設立の手続き

法人化の費用は設立時より毎年が重い。3年で設立費は全体の11%

法人化の費用を調べると設立費用の記事ばかり出てきますが、判定を動かすのは毎年かかるほうです。登録免許税と定款認証の実費、毎年27万円の固定費、そして最大の費目である社会保険の会社負担を金額で整理しました。

「法人化 費用」で調べると、設立にいくらかかるかの記事が並びます。合同会社で約6万円、株式会社で約25万円。ですが判定を動かすのは、そちらではありません

当サイトの前提で累計を出すと、合同会社の場合、**3年目までにかかる費用91.0万円のうち設立費用は11%**でした。残りは毎年かかる分です。そして実際にはもう1つ、これより大きな費目があります。

設立時にかかるのは、登録免許税と定款認証

設立の実費は、法定の費用でほぼ決まります。

費目合同会社株式会社
登録免許税資本金の額×1,000分の7(最低6万円資本金の額×1,000分の7(最低15万円
定款認証の手数料不要3万〜5万円(資本金の額による)
定款の印紙代4万円(電子定款なら0円)4万円(電子定款なら0円)
登記事項証明書・印鑑証明書1,000円程度1,000円程度

登録免許税は資本金に比例しますが、下限があります。合同会社は資本金857万円あたり、株式会社は2,143万円あたりを超えたところで、下限額を上回ります。 それ以下ならどれだけ資本金を減らしても6万円・15万円から下がりません。

定款認証は株式会社だけに必要です。手数料は資本金100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以上で5万円です。なお令和6年12月1日から減額の仕組みがあり、発起人の全員が自然人で3人以下、発起設立、定款に取締役会を置く旨の記載がない、という条件をすべて満たす資本金100万円未満の株式会社は1万5,000円になります。

当サイトの判定では、実費と手数料を含めて合同会社10万円・株式会社25万円を設立費用として初年度の差額から引いています。形態ごとの詳しい比較は合同会社と株式会社、設立費用の差は約15万円にあります。

定款作成や登録免許税をいつ損金にするかは別の論点です。設立前は創立費、設立後から営業開始までは開業費に分け、任意償却と会計上の5年償却を混同しないでください。

毎年かかるのは27万円から

設立が終わると、今度は毎年の費用が始まります。判定に必ず乗せている2つです。

費目年額性質
法人住民税の均等割7万円赤字でも発生する
税理士報酬の差(法人35万円 − 個人15万円)20万円決算申告が必要になるため
合計27万円

※ 均等割は資本金等1,000万円以下かつ従業者50人以下の場合。資本金1,000万円超では18万円に上がる

均等割は所得に関係なく定額です。売上がゼロでも、赤字でも、法人が存在する限り毎年かかります。この性質については法人住民税の均等割は赤字でも年7万円で扱っています。

3年で見ると、設立費用は全体の11%にしかならない

この2つを累計します。

1年目まで2年目まで3年目まで5年目まで10年目まで
合同会社37.0万円64.0万円91.0万円145.0万円280.0万円
うち設立費用の割合27%16%11%7%4%
株式会社52.0万円79.0万円106.0万円160.0万円295.0万円
うち設立費用の割合48%32%24%16%8%

※ 設立費用(合同会社10万円・株式会社25万円)+毎年27万円で計算/2026年(令和8年)分基準

合同会社と株式会社の差15万円は、3年経つと全体の中で埋もれます。 91.0万円と106.0万円の差なので、比率にすると16%です。設立形態で悩む時間より、毎年27万円を上回るだけの効果が出るかどうかを先に確かめたほうが、判断としては早くなります。

いちばん大きい費目は、社会保険の会社負担

ここまでの27万円には、実はもっと大きい費目が入っていません。社会保険料の会社負担分です。

法人化すると社会保険は強制加入になり、保険料は労使折半で会社と本人が半分ずつ負担します。会社負担分は法人の損金になりますが、支払いは確実に発生します。

役員報酬(月)本人負担(年)会社負担(年)労使合計(年)
15万円25.5万円25.5万円51.1万円
25万円44.3万円44.3万円88.5万円
35万円61.3万円61.3万円122.6万円
45万円74.9万円74.9万円149.8万円
54万円90.2万円90.2万円180.5万円
70万円114.3万円114.3万円228.6万円
90万円124.6万円124.6万円249.2万円
100万円130.6万円130.6万円261.3万円

