税金の基礎

外注費と給与の判定。差が出るのは消費税・源泉徴収・社保の3つ

同じ月30万円でも、外注費か給与かで会社の負担は年91万円変わります。判定の基準は契約が請負か雇用かで、4つの項目はその次に来ます。法人税では差が出ないこと、源泉徴収はむしろ外注のほうが重い場合があることを実データで示します。

同じ人に月30万円を払うとき、外注費として払うか給与として払うかで、会社の年間負担は324.0万円と415.2万円に分かれます。差は91.2万円です。

ただし、これは「安いほうを選べる」という話ではありません。どちらになるかは払う側が決めるのではなく、契約の実態で決まります。そして判定を誤ったときに返ってくるのは、消費税と社会保険で、源泉所得税ではありません。

判定するのは契約。4つの項目はその次に来る

消費税法基本通達1-1-1は、事業者を「自己の計算において独立して事業を行う者」と定義したうえで、雇用契約またはこれに準ずる契約に基づいて他の者に従属し、その者の計算で行われる事業に役務を提供する場合は事業に該当しない、としています。

つまりまず見るのは契約が請負か雇用かです。そのうえで通達は、「その区分が明らかでないとき」に限って、次の4つを総合勘案すると書いています。

  1. その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか
  2. 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか
  3. まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか
  4. 役務の提供に係る材料または用具等を供与されているかどうか

この4項目だけを並べて「4つのうち何個当てはまるか」で判定を語る説明を見かけますが、通達の順序は逆です。契約が請負として成立していて実態も伴っているなら、そこで判定は終わります。4項目は区分が明らかでないときの補助線です。

大工・左官・とび職には5つ目の項目がある

建設関係には別の通達があります。平成21年12月17日付の課個5-5「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」です。こちらは所得税の事業所得か給与所得かを判定するもので、総合勘案する項目が5つあります。

項目消基通1-1-1(消費税)課個5-5(所得税・建設関係)
他人の代替ありあり
時間的な拘束なしあり(業務の性質上当然に存在する拘束を除く)
指揮監督ありあり(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く)
危険負担(完成品の滅失)ありあり
材料・用具の供与ありあり(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く)

違いは2つです。1つは「作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算される」といった時間的拘束が所得税側にだけ明示されていること。もう1つは、所得税側にはカッコ書きの除外が付いていることです。業務の性質上当然に存在する指揮監督や拘束は、判定材料から外れます。設計図どおりに作れと言われることは、請負でも当然に起こります。

課個5-5の対象は、日本標準職業分類の「大工」「左官」「とび職」など建設関係に限られます。エンジニアやライターへの支払いにこの5項目をそのまま当てはめる説明がありますが、通達の対象範囲は本文に明記されています。

法人税では差が出ない。効くのは3つ

外注費も給与も、法人にとってはどちらも損金です。個人事業主にとってもどちらも必要経費です。法人税・所得税の計算では、外注費と給与に差はありません

差が出るのは次の3つです。

外注費給与
消費税課税仕入れになる(仕入税額控除の対象)課税仕入れから除かれる(消法2条1項12号)
源泉徴収所得税法204条1項に列挙されたものだけ対象月額表・日額表で全額が対象
社会保険・労働保険加入義務なし要件を満たせば加入義務

消費税の根拠は消費税法基本通達11-1-2です。課税仕入れから除かれる「給与等を対価とする役務の提供」とは雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく労務の提供をいい、俸給、給料、賃金、賞与のほか、退職金や年金も該当するとしています。

月30万円で数字にする

年360万円(税抜)を払う場合の会社側の負担です。社会保険は東京・40歳未満、雇用保険は一般の事業、労災保険は「その他の各種事業」の率で計算しています。

月額年額健保・厚年の会社負担雇用保険・労災消費税の仕入税額控除会社の実質負担(外注費)会社の実質負担(給与)
20万円240万円34.1万円2.8万円24.0万円216.0万円276.8万円
30万円360万円51.1万円4.1万円36.0万円324.0万円415.2万円
40万円480万円69.8万円5.5万円48.0万円432.0万円555.3万円

※ 東京・40歳未満・賞与なし・雇用保険は一般の事業(事業主負担8.5/1000)・労災はその他の各種事業(3/1000) ※ 消費税は原則課税・税抜経理の前提。給与は課税仕入れから除かれるため控除は0円

月30万円で91.2万円、年額に対して25.3%の差です。内訳は社会保険と労働保険で55.2万円、消費税で36.0万円。消費税の差が全体の4割を占めます。給与側の負担の詳しい内訳は一人社長が初めて従業員を雇う費用にまとめています。

ただし消費税の36.0万円は、原則課税で計算している場合の話です。簡易課税を選んでいる会社は実際の課税仕入の額を使わないので、外注費にしても仕入税額控除は増えません。この場合、外注費と給与の差は55.2万円まで縮みます。免税事業者も同じで、そもそも仕入税額控除を取りません。

源泉徴収は、むしろ外注のほうが重いことがある

「外注にすれば源泉徴収がいらない」という理解は、半分だけ合っています。源泉徴収の対象になる報酬・料金等は所得税法204条1項の限定列挙で、代表的なものは原稿料や講演料、弁護士・公認会計士・司法書士等への報酬、外交員、ホステス、プロスポーツ選手などです。

列挙にないものは対象外です。一般的な業務委託、システム開発やプログラミングの委託料は、列挙のどれにも当たらなければ源泉徴収をしません。一方、令和8年版の源泉徴収のあらましは、デザインの報酬として工業デザイン、クラフトデザイン、グラフィックデザイン(広告、ポスター、包装紙等)、パッケージデザイン、広告デザイン、インテリアデザイン、ディスプレイ、服飾デザイン、ゴルフ場や庭園等のデザインの9種類を挙げています。同じ「Web制作」でも、デザイン料に当たる部分は源泉徴収の対象になり得ます。

