設立の手続き

産廃の収集運搬業の許可は法人成りで取り直し。都県ごとに8.1万円

結論

個人で受けた産業廃棄物収集運搬業の許可は、法人へ承継できません。廃棄物処理法には処理施設の承継の条文はありますが、収集運搬業の許可を譲渡で移す条文がないためです。法人は新規許可を申請し、積み降ろしをする都道府県ごとに手数料8万1,000円(政令の標準額)を払います。兵庫県と千葉県は、個人事業者が法人化した場合は法人で新規許可申請が要ると案内しています。

  • 許可は積み降ろしをする都道府県ごとに要る。3都県で運んでいれば、取り直しの手数料は24万3,000円。特別管理産業廃棄物も扱うなら、その許可も別に取り直す
  • 新規講習の修了証は多くの自治体で5年有効。最後が更新講習なら原則は新規講習(オンライン2万7,500円)から。兵庫県は法人化なら更新講習の修了証を認める
  • 経費600万円・東京23区・40〜64歳では、損益分岐の事業所得は2年目以降1,243万円。初年度は1都県の取り直しで1,448万円、3都県で1,668万円に上がる

産廃の収集運搬業は、許認可の法人成りのなかでも取り直しが重い部類です。承継の条文がないうえに、許可が都道府県ごとに分かれているからです。複数の県にまたがって運んでいる人ほど、法人化の初年度に乗る実費が大きくなります。

この記事では、承継できない根拠を条文と県の案内で確認し、講習会の修了証と経理の書類で何が変わるかを整理します。最後に、取り直しの実費が初年度の差額と損益分岐をどれだけ動かすかを計算エンジンで出します。

廃棄物処理法には、業の許可を法人へ移す条文がない

産業廃棄物の収集・運搬を業として行う人は、業を行う区域の都道府県知事の許可を受けます(廃棄物処理法14条1項)。運搬だけを行うなら、積み降ろしをする区域の知事です。許可の有効期間は5年です(施行令6条の9)。

承継の規定があるのは処理施設のほうです。一般廃棄物処理施設は9条の5〜9条の7で、譲受け・合併・相続による設置者の地位の承継を定め、産業廃棄物処理施設にも15条の4で準用しています。一方、14条の収集運搬業・処分業の許可には、譲渡で地位を移す条文がありません。14条の2で変更の許可と届出を定めているだけです。

県の案内も同じ結論です。兵庫県のよくある質問は、個人事業主として許可を取得した後に法人化する場合、新しく設立した法人で新規許可申請が要ると答えています。千葉県の手引きも、新規許可申請が要る場合の2番目に「個人事業者が法人を設立した場合」を挙げています。

同じ型の業種と並べると、位置づけが分かります。

業種個人の許可・登録は法人へ移るか法人成りの手続き
産業廃棄物収集運搬業移らない都道府県ごとに法人で新規許可
電気工事業(登録電気工事業者)移る(電気工事業法9条)承継の日から30日以内に承継届
建設業許可事前の認可を受ければ移る(建設業法17条の2)譲渡の前に認可申請
宅建業移らない法人で免許を新規申請

電気工事業は電気工事業の登録は法人成りで承継できる、宅建業は宅建業の法人成りは免許の取り直しで扱いました。古物商・建設業・飲食店の比較は法人成りで許認可は引き継げるかにまとめています。

取り直しの実費は、県の数と講習会で決まる

新規許可の審査手数料は、地方公共団体の手数料の標準に関する政令で8万1,000円です。更新は7万3,000円、事業の範囲の変更は7万1,000円です。特別管理産業廃棄物の収集運搬業も新規は8万1,000円で、更新は7万4,000円です。兵庫県のよくある質問も、新規許可の申請手数料を8万1,000円としています。

許可は都道府県ごとなので、手数料は県の数だけ重なります。講習会の受講料を足して、法人で取り直す実費を並べました。

許可を受ける都道府県産廃のみ:修了証が有効産廃のみ:新規講習から産廃+特管:新規講習(特収)から
181,000円108,500円202,700円
2162,000円189,500円364,700円
3243,000円270,500円526,700円
4324,000円351,500円688,700円

※ scripts/sanpai-shuushu-unpan-houjinnari.mjs で再生成。手数料は政令の標準額(産廃・特管とも新規8万1,000円)。講習会は日本産業廃棄物処理振興センターの処理業(新規)講習会・オンライン形式の受講料(産業廃棄物の収集・運搬課程2万7,500円、特別管理産業廃棄物の収集・運搬課程4万700円)。特管の課程の修了証は産廃の申請にも使える

