税金の基礎

売上1,000万円のフリーランスの手取りは540万円。内訳を全部出す

売上1,000万円・経費200万円のフリーランスの手取りは540.7万円(東京23区・独身・40歳未満)。国民健康保険79.9万円、所得税73.0万円など全項目の金額と、売上が増えても手取り率が単純には下がらない理由を実データで示します。

売上1,000万円(税抜)・経費200万円のフリーランスの手取りは、540.7万円です。東京23区・独身・40歳未満・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済みという条件で、当サイトの計算エンジンに入れた結果です。

売上の54.1%。残りの459万円が何にいくら消えているのかを、1項目ずつ金額で出します。

手取り540.7万円の内訳

項目金額売上に対する割合
売上(税抜)1,000.0万円100.0%
経費−200.0万円20.0%
国民健康保険料−79.9万円8.0%
国民年金保険料−21.5万円2.2%
所得税(復興特別所得税込み)−73.0万円7.3%
住民税−59.3万円5.9%
個人事業税−25.5万円2.6%
手取り540.7万円54.1%

※ 東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準

事業所得は、売上1,000万円から経費200万円と青色申告特別控除65万円を引いた735万円です。この735万円に対して所得税と住民税がかかります。

国民健康保険料の79.9万円は、内訳が医療分56.7万円・後期高齢者支援金分21.1万円・子ども子育て支援金分2.1万円です。所得割の算定基礎は「旧ただし書所得」=総所得金額等−43万円で、扶養控除や社会保険料控除は反映されません。所得税とは別物の計算になるため、確定申告の所得控除をいくら積んでも国保料は下がりません。

個人事業税の25.5万円は、売上1,000万円から経費200万円を引いた800万円に対し、事業主控除290万円を差し引いた510万円に5%を掛けた金額です。この計算では青色申告特別控除65万円が使えないため、所得税より課税対象が大きくなります。業種によっては課税されない点も含めて、個人事業税の70業種の線引きで詳しく扱っています。

消費税88万円は、手取りを減らしていない

上の表に消費税がありません。書き忘れではなく、税抜で考える限り納付額は手取りを減らさないからです。

売上1,000万円(税抜)なら、取引先から受け取るのは1,100万円です。このうち100万円は預かった消費税で、自分の売上ではありません。経費側で支払った消費税を差し引いて納付します。当サイトの計算では、経費のうち課税仕入が60%という前提で仕入税額を12万円と置き、納付額は100万円−12万円=88万円としています。

受け取った1,100万円から、税込の経費212万円と納付する88万円を引くと800万円。税抜の売上1,000万円から税抜の経費200万円を引いた額と一致します。納付そのもので手取りが減るわけではないことが分かります。

減るのは「免税事業者でなくなったとき」

手取りが本当に動くのは、免税事業者だった人が課税事業者になるときです。免税なら預かった88万円を納付せずに済み、その分が利益になります(いわゆる益税)。

同じ条件で免税事業者の場合を計算すると、手取りは591.1万円。課税事業者の540.7万円との差は50.4万円です。

益税は88万円あるのに、手取りの差は50.4万円しかありません。88万円が事業所得に上乗せされることで、所得税・住民税・国民健康保険料・個人事業税がその分増えるためです。残るのは益税の57%だけ、という点は押さえておく価値があります。

なお、ここでの納付額は原則課税での計算です。2割特例(令和8年9月30日を含む課税期間で終了)や簡易課税のみなし仕入率を使う場合、納付額はこれより小さくなります。

1,000万円の判定は「前々年」を見る

消費税の納税義務は、その年の売上ではなく基準期間で決まります。個人事業者の基準期間は前々年です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、その年は課税事業者になります。「超える」が要件なので、ちょうど1,000万円では超えません。

例外が2つあります。1つは特定期間による判定で、個人事業者は前年1月1日から6月30日までの課税売上高が1,000万円を超える場合、基準期間が1,000万円以下でも課税事業者になります。この判定は課税売上高に代えて給与等支払額で行うこともできます。

