設立の手続き
賃貸住宅管理業の登録は法人成りで引き継げない。200戸の線と登録免許税9万円
結論
賃貸住宅管理業法には登録の承継規定がなく、個人で受けた登録は廃業の届出で効力を失います(9条)。管理戸数が200戸以上なら、会社が国土交通大臣の新規登録を受け、登録免許税9万円を納めてから管理を始めます。東京23区・経費600万円の試算では、損益分岐は2年目以降1,243万円、設立費用と登録免許税を含む初年度は1,430万円です。
- 登録が要るのは、委託を受けて維持保全を行う賃貸住宅が200戸以上のとき(施行規則3条)。無登録営業は1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、または併科(41条)
- 営業所・事務所ごとに業務管理者1人以上が必要(12条)。管理業務の実務2年以上(または同等と認められた者)に、登録証明事業の証明か宅建士+指定講習が要る
- 自分や親族が役員の会社に自分の物件を一括で貸す契約は、特定賃貸借契約から除かれる(施行規則2条1号)。サブリース規制は、家族の管理会社には原則かからない
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
賃貸住宅管理業の登録は、宅建業の免許と同じく人に付く登録で、法人成りで会社へ移す道がありません。この業種で固有なのは、登録が要るかどうかを管理戸数200戸の線で判断することと、オーナーとの管理受託契約を会社名義で結び直すたびに書面での説明が要ることです。前者で登録の要否が決まり、後者で切替えの手間が決まります。
登録が要るのは、委託を受けた200戸以上の管理
賃貸住宅管理業法2条2項は、賃貸住宅管理業を「賃貸人から委託を受けて」維持保全を行う事業と定めています。家賃や敷金の管理だけでは当たらず、点検・清掃・修繕といった維持保全と一緒に行う場合に限って金銭の管理も管理業務になります。
3条1項は、管理業を営む者に国土交通大臣の登録を求めたうえで、ただし書で一定の規模未満を除いています。その規模を定める施行規則3条は「賃貸住宅の戸数が二百戸」です。200戸以上を管理するなら登録は義務、それ未満なら任意という線になります。
| 管理の形 | 登録 | 根拠 |
|---|---|---|
| 他人の賃貸住宅を委託を受けて管理(200戸以上) | 必要 | 3条1項・施行規則3条 |
| 他人の賃貸住宅を委託を受けて管理(200戸未満) | 任意 | 3条1項ただし書 |
| 家賃の集金だけを請け負う | 管理業に当たらない | 2条2項2号(維持保全と併せて行うものに限る) |
| 自分が貸主として自分の物件を管理 | 管理業に当たらない | 2条2項(委託を受けて行う事業ではない) |
無登録で管理業を営むと、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です(41条1号)。個人の時代に200戸を超えて登録していた人は、会社でも登録が要る規模であることがほとんどです。
承継の規定はなく、廃業届で個人の登録は失効する
管理業法には、事業譲渡・相続・合併のいずれについても登録の地位を承継させる条文がありません。9条は、個人が死亡したとき、法人が合併で消滅したとき、管理業を廃止したときに、30日以内の届出を求めるだけです。そして9条2項により、届出事由に当たった時点で登録は効力を失います。
個人から会社へ事業を移すのは、9条1項5号の「賃貸住宅管理業を廃止したとき」に当たります。個人の登録は失効し、会社は3条1項の登録を新規に受けることになります。7条の変更届(30日以内)は、商号・氏名・役員・事務所などが変わったときの届出で、登録を受けた者そのものが入れ替わる場面には使えません。
27条は、廃業届などで登録が効力を失った後も、すでに結んだ管理受託契約の業務を結了する目的の範囲内では管理業者とみなすと定めています。法人成りの切替期間に個人の契約を終わらせるための規定で、個人の登録で会社が新規の契約を結ぶ根拠にはなりません。
個人の登録名義を会社に使わせることは、11条の名義貸しの禁止に当たります。違反は41条3号で、無登録営業と同じ1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。
会社で登録を受けるために揃えるもの
申請書と添付書類が、個人と法人で違う
施行規則7条は、法人の申請に定款、登記事項証明書、法人税の直前1年の納税額を証する書面、最近の事業年度の貸借対照表と損益計算書を求めています。個人の申請では、所得税の納税証明と財産に関する調書でした。
