細かく上下します。詳しい境界は標準報酬月額の全50等級で確認できます。

自分の役員報酬で計算する4ステップ

早見表にない金額でも、手順は4つだけです。役員報酬を月30万円にした場合で追いかけます。

1. 報酬月額を標準報酬月額にあてはめる。 月30万円は健康保険の第22等級(29万円以上31万円未満)に入るため、標準報酬月額は30万円です。厚生年金では第19等級にあたり、こちらも30万円になります。実際の報酬額そのものではなく、あてはめた後の金額に料率を掛けます。

2. 健康保険等の全額を出す。 標準報酬月額30万円 × 10.08% = 3万240円です。10.08%は、東京支部の健康保険料率9.85%に子ども・子育て支援金率0.23%を足した数字です。40〜64歳ならここに介護保険料率1.62%も加わります。

3. 厚生年金の全額を出す。 標準報酬月額30万円 × 18.3% = 5万4,900円です。厚生年金保険料率は平成29年9月以降18.3%で固定されており、都道府県による差はありません。

4. 合計を折半して12倍する。 3万240円 + 5万4,900円 = 8万5,140円。これを折半すると本人・会社が月4万2,570円ずつです。年額では本人51万840円、会社51万840円、労使合計102万1,680円になります。

折半で1円未満の端数が出たときは、給与から差し引く本人負担分を50銭以下なら切り捨て、50銭を超えるなら切り上げます。会社負担分は納入告知額から本人負担分の合計を差し引いた残りとして決まるため、本人負担分と会社負担分が1円単位まで一致するとは限りません。標準報酬月額5万8,000円のように折半して端数が出る等級では、当サイトの計算でも本人が年13万1,700円、会社が年13万1,705円と数円ずれます。

月50万円の内訳を、会社の支出として並べる

会社から毎月出ていく額

月50万円の役員報酬は、標準報酬月額50万円の等級に入ります。年間額を12で割ると、本人負担と会社負担はそれぞれ月7万950円です。

会社から見た毎月の資金金額
役員報酬の額面50万円
会社負担の社会保険料7万950円
会社の支出合計57万950円

会社は役員報酬50万円から本人負担7万950円を預かり、会社負担7万950円を足して納付します。所得税の源泉徴収や住民税の特別徴収があれば、それらも別に動きます。

「自分への給料を月50万円にしたから、会社の人件費も50万円」と考えると、毎月約7万円の資金不足が起きます。役員報酬を決めるときは、会社負担分を足した金額を固定支出として置く必要があります。

健康保険と厚生年金の内訳

本人負担月7万950円のうち、健康保険等は2万5,200円、厚生年金は4万5,750円です。会社側にも同額があります。

月50万円・標準報酬月額50万円本人負担(月)会社負担(月)労使合計(月)
健康保険+子ども・子育て支援金2万5,200円2万5,200円5万400円
厚生年金4万5,750円4万5,750円9万1,500円
合計7万950円7万950円14万1,900円

※ 東京支部・40歳未満。健康保険料率9.85%に子ども・子育て支援金率0.23%を加えた10.08%、厚生年金18.3%で計算。

このケースでは、労使合計の約65%が厚生年金です。健康保険料率の地域差だけを見ても、社会保険料全体の差を説明できない理由です。厚生年金は全国一律で、報酬月額が一定水準までは役員報酬とともに増えます。

子ども・子育て支援金は2026年4月から始まった負担です。東京・標準報酬月額50万円なら、0.23%の労使合計は月1,150円、その半分の575円ずつを本人と会社が負担します。健康保険料の欄に含めて徴収されるため、前年の給与計算表をそのまま使うと差が出ます。

40〜64歳なら、ここへ介護保険料1.62%も加わります。同じ標準報酬月額50万円では労使合計月8,100円、本人・会社が月4,050円ずつ増えます。

子ども・子育て拠出金は会社だけが負担する

ここまでの表に入っていない会社負担がもう1つあります。子ども・子育て拠出金です。厚生年金保険料と一緒に徴収されますが、労使折半ではなく事業主だけが負担します。令和8年度の率は0.36%で、法定上限は0.40%です。