もう1つがインボイスです。適格請求書発行事業者の登録を受けていれば、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも納税義務は免除されません。この記事の540.7万円が登録済みの前提なのはそのためです。登録の有無が法人化の判断まで変えてしまう点は、インボイス登録済みなら法人化しても2年間免税は受けられないで扱っています。

売上別の手取り。手取り率が最も高いのは売上1,500万円あたり

経費200万円のまま、売上だけを変えて計算した結果です。

売上(税抜)事業所得国民健康保険料所得税住民税個人事業税手取り手取り率
600万円335.0万円37.6万円8.8万円23.5万円5.5万円303.1万円50.5%
800万円535.0万円58.8万円35.5万円41.4万円15.5万円427.3万円53.4%
1,000万円735.0万円79.9万円73.0万円59.3万円25.5万円540.7万円54.1%
1,200万円935.0万円95.6万円112.6万円77.7万円35.5万円657.1万円54.8%
1,500万円1,235.0万円96.0万円198.8万円107.7万円50.5万円825.5万円55.0%
2,000万円1,735.0万円96.0万円367.2万円157.7万円75.5万円1,082.1万円54.1%
2,500万円2,235.0万円96.0万円554.0万円207.7万円100.5万円1,320.4万円52.8%
3,000万円2,735.0万円96.0万円783.5万円262.2万円125.5万円1,511.3万円50.4%

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準 ※ 国民年金保険料は月17,920円・年21.5万円で全ての行に共通

累進課税なので、売上が増えるほど手取り率は下がると思われがちです。実際は逆で、手取り率は売上1,500万円あたりまで上がり続けます。600万円の50.5%に対し、1,500万円は55.0%です。

理由は、負担の中に売上と無関係な固定額が混じっているからです。国民年金保険料は年21.5万円で一定、国民健康保険料にも均等割があり、所得税の基礎控除も定額です。売上が小さいほど、これらが売上に占める比率は大きくなります。

売上1,500万円を超えると今度は所得税の累進が効いてきて、手取り率は下がりに転じます。3,000万円で50.4%と、600万円のときとほぼ同じ水準まで戻ります。

800万→1,000万より、1,000万→1,200万のほうが手取りが残る

増えた売上のうち何割が手取りになるかを見ると、もっと直感に反する動きが出ます。

売上の増加手取りの増加増えた分のうち手取りになる割合
600万円 → 800万円+124.2万円62.1%
800万円 → 1,000万円+113.4万円56.7%
1,000万円 → 1,200万円+116.4万円58.2%
1,200万円 → 1,500万円+168.4万円56.1%
1,500万円 → 2,000万円+256.6万円51.3%
2,000万円 → 2,500万円+238.3万円47.7%
2,500万円 → 3,000万円+190.9万円38.2%

※ 上の表と同じ条件で計算

累進課税だけが働いているなら、この割合は上から下へ単調に下がるはずです。ところが800万円→1,000万円の56.7%より、1,000万円→1,200万円の58.2%のほうが高くなっています。税率が上がる区間で、手取りの残り方が改善しているわけです。

原因は国民健康保険料の賦課限度額です。東京23区の限度額は医療分67万円・後期高齢者支援金分26万円・子ども子育て支援金分3万円の合計96万円で、この記事の条件では売上1,200万円あたりでほぼ天井に達します。

売上800万円→1,000万円で国保料は21.1万円増えますが、1,000万円→1,200万円では15.7万円しか増えません。1,200万円→1,500万円に至っては0.4万円です。所得税率の上昇より、国保料の頭打ちのほうが大きく効く区間が生まれ、そこで順位が入れ替わります。

この頭打ちの構造は法人化の判断にも直接効きます。国保料が高いから法人化、という判断が所得帯によっては逆効果になる理由を、国民健康保険が高いから法人化、は所得次第で逆効果になるで数字を出して検証しています。