設立したばかりの会社には、法人税の納付実績も決算書もありません。6条1項10号は「財産的基礎」を拒否事由に挙げ、施行規則10条はその基準を「財産及び損益の状況が良好であること」とだけ定めています。設立直後の会社でどの書類をどう代えるかは条文に数字がないため、申請前に管轄の地方整備局へ確認するのが確実です。施行規則7条4項は、大臣が特に必要ないと認める書類の省略も認めています。
業務管理者は、営業所ごとに1人以上
12条は、営業所・事務所ごとに業務管理者を1人以上置くことを求め、6条1項11号は確実に選任できない者の登録を拒否します。業務管理者の要件は施行規則14条で、次の両方を満たす人です。
- 管理業務に関し2年以上の実務経験がある(または大臣が同等以上と認めた)
- 登録証明事業による証明を受けている、または宅地建物取引士で指定講習を修了している
一人社長が業務管理者を兼ねること自体を禁じる規定はありません。ただし12条3項は、業務管理者が他の営業所の業務管理者を兼ねることを禁じています。法人成りを機に事務所を2か所に分けると、業務管理者が2人要ります。業務管理者が欠けると、新たに選任するまでその事務所で管理受託契約を結べません(12条2項)。違反は30万円以下の罰金です(44条2号・3号)。
役員全員が欠格事由の審査を受ける
6条1項8号は、役員のうちに1号〜6号(破産・登録取消し後5年・拘禁刑以上の刑の執行後5年・暴力団員など)に当たる者がいる法人の登録を拒否します。個人の時代は本人だけの審査でしたが、会社では家族を役員にすると、その家族も審査の対象になります。
契約の結び直しで、オーナーごとに書面の説明が要る
法人成りの実務で手間がかかるのは、登録よりもオーナーとの契約の切替えです。個人が結んだ管理受託契約の当事者は個人なので、会社が管理を引き継ぐには、オーナーごとに会社名義の契約を結び直します。
13条は、管理受託契約を結ぶ前に、契約の内容と履行に関する事項を書面で交付して説明することを求めています。14条は、締結後に遅滞なく書面を交付することを求めています。契約の相手が会社に変わる以上、既存のオーナーにも新規契約として説明と書面の交付をやり直すことになります。オーナーの承諾があれば電磁的方法で提供できます(13条2項)。
| 段取り | 期限・根拠 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 会社の設立と業務管理者の確保 | 申請前 | 事務所ごとに1人。兼任不可 |
| 会社で新規登録を申請 | 管理を始める前 | 登録免許税9万円(別表第一 第151号の2) |
| オーナーと会社名義で管理受託契約 | 会社の登録後 | 契約前の書面説明(13条)・締結時の書面(14条) |
| 個人の管理受託契約を終える | 結了まで | 結了の範囲内は管理業者とみなされる(27条) |
| 個人の廃業届 | 廃止の日から30日以内 | 届出事由で個人の登録は失効(9条) |
個人の登録を先に失効させてから会社の登録を待つと、その間は新しい契約を誰の名義でも結べません。会社の登録が下りてから契約を移し、最後に個人の廃業届を出す順番にすれば、空白を作らずに済みます。
自分の物件を自分の会社に貸すサブリースは、規制の外
家賃収入のある人が管理会社を作るとき、もう一つ気になるのがサブリース規制です。管理業法28条〜35条は、特定転貸事業者(いわゆるサブリース業者)に、誇大広告の禁止、不当な勧誘の禁止、契約前の重要事項の書面説明、締結時の書面交付を義務づけています。これらは戸数に関係なくかかります。
ただし、規制の対象となる「特定賃貸借契約」の定義(2条4項)は、賃借人が賃貸人と密接な関係を有する者である契約を除いています。施行規則2条1号は、賃貸人が個人の場合のその者として、賃貸人の親族と、賃貸人またはその親族が役員である法人を挙げています。
つまり、自分の物件を自分や家族が役員の管理会社に一括で貸す形は、特定賃貸借契約に当たりません。家族の管理会社は、自分の物件についてはサブリース規制の書面説明などを求められない、という整理になります。一方で、他人のオーナーから一括で借り上げて転貸するようになると、その契約には28条以下がかかります。
管理委託・サブリース・所有のどれで法人に所得を移すかの税の比較は、不動産管理会社の3方式で計算しています。この記事が扱うのは、他人の物件を預かる管理業者が法人成りするときの登録の側です。
登録免許税9万円を乗せた損益分岐
会社で新規登録を受けると、登録免許税法別表第一 第151号の2により1件9万円の登録免許税がかかります。更新の登録は除かれており、5年ごとの更新では手数料1万8,700円(電子申請は1万8,000円)を納めます(施行令1条)。
