社会保険
65歳以降の介護保険料は、一人社長だと段階が3つ下がる
65歳になると健康保険・国民健康保険の介護分がなくなり、市区町村の第1号保険料に切り替わります。段階を決めるのは本人の所得なので、横浜市では事業所得935万円の個人事業主が第16段階、役員報酬月54万円の一人社長は第13段階。判定ツールに入っていないこの差で、事業所得1,000万円の判定が逆転します。
65歳になると、介護保険料の払い方が変わります。健康保険や国民健康保険に上乗せされていた介護分がなくなり、市区町村が決める第1号被保険者の保険料に切り替わります。
第1号保険料は本人の所得で段階が決まります。個人事業主なら事業所得が、一人社長なら役員報酬の給与所得が入ります。横浜市の段階表で計算すると、事業所得1,000万円の個人事業主は第16段階、同じ事業を法人化して役員報酬月54万円にした一人社長は第13段階です。年4万3,700円の差で、判定ツールの結論が逆転します。
65歳で変わるのは、誰が・何を基準に徴収するか
介護保険の被保険者は2種類あります。40歳から64歳までの医療保険加入者が第2号被保険者、65歳以上が第1号被保険者です。
| 40〜64歳(第2号) | 65歳以上(第1号) | |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 国民健康保険料に介護分が上乗せ | 市区町村が第1号保険料を決めて徴収 |
| 一人社長 | 健康保険料に介護保険料率1.62%が上乗せ(労使折半) | 市区町村が第1号保険料を決めて徴収(全額本人) |
| 保険料の基準 | 国保は旧ただし書き所得、健保は標準報酬月額 | 本人の所得(段階制) |
協会けんぽでは、満65歳に達したときから介護保険料が徴収されなくなります。65歳に達するのは誕生日の前日です。5月2日生まれなら5月1日に65歳に達するので、5月分から健康保険料と一緒に介護保険料を払うことはなくなります。健康保険料そのものは、65歳以降も続きます。
国民健康保険の介護分も40〜64歳が対象です。横浜市の令和8年度の介護分は所得割2.84%、均等割16,200円、賦課限度額17万円です。
代わりに始まる第1号保険料は、市区町村が3年ごとの介護保険事業計画で決めます。令和6〜8年度(第9期)の基準額は、全国の加重平均で月6,225円です。横浜市は月6,620円(年79,440円)で、本人と世帯の課税状況や所得によって19段階に分けています。
一人社長にとって大きいのは、会社負担がなくなることです。64歳までの介護保険料は労使折半で、半分は法人の損金でした。65歳からの第1号保険料は、市区町村が本人に賦課する保険料なので、全額を本人が払います。
第7段階から上は、本人の所得で決まる
横浜市の段階表のうち、本人が市民税課税となる第7段階から第19段階は次のとおりです。
| 段階 | 保険料算定用所得金額 | 年額 |
|---|---|---|
| 第7段階 | 120万円未満 | 85,000円 |
| 第8段階 | 120万円以上160万円未満 | 87,380円 |
| 第9段階 | 160万円以上210万円未満 | 100,880円 |
| 第10段階 | 210万円以上250万円未満 | 103,270円 |
| 第11段階 | 250万円以上320万円未満 | 123,130円 |
| 第12段階 | 320万円以上420万円未満 | 139,020円 |
| 第13段階 | 420万円以上520万円未満 | 154,900円 |
| 第14段階 | 520万円以上620万円未満 | 170,790円 |
| 第15段階 | 620万円以上720万円未満 | 186,680円 |
| 第16段階 | 720万円以上1,000万円未満 | 198,600円 |
| 第17段階 | 1,000万円以上2,000万円未満 | 238,320円 |
| 第18段階 | 2,000万円以上3,000万円未満 | 258,180円 |
| 第19段階 | 3,000万円以上 | 278,040円 |
※ 横浜市 令和6〜8年度(第9期)。基準額(第6段階)は年79,440円
保険料算定用所得金額は、税法上の合計所得金額から、土地や建物の売却に係る譲渡所得の特別控除額を差し引いた金額です。横浜市は令和6年度から、課税層の段階判定では給与所得・年金所得の10万円分の調整をやめています。
ここで効いてくるのが、法人化で本人の所得の中身が変わることです。個人事業主なら、青色申告特別控除後の事業所得がそのまま本人の所得です。一人社長の場合、本人の所得になるのは役員報酬から給与所得控除を引いた給与所得で、法人に残した利益は入りません。
事業所得1,000万円なら、個人は第16段階・一人社長は第13段階
事業所得別に、個人事業主と一人社長(判定ツールの最適な役員報酬)の段階を並べます。右の2列は、判定ツールの実質差額と、そこに第1号保険料の差を足した額です。
| 事業所得 | 個人:判定に使う所得 | 個人:段階・年額 | 最適な役員報酬 | 法人:給与所得 | 法人:段階・年額 | 第1号保険料の差(年) | 判定ツールの実質差額 | 第1号保険料を足した実質差額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 335万円 | 第12段階 139,020円 | 月28万円 | 227万円 | 第10段階 103,270円 | 35,750円 | −25.3万円 | −21.7万円 |
