社会保険

補装具費は市町村民税所得割46万円で対象外。個人事業主は売上−経費1,015万円で届く

結論

補装具費は、障害者本人またはその配偶者のうち市町村民税所得割の最も多い人の納税額が46万円以上だと支給されません。18歳未満の障害児にはこの所得制限はありません。40〜64歳の個人事業主は、売上−経費が単身で1,015万円、配偶者ありで1,045万円を超えるとこの線を越えます。法人化して手取りが最大になる役員報酬(月54万円)を取ると所得割は18万〜20万円で、報酬が月95万〜96万円までなら46万円未満に収まります。

  • 46万円は市町村民税(区市町村民税)の所得割だけの額。都道府県民税を含む住民税全体の所得割ではない。住宅ローン控除などの税額控除を判定で足し戻す扱いをする自治体がある
  • 18歳以上の障害者の『世帯』は本人と配偶者だけ。親や子の所得は判定に入らない。障害児(18歳未満)は保護者の世帯で負担上限額を決めるが、46万円での対象外はない
  • 支給の対象なら、利用者負担は1割で、市町村民税課税世帯の負担上限月額は37,200円(大田区の案内)

車椅子や義足、補聴器などを作るときに使う補装具費は、障害福祉の制度の中でも所得による線引きがはっきりしています。所得が一定を超えると、負担が増えるのではなく支給そのものが対象外になります。その線は「市町村民税所得割46万円」で、個人事業主はこの線を思ったより低い売上で越えます。

46万円以上なら、補装具費は支給されない

厚生労働省は、補装具の利用者負担を「定率1割負担と所得に応じた負担上限月額」としたうえで、障害者又はその配偶者のうち市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合には支給対象外とするとしています。

大田区の案内では、区分と負担上限月額は次のとおりです。

区分世帯の状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得区市町村民税非課税世帯0円
一般区市町村民税課税世帯(所得割46万円未満)37,200円
対象外本人または配偶者に所得割46万円以上の人がいる支給なし(全額自己負担)

※ 大田区「補装具費の支給」。1割負担のほうが上限月額より低い場合は1割負担の額

補装具は高額なものが多く、電動車椅子や義足は数十万円から百万円を超えることもあります。46万円未満なら1割負担・月37,200円が上限ですが、46万円以上なら全額を自分で払うことになります。線の手前と向こうで、負担がまったく別物になる制度です。

「世帯」は本人と配偶者だけ。障害児には所得制限がない

判定の範囲にも特徴があります。大田区は、18歳以上の障害者の世帯の範囲を「本人」、配偶者がいれば「本人と配偶者」としています。親や子の所得は入りません。

また、46万円での対象外は18歳未満の障害児には適用されないとされています。障害児の場合は保護者の世帯で負担上限月額を決めますが、所得による支給の対象外はありません。この記事の論点が効くのは、社長本人か社長の配偶者が補装具を使う場合です。

46万円は「市町村民税」の所得割だけの額

ここで取り違えやすいのが、46万円の中身です。住民税の所得割は、市町村民税(区民税)と道府県民税(都民税)を合わせた額で通知されますが、判定に使うのは市町村民税の所得割だけです。東京23区では税率10%のうち区民税が6%なので、所得割の合計では約77万円が46万円の線に相当します。

障害福祉の判定では、市町村民税を税率6%で計算し、住宅ローン控除や寄附金控除などの税額控除を足し戻した額で見る扱いをする自治体があります。その場合、ふるさと納税で住民税を減らしても判定は下がりません。同じ考え方の判定は自立支援医療(精神通院)の所得割23.5万円で詳しく扱いました。

個人事業主は売上−経費1,015万円で線を越える

計算エンジンで、個人事業主のままの市町村民税所得割と、法人化して手取りが最大になる役員報酬を取ったときの所得割を並べました。

配偶者あり(配偶者は無収入)

売上−経費個人のまま:市町村民税所得割判定法人化:最適な役員報酬法人化:市町村民税所得割判定
600万円20.1万円対象月42万円12.4万円対象
800万円30.6万円対象月48万円15.2万円対象
1,000万円42.7万円対象月48万円15.2万円対象
1,200万円56万円対象外月54万円18万円対象
1,500万円74万円対象外月54万円18万円対象
2,000万円104万円対象外月90万円40.4万円対象