法人化するとこの数字はどう変わるか

同じ計算エンジンで、個人のままと法人化した場合を事業所得別に比較したものです。法人側は役員報酬を月5万円から100万円まで1万円刻みで全パターン計算し、手取りが最大になる金額を採用しています。

事業所得個人のまま法人化(最適報酬)最適な役員報酬実質差額(年)判定
400万円303.1万円274.5万円月28万円−48.6万円個人のまま有利
600万円427.3万円409.7万円月42万円−37.6万円個人のまま有利
800万円540.7万円536.6万円月54万円−24.1万円個人のまま有利
1,000万円657.1万円662.4万円月54万円−14.7万円ほぼ互角
1,200万円774.2万円787.6万円月54万円−6.6万円ほぼ互角
1,500万円928.2万円972.0万円月54万円+23.9万円法人化が有利
1,800万円1082.1万円1149.1万円月90万円+47.0万円法人化が有利
2,100万円1232.0万円1332.6万円月95万円+80.6万円法人化が有利
2,500万円1395.0万円1551.1万円月100万円+136.1万円法人化が有利
3,000万円1599.6万円1816.8万円月100万円+197.2万円法人化が有利

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額

この表の軸は売上ではなく事業所得(売上−経費)である点に注意してください。売上1,000万円・経費200万円のケースは、事業所得800万円の行に当たります。個人のままの540.7万円に対して法人化は536.6万円で、固定費を引いた実質では年24.1万円のマイナスです。

法人化が有利に振れるのは、この条件では事業所得1,500万円あたりからです。売上に直すと経費200万円なら1,700万円前後。「売上1,000万円を超えたら法人化」という言い方が実態と合わない理由は、法人化の目安は「所得800万円」?で整理しています。

ただし分岐点は条件で数百万円動きます。配偶者を社会保険の扶養に入れられるか、インボイス登録をしているか、住んでいる自治体の国保料率、年齢による介護保険の有無。この記事の数字はあくまで東京23区・独身・40歳未満・経費200万円の場合です。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。計算の前提は計算の考え方に置いています。

まとめ

  • 売上1,000万円・経費200万円のフリーランスの手取りは540.7万円(東京23区・独身・40歳未満・インボイス登録済みの概算)
  • 消費税の納付88万円は税抜で見れば手取りを減らさない。手取りが動くのは免税事業者でなくなったときで、その差は50.4万円
  • 手取り率は売上とともに下がるとは限らず、この条件では売上1,500万円の55.0%が最も高い
  • 国民健康保険料が賦課限度額96万円で頭打ちになるため、売上1,000万円→1,200万円の区間だけ手取りの残り方が改善する
  • 事業所得800万円の時点では法人化は年22.7万円のマイナス。有利に転じるのは事業所得1,500万円あたりから

よくある質問

売上がちょうど1,000万円のときも消費税の課税事業者になりますか?

消費税の納税義務が生じるのは、基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が1,000万円を超える場合です。ちょうど1,000万円は「超える」に当たらないため、この基準だけで見れば免税事業者のままです。ただし適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けていれば、売上高に関係なく課税事業者になります。

手取りの計算で消費税を差し引かなくてよいのですか?

この記事では売上を税抜で置いているため、預かった消費税はもともと売上に含まれていません。税込で1,100万円を受け取り、経費に含めて支払った消費税を差し引いて納付する形になるので、原則課税である限り納付額そのものは手取りを減らしません。手取りが変わるのは、免税事業者から課税事業者になったときです。

経費が増えると手取りはどれくらい変わりますか?

売上1,000万円・東京23区・独身・40歳未満の条件では、経費100万円のとき手取り598.0万円、経費300万円のとき484.5万円、経費500万円のとき370.6万円です(2026年(令和8年)分基準の概算)。経費が100万円増えるごとに手取りは57万円前後減る計算になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。