名前が似ている子ども・子育て支援金(0.23%・労使折半)とは別の制度です。支援金は健康保険料に含めて徴収され、拠出金は厚生年金側で会社だけに課されます。子どもがいるかどうかとは関係なく発生します。

役員報酬厚生年金の標準報酬月額拠出金(月)拠出金(年)
月20万円20万円720円8,640円
月30万円30万円1,080円1万2,960円
月50万円50万円1,800円2万1,600円
月54万円53万円1,908円2万2,896円
月80万円以上65万円2,340円2万8,080円

※ 令和8年度・拠出金率0.36%。厚生年金の標準報酬月額の上限が65万円のため、拠出金も月2,340円で頭打ちになります。

金額としては年1万〜3万円ですが、法人住民税の均等割7万円と同じく、会社側にだけ乗る固定費です。当サイトの判定ツールの計算には含めていないため、会社の資金繰りを組むときは別に足してください。

報酬を下げても、保険料は年26.3万円で下げ止まる

「役員報酬を限界まで下げれば社会保険料もほぼゼロになる」という考え方は成立しません。標準報酬月額に下限があるためです。

健康保険の下限は第1等級の5万8,000円、厚生年金の下限は第1等級の8万8,000円です。報酬月額が8万3,000円を下回っても、厚生年金は8万8,000円の標準報酬月額で計算され続けます。

役員報酬健保の標準報酬月額厚年の標準報酬月額労使合計(年)額面年収に対する割合
月3万円5.8万円8.8万円26.3万円73.2%
月5万円5.8万円8.8万円26.3万円43.9%
月8万円7.8万円8.8万円28.8万円30.0%
月10万円9.8万円9.8万円33.4万円27.8%

※ 東京支部・40歳未満。健康保険の標準報酬月額は報酬月額6万3,000円未満で5万8,000円に固定されます。

役員報酬を月5万円にしても、労使合計で年26万3,405円かかります。額面年収60万円に対して43.9%です。報酬を月3万円まで下げると、金額は同じ26万3,405円のまま、割合だけが73.2%まで跳ね上がります。

つまり報酬を下げるほど、額面に対する社会保険料の重さは増えていきます。保険料の総額が最も軽くなるのは下限まで下げたときですが、そのときは役員個人の生活費を会社から取り出せません。法人に残った利益を後から配当や退職金で取り出すコストが別に発生します。

なお、報酬を下げてもその月から保険料が下がるわけではありません。改定は変動月から起算して4か月目です。時期と3か月分の差額は役員報酬を下げても保険料が下がるのは4か月目にまとめました。

社会保険料だけを最小にすると、法人税が増える

役員報酬を下げれば社会保険料は下がります。しかし、報酬として会社の損金にする額も減り、法人に利益が多く残ります。その利益には法人税等がかかります。

売上1,200万円、経費200万円のケースを計算すると、役員報酬月10万円では労使合計の社会保険料が33.4万円まで下がります。一方、法人に残る税引後価値は529.6万円です。月54万円では社会保険料が180.5万円に増えますが、個人と法人を合わせた手取りが最大になりました。

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円632.5万円102.8万円529.6万円33.4万円
月30万円650.8万円289.1万円361.6万円102.2万円
月50万円659.7万円468.6万円191.1万円170.3万円
月54万円662.4万円504.8万円157.6万円180.5万円
月60万円653.6万円547.8万円105.8万円200.9万円
月80万円615.8万円704.8万円-89.0万円238.3万円

※ 売上1,200万円・経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。法人に残る額は、後で個人へ取り出すコスト20%を控除した後の評価額です。

社会保険料だけを最小化するのではなく、法人税等と役員個人の税を合わせて比較する理由がここにあります。役員報酬の最適額を96通りで比較した記事も、同じ考え方で計算しています。

