設立の手続き

一般廃棄物収集運搬業の許可は法人成りで取り直し。新規停止の市は要注意

結論

個人で受けた一般廃棄物収集運搬業の許可(廃棄物処理法7条1項・市町村長の許可)は、法人へ承継できません。法律に業の許可を譲渡で移す条文がないため、法人で新規許可を受け直します。ところが市町村は「市町村による収集が困難であること」(7条5項1号)を許可の要件として新規許可を止めることがあり、さいたま市は法人化を例外として認める一方、令和8年10月1日に新規許可を止めた川崎市の手引きは例外に法人化を挙げていません。

  • 許可の有効期間は2年(施行令4条の5)。手数料は市町村ごとに決まり、川崎市は新規・変更・更新とも1万円
  • 浄化槽清掃業(浄化槽法35条・市町村長の許可)にも承継の条文はなく、個人は廃業から30日以内に届け出る(38条5号)
  • 経費1,800万円・東京23区・40〜59歳の試算で、損益分岐の事業所得は2年目以降1,243万円。初年度は川崎市の手数料1万円を含めて1,351万円

一般廃棄物の収集運搬業は、法人成りで許可そのものを失うおそれがある数少ない業種です。手数料の高い低いの話ではありません。市町村が新規の許可を止めていると、法人で受け直すはずの許可が下りない可能性があるからです。

この記事は、市町村の許可を受けて事業所のごみや、し尿・浄化槽汚泥を収集運搬している個人事業主を想定しています。承継できない根拠、新規許可を止める仕組み、さいたま市と川崎市の方針の違い、浄化槽清掃業の扱いを確認し、最後に損益分岐を計算エンジンで出します。産業廃棄物の収集運搬業(都道府県知事の許可)は産廃の収集運搬業の法人成りで扱いました。

一般廃棄物の許可は市町村長が出し、承継の条文がない

一般廃棄物の収集・運搬を業として行う人は、業を行う区域を管轄する市町村長の許可を受けます(廃棄物処理法7条1項)。運搬だけなら、積み降ろしをする区域の市町村長です。許可は2年ごとに更新を受けないと効力を失います(7条2項、施行令4条の5)。

廃棄物処理法で承継を定めているのは処理施設です。一般廃棄物処理施設は9条の5〜9条の7で、譲受け・合併・相続による設置者の地位の承継を定めています。一方、7条の収集運搬業の許可には、事業を譲り渡せば地位が移るという条文がありません。7条の2は、事業の範囲の変更の許可と、廃止・変更の届出を定めているだけです。

このため、個人の許可は法人へ引き継げず、法人で新規許可を受け直すことになります。法人を設立しても、それだけで許可が法人に付くわけではありません。

業種許可権者個人の許可は法人へ移るか
一般廃棄物収集運搬業市町村長(7条1項)移らない。法人で新規許可
産業廃棄物収集運搬業都道府県知事(14条1項)移らない。法人で新規許可
浄化槽清掃業市町村長(浄化槽法35条1項)移らない。法人で新規許可

業法ごとの承継の可否は法人成りで許認可は引き継げるかにまとめています。

「市町村が収集するのが困難」でなければ許可しない

産廃と一般廃棄物で決定的に違うのは、許可の要件です。市町村長は、次のすべてに適合すると認めるときでなければ許可をしてはなりません(7条5項)。

  • 市町村による一般廃棄物の収集・運搬が困難であること(1号)
  • 申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合すること(2号)
  • 施設と申請者の能力が省令の基準に適合すること(3号)
  • 申請者が欠格要件に当たらないこと(4号)

1号と2号は、申請者がどれだけ設備や経験をそろえても満たせない要件です。市町村が「既存の許可業者で足りている」と処理計画で判断すれば、新しい許可は出ません。一般廃棄物の処理は市町村が責任を持つ仕組みで、許可業者はその補完という位置づけだからです。この需給の判断が、法人成りの手続きにそのまま跳ね返ります。