※ 東京都・40歳未満(介護保険なし)・協会けんぽ/2026年(令和8年)分基準

判定で最適とされることの多い月54万円で、会社負担だけで年90.2万円です。均等割7万円の12.9倍にあたります。「法人化の費用」を設立費用の話だと思って調べていると、この桁の項目を見落とします。

ただし、これを純粋な費用として扱うのは正確ではありません。個人事業主のときも国民健康保険と国民年金を払っていますし、厚生年金は将来の受取額に反映されます。増減の比較は国民健康保険が高いから法人化、は所得次第で逆効果になる、戻ってくる分は法人化で厚生年金は年69万円増えるで計算しています。

「何年で元が取れるか」は問いの立て方が違う

設立費用を初期投資と考えて、何年で回収できるかを知りたくなります。ですが計算すると、その問いは成立しません

法人化による差額を年ごとに積み上げたものです。

事業所得1年目3年目まで累計5年目まで累計10年目まで累計
800万円−34.1万円−82.4万円−130.7万円−251.4万円
1,000万円−24.7万円−54.1万円−83.5万円−157.0万円
1,200万円−16.6万円−29.8万円−43.0万円−75.9万円
1,500万円+15.3万円+65.9万円+116.4万円+242.8万円
1,800万円+38.7万円+136.2万円+233.6万円+477.2万円
2,500万円+127.6万円+402.8万円+678.0万円+1,366.0万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。設立費用と税理士報酬の差を控除後/2026年(令和8年)分基準

プラスの行は1年目からプラスで、マイナスの行は10年経ってもマイナスのままです。 途中で符号が変わる行がありません。

設立費用10万円に対して毎年の差額のほうが桁で大きいため、初期費用を何年かけて取り戻す、という構図にならないのです。事業所得1,200万円の行では、10年でマイナス75.9万円と赤字が広がっていくだけでした。

つまり見るべきは回収期間ではなく、毎年の差額がプラスかどうかの一点です。ここがマイナスなら、続けるほど差が開きます。分岐点そのものは法人化の目安は「所得800万円」?で扱っています。

やめるときにも費用がかかる

法人を解散して個人事業に戻す場合、解散の登記、清算人の登記、清算結了の登記と、清算の確定申告が必要になります。設立より手間と期間がかかります。

登記ごとの登録免許税額は登記の種類に応じて定められていますが、当サイトでは一次情報で金額を確認できていないため、具体的な額は書きません。法務局または司法書士に確認してください。

金額よりも押さえておきたいのは、「とりあえず法人化して、合わなければ戻す」が費用面で成立しないことです。設立費用と解散費用の両方に加え、その間の均等割と税理士報酬がかかります。

まとめ

  • 設立の登録免許税は資本金の額×1,000分の7。合同会社は最低6万円、株式会社は最低15万円
  • 定款認証は株式会社のみ。3万〜5万円で、令和6年12月1日からは要件を満たせば1万5,000円
  • 毎年かかるのは27万円から(均等割年7万円+税理士報酬の差20万円)。均等割は赤字でも消えない
  • 累計で見ると、合同会社の3年目までの91.0万円のうち設立費用は11%。形態選びより毎年の負担のほうが効く
  • 最大の費目は社会保険の会社負担。役員報酬月54万円で年90.2万円と、均等割の12.9倍になる
  • ただし会社負担分は個人時代の国民健康保険・国民年金と比べる必要があり、厚生年金は将来の受取に反映される
  • 「何年で元が取れるか」は成立しない問い。設立費用より毎年の差額のほうが桁で大きく、マイナスの水準では10年経ってもマイナスのまま

よくある質問

資本金が多いと設立費用は上がりますか?

上がります。設立の登録免許税は資本金の額の1,000分の7で、合同会社は6万円、株式会社は15万円が下限です。合同会社では資本金857万円あたり、株式会社では2,143万円あたりを超えると、下限額を上回ります。

会社をやめるときの費用はいくらですか?

解散登記・清算人の登記・清算結了登記と、清算確定申告が必要になります。登記の登録免許税額は登記の種類ごとに定められているため、金額は法務局または司法書士に確認してください。設立より手間と期間がかかる点は共通しています。

税理士に頼まずに自分で決算申告できますか?

制度上は可能です。ただし法人税の申告書は個人の確定申告より項目が多く、別表の作成が必要になります。この記事では税理士に依頼する前提で、個人のときとの差額20万円を固定費に含めています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。