| 600万円 | 535万円 | 第14段階 170,790円 | 月42万円 | 359万円 | 第12段階 139,020円 | 31,770円 | −22.6万円 | −19.4万円 |
| 800万円 | 735万円 | 第16段階 198,600円 | 月54万円 | 474万円 | 第13段階 154,900円 | 43,700円 | −7.2万円 | −2.8万円 |
| 1,000万円 | 935万円 | 第16段階 198,600円 | 月54万円 | 474万円 | 第13段階 154,900円 | 43,700円 | −1.9万円 | +2.4万円 |
| 1,200万円 | 1,135万円 | 第17段階 238,320円 | 月54万円 | 474万円 | 第13段階 154,900円 | 83,420円 | +12.0万円 | +20.4万円 |
| 1,500万円 | 1,435万円 | 第17段階 238,320円 | 月54万円 | 474万円 | 第13段階 154,900円 | 83,420円 | +42.5万円 | +50.8万円 |
| 1,800万円 | 1,735万円 | 第17段階 238,320円 | 月90万円 | 885万円 | 第16段階 198,600円 | 39,720円 | +69.5万円 | +73.4万円 |
| 2,500万円 | 2,435万円 | 第18段階 258,180円 | 月95万円 | 945万円 | 第16段階 198,600円 | 59,580円 | +149.7万円 | +155.7万円 |
※ 経費200万円・横浜市・65歳以上・配偶者あり・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。第1号保険料は横浜市の令和6〜8年度の段階表。年金の所得は段階の判定に入れていない。第1号保険料の差による所得税・住民税(社会保険料控除)の変化は含まない
どの所得でも、一人社長のほうが2〜4段階低くなります。事業所得1,000万円では、判定ツールの実質差額−1.9万円が、第1号保険料の差を足すと+2.4万円に変わります。
差が最も大きいのは事業所得1,200万〜1,500万円の年83,420円です。個人事業主は所得1,000万円の境目を越えて第17段階に上がる一方、一人社長は最適な役員報酬が月54万円で止まるので第13段階のままだからです。事業所得1,800万円になると最適な役員報酬が月90万円に上がり、給与所得が885万円になって差は39,720円に縮みます。
この差はそのまま手取りの差にはなりません。第1号保険料は社会保険料控除の対象なので、保険料が多い個人事業主の側では所得税・住民税が少し減ります。表の右端は、その分だけ法人化側に甘く出ています。
役員報酬を下げると段階も下がる
一人社長の段階は役員報酬で動きます。事業所得1,000万円のケースです。
| 役員報酬 | 給与所得(年) | 第1号保険料の段階 | 年額 | 手取り合計(事業所得1,000万円) |
|---|---|---|---|---|
| 月20万円 | 160万円 | 第9段階 | 100,880円 | 647万円 |
| 月30万円 | 244万円 | 第10段階 | 103,270円 | 656万円 |
| 月40万円 | 340万円 | 第12段階 | 139,020円 | 660万円 |
| 月50万円 | 436万円 | 第13段階 | 154,900円 | 666万円 |
| 月54万円 ←最適 | 474万円 | 第13段階 | 154,900円 | 669万円 |
| 月60万円 | 538万円 | 第14段階 | 170,790円 | 664万円 |
| 月70万円 | 646万円 | 第15段階 | 186,680円 | 657万円 |
| 月90万円 | 885万円 | 第16段階 | 198,600円 | 580万円 |
※ 条件は前表と同じ
月54万円から月40万円に下げると第1号保険料は年15,880円下がりますが、手取り合計は9万円減ります。第1号保険料のために報酬を下げるのは割に合いません。段階の差は、最適な報酬を選んだ結果として付いてくるものと見るのが妥当です。
64歳から65歳で、どちらの負担がどう変わるか
同じ事業所得1,000万円・横浜市で、64歳から65歳になったときに消える保険料と加わる保険料を並べます。比較しやすいよう、一人社長の役員報酬は月54万円(標準報酬月額53万円)で固定しています。
| 個人事業主 | 一人社長:本人 | 一人社長:会社 | |
|---|---|---|---|
| 64歳まで:介護分 | 国保の介護分 170,000円 | 健保の介護保険料 51,516円 | 健保の介護保険料 51,516円 |
| 65歳から:第1号保険料 | 198,600円(第16段階) | 154,900円(第13段階) | 0円 |
| 65歳での増減 | +28,600円 | +103,384円 | −51,516円 |