3号の基準は、飛散・流出・悪臭のおそれのない運搬車などを持つこと、収集・運搬を的確に行う知識と技能、継続して行う経理的基礎です(施行規則2条の2)。

さいたま市は法人化を例外に入れ、川崎市の手引きは入れていない

新規許可を止めている市町村でも、法人化の扱いは同じではありません。一次資料で確認できた2市を並べます。

さいたま市川崎市
根拠資料一般廃棄物収集運搬業の許可に関する基本方針(令和6年6月4日施行)許可申請の手引(事業系一般廃棄物関係)令和8年4月
新規許可ごみ、し尿・浄化槽汚泥とも新たな許可は行わない令和8年10月1日から新たな許可は行わない
法人化の扱い「個人事業主の代替わりや法人化に伴う許可」は例外例外に挙がっていない
挙がっている例外道路・公園清掃ごみに限る許可、処分業に付随する許可など市の施設以外で再生利用する食品循環資源など、実験動物の死体など、既存業者で適正処理が困難になった場合

さいたま市の方針は、ごみについても、し尿・浄化槽汚泥についても、法人化に伴う許可を新規停止の例外として明記しています。個人で許可を受けている人が法人成りする道は残されています。

川崎市の手引きは、新規許可を行わない旨と3つの例外を挙げていますが、法人化はその中にありません。手引きから読み取れるのはここまでで、個人の許可業者が法人化を申し出たときに市がどう扱うかは書かれていません。新規停止をしている市町村で法人成りを考えるなら、会社を設立する前に、許可を担当する課へ「個人の許可業者が法人化した場合の許可」を確認するのが順番です。設立してから許可が下りないと分かっても、個人の許可を廃止してしまえば戻れません。

川崎市の新規許可の要件と書類

川崎市の手引きでは、申請手数料は新規・変更・更新とも1万円です。申請者は市内に事務所・営業所を持つこと、業務に従事する者3名以上、運搬車2台以上、運搬車1台あたり月平均20トン以上の収集量の確保などが求められます。運搬車は自己所有か使用者名義のものに限られるので、個人名義のパッカー車を法人へ移す手続きも要ります。車の名義の移し方は法人成りの車の名義変更で扱っています。

経理の書類は、法人なら直前3年の貸借対照表・損益計算書などと法人税の確定申告書・納税証明書です。設立後3年を経過せず3年分の納税証明書を出せない場合は、今後3年分の収支計画書を出します。許可の更新には、市が毎年行う講習会の修了も必要です。

許可の空白をつくらない順番

法人の許可が下りるまでの間、個人の許可で法人の仕事をすることはできません。一般廃棄物収集運搬業者は収集・運搬を他人に委託できず(7条14項)、自分の名義で他人に業を行わせることも禁じられています(7条の5)。許可のない法人が業として収集・運搬すれば、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金の対象です(25条1項1号)。

段階個人法人
設立前許可で営業を続ける市に法人化の扱いを確認
設立〜法人の許可まで個人の事業として収集・請求新規許可を申請(車両・従業員・事務所を整える)
法人の許可後排出事業者との契約を法人へ切り替え、廃止日を決める収集を開始
廃止後廃止の日から10日以内に届出(施行規則2条の6第2項)—

排出事業者との委託契約は、許可を受けた法人と結び直します。契約の名義を移すときの考え方は法人成りで契約の地位を移すを参照してください。なお、許可業者が受け取る料金は、市町村が条例で定める手数料の額が上限です(7条12項)。法人化しても料金表を自由に組み直せるわけではありません。

浄化槽清掃業も市町村長の許可で、承継の条文がない

浄化槽の清掃を業として行う人は、業を行う区域を管轄する市町村長の許可を受けます(浄化槽法35条1項)。浄化槽清掃業の許可にも承継の条文はなく、法人は新規に許可を受けます。許可の基準は、施設と申請者の能力が省令の技術上の基準に適合することと、欠格要件に当たらないことです(36条)。廃棄物処理法7条5項1号のような「市町村が行うのが困難」という要件は、条文上はありません。