給与から預かった分と会社負担分を混ぜない

毎月の資金管理では、本人負担分と会社負担分の性質を分けます。本人負担分は役員報酬から会社が預かって納付する金額です。会社負担分は会社自身の費用です。

役員報酬月50万円なら、社会保険だけで次の流れになります。

  1. 役員報酬50万円を計上する
  2. 本人負担7万950円を給与から差し引く
  3. 差引後の給与から、さらに源泉所得税や住民税を控除して本人へ振り込む
  4. 会社負担7万950円を加え、社会保険料14万1,900円を納付する

本人負担分は会社の売上でも利益でもありません。納付まで一時的に預かっているお金です。運転資金として使い込むと、納付日に不足します。給与支給時点で預り金として分け、会社負担分と合わせた納付予定額を管理する必要があります。

一方、会社負担分は法定福利費として損金になります。本人負担分は役員個人の社会保険料控除です。同じ14万1,900円を会社で全額経費にして、さらに個人でも全額控除するわけではありません。会社は会社負担分、個人は本人負担分をそれぞれの計算に使います。

なお、健康保険・厚生年金の納付期限は原則として翌月末です。給与を払った月と実際に会社口座から引き落とされる月がずれるため、月次の損益だけでなく納付予定表も持つと資金繰りを読み違えにくくなります。納付できなかったときに使える制度と延滞金の額は社会保険料が払えないときで扱っています。

見落としやすい3つの条件

40歳からは介護保険料が加わる

40〜64歳の協会けんぽ加入者には、2026年度は介護保険料率1.62%が上乗せされます。これも労使折半です。同じ役員報酬でも40歳未満より負担が増えるため、年齢帯を正しく入れる必要があります。

住む都道府県で健康保険料率が違う

協会けんぽの健康保険料率は都道府県支部ごとに異なります。2026年度は東京9.85%ですが、全国一律ではありません。所在地を変えた概算は協会けんぽ47都道府県の比較で確認できます。

加入義務と保険料額は別の問題

役員報酬を低くすれば保険料額は下がりますが、それだけで法人事業所が適用事業所でなくなるわけではありません。一人会社を含む法人事業所の原則的な扱いは法人化後の社会保険加入義務で整理しています。

同じ理由で、一人社長が育児のため実際に業務を休んでも、保険料が自動で免除されるわけではありません。一人社長が育児休業の保険料免除を申請できない理由では、女性役員の産前産後免除との違いまで分けています。

まとめ

  • 一人社長は、給与から引かれる本人負担だけでなく会社負担もコストとして見る
  • 東京・40歳未満・役員報酬月50万円では、労使合計の社会保険料は年170.3万円
  • 自分で計算するときは、標準報酬月額にあてはめてから健康保険等10.08%と厚生年金18.3%を掛け、折半して12倍する
  • 報酬を下げても標準報酬月額の下限があるため、労使合計は年26.3万円で下げ止まる
  • 子ども・子育て拠出金0.36%は労使折半ではなく、会社だけが負担する
  • 報酬を下げると社会保険料は減るが、法人利益と法人税等が増える

本人負担だけの表ではなく、自分の会社から出る額まで含めて計算してください。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめるのが確実です。

よくある質問

一人社長でも社会保険の会社負担はありますか?

あります。健康保険と厚生年金の保険料は、役員本人の給与から差し引く分と会社が負担する分に分かれます。一人会社でも、会社負担分がなくなるわけではありません。

役員報酬を最低にすれば、社会保険料はいくらまで下がりますか?

東京・40歳未満なら、労使合計で年26万3,405円が下限です。健康保険の標準報酬月額は5万8,000円、厚生年金は8万8,000円が下限に定められているため、役員報酬をそれより低くしても保険料はこの額を下回りません。

会社負担分は自分の手取りと無関係ですか?

一人社長では無関係ではありません。会社負担分は法人の損金になりますが、同時に会社の現金と利益を減らすため、法人と個人を合算した手取り比較に含める必要があります。

役員報酬を下げれば社会保険に加入しなくてよいですか?

報酬を下げると保険料は下がりますが、報酬額だけを理由に法人事業所の加入義務がなくなる制度ではありません。加入対象かどうかと、保険料がいくらかは分けて考える必要があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。