設立の手続き

浄化槽工事業の登録は法人成りで取り直し。管工事の建設業許可なら届出

結論

浄化槽法には浄化槽工事業者の登録を承継する規定がなく、法人成りでは会社が都道府県知事の登録を受け直します(有効期間5年)。ただし土木工事業・建築工事業・管工事業の建設業許可を持つ建設業者は登録の対象外で、浄化槽工事業を始めたときに届け出るだけです(33条)。建設業許可は事前の認可で会社へ移せるので、許可業者は「認可+会社での開始届」、許可のない業者は「会社での登録」と手順が分かれます。

  • 無登録で浄化槽工事業を営むと1年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金(59条3号)。両罰規定で会社にも罰金
  • 営業所ごとに浄化槽設備士を置く(29条1項)。社長本人が免状を持っていれば兼ねられる
  • 東京23区・経費300万円・請負業(第1種5%)の試算では、損益分岐は2年目以降で40〜59歳1,243万円、40歳未満1,266万円、65歳以上1,384万円

浄化槽の設置工事は、建設業法の「軽微な工事」の範囲でも、浄化槽法の登録なしには請け負えません。個人で受けたこの登録は、法人成りで会社へ移らない側の許認可です。

ただし浄化槽法には、管工事業などの建設業許可を持つ業者を登録の対象から外す特例があります。建設業許可は事前の認可で会社へ移せるので、どちらの手続きを持っているかで法人成りの手順が変わります。この記事では両方の道筋を条文で確認し、最後に損益分岐を計算エンジンで出します。

登録業者と建設業許可業者で、法人成りの手順が分かれる

浄化槽法21条1項は、浄化槽工事業を営もうとする者に、業を行う区域を管轄する都道府県知事の登録を求めています。登録の有効期間は5年です(同条2項)。

一方で33条1項は、土木工事業・建築工事業・管工事業のいずれかの建設業許可を受けた建設業者には、登録に関する21条〜28条などを適用しないと定めています。こうした業者は、浄化槽工事業を始めたときに遅滞なく都道府県知事へ届け出るだけです(同条3項)。

個人のときに持っている手続き会社でやること
浄化槽工事業者の登録だけ会社で登録を受け直す。個人は30日以内に廃業届
管工事業などの建設業許可(+特例の届出)建設業許可を事前の認可で会社へ移し(建設業法17条の2)、会社で浄化槽工事業の開始を届け出る

個人のときに登録業者だった人が、のちに建設業許可を受けた場合、登録はその時点で効力を失います(33条4項)。いまどちらの立場にいるかは、手元の登録通知や建設業許可通知書で確認できます。

登録業者の場合:承継の規定はなく、会社で登録を受け直す

浄化槽法の登録の条文(21条〜28条)には、相続・事業譲渡・合併で登録を引き継ぐ規定がありません。あるのは、登録が消える側の手続きです。

26条は、浄化槽工事業者が次のいずれかに該当したら、30日以内に都道府県知事へ届け出るよう定めています。

  • 死亡したとき(相続人)
  • 法人が合併で消滅したとき(役員であった者)
  • 法人が破産・その他の事由で解散したとき(破産管財人・清算人)
  • 浄化槽工事業を廃止したとき(個人なら本人)

法人成りは、個人が浄化槽工事業を廃止する場合に当たります。届出があると知事は登録を抹消します(27条)。届出を怠ると20万円以下の過料の対象です(67条1号)。

会社が登録を受けずに浄化槽工事業を営むと、1年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金の対象です(59条3号)。両罰規定があり、会社にも罰金刑が科されます(66条)。

会社の申請では、役員全員と設備士を書く

会社の登録申請書には、代表者と役員全員の氏名、営業所ごとの浄化槽設備士の氏名と免状の交付番号を書きます(22条1項)。役員のうちに、浄化槽法違反で罰金以上の刑から2年を経過しない者や、登録取消しから2年を経過しない者などがいると、会社の登録は拒否されます(24条1項7号)。

抹消前の契約は、個人で施工を終えられる

個人の登録が抹消されても、抹消前に結んだ請負契約の工事は個人のまま施工を続けられます(28条1項)。完成させる目的の範囲では、浄化槽工事業者とみなされます(同条3項)。ただし抹消後は遅滞なく注文者へ通知し(通知しないと20万円以下の過料)、注文者は通知から30日以内なら契約を解除できます(同条4項)。

注文者に解除の機会が生まれる点は、他の登録業より一段重い扱いです。工期の長い案件が残っているうちは個人の廃業を急がず、会社の登録が出てから新規契約を会社に切り替え、残工事が終わってから廃業届を出す順番が無理がありません。

建設業許可業者の場合:許可を移してから開始届

管工事業などの建設業許可を持っている個人事業主なら、許可そのものを会社へ移せます。建設業法17条の2は、建設業の全部を譲渡する場合に、あらかじめ譲渡・譲受けの認可を受ければ、譲受人が建設業者の地位を承継すると定めています。承継の仕組みは法人成りで許認可は引き継げるかで整理しました。

認可で建設業許可を引き継いだ会社は、33条1項の建設業者に当たるので浄化槽工事業の登録は要りません。浄化槽工事業を始めたときに会社として開始の届出をします(33条3項)。個人の側は、浄化槽工事業を廃止したことを同じ条文で届け出ます。この届出を怠ると20万円以下の過料の対象です(67条1号)。