※ 国保の介護分は横浜市の令和8年度料率(賦課限度額17万円に到達)。健保の介護保険料は協会けんぽの令和8年度料率1.62%
個人事業主は、国保の介護分が賦課限度額の17万円に達していたので、65歳での増加は28,600円にとどまります。一人社長は、本人の負担が103,384円増える一方で、会社の負担が51,516円減ります。本人と会社を合わせると51,868円の増加です。
65歳になった後の水準では一人社長のほうが低いのに、増え方は一人社長のほうが大きい。これは、64歳までの健保の介護保険料が標準報酬月額×1.62%と安く、国保の介護分は所得割2.84%で上限まで達していたためです。
なお当サイトの判定ツールは、65歳以上を選ぶと健保・国保の介護分を両側とも0にしますが、第1号保険料は両側とも入れていません。上の段階の差は、ツールの結果に自分で足す必要があります。計算の前提は計算の考え方にまとめています。
年金から天引きされるのは、年金が年18万円以上のとき
第1号保険料の払い方は2通りです。65歳以上で、老齢・退職・障害・死亡を支給事由とする年金を年額18万円以上受け取っている人は、年金から天引きされます(特別徴収)。天引きは年6回の年金の支払いのたびに行われます。それ以外の人は、納付書や口座振替で自分で納めます(普通徴収)。
日本年金機構のQ&Aでは、介護保険料の特別徴収は本人の希望でやめることはできないとされています。複数の年金を受け取っている場合は、決められた優先順位で1つの年金から天引きされます。
65歳以上の一人社長の場合、年金の側にも別の論点があります。老齢厚生年金を受け取りながら役員報酬を受けると、報酬額によっては年金の一部が止まります(在職老齢年金の基準が65万円へ)。受け取らずに繰り下げても、止まるはずだった分は増額されません(年金を繰り下げても在職停止分は増えない)。
この記事の段階の計算では、年金の所得を入れていません。老齢年金を受け取っている場合は、公的年金等控除を引いた後の年金の所得が本人の所得に加わり、そのぶん段階が上がることがあります。個人事業主と一人社長のどちらにも同じように加わる部分です。
40〜64歳の介護保険料が法人化の判定をどう動かすかは、40歳で法人化すると介護保険料はいくら増える?で扱っています。第1号保険料の段階は自治体ごとに違うので、住んでいる市区町村の段階表で、この記事と同じ手順で当てはめてみてください。まずは自分の売上と経費で、65歳以上の条件のまま最適な役員報酬を出すところからです。
まとめ
- 65歳になると健保・国保の介護分はなくなり、市区町村の第1号保険料に切り替わる。一人社長は会社負担分がなくなり、全額を本人が払う
- 第1号保険料の課税層の段階は本人の所得で決まる。個人事業主は事業所得、一人社長は役員報酬の給与所得で、法人に残した利益は入らない
- 横浜市・事業所得1,000万円では、個人事業主が第16段階(198,600円)、役員報酬月54万円の一人社長が第13段階(154,900円)。差は年43,700円で、判定ツールの実質差額−1.9万円が+2.4万円に変わる
- 差が最も大きいのは事業所得1,200万〜1,500万円の年83,420円。個人は所得1,000万円の境目を越え、一人社長は報酬が月54万円で止まるため
- 判定ツールは65歳以上で介護分を両側とも0にしているが、第1号保険料は入れていない。段階の差は自分で足す必要がある
よくある質問
65歳以降の介護保険料は、会社が半分負担してくれますか?
負担しません。65歳以上の第1号被保険者の保険料は市区町村が本人に対して決めるもので、健康保険料のような労使折半の仕組みはありません。一人社長の場合、65歳で会社負担分の介護保険料はなくなり、第1号保険料は全額を本人が払います。
法人に残した利益は、介護保険料の段階に影響しますか?
本人が市民税課税となる段階の判定に使うのは本人の所得です。法人の所得は本人の所得ではないので入りません。一人社長の場合に入るのは、役員報酬から給与所得控除を引いた給与所得などです。
年金から天引きされる介護保険料は、やめて口座振替にできますか?
日本年金機構のQ&Aでは、介護保険料は本人の希望によって年金からの特別徴収をやめることはできないとされています。
出典
- 全国健康保険協会 茨城支部 介護保険制度と介護保険料について
- 全国健康保険協会 協会けんぽの介護保険料率について
- 厚生労働省 リーフレット「みんなで支え合う介護」(介護保険の第2号被保険者)
- 厚生労働省 第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について
- 横浜市 保険料について(介護保険 令和6〜8年度)
- 横浜市 所得指標について(介護保険料)
- 横浜市 令和8年度 国民健康保険料の料率等について
- 日本年金機構 年金から介護保険料等を特別徴収されるのはどのような人ですか
- 日本年金機構 年金からの介護保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、住民税および森林環境税の特別徴収
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。