社会保険

一人社長が初めて従業員を雇う費用。月給30万で年415万

一人社長が従業員を1人雇うと、給与に加えて健康保険・厚生年金、雇用保険、労災保険の会社負担が増えます。2026年度の月給別コストを計算します。

一人社長が月給30万円の従業員を1人雇うと、会社の年間支出は給与360万円ではなく、2026年度の東京・40歳未満の例で約415.2万円です。差額55.2万円は、会社負担の健康保険・厚生年金、雇用保険、労災保険です。

法人は1人目の従業員から被用者保険の加入判定が必要です。一方、従業員5人未満の個人事業所は、2026年時点では健康保険・厚生年金の強制適用とならない場合があります。この非対称が、法人成り後に人を雇うコストを大きくします。

月給30万円でも会社の年間支出は414.2万円

node scripts/hajimete-jugyoin-cost.mjs で、次の条件を置いて計算しました。

  • 東京都の協会けんぽ
  • 従業員は40歳未満、賞与なし
  • 一般の事業の雇用保険料率
  • 労災保険は「その他の各種事業」の率
  • 子ども・子育て支援金を含む2026年度料率
月給年間給与健保・厚年の会社負担雇用保険の会社負担労災保険法人の年間支出
20.0万円240.0万円34.1万円2.0万円0.7万円276.9万円
30.0万円360.0万円51.1万円3.1万円1.1万円415.2万円
40.0万円480.0万円69.8万円4.1万円1.4万円555.3万円

※実行結果の端数処理により、タイトルの概数と表の値は0.1万円単位で表示しています。

月給30万円では、給与以外の会社負担は年55.2万円、給与の約15.3%です。健康保険・厚生年金だけで年51.1万円を占め、雇用保険と労災保険を合わせた4.1万円より桁が大きくなっています。

ここに通勤手当、残業代、賞与、採用費、パソコン、机、有給休暇中の賃金は含めていません。会社が用意する総予算は、表の金額より大きくなるのが通常です。

同じ金額を外注費として払えば、この会社負担は発生せず、消費税の仕入税額控除も取れます。ただし外注費か給与かは契約の実態で決まります。判定の基準と、誤ったときに何が追徴されるかは外注費と給与の判定で扱っています。

法人は1人目から健康保険・厚生年金の加入判定が必要

日本年金機構は、すべての法人事業所を健康保険・厚生年金の適用事業所としています。事業主だけの一人会社も対象なので、すでに社長が加入している会社へ従業員を採用した場合、その従業員について資格取得の要件を確認します。

正社員など通常の労働者として常時使用する人を採用したら、事業主は被保険者資格取得届を5日以内に提出します。被扶養者がいる従業員なら、被扶養者(異動)届も合わせて確認します。

パート・アルバイトは名称だけで対象外になりません。一般の従業員の1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数の4分の3以上なら加入対象です。4分の3未満でも、特定適用事業所などで短時間労働者の要件を満たせば対象になります。

法人化すると社会保険は強制加入は社長本人を中心にしています。本稿の追加コストは、その会社へ被保険者を1人増やした場合です。

個人事業所との大きな差は被用者保険の会社負担

個人事業所は、常時5人以上を使用する法定業種などで強制適用になります。従業員が1人だけの個人事業所は、2026年時点では健康保険・厚生年金の強制適用とならない場合があります。

そのため、同じ月給30万円でも事業主負担は次のように分かれます。

負担1人雇用の法人強制適用外の個人事業所
健康保険・厚生年金原則として加入判定、会社負担あり強制適用外の場合あり
労災保険必要必要
雇用保険要件を満たせば必要要件を満たせば必要

差額の中心は健康保険・厚生年金の年51.1万円です。ただし、個人事業所の従業員側は国民健康保険・国民年金などを自分で負担する場合があります。事業主のコストだけを見て「個人事業のほうが有利」と決める表ではありません。