建設業許可を移す認可は事前に受ける必要があり、認可の日が承継の日になります。浄化槽工事の契約主体を個人から会社に替える日は、この認可の日に合わせることになります。

浄化槽設備士は社長が兼ねられる

浄化槽工事業者は、営業所ごとに浄化槽設備士を置かなければなりません(29条1項)。欠けた営業所が出たら2週間以内に補う必要があります(同条2項)。この要件を欠くと登録は拒否されます(24条1項8号)。

浄化槽設備士は免状を受けた本人の国家資格です。個人事業のときに事業主本人が設備士だったなら、会社の社長になってもその免状で設備士を務められます。**社長本人が設備士なら、別に人を雇う必要はありません。**工事の実地監督も、資格を持つ本人が自ら工事を行う場合は別の監督者は要りません(29条3項ただし書)。

建設業許可業者も、33条2項で登録業者とみなされて29条が適用されるので、設備士を置く義務は同じです。

個人事業税と損益分岐

浄化槽工事は個人事業税の請負業(第1種事業・税率5%)に当たります(地方税法72条の2第8項)。事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化するとかからなくなります。代わりに役員報酬に社会保険料がかかります。

資材・車両・重機のリース、外注などの経費を年300万円と置き、事業所得ごとに個人のままと法人化の差を計算しました。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用込み)
600万円月42万円−34.0万円−44.0万円
800万円月45万円−18.9万円−28.9万円
1,000万円月45万円−10.0万円−20.0万円
1,200万円月54万円−4.3万円−14.3万円
1,500万円月54万円+26.1万円+16.1万円
2,000万円月90万円+65.8万円+55.8万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 300 --business type1 --age 40to64 --note '請負業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費300万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は請負業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円を差し引いた額。都道府県の登録手数料、建設業の譲渡認可の手数料は含まない。2026年(令和8年)分基準の概算

年齢区分で分岐点が動く

同じ条件で、社長の年齢区分だけを変えると損益分岐(事業所得・青色申告特別控除の前)は次のようになりました。

年齢区分2年目以降初年度(設立費用込み)
40歳未満1,266万円1,364万円
40〜59歳1,243万円1,341万円
65歳以上1,384万円1,483万円

※ 上の表と同じスクリプトの --age を under40 / 40to64 / 65plus に変えて算出

40〜59歳だけ分岐点が低いのは、介護保険料の扱いの差です。事業所得1,250万円の例では、個人のままだと国民健康保険の介護分が賦課限度額の17万円に達します。法人化すると、最適な役員報酬の月54万円(標準報酬月額53万円)にかかる介護保険料は労使合計で年約10.3万円(料率1.62%)です。この差の分だけ、法人化の差額が有利に振れます。65歳以上は介護保険料をどちらでも別に納めるので、この差は生じません。代わりに、個人事業主のままなら国民年金の保険料がかかりません(第1号被保険者は60歳未満まで)。個人のままの手取りがその分増えるため、分岐点は1,384万円まで上がります。法人化すると70歳までは厚生年金に加入するので、保険料が増える一方で老齢厚生年金も増えます。単年の手取りだけで比べない方がよい年齢区分です。仕組みは40歳からの法人化と介護保険料で扱いました。

いずれにしても、浄化槽工事業の登録・届出の手続きそのものは分岐点をほとんど動かしません。動かすのは所得の水準です。自分の売上と経費で判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。同じ型の解体工事業の登録は解体工事業の法人成りで扱いました。

まとめ

  • 浄化槽工事業者の登録には承継の規定がなく、法人成りでは会社が都道府県知事の登録を受け直す(有効期間5年)
  • 土木・建築・管工事業の建設業許可を持つ業者は登録の対象外で、開始の届出だけ。建設業許可は事前の認可で会社へ移せる
  • 無登録営業は1年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金。抹消前の契約は個人で施工を終えられるが、注文者には30日の解除権が生じる
  • 浄化槽設備士は営業所ごとに必要。社長本人が免状を持っていれば兼ねられる
  • 東京23区・経費300万円の試算で、損益分岐は2年目以降で40〜59歳1,243万円、40歳未満1,266万円、65歳以上1,384万円(国民年金の保険料がかからない分、個人のままが有利)

よくある質問

個人の登録番号のまま、会社で浄化槽工事を請け負えますか。

請け負えません。登録は登録を受けた人ごとのもので、浄化槽法には登録を会社へ移す規定がありません。会社で請け負う工事は、会社が登録を受けるか、会社が管工事業などの建設業許可を持ったうえで特例の届出をしてからにします。

個人の登録が抹消されたあと、残っている工事はどうなりますか。

抹消前に結んだ請負契約の工事は、個人のまま施工を続けられ、その目的の範囲では浄化槽工事業者とみなされます(28条1項・3項)。抹消後は遅滞なく注文者に通知し、注文者は通知から30日以内なら契約を解除できます(28条4項)。

浄化槽の保守点検や清掃も請けています。こちらも取り直しですか。

保守点検業は都道府県等の条例による登録(48条)、清掃業は市町村長の許可(35条)で、工事業の登録とは別の制度です。浄化槽法の本文には清掃業の許可を承継する規定もありません。登録・許可を出した自治体の条例と窓口で扱いを確認してください。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。