設立の手続き

太陽光のFIT認定を個人から法人へ。事業者変更は変更認定が必要

結論

個人で受けたFIT・FIP認定を会社に移すには、事業計画の変更認定を受けます(再エネ特措法10条1項)。施行規則9条1号は「認定事業者の変更」を軽微な変更から外しており、事後の届出では足りません。さらに8条の2第1号はこれを重要な事項としているため、屋根設置でない10kW以上の太陽光では、説明会か事前周知措置の実施状況も申請書に書きます。個人側で事業の廃止届を出すと認定は失効する(14条1号)ので、廃止ではなく変更認定で移します。

  • 名称・住所・代表者・役員の変更は事後の届出(10条3項)。認定事業者そのものの変更、会社の密接関係者の変更、インボイス登録の有無の変更は変更認定(施行規則9条)
  • 50kW未満・特定区域外の地上設置なら、説明会に代えて事前周知措置(100m以内の住民への書面配布等と2週間以上の質問受付)を選べる(施行規則4条の2の3)
  • 経費900万円・東京23区・40〜59歳の試算で、売電が個人事業税の電気供給業(第1種5%)に当たる場合の損益分岐は1,243万円、課税されない場合は2,277万円

太陽光発電のFIT・FIP認定は、設備ではなく「事業計画」と「認定事業者」に対して与えられています。そのため、発電事業を個人から自分の会社に移すと、認定の名義も替える手続きが要ります。**この手続きは届出ではなく、経済産業大臣の変更認定です。**住所変更のような事後の届出で済むと考えていると、順番を誤ります。

この記事は、50kW未満の低圧の太陽光発電所を個人で持ち、売電を事業として行っている人を想定しています。条文で手続きの種類を確かめ、地上設置で求められる説明会・事前周知、個人側で避けるべき「廃止届」、解体等積立金を整理し、最後に損益分岐を計算エンジンで出します。

認定事業者の変更は「変更認定」。届出では足りない

再エネ特措法10条は、認定を受けた事業計画を変えるときの手続きを3つに分けています。

手続き根拠対象になる主な変更
変更認定(事前)10条1項事業の内容、設備の区分・場所・出力、系統接続、解体等の方法など(9条2項3号〜6号・8号)
事前の届出10条2項省令で定める軽微な変更
事後の届出10条3項氏名・名称・住所・代表者、法人の役員の氏名など(9条2項1号・2号・9号)

この表だけを見ると、「申請者の氏名又は名称」の変更は事後の届出に入るように読めます。しかし施行規則9条は、軽微な変更に当たらないもの(=変更認定が要るもの)の1号に**「認定事業者の変更」**を挙げています。個人の太陽光をそのまま会社に移すのは、名前の書き換えではなく事業者そのものの交代です。そのため変更認定の対象になります。

同じ9条には、法人成りで関係しそうな項目がほかにもあります。

  • 1号の2:認定事業者の適格請求書発行事業者への該当の有無の変更
  • 1号の3:認定事業者の密接関係者の変更

個人でインボイス登録をしていなかった人が、会社では登録する場合も変更認定の対象です。会社を作ったあとに株主構成を変え、資本関係でつながる密接関係者が替わる場合も同じです。一方、会社の代表者や役員が替わるだけなら事後の届出です(10条3項)。資源エネルギー庁も2025年10月10日の案内で、住所・代表者の変更は事後変更届出、密接関係者の変更は変更認定申請と区別しています。

変更認定にも欠格要件がかかる

10条4項は、新規認定の基準(9条4項)を変更認定に準用しています。会社が再エネ特措法または電気事業法に違反して罰金以上の刑を受け、2年を経過していない場合は認定されません。役員にその人がいる法人も同様です(9条4項4号)。

申請書の様式は、10kW以上50kW未満の太陽光なら様式第三の二です(施行規則8条1項)。添付書類は、新規認定の規定(4条の2第2項〜4項)が準用されています。法人なら登記事項証明書と印鑑証明書、設置場所の使用権原を示す書類が含まれます(4条の2第2項2号・3号)。

ここは、自宅の敷地や個人名義の土地に設備を置いている人ほど注意が要ります。設備を会社に移しても、土地が個人のままなら、会社が土地を使う権原を書類で示す必要があります。賃貸借にするか、使用貸借にするかで会社と個人の税務の扱いも変わります。資産の移し方は法人成りの資産引継ぎで整理しています。

地上設置10kW以上は、説明会か事前周知が要る

施行規則8条の2は、変更認定のなかでも「重要な事項」を列挙しています。1号が認定事業者の変更です。重要な事項を変える変更認定では、周辺住民への説明会の開催や事前周知措置の実施状況も申請書に書きます(法10条1項かっこ書き、9条2項7号)。