個人が浄化槽清掃業をやめたときは、30日以内に市町村長へ届け出ます(38条5号)。許可を受けないで浄化槽清掃業を営むと、1年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金の対象です(59条6号)。

浄化槽の清掃は浄化槽法の許可、くみ取った汚泥の収集・運搬は廃棄物処理法の一般廃棄物収集運搬業の許可で、根拠の法律が別です。さいたま市の方針も、し尿・浄化槽汚泥の収集運搬を一般廃棄物収集運搬業の許可の区分として扱っています。両方を持つ個人事業主は、法人成りで2つとも取り直すことになり、汚泥の収集運搬のほうは上で見た新規停止の影響を受けます。浄化槽の設置工事の登録は浄化槽工事業の法人成りで扱いました。保守点検業の登録(条例)は浄化槽保守点検業の法人成りにまとめています。

個人事業税と損益分岐

個人事業税の第1種事業には運送業と請負業があり、どちらも税率は5%です(地方税法72条の2第8項)。一般廃棄物の収集運搬がどちらに区分されても税率は変わりません。区分は事務所のある都道府県が判定します。事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化するとかからなくなります。代わりに役員報酬に社会保険料がかかります。

従業員3名・運搬車2台の規模を想定して、人件費・燃料・車両・処分手数料などの経費を年1,800万円、社長を40〜59歳と置きました。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用込み)
600万円月42万円−34.0万円−45.0万円
800万円月45万円−18.9万円−29.9万円
1,000万円月45万円−10.0万円−21.0万円
1,200万円月54万円−4.3万円−15.3万円
1,500万円月54万円+26.1万円+15.1万円
2,000万円月90万円+65.8万円+54.8万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 1800 --business type1 --age 40to64 --fee 10000 --note '運送業または請負業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費1,800万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は運送業または請負業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円と許認可の取り直し費用10,000円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算

損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、2年目以降が1,243万円です。初年度は、川崎市の手数料1万円を含めて1,351万円、手数料を除けば1,341万円です(同じスクリプトから --fee 10000 を外して算出)。手数料の差は損益分岐を10万円動かすだけです。

一般廃棄物の法人成りで比べるべきは、この表の差額ではなく、法人で許可が下りるかどうかです。許可が下りなければ、表のどの行も成り立ちません。許可の見通しが立った段階で、自分の売上と経費を判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。

まとめ

  • 一般廃棄物収集運搬業の許可(廃棄物処理法7条1項)には承継の条文がなく、法人で新規許可を受け直す。有効期間は2年
  • 許可の要件に「市町村による収集・運搬が困難であること」(7条5項1号)があり、市町村は処理計画に沿って新規許可を止められる
  • さいたま市は法人化に伴う許可を新規停止の例外にしているが、令和8年10月1日に新規許可を止めた川崎市の手引きは例外に法人化を挙げていない。設立前に市への確認が要る
  • 浄化槽清掃業(浄化槽法35条)も承継できず、個人は廃業から30日以内に届け出る。汚泥の収集運搬の許可は別に要る
  • 経費1,800万円・東京23区・40〜59歳の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円、初年度は手数料1万円込みで1,351万円

よくある質問

古紙や古布だけを回収している場合も、一般廃棄物収集運搬業の許可が要りますか。

廃棄物処理法7条1項ただし書は、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集・運搬を業として行う者を許可の対象から外しています。この範囲に収まる事業なら、法人化しても許可の取り直しの問題は生じません。どこまでが該当するかは市町村に確認します。

法人の許可が下りるまで、個人の許可で集めた廃棄物を法人に運ばせてもよいですか。

できません。一般廃棄物収集運搬業者は収集・運搬を他人に委託できず(7条14項)、自分の名義で他人に業を行わせることも禁じられています(7条の5)。許可のない法人が業として収集・運搬すれば、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金の対象です(25条1項1号)。

有限会社から株式会社に変わるときも、許可を取り直しますか。

川崎市の手引きは、有限会社から株式会社への変更は変更届出で足りると案内しています。同じ法人のままだからです。個人から法人への切替えは許可を受ける者が別人になるので、これとは扱いが違います。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。