対象になる場合の税率は、同一人に1回に支払う金額が100万円以下の部分が10.21%、超える部分が20.42%です。給与の源泉徴収税額(月額表・甲欄・扶養親族等0人)と並べます。

月額給与の場合(月額表・甲欄・扶養0人)外注費の場合(報酬10.21%)
20万円3,340円20,420円17,080円
30万円6,430円30,630円24,200円
40万円11,000円40,840円29,840円

※ 給与は社会保険料等控除後の金額で月額表を引いている(月30万円なら控除後257,430円) ※ 外注費側は所得税法204条1項1号の報酬・料金に当たる場合

月30万円なら、給与の天引きは6,430円、報酬なら30,630円です。源泉徴収だけを見れば外注のほうが4.8倍重いことになります。給与は社会保険料を控除した後の金額で表を引くうえ、月額表そのものが年間の税額をならした設計になっているためです。報酬側の10.21%は概算の前払いなので、受け取った側が確定申告で精算します。

なお、あらましには実務的な例外もあります。ネオンサインや庭園等のデザインとその施工を一括で請け負わせた場合、対価をデザインの報酬と施工の対価に区分して源泉徴収を行いますが、デザインの部分が極めて少額と認められるときは源泉徴収をしなくて差し支えないとされています。納期限は原則として支払った月の翌月10日で、納期の特例の対象になるかどうかは報酬の種類によって変わります。

給与と認定されたとき、追徴されるのは消費税と社会保険

外注費として処理していたものが税務調査で給与と認定された場合に何が起きるかを、月30万円・年360万円で計算しました。

項目源泉徴収していなかった場合10.21%で源泉徴収していた場合
否認される仕入税額控除(1年分)360,000円360,000円
給与として納めるべき源泉所得税(1年分)77,160円77,160円
すでに納めた源泉所得税(1年分)0円367,560円
源泉所得税の過不足77,160円の不足290,400円の納めすぎ
健保・厚年の会社負担(1年分)510,840円510,840円

読み取れることが2つあります。

1つ目は、源泉徴収をしていた側は、給与と認定されても源泉所得税では追徴されないことです。10.21%で年367,560円を納めていた一方、給与として必要だったのは年77,160円。290,400円を納めすぎている計算になります。「外注費否認=源泉の追徴」というイメージとは逆で、痛いのは消費税36万円と社会保険の会社負担51.1万円のほうです。

2つ目は、源泉徴収をしていなかった場合でも、不足する源泉所得税は年77,160円にとどまることです。この場合は延滞税がかかりますが、不納付加算税は月ごとの本税が5万円未満だと計算の結果が0円になります。仕組みは源泉所得税の納付遅れ、不納付加算税は5%と10%のどちらかで扱っています。

社会保険の会社負担は税金ではないので、加算税や延滞税とは別に、遡って納付を求められることがあります。1年分で51.1万円、2年分なら100万円を超えます。

役員報酬をいくらにするかにも効く

外注費を使うか人を雇うかは、経費の額が変わるので法人の課税所得を動かします。売上1,300万円・経費500万円(うち外注費360万円)の会社で、役員報酬別の内訳を計算しました。

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円510.7万円102.8万円407.9万円33.4万円
月20万円519.5万円196.3万円323.2万円68.1万円
月30万円527.4万円289.1万円238.3万円102.2万円
月40万円529.5万円378.8万円150.7万円139.6万円
月50万円533.9万円468.6万円65.3万円170.3万円
月54万円 ←最適536.6万円504.8万円31.8万円180.5万円
月60万円517.8万円547.8万円-30.0万円200.9万円
月70万円461.2万円625.4万円-164.1万円228.6万円

※ 東京23区・40歳未満・独身・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準

同じ360万円でも、給与として払えば会社負担の社会保険料55.2万円が追加の損金になり、法人の課税所得はその分下がります。人件費の増減が最適な役員報酬にどう効くかは役員報酬はいくらが最適かで扱っています。計算の前提は計算の前提と出典に置いています。

まとめ

  • 判定するのは契約が請負か雇用か。4つの項目は区分が明らかでないときの補助線
  • 建設関係には所得税の別通達(課個5-5)があり、項目は5つ。時間的拘束が加わり、業務の性質上当然の拘束・指揮監督は除かれる
  • 法人税・所得税では外注費と給与に差はない。差が出るのは消費税・源泉徴収・社会保険の3つ
  • 月30万円なら会社の負担は324.0万円と415.2万円で、差は91.2万円。うち36.0万円は消費税
  • 簡易課税や免税事業者なら消費税の差は出ず、差は55.2万円に縮む
  • 源泉徴収は報酬のほうが重いことがあり、給与と認定されても源泉所得税では追徴されない場合がある

一般論の数字ではなく、自分の売上と経費を入れて確かめてみてください。

よくある質問

請求書をもらっていれば外注費として認められますか?

請求書の有無だけでは決まりません。判定は契約が請負に当たるか雇用に当たるかで、それが明らかでないときに代替性、指揮監督、危険負担、材料や用具の供与といった事項を総合勘案します。

業務委託の相手に支払うとき、必ず源泉徴収が必要ですか?

必要とは限りません。源泉徴収の対象は所得税法204条1項に列挙された報酬・料金等に限られます。原稿料やデザイン料は対象ですが、列挙にない役務の対価は対象になりません。

外注費が給与と認定されると、消費税はどうなりますか?

給与等を対価とする役務の提供は課税仕入れから除かれるため、原則課税で計算していた仕入税額控除が否認されます。簡易課税を選んでいる場合は実際の課税仕入を使わないので、この影響は生じません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。