東京・神奈川・埼玉で積み降ろしをしている人なら、修了証がそのまま使えても24万3,000円です。合同会社の設立費用(約10万円)の2倍を超えます。許可を受けている県の数が、法人成りの初年度の費用を決めます。

修了証が使えるかは、最後に受けた講習で分かれる

許可の基準には、収集運搬を的確に行う知識と技能があることが含まれます(施行規則10条2号イ)。各県は、日本産業廃棄物処理振興センターの講習会の修了で確認しています。千葉県は、申請者が法人なら役員または政令使用人が修了している必要があるとしています。個人のときに修了した本人が法人の代表者になるなら、受講者の要件は満たせます。

問題は修了証の種類と期限です。センターの案内では、許可申請に付ける修了証は、多くの自治体で新規講習が修了から5年、更新講習が2年有効です。そして更新講習の修了証は、原則として更新と変更の許可申請にしか使えません。

個人の許可の状態手元の修了証法人の新規許可申請
新規許可から5年未満(未更新)新規講習・5年以内そのまま使える
更新済み更新講習原則は新規講習を受け直す(オンライン2万7,500円)
更新済み・兵庫県に申請更新講習法人化なら更新講習の修了証の写しを認める

兵庫県は、個人事業主が法人化する場合も更新講習の修了証の写しを認めると明記しています(県に申請する場合に限り、政令市は個別に相談)。他の県では扱いが異なるので、申請先に確認が要ります。

法人の書類は、決算がないところから始まる

収集運搬業の許可の申請には、経理的基礎を示す書類を付けます。法人は直前3年の各事業年度の貸借対照表・損益計算書などと法人税の納税証明書、個人は資産に関する調書と直前3年の所得税の納税証明書です(施行規則9条の2第2項6号・7号)。設立したばかりの法人には、どれもありません。

京都府は、設立から1期未満の法人に追加書類を求めています。

京都府の追加書類(法人)中身
経営状況の見込みに関する申立書府の様式
貸借対照表(見込)・損益計画書第1期の決算期まで9か月以上あれば、その期間で作ってよい
現金・資金の存在を示す書類預金残高証明書か、1か月以上記帳した通帳の写し。借入金があれば契約書なども
受付印のある法人設立届出書の写し税務署・都道府県・市町村の3か所分すべて

千葉県は、利益が出ておらず、かつ債務超過の申請者は経理的基礎の要件に適合しないとする考え方があると書いています。資本金を小さくして設立し、車両を借入れで法人に移すと、見込みの貸借対照表が債務超過に近づきます。個人の資産を法人に移すときの値付けは法人成りの資産引継ぎで扱っています。

5%以上の出資者も、欠格要件の審査に入る

法人の申請書には、役員の氏名と住所に加えて、出資の5%以上を持つ人の氏名・住所・出資額を書きます(施行規則9条の2第1項8号・9号)。その人の住民票の写しなども付けます。家族に出資してもらって設立するなら、その家族も審査の対象です。欠格要件には、廃棄物処理法などの違反で罰金刑を受けて5年を経過しない人などが含まれます(法7条5項4号)。

許可が下りるまでの段取り

兵庫県は、申請から許可までの標準的な処理期間を約2か月(補正の期間を除く)としています。この間、法人はまだ運べません。

  1. 法人を設立し、車両と容器を法人が使える状態にする(所有か、使用する権原があることを示す書類が要る。施行規則9条の2第2項3号)
  2. 積み降ろしをする都道府県ごとに、法人で新規許可を申請する
  3. 許可が下りるまでは、個人の許可で個人の事業として運ぶ
  4. 許可が下りたら、排出事業者ごとに法人名で委託契約を結び直す
  5. 個人は、事業を廃止した日から10日以内に廃止届を出す(施行規則10条の10第2項)

4の委託契約は、排出事業者の側の義務です。委託契約書には受託者の許可証の写しを添付します(施行令6条の2第4号、施行規則8条の4第1号)。受託者が個人から法人に変われば、個人の許可証が付いた契約書では足りません。契約の切替えそのものの考え方は法人成りで取引先との契約は移らないで扱っています。

3の期間に、法人の仕事として個人の許可で運ぶことはできません。許可のない法人が業として運べば無許可営業(14条1項・25条1項1号)、個人が自分の名義で法人に運ばせれば名義貸し(14条の3の3・25条1項7号)です。無許可営業は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金で、法人には3億円以下の罰金が科されます(32条1項1号)。