単身

売上−経費個人のまま:市町村民税所得割判定法人化:最適な役員報酬法人化:市町村民税所得割判定
600万円23.7万円対象月42万円14.4万円対象
800万円34.3万円対象月45万円15.8万円対象
1,000万円45.3万円対象月45万円15.8万円対象
1,200万円57.3万円対象外月54万円20万円対象
1,500万円75.3万円対象外月54万円20万円対象
2,000万円105.3万円対象外月90万円42.4万円対象

※ 経費200万円・東京23区・40〜64歳・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。市町村民税所得割は、計算エンジンの住民税の課税所得に税率6%を掛け、調整控除の市町村民税分を引いた額(scripts/hosougu-shotoku-seigen.mjs で再計算できる)。税額控除は考慮しない

5円刻みで探すと、個人事業主のままでは売上−経費が単身で1,015万円、配偶者ありで1,045万円に達したところで所得割が46万円を超えます。法人化の損益分岐点の近くにちょうど線がある、ということです。

一方、法人化して最適な役員報酬を取ると、売上−経費2,000万円でも所得割は40万円台にとどまります。役員報酬そのものを上げていくと、単身なら月96万円、配偶者ありなら月97万円で46万円を超えます。役員報酬が月95万円(配偶者ありは月96万円)までなら、補装具費の対象に残ります。

線をまたぐ帯では、補装具1つで判定が変わる

この差は、法人化の損得の計算に入っていません。当サイトの判定ツールは税と社会保険料の手取りを比べるもので、補装具費のような給付の対象かどうかは含めていません。

たとえば売上−経費1,200万円の単身の個人事業主は、法人化の損得が僅差になりやすい帯にいます。この人が補装具を作る予定があり、費用が80万円なら、個人事業主のままでは全額の80万円を負担し、法人化していれば1割の8万円(月37,200円の上限の範囲)で済む計算になります。補装具の耐用年数ごとに作り直す必要があるなら、この差は繰り返し効いてきます。

ただし、法人化した年の役員報酬が判定に反映されるのは、翌年度の住民税からです。補装具を作る時期と法人化の時期がずれると、判定に使われるのは個人事業主だった年の所得割です。障害福祉サービスの負担上限月額(所得割16万円・28万円の線)は障害福祉サービスの利用者負担と法人化、障害者控除は障害者控除と法人化で扱っています。計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 補装具費は、障害者本人または配偶者のうち市町村民税所得割の最も多い人が46万円以上だと支給の対象外。18歳未満の障害児には適用されない
  • 46万円は市町村民税の所得割だけの額で、東京23区では住民税の所得割合計で約77万円に相当する。税額控除を足し戻して判定する自治体もある
  • 40〜64歳の個人事業主は、売上−経費が単身で1,015万円、配偶者ありで1,045万円を超えると線を越える
  • 法人化して最適な役員報酬(月54万円)を取ると所得割は18万〜20万円。報酬が月95万〜96万円までなら対象に残る
  • 支給対象なら1割負担・課税世帯の上限月37,200円。対象外なら全額自己負担になる

よくある質問

46万円は住民税の通知書のどの数字で見ればよいですか。

区市町村民税の所得割額です。都民税・道府県民税の所得割を含めた合計額ではありません。住宅ローン控除やふるさと納税の寄附金控除で所得割が下がっている場合、判定ではそれらを足し戻した額で見る扱いをする自治体もあるので、申請先の市区町村に確認してください。

配偶者が会社員で所得が高い場合も対象外になりますか。

なります。18歳以上の障害者の判定は本人と配偶者のうち所得割が最も多い人の額で行うため、障害者本人に所得がなくても、配偶者の所得割が46万円以上なら補装具費は支給されません。

法人化した年に補装具を作る場合、どの年の所得で判定されますか。

住民税の所得割は前年の所得で決まるため、申請する時期の年度の所得割(前年の所得)で判定されます。法人化した年の役員報酬が判定に反映されるのは、翌年度の住民税からです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。