社会保険

40歳で法人化すると介護保険料はいくら増える?

40歳から加わる介護保険料は、法人化の損益分岐をどう動かすのか。役員報酬別の増加額と、40歳未満・40〜64歳の手取り差を2026年度の料率で計算します。

40歳になると、個人事業主の国民健康保険にも、法人役員の協会けんぽにも介護保険料が加わります。「法人化すると介護保険が上乗せされる」だけでは、損得は判断できません。比較すべきなのは両方の増加額です。

2026年度の協会けんぽの介護保険料率は**1.62%**です。役員報酬月50万円なら、労使合計で年9万7,200円、本人負担だけなら年4万8,600円増えます。一方、個人事業主側も自治体の介護分が増えるため、法人化の分岐点は必ずしも高くなりません。

介護保険料が加わるのは40〜64歳

協会けんぽでは、40〜64歳の被保険者が介護保険第2号被保険者です。2026年3月分から、健康保険料率に全国一律1.62%が加わります。

保険料は標準報酬月額に料率を掛け、事業主と被保険者で折半します。一人社長の場合、給与から引かれる本人負担だけでなく、自分の会社が負担する分も法人化後のコストです。

65歳になると、介護保険料は健康保険料との一体徴収ではなく、市区町村が計算する第1号被保険者の保険料へ変わります。そのため、この記事の計算対象は40〜64歳です。65歳以降は段階を決める本人の所得が法人化で変わり、個人事業主と一人社長で段階がずれます(65歳以降の介護保険料は、一人社長だと段階が3つ下がる)。

役員報酬別に増える介護保険料

介護保険料の増加額は、実際の報酬ではなく標準報酬月額に1.62%を掛けて計算します。2026年度の等級表で算出すると次のとおりです。

役員報酬標準報酬月額本人負担の増加(年)会社負担の増加(年)労使合計の増加(年)
月20万円20万円1万9,440円1万9,440円3万8,880円
月30万円30万円2万9,160円2万9,160円5万8,320円
月40万円41万円3万9,852円3万9,852円7万9,704円
月50万円50万円4万8,600円4万8,600円9万7,200円
月54万円53万円5万1,516円5万1,516円10万3,032円
月60万円59万円5万7,348円5万7,348円11万4,696円

※ 介護保険料率1.62%、賞与なし、12か月で計算。実際の給与が等級の境界にある場合、標準報酬月額は表の金額と異なることがあります。

月40万円の標準報酬月額が41万円になるのは、39万5,000円以上42万5,000円未満が41万円の等級に入るためです。役員報酬を1万円変えても保険料が変わらない範囲と、境界をまたいでまとめて変わる点があります。標準報酬月額の等級表を合わせて見ると、実額を確認できます。

40歳未満と40〜64歳の手取り比較

事業所得別に、40歳未満と40〜64歳を同じ条件で比較しました。個人事業主側は東京23区の国民健康保険、法人側は協会けんぽ東京支部です。

事業所得40歳未満:個人の手取り40歳未満:法人化40〜64歳:個人の手取り40〜64歳:法人化
600万円427.3万円409.7万円417.8万円403.7万円
800万円540.7万円536.6万円528.9万円530.0万円
1,000万円657.1万円662.4万円645.8万円655.8万円
1,200万円774.2万円787.6万円764.7万円780.3万円
1,500万円928.2万円972.0万円918.6万円964.7万円

※ 経費200万円・東京23区・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年分。法人化欄は最適役員報酬を探索した手取り合計で、設立費用と税理士報酬の差は表の金額に含めません。

事業所得1,000万円では、40歳未満から40〜64歳になると、個人側の手取りは11.3万円減り、法人化側は6.8万円減りました。この条件では国民健康保険の介護分の影響が、法人の労使合計の介護保険料より大きく出ています。

この差は自治体と役員報酬で変わります。国民健康保険の介護分は自治体ごとに所得割率、均等割、上限が異なります。協会けんぽの介護保険料率は全国一律ですが、基礎となる健康保険料率は都道府県で違います。

事業所得1,000万円の介護分を両側で分解する

前表の事業所得1,000万円について、個人事業主と法人化後の社会保険を分けて確認します。

個人事業主の東京23区国保は、40歳未満で年95万5,957円、40〜64歳では年112万5,957円でした。差額17万円が介護分です。所得が高いため、介護分は賦課限度額に達しています。

個人事業主・東京23区国保40歳未満40〜64歳増加額
医療分・支援金分・支援金制度分95万5,957円95万5,957円0円
介護分0円17万円17万円
合計95万5,957円112万5,957円17万円