優良認定の7年許可は、法人の最初の更新まで戻らない

更新の際に優良の基準に適合すると認められると、許可の有効期間は7年になります(施行令6条の9第2号)。この期間は更新を受けた人が対象で、新たに許可を受けた人は5年です(同条1号)。個人で優良認定を受けていても、法人の新規許可は5年から始まります。優良の基準も、許可の有効期間に不利益処分を受けていないことなどを求めているため、判定は法人の許可期間で見直されます(施行規則9条の3)。

取り直しの実費が、初年度の差額と損益分岐をどれだけ動かすか

産廃の収集運搬は、個人事業税の第1種事業のうち運送業(5%)として計算しました。区分は事務所のある都道府県が判定します。運送業の個人事業税の扱いは軽貨物ドライバーの法人化でも説明しています。経費は燃料・車両・処分場への支払いを含めて600万円としました。

売上売上−経費個人事業税(5%)2年目以降初年度:1都県初年度:3都県
1,400万円800万円25.5万円−18.9万円−39.8万円−56.0万円
1,600万円1,000万円35.5万円−10.0万円−30.8万円−47.0万円
1,800万円1,200万円45.5万円−4.3万円−25.2万円−41.4万円
2,000万円1,400万円55.5万円+16.0万円−4.8万円−21.0万円
2,200万円1,600万円65.5万円+35.8万円+15.0万円−1.2万円
2,400万円1,800万円75.5万円+45.5万円+24.6万円+8.4万円

※ 当サイトの計算エンジン(scripts/sanpai-shuushu-unpan-houjinnari.mjs で再生成)で算出。東京23区、40〜64歳、単身、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社(設立費用10万円)、個人事業税は運送業(第1種・5%)の前提。法人の税理士報酬年35万円・個人15万円の前提。初年度は設立費用と取り直しの実費(1都県10万8,500円、3都県27万500円。いずれも新規講習から受ける場合)を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算

同じ条件で、法人化の差がプラスに転じる事業所得(青色申告特別控除前)は次のとおりです。

固定費の前提損益分岐2年目以降との差
2年目以降(税理士報酬の差のみ)1,243万円—
初年度:設立費用のみ1,341万円+98万円
初年度:設立費用+1都県(108,500円)1,448万円+205万円
初年度:設立費用+3都県(270,500円)1,668万円+425万円

売上2,000万円では、2年目以降は年16.0万円のプラスでも、3都県で取り直す初年度は21.0万円のマイナスです。3都県の取り直しは、初年度の損益分岐を設立費用だけの場合よりさらに327万円押し上げます。

ただし、取り直しの実費は一度きりです。5年後の更新手数料は個人のままでも払うので、法人成りで増えるのは初年度の分だけです。初年度のマイナスを何年で取り返せるかは、自分の売上と経費を判定ツールに入れて確かめてください。

まとめ

  • 廃棄物処理法に収集運搬業の許可の承継規定はない。兵庫県・千葉県とも、個人事業者が法人化したら法人で新規許可申請が要ると案内している
  • 新規許可の手数料は8万1,000円で、積み降ろしをする都道府県ごとにかかる。特管も扱うなら別に8万1,000円
  • 修了証は新規講習なら多くの自治体で5年有効。更新講習の修了証は原則として新規申請に使えないが、兵庫県は法人化なら認めている
  • 設立直後の法人は決算書がなく、京都府は見込みの貸借対照表や預金残高の書類を求める。5%以上の出資者も欠格要件の審査に入る
  • 標準処理期間は兵庫県で約2か月。その間は個人の事業として運び、許可後に委託契約を法人名で結び直し、個人は10日以内に廃止届を出す

よくある質問

法人の許可が下りるまで、個人の許可で法人の仕事を運んでもよいですか。

できません。許可を受けていない法人が収集運搬を業として行えば無許可営業になり、個人が自分の名義で法人に業を行わせれば名義貸しになります。どちらも5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金の対象で、無許可営業には法人に3億円以下の罰金の両罰規定もあります。許可が下りるまでは個人の事業として運び、個人の請求書で精算します。

個人の許可は、いつ廃止届を出しますか。

個人として収集運搬の事業を廃止した日から10日以内です(施行規則10条の10第2項)。法人の許可が下りて、取引先との契約を法人に切り替え終えた日を廃止日にすれば、許可の空白をつくらずに移れます。

社名を変えただけでも、許可を取り直しますか。

同じ法人の名称変更なら変更届で足ります。兵庫県は、合併や分割で異なる法人格が事業を継ぐ場合は変更届ではなく新規申請が要ると案内しています。個人から法人への切替えも、許可を受ける者が別人になる点で同じです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。