社会保険

副業で法人化すると社会保険は合算。二以上事業所勤務届

会社員が副業法人から役員報酬を受け、両方で社会保険の加入要件を満たすと、報酬を合算して標準報酬月額を決め、両社へ保険料を按分します。

会社員が副業法人を作り、本業の勤務先と自社の両方で社会保険の被保険者になる場合、保険料は別々の給与だけで計算しません。2社の報酬月額を合算して標準報酬月額を決め、各社の報酬比で保険料を按分します。

「本業の会社ですでに社会保険へ入っているから、自社の役員報酬には保険料がかからない」とは限りません。反対に、同じ保険料を2社で丸ごと二重払いする制度でもありません。

両方で被保険者なら報酬を合算する

日本年金機構は、同時に2か所以上の適用事業所に使用される被保険者について、次の流れを示しています。

  1. 被保険者本人が主たる事業所を選ぶ
  2. 各事業所の報酬月額を合算する
  3. 合算額から標準報酬月額を決める
  4. 決定した保険料を各事業所の報酬月額で按分する
  5. 各事業所へ按分額が通知される

対象になるかは「法人を二つ持っているか」ではなく、各適用事業所で被保険者に該当する使用関係があるかで判断します。本業の会社で正社員として働き、自社でも代表取締役として常勤し役員報酬を受ける例では、二以上事業所勤務を確認する必要があります。

名目だけの非常勤、実際の業務がない会社、役員報酬がない場合などは事実関係が異なります。役員という登記だけで一律に結論を出しません。

A社40万円+自社10万円は合計50万円で等級を決める

node scripts/nijo-jigyosho-hokenryo.mjs で、本業A社の給与月40万円、自社B社の役員報酬月10万〜30万円を合算しました。東京・40歳未満・賞与なしの2026年度料率です。

A社給与B社役員報酬合算報酬標準報酬月額(健保)労使合計年額B社の会社負担年額
40.0万円10.0万円50.0万円50.0万円170.3万円17.0万円
40.0万円20.0万円60.0万円59.0万円200.9万円33.5万円
40.0万円30.0万円70.0万円71.0万円228.6万円49.0万円

B社の役員報酬が月10万円でも、自社だけの最低等級で計算するのではありません。合算50万円に対応する保険料を出し、そのうち10/50をB社へ配分します。B社の会社負担は年約17.0万円です。

報酬を10万円増やすたびに負担が同じ幅で増えないのは、標準報酬月額が等級で区切られ、厚生年金には上限があるためです。標準報酬月額の等級表の境目が合算額に対して効きます。

主たる事業所を選んでも報酬は片方だけにならない

届出名は「所属選択・二以上事業所勤務届」です。ここで主たる事業所を選ぶため、「選んだ会社の給与だけで保険料を計算する」と誤解しやすくなります。

選択するのは、主に管轄する年金事務所や健康保険の保険者です。報酬合算の対象から他方の会社が消えるわけではありません。

協会けんぽと健康保険組合など、2社で保険者が異なる場合も選択が必要です。選択した保険者の料率等で決まった保険料を各社へ按分するため、居住地や自社所在地だけで料率を決められません。

届出は本人、納付は各事業所

二以上事業所勤務届は被保険者本人が提出します。会社が自動的に本業先を調べ、すべて処理してくれる制度ではありません。

届出後は、選択事業所を管轄する事務センター等が標準報酬月額と各事業所の保険料を決め、A社とB社へそれぞれ通知します。各社は通知された本人負担分を給与から控除し、会社負担分と合わせて納付します。

自社B社だけを見ると、通常の保険料額表へ役員報酬10万円を当てはめた額と、通知額が一致しません。給与計算ソフトへ二以上勤務者として正しく設定しないと、本人控除と会社納付がずれます。

定時決定の算定基礎届も2社分を扱います。日本年金機構は、二以上事業所勤務者の算定基礎届を選択事業所の管轄へ提出するよう案内しています。片方の資格を喪失したときも標準報酬月額の見直しが必要です。

役員報酬を下げても合算等級が動かない帯がある

自社の報酬を1万円下げれば、保険料も同じ割合で下がるとは限りません。合算報酬が同じ標準報酬月額の等級内に残ると、労使合計の保険料は変わらず、各社の按分割合だけが変わる場合があります。

また、本業給与だけで厚生年金の上限へ近づいている人は、自社報酬を追加しても厚生年金部分が頭打ちになります。一方、健康保険の上限は別なので、健康保険料は増え続ける帯があります。

厚生年金の上限引上げで扱う上限も、二以上勤務では合算額に対して判定します。本業と自社を別々に上限まで使えるわけではありません。

雇用保険・労災保険は同じ合算方式ではない

二以上事業所勤務届は健康保険・厚生年金の手続です。雇用保険や労災保険まで同じ方法で合算・按分するわけではありません。

代表取締役は通常、雇用保険の被保険者ではありません。自社では役員、本業先では労働者という人なら、雇用保険は本業先での被保険者関係を中心に確認します。労災も自社役員については一般加入ではなく特別加入の検討になります。

つまり、同じ2社勤務でも制度ごとに次のように分かれます。

制度副業法人の代表取締役
健康保険・厚生年金両社で要件を満たせば合算・按分
雇用保険代表取締役は原則対象外
労災保険役員は特別加入を検討

ツールの役員報酬だけでは再現できない

当サイトの判定ツールは、自社の役員報酬だけを社会保険の報酬月額として計算します。本業の給与を入力する欄はありません。そのため、会社員の副業法人では表のような合算を別に行う必要があります。

法人化を検討するときは、本業給与、自社役員報酬、両社の加入要件、選択する保険者を揃えます。自社報酬だけを入力した結果は、二以上勤務者の実際の保険料より低く出ることがあります。

まとめ

  • 本業と自社の両方で被保険者なら、報酬月額を合算して標準報酬月額を決める
  • 保険料は各社の報酬月額の比率で按分し、各社が通知額を納付する
  • 主たる事業所を選んでも、他方の報酬が計算から消えるわけではない
  • A社40万円+B社10万円の例で、B社の会社負担は年約17.0万円
  • 雇用保険・労災保険は健康保険・厚生年金と同じ合算方式ではない

よくある質問

会社員が副業法人を作ると社会保険料を二重に払いますか?

両方の事業所で被保険者要件を満たす場合、各報酬を合算して標準報酬月額を決め、その保険料を各事業所の報酬比で按分します。単純に同じ保険料を二重払いする仕組みではありません。

二以上事業所勤務届は誰が出しますか?

被保険者本人が主たる事業所を選択して提出します。決定後、年金機構等から各事業所へ標準報酬月額と按分保険料が通知されます。

自社の役員報酬が少額なら届出は不要ですか?

金額だけでは決まりません。自社との使用関係や常勤性などを含め、各事業所で被保険者に該当するかを先に判定します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。