法人成りで被用者保険へ入れば、従業員は保険料を会社と折半し、厚生年金の給付や健康保険の傷病手当金などの対象になります。採用条件としての価値も含めて比較します。

労働保険は法人でも個人でも1人目から生じる

厚生労働省は、正社員、パート、アルバイトなどの名称にかかわらず、労働者を1人でも雇う事業を労働保険の強制適用としています。法人か個人かでは分かれません。

2026年度の一般の事業の雇用保険料率は合計13.5/1,000です。このうち労働者負担は5/1,000、事業主負担は8.5/1,000です。表では会社負担だけを入れました。

労災保険料は全額を事業主が負担し、業種で率が変わります。表の3/1,000は「その他の各種事業」の例です。建設、運輸、製造などは別の率なので、実際の事業種類へ置き換えます。

保険関係成立届は、保険関係が成立した日から10日以内です。雇用保険適用事業所設置届、被保険者資格取得届にも別の期限があります。健康保険・厚生年金の5日以内と同じ期限ではありません。

役員は労働者保険の人数へそのまま入れない

社長本人と従業員では立場が違います。代表取締役は通常、労働者ではないため雇用保険の被保険者にならず、労災保険も一般加入ではなく特別加入を検討します。

従業員を1人採用した会社では、次の形になります。

  • 社長:健康保険・厚生年金に加入。雇用保険は原則対象外
  • 従業員:要件を満たせば健康保険・厚生年金・雇用保険に加入
  • 労災保険:従業員は対象。社長は別途特別加入を検討

一人社長は雇用保険に入れない役員の労災特別加入は社長側の扱いです。従業員を雇ったから社長も自動で雇用保険・労災保険の一般被保険者になるわけではありません。

雇用前に年額で資金を確保する

月給だけで採用判断をすると、社会保険料の納付月に資金不足が起きます。採用前には少なくとも次を年額で見積もります。

  1. 月給、固定手当、想定残業代、賞与
  2. 健康保険・厚生年金の会社負担
  3. 雇用保険・労災保険の会社負担
  4. 採用費、備品、教育時間
  5. 有給休暇と休業時の人員補充

月給30万円なら、表の保険料だけで月平均約4.6万円が給与に上乗せされます。売上が季節変動する会社は、年間415.2万円を12で割るだけでなく、賞与月と労働保険の年度更新、社会保険の納付時期も資金繰り表へ入れます。労働保険料は毎月ではなく年1回まとめて納めます。7月10日に納める額の内訳と、分割できる条件は労働保険の年度更新は2階建てで計算しています。

当サイトの判定ツールは「従業員なし」を前提にしています。採用後の法人化比較では、表の会社負担を法人側の経費と現金支出へ加え、個人事業のまま雇う場合の適用関係と並べてください。

なお、雇ったあとに賃上げをすると賃上げ促進税制の税額控除の対象になります。ただし役員報酬は対象外で、控除額にも調整前法人税額の20%という上限があるため、採用コストを埋めるほどの規模にはなりません。

まとめ

  • 月給30万円の従業員1人で、2026年度の法人支出は東京・40歳未満の例で年約415.2万円
  • 給与外の会社負担約55.2万円の大半は健康保険・厚生年金
  • 法人は1人目から被用者保険の加入判定が必要だが、5人未満の個人事業所は強制適用外の場合がある
  • 労災保険は雇用形態を問わず労働者1人から、雇用保険は労働時間などの要件で加入する
  • 社長本人と従業員では雇用保険・労災保険の扱いが違う

よくある質問

従業員を1人雇うと社会保険へ加入させる必要がありますか?

法人の適用事業所で常時使用され、被保険者要件を満たす従業員なら、1人目から健康保険・厚生年金の資格取得届が必要です。

パートやアルバイトなら労災保険は不要ですか?

雇用形態にかかわらず、労働者を1人でも雇う事業は原則として労災保険の強制適用です。雇用保険と社会保険は労働時間など別の加入要件があります。

月給30万円の従業員に会社はいくら払いますか?

東京・40歳未満・賞与なし・2026年度の例では、給与360万円に会社負担の社会保険等を加え、年間支出は約415.2万円です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。