設立の手続き
緑ナンバーの法人成りは譲渡譲受認可で。一般貨物の許可12万円を払わない手順
結論
一般貨物自動車運送事業の許可は、事業の譲渡・譲受について国土交通大臣の認可を受ければ、会社が許可に基づく権利義務を承継します(貨物自動車運送事業法30条1項・4項)。認可は効力の要件で、認可前の譲渡は効力を生じません。新規に許可を取り直すと登録免許税が12万円かかりますが、譲渡譲受の認可には登録免許税の定めがなく、初年度の損益分岐は1,459万円から1,341万円へ118万円下がります(東京23区・40〜59歳の試算)。
- 認可の審査には、新規許可と同じ欠格事由(5条)と許可基準(6条)が準用される。資金計画・車両数・車庫・社会保険料の支払能力などを会社として示す
- 認可前に会社が個人の許可で運行すると、無許可経営または名義利用として3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金の対象(70条)
- 個人の事業を廃止するなら30日前までに届出(32条)。譲渡譲受で事業を移す場合は認可申請書に予定日を書く
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
緑ナンバーのトラックで運送業を営む個人事業主が法人化するとき、一般貨物自動車運送事業の許可は取り直さずに会社へ移せます。ただし条件があり、事業の譲渡・譲受について国土交通大臣の認可を受けることです。
この記事では、譲渡譲受認可の条文の構造、新規許可を取り直した場合との費用差、認可前の運行がなぜ危ないかを確認し、最後に損益分岐を計算エンジンで出します。軽自動車の黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)は届出制で別の手続きなので、軽貨物ドライバーの法人化を参照してください。
許可は「譲渡譲受の認可」で会社へ移る
一般貨物自動車運送事業を経営するには国土交通大臣の許可が要ります(3条)。この許可を引き継ぐ仕組みは30条にあります。
一般貨物自動車運送事業の譲渡し及び譲受けは、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。(30条1項)
認可を受けて事業を譲り受けた者は、3条の許可に基づく権利義務を承継します(30条4項)。個人事業主が自分の会社へ事業を譲る法人成りも、この「譲渡し及び譲受け」に当たります。
| 手続きの型 | 条文 | 法人成りでの使い方 |
|---|---|---|
| 事業の譲渡・譲受の認可 | 30条1項・4項 | 個人→会社へ事業を譲り、認可で許可を承継 |
| 法人の合併・分割の認可 | 30条2項 | 法人成りでは使わない |
| 相続による継続の認可 | 31条 | 死亡後60日以内に相続人が申請 |
| 新規の許可 | 3条 | 認可を使わず取り直す場合 |
認可申請書には、譲渡人と譲受人、譲渡・譲受の価格、予定日、必要とする理由を書き、譲渡譲受契約書の写しと価格の明細書を添えます(施行規則17条)。譲受人の会社がまだ運送事業を経営していないので、許可申請と同じ添付書類も求められます(同条2項3号)。
審査の基準は新規許可と同じ
30条3項は、認可について5条(欠格事由)と6条(許可の基準)を準用しています。審査の物差しは新規許可と変わりません。
- 欠格事由:1年以上の拘禁刑の執行後5年を経過しない者、許可の取消しから5年を経過しない者など。法人の役員にこれらの者がいる場合も同じ(5条8号)
- 許可の基準:輸送の安全を確保する事業計画、事業用自動車の数・車庫・営業所の規模、事業を継続する経済的基礎(6条、施行規則3条の5・3条の6)
施行規則3条の6は、経済的基礎の審査事項に健康保険法などで納付義務を負う保険料等の支払能力を挙げています。法人化すると社長本人もドライバーも社会保険の強制加入になる(法人化すると社会保険は強制加入)ので、会社の資金計画には社会保険料の負担を織り込んでおく必要があります。
新規許可を取り直すと、登録免許税12万円がかかる
一般貨物自動車運送事業の許可には、登録免許税が1件12万円かかります(登録免許税法別表第一)。一方、30条の譲渡譲受の認可は別表第一に載っておらず、登録免許税の定めがありません。
| 手段 | 登録免許税 | 個人の事業 |
|---|---|---|
| 譲渡譲受の認可(30条) | 定めなし | 認可の日に会社へ移る。止めずに済む |
| 新規の許可(3条) | 12万円 | 会社の許可が出たら廃止を届け出る(30日前まで) |
費用だけでなく、事業の連続性にも差があります。新規許可の道では、個人の事業を廃止する30日前までに届け出る必要があり(32条)、会社の許可・運輸開始の時期と個人の廃止の時期を合わせ込む作業が生じます。認可の道なら、認可で効力が生じる日に事業ごと会社へ移ります。
認可の前に会社で運行すると、名義貸しになる
法人成りで最も危ないのは、会社を設立した時点で「もう会社の仕事だから」と会社名義で荷主と契約し、個人の緑ナンバーで運ぶことです。
30条1項のとおり、認可を受けるまで譲渡・譲受は効力を生じません。認可前の会社は許可を持たない事業者です。この状態で会社が運送を引き受ければ無許可経営、個人の許可を会社に使わせれば名義の利用(28条)に当たります。どちらも3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方の対象です(70条1号〜3号)。
段取りは次のようになります。
- 会社を設立する(定款の目的に一般貨物自動車運送事業を入れる)
- 個人と会社で事業の譲渡譲受契約を結び、運輸支局に譲渡譲受の認可を申請する
- 認可が出るまでは、荷主との契約・運行・点呼・帳票はすべて個人の事業者として続ける
- 認可が出たら、会社として運行管理者の選任を届け出て(16条3項)、荷主との契約を会社へ切り替える
- 事業用自動車の使用者・所有者の名義を会社に変更する
車両の名義変更は道路運送車両法の手続きで、許可の承継とは別に要ります。名義変更の税金の扱いは法人成りの車の名義変更で整理しました。