管理料収入から清掃・修繕の外注や事務所の費用を引いた事業所得ごとに、個人のままと法人化を比べました。初年度は設立費用10万円と登録免許税9万円の計19万円を差し引いています。
| 事業所得(売上−経費) | 最適な役員報酬 | 2年目以降 | 初年度(設立費用・登録免許税込み) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 月42万円 | −34.0万円 | −53.0万円 |
| 800万円 | 月45万円 | −18.9万円 | −37.9万円 |
| 1,000万円 | 月45万円 | −10.0万円 | −29.0万円 |
| 1,200万円 | 月54万円 | −4.3万円 | −23.3万円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | +26.1万円 | +7.1万円 |
| 2,000万円 | 月90万円 | +65.8万円 | +46.8万円 |
※ 当サイトの計算エンジン(scripts/chintai-kanrigyo-houjinnari.mjs で再生成)で算出。経費600万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は第1種(5%)として計算。2026年(令和8年)分基準の概算
損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は次のとおりです。
| 個人事業税の扱い | 2年目以降 | 初年度(設立費用・登録免許税込み) |
|---|---|---|
| 第1種事業(5%)に当たる | 1,243万円 | 1,430万円 |
| 課税されない | 2,277万円 | 2,466万円 |
地方税法72条の2第8項は、第1種事業に不動産貸付業・請負業・代理業などを挙げていますが、「不動産管理業」という業種名はありません。管理受託の対価がどの業種として課税されるかは都道府県の判定によるため、2通りで示しました。個人事業税がかからない場合、個人のままの負担が軽くなるぶん、損益分岐は1,000万円以上上がります。
200戸の管理料で事業所得が1,243万円に届くかどうかは、管理料率と外注の範囲で大きく変わります。自分の管理料と経費の実額で、判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法にまとめています。
ほかの業種の許認可が法人成りで引き継げるかは、法人成りの許認可の引継ぎで一覧にしています。管理業と一緒に宅建業を営んでいる場合は、免許の取り直しと保証協会の分担金が別にかかります。その段取りは宅建業の法人成りで扱っています。
まとめ
- 賃貸住宅管理業の登録は、委託を受けて管理する賃貸住宅が200戸以上のときに必要。承継の規定はなく、法人成りでは会社が新規に登録を受ける
- 会社の登録には登録免許税9万円。5年ごとの更新は手数料1万8,700円(電子申請1万8,000円)
- 業務管理者は事務所ごとに1人以上で兼任不可。法人では役員全員が欠格事由の審査を受ける
- オーナーとの管理受託契約は会社名義で結び直し、契約前の書面説明と締結時の書面交付をやり直す。会社の登録→契約の移行→個人の廃業届の順で空白を避ける
- 自分や親族が役員の会社への一括貸しは特定賃貸借契約から除かれ、サブリース規制は原則かからない
よくある質問
管理戸数が200戸未満の個人の管理業者は、法人成りで何か手続きが要りますか。
200戸未満なら登録は義務ではないため、管理業法上の取り直しはありません。ただし任意に登録を受けている場合は、個人の登録は会社に移らないので、会社として登録を続けたいなら新規に申請します。オーナーとの管理受託契約を会社名義に切り替える作業は、登録の有無に関係なく必要です。
法人成りで会社の登録が下りるまで、個人の登録で管理を続けられますか。
個人の登録は個人が営む管理業にだけ効力があり、会社は使えません。個人の名義で他人に管理業を営ませることも禁じられています(11条)。個人の廃業届を出した後も、個人が結んだ管理受託契約を結了する範囲では管理業者とみなされます(27条)が、新しい契約を会社名義で結ぶには会社の登録が先に要ります。
登録を受けた会社は5年後に何か払いますか。
登録は5年ごとの更新制で(3条2項)、更新の手数料は1万8,700円、電子申請なら1万8,000円です(施行令1条)。新規登録の登録免許税9万円は更新ではかかりません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。