法人側では、年齢を変えると最適役員報酬自体が変わりました。40歳未満は月54万円、40〜64歳は月45万円です。そのため、同じ報酬に1.62%を足しただけの比較にはなりません。

法人化後の最適条件40歳未満40〜64歳
最適役員報酬月54万円月45万円
標準報酬月額53万円44万円
社会保険料・労使合計180.5万円158.4万円
法人と個人の手取り合計662.4万円655.8万円

40〜64歳の社会保険料合計が小さく見えるのは、介護保険料がないからではありません。最適役員報酬が月9万円下がり、標準報酬月額も53万円から44万円へ下がった効果が介護保険料の上乗せを上回ったためです。

これが、年齢だけ変えたときにも役員報酬の再探索が必要な理由です。40歳未満の最適報酬を固定したまま1.62%だけ追加すると、本来選び直せる報酬条件を無視することになります。

分岐点は1,266万円から1,243万円へ下がった

法人化で増える税理士報酬年20万円まで反映した定常状態では、損益分岐となる事業所得は次のようになりました。

年齢帯損益分岐となる事業所得40歳未満との差
40歳未満1,266万円
40〜64歳1,243万円−23万円

※ 前表と同じ条件。実質差額がプラスに転じる所得を1万円刻みで探索。

40歳以降のほうが分岐点は23万円低くなりました。これは「介護保険料が法人化のメリットになる」という一般則ではありません。東京23区の国保料率と、最適役員報酬の等級を組み合わせた結果です。

別の自治体、配偶者あり、異なる役員報酬では結果が動きます。年齢だけを変えた一律の目安を覚えるより、自治体と所得を同時に入れるほうが正確です。

40歳前後で計算するときの注意点

誕生日の年は12か月分とは限らない

40歳に到達した月から介護保険の対象になります。年の途中で40歳になるケースでは、この記事の年額表をそのまま12か月分として使えません。給与計算上の徴収月と保険料の対象月にもずれがあるため、初年度は月ごとに確認します。

年齢は法律上、誕生日の前日に加算されます。たとえば4月2日生まれの人は4月1日に40歳へ達するため、4月分から介護保険料の対象です。4月1日生まれの人は3月31日に40歳へ達し、3月分から対象になります。月初生まれでは想定より1か月早く見えるため、給与計算の設定時に誕生日の日付まで確認します。

会社が給与から控除するタイミングは、当月分を当月給与から引くか、翌月給与から引くかという事業所の運用でも表示月が変わります。対象となる保険料月と給与明細上の控除月を混同しないことが重要です。

配偶者の年齢だけでは本人の介護保険料は増えない

協会けんぽでは、40歳未満の被保険者が40歳以上の家族を扶養に入れても、原則として本人に介護保険料は加わりません。被保険者本人の年齢を入力します。

介護分だけで法人化を決めない

役員報酬月50万円の労使合計増は年9.7万円ですが、法人化では厚生年金、通常の健康保険、法人税等、均等割、税理士報酬も同時に動きます。一人社長の社会保険料のように、会社負担を含めた全体で比較する必要があります。

まとめ

  • 2026年度の協会けんぽの介護保険料率は全国一律1.62%
  • 役員報酬月50万円なら、40歳以降の増加は本人年4.9万円、労使合計年9.7万円
  • 個人事業主側の国民健康保険にも介護分が加わるため、法人側だけの増加を見てはいけない
  • 事業所得1,000万円の東京23区国保では、40歳以降の介護分は上限の年17万円だった
  • 基本条件の法人化分岐点は40歳未満1,266万円、40〜64歳1,243万円
  • 自治体、役員報酬の等級、誕生月で実額が変わる

年齢を「40〜64歳」に切り替え、現在の自治体と所得を入れて確かめてください。

よくある質問

介護保険料は40歳の誕生日からかかりますか?

40歳に達したときから介護保険第2号被保険者となります。健康保険の保険料徴収では、誕生日の前日が属する月分から介護保険料が加わる扱いです。

2026年度の協会けんぽの介護保険料率は何%ですか?

2026年3月分から全国一律1.62%です。40〜64歳の被保険者について健康保険料率に上乗せされ、事業主と被保険者で折半します。

40歳になると法人化が不利になりますか?

一律には言えません。個人事業主側の国民健康保険にも介護分が加わるため、法人側だけが増えるわけではありません。当サイトの基本条件では、法人化の分岐点は40歳未満1,266万円、40〜64歳1,243万円でした。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。