この義務がかかる設備は、施行規則4条の2の2で決まっています。出力10kW未満の太陽光でも屋根設置太陽光でもない設備が対象です。住宅の屋根に載せた設備は外れ、野立て(地上設置)の低圧発電所は対象に入ります。

説明会が必須か、事前周知措置でもよいかは、施行規則4条の2の3が場所と出力で分けています。

設備の条件求められる措置
森林法の開発許可などが必要な区域、土砂災害警戒区域、条例で指定された自然環境・景観の保全地域にある説明会
上記以外で、出力50kW以上説明会
上記以外で、出力50kW未満だが、100m以内に自分や密接関係者の他の設備があり合計50kW以上説明会
上記以外説明会または事前周知措置

ただし、出力で説明会になる2つのケースについては例外があります。変更後の認定事業者またはその密接関係者が「長期安定適格太陽光発電事業者」として経済産業大臣の認定を受けていれば、説明会は必須ではありません。個人から自分の会社へ移す法人成りで、この認定を持っているケースは多くないはずです。

事前周知措置の中身

50kW未満の低圧1基で特定区域の外なら、事前周知措置を選べます。施行規則4条の2の3第3項の要件は次のとおりです。

  • 対象は、実施場所の敷地境界線から100m以内に住む人
  • 書面を投函・戸別訪問で配るか、インターネットで公開してアドレスを回覧板や自治体の広報に載せる
  • 実施後に質問の提出先を決め、2週間以上受け付けて、書面で回答する

認定事業者を替える場合に説明する項目には、自治体などと結んだ協定の承継その他の事業継続に関する事項が含まれます(施行規則4条の2の3第2項3号チ)。すでに説明会や事前周知をしていれば、そのとき説明した内容から変わった項目に限って説明すればよいとされています。

この手続きがあるため、変更認定の準備は会社の設立登記より前から始めることになります。周知と質問受付の期間を見込まずに設立日だけを決めると、会社ができても売電の名義が替わらない期間が延びます。設立の段取りは会社設立を自分でやる手順にまとめています。

個人の「廃止届」を出すと、認定は失効する

税務署には、法人成りで個人事業をやめるときに廃業届を出します。これと混同しやすいのが、再エネ特措法の事業の廃止の届出(11条)です。

14条1号は、認定事業者が認定計画に係る発電事業を廃止したとき、認定は効力を失うと定めています。個人が「発電事業をやめた」と届け出れば、認定そのものがなくなります。会社が後から同じ設備で認定を受け直すことになり、当初の認定を前提にした条件を引き継げる保証はありません。

法人成りで発電事業を移すときは、廃止ではなく認定事業者の変更(変更認定)で移します。税務署への個人事業の廃業届と、再エネ特措法の廃止届は別の手続きです。

変更を怠った場合

認定事業者は、認定計画に従って事業を行う義務を負います(10条の3)。変更認定を受けずに会社が発電事業を行えば、計画と実態が食い違います。経済産業大臣は改善命令を出せ(13条)、義務違反や命令違反があれば認定を取り消せます(15条1号・3号)。資源エネルギー庁の案内も、変更手続きを怠ると行政処分の対象になり得るとしています。

売電の契約と解体等積立金

FITの売電契約(特定契約)は、認定事業者と電気事業者の間で結ぶ契約です(2条5項)。ここでいう電気事業者は、一般送配電事業者などを指します(2条4項)。認定事業者が会社に替われば、契約の当事者も替わります。電気事業者側の手続きと必要書類は会社ごとに違うため、変更認定の通知を受けたら契約先に確認します。

法令上、特定契約の期間は「認定発電設備」に係る調達期間を超えない範囲と定められています(2条5項)。調達期間は設備ごとに決まる期間です。事業者の変更で期間や価格がどう扱われるかは、申請前に資源エネルギー庁の問い合わせ窓口で確認しておくと安全です。

解体等積立金は、調達期間の最後の10年に差し引かれる

積立対象区分等に指定された設備の認定事業者は、解体等の費用に充てる積立金を推進機関に積み立てます(15条の12第2項・3項)。特定契約で売電している場合は、契約先の電気事業者を経由して積み立てます(同条4項)。積立期間は、調達期間が終わる日の10年前の日以降に最初に検針等が行われた日から終了までです(施行規則13条の4第1項2号。10年前の日が令和4年7月1日より前なら、同日以降の最初の検針日から)。

会社が認定事業者になれば、積立ても会社の売電代金から行われます。積立金の取戻しについて、法は認定事業者のほか「旧認定事業者若しくはその承継人」も取り戻せる者に含めています(15条の15)。個人時代の積立分の扱いは、変更認定の申請時にあわせて確認してください。

売電の個人事業税と損益分岐

個人事業税の第一種事業には電気供給業(税率5%)があります(地方税法72条の2第8項6号)。個人の売電がこれに当たるか、事業と認められる規模かは都道府県が判断します。課税されている人は、法人化するとこの税がなくなります。課税されていない人は、法人化で消える税がないぶん、損益分岐が上がります。

低圧発電所を複数持ち、売電を事業の中心にしている人を想定しました。減価償却・地代・保守・借入利息で経費を年900万円、年齢を40〜59歳と置き、両方の場合を計算しています。

まず、売電が電気供給業として課税される場合です。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用込み)
600万円月42万円−34.0万円−44.0万円
800万円月45万円−18.9万円−28.9万円
1,000万円月45万円−10.0万円−20.0万円
1,200万円月54万円−4.3万円−14.3万円
1,500万円月54万円+26.1万円+16.1万円
2,000万円月90万円+65.8万円+55.8万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 900 --business type1 --age 40to64 --note '電気供給業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費900万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は電気供給業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算

次に、個人事業税が課税されていない場合です。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用込み)
600万円月42万円−49.5万円−59.5万円
800万円月45万円−44.4万円−54.4万円
1,000万円月45万円−45.5万円−55.5万円
1,200万円月54万円−49.8万円−59.8万円
1,500万円月54万円−34.4万円−44.4万円
2,000万円月90万円−19.7万円−29.7万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 900 --business exempt --age 40to64 --note '法定業種外として非課税' で再生成)で算出。経費900万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は法定業種外として非課税。初年度は合同会社の設立費用10.0万円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算

損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、課税される場合が2年目以降1,243万円、初年度1,341万円です。課税されない場合は2年目以降2,277万円、初年度2,416万円まで上がります。同じ売電事業でも、個人事業税がかかっているかどうかで損益分岐が1,000万円以上動きます。法人化を検討する前に、自分の売電に個人事業税が課税されているかを納税通知書で確かめておく価値があります。

2つの表は、合同会社の設立費用のほかに、変更認定や事前周知にかかる実費を加えていません。ほかの業種の許認可が法人成りで承継できるか、取り直しになるかは法人成りで許認可は引き継げるかで比べています。また、売電収入が個人でどの所得区分になるかは太陽光の売電収入は雑所得か事業所得かにまとめました。

自分の売電収入と経費で判定ツールに入れると、最適な役員報酬と差額を確かめられます。計算の前提は計算方法に載せています。

まとめ

  • FIT・FIP認定を個人から会社に移すのは、事後の届出ではなく変更認定(再エネ特措法10条1項、施行規則9条1号)
  • 認定事業者の変更は重要な事項(施行規則8条の2第1号)。屋根設置でも10kW未満でもない太陽光は、説明会か事前周知措置が要る
  • 50kW未満・特定区域外なら事前周知措置を選べ、100m以内の住民への周知と2週間以上の質問受付が要件
  • 個人側で再エネ特措法の廃止届を出すと認定は失効する(14条1号)。税務署への廃業届とは別物
  • 経費900万円・40〜59歳の試算で、損益分岐は電気供給業として課税される場合1,243万円、課税されない場合2,277万円

よくある質問

会社の役員や代表者が替わったときも変更認定が要りますか。

認定事業者の名称・住所・代表者の氏名・役員の氏名の変更は、変更したあと遅滞なく届け出る事後の届出です(再エネ特措法10条3項、9条2項1号・2号)。ただし資本関係でつながる密接関係者の変更は変更認定の対象です(施行規則9条1号の3)。

自宅の屋根に載せた10kW未満の太陽光でも、法人に移すなら説明会が必要ですか。

説明会・事前周知措置の義務がかかるのは、出力10kW未満の太陽光でも屋根設置太陽光でもない設備です(施行規則4条の2の2)。屋根設置や10kW未満なら説明会等は求められませんが、認定事業者を替える変更認定そのものは必要です。

変更認定が下りるまでの売電収入は、個人と会社のどちらのものですか。

特定契約は認定事業者と電気事業者の間の契約です(再エネ特措法2条5項)。変更認定を受けて電気事業者との契約を変えるまでは、売電代金は個人の認定事業者に支払われます。設備を会社に移した日と売電代金の帰属がずれる期間の精算は、税務の扱いも含めて税理士に確認してください。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。