運行管理者は社長が兼ねられる
一般貨物自動車運送事業者は、運行管理者資格者証を持つ者のうちから運行管理者を選任し、氏名を届け出ます(16条1項・3項)。資格者証は本人に交付されるものなので、社長本人が持っていれば会社の運行管理者を務められます。
運送業の個人事業税と損益分岐
運送業は個人事業税の第1種事業(税率5%)です(地方税法72条の2第8項)。事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化するとかからなくなります。代わりに社長の役員報酬に社会保険料がかかります。運送業は個人事業でも、常時5人以上を使用すれば社会保険の適用事業所になる業種です(個人事業所の社会保険の適用)。その規模の事業者なら、法人化で新たに増えるのは主に社長本人の保険料です。
燃料費・車両費・ドライバーの人件費などの経費を年4,000万円と置き、社長本人の事業所得ごとに個人のままと法人化の差を計算しました。
| 事業所得(売上−経費) | 最適な役員報酬 | 2年目以降 | 初年度(設立費用込み) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 月42万円 | −34.0万円 | −44.0万円 |
| 800万円 | 月45万円 | −18.9万円 | −28.9万円 |
| 1,000万円 | 月45万円 | −10.0万円 | −20.0万円 |
| 1,200万円 | 月54万円 | −4.3万円 | −14.3万円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | +26.1万円 | +16.1万円 |
| 2,000万円 | 月90万円 | +65.8万円 | +55.8万円 |
※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 4000 --business type1 --age 40to64 --note '運送業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費4,000万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は運送業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算
損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)を、許可の移し方で比べると次のとおりです。
| 許可の移し方 | 2年目以降 | 初年度 |
|---|---|---|
| 譲渡譲受の認可(登録免許税なし) | 1,243万円 | 1,341万円 |
| 新規の許可を取り直す(登録免許税12万円) | 1,243万円 | 1,459万円 |
※ 上と同じスクリプトに --fee 120000 を付けて算出
**初年度の分岐点は118万円違います。**12万円の支出がこれほど分岐点を動かすのは、分岐点の近くでは法人化の差額が所得1万円あたり1,000円程度しか増えないためです。小さな固定費でも、分岐点を大きく押し上げます。
運送業は燃料価格や荷量で事業所得が年ごとに振れやすい業種です。分岐点の近くにいる場合は、複数年の平均で見るほうが判断がぶれません。自分の売上と経費で判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。貨物利用運送の登録を持っている場合は貨物利用運送事業の法人成りもあわせて確認してください。
まとめ
- 一般貨物自動車運送事業の許可は、事業の譲渡・譲受の認可を受ければ会社が承継する(30条1項・4項)。認可が効力の要件
- 認可の審査は新規許可と同じ5条・6条。社会保険料の支払能力も見られる
- 新規許可なら登録免許税12万円。認可には登録免許税の定めがなく、個人の事業を止めずに移せる
- 認可前に会社で運送を引き受けると無許可経営・名義利用で3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金
- 東京23区・40〜59歳の試算で、初年度の損益分岐は認可なら1,341万円、取り直しなら1,459万円
よくある質問
会社を設立したら、認可が出るまで個人の緑ナンバーで会社の仕事をしてもよいですか。
できません。譲渡・譲受は認可を受けなければ効力を生じない(30条1項)ので、認可前は会社に許可がありません。個人の許可で会社の運送をすれば、会社の無許可経営や個人の名義利用(28条)に当たり、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金の対象です。認可までは契約も運行も個人で続けます。
譲渡譲受の認可と新規の許可は、どちらが早いですか。
法律上の審査基準は同じ5条・6条です。違いは、認可は既存の事業(車両・営業所・運行管理者)をそのまま移す前提で、許可の取り直しのように個人の事業を一度止める必要がない点と、登録免許税12万円がかからない点です。処理期間は管轄の運輸支局で確認してください。
軽自動車の黒ナンバーも同じ手続きですか。
違います。貨物軽自動車運送事業は許可ではなく届出制で、譲渡したときは届出をします(36条)。普通トラックの一般貨物とは別の手続きです。
出典
- e-Gov法令検索 貨物自動車運送事業法 第3条(一般貨物自動車運送事業の許可)・第5条(欠格事由)・第6条(許可の基準)・第16条(運行管理者)・第28条(名義の利用等の禁止)・第30条(事業の譲渡し及び譲受け等)・第31条(相続)・第32条(事業の休止及び廃止)・第70条(罰則)
- e-Gov法令検索 貨物自動車運送事業法施行規則 第3条の5・第3条の6(許可の審査事項)・第17条(事業の譲渡し及び譲受けの認可の申請)
- e-Gov法令検索 登録免許税法 別表第一(貨物自動車運送事業法第3条の一般貨物自動車運送事業の許可)
- e-Gov法令検索 地方税法 第72条の2第8項(第一種事業:運送業)・第72条の49の17(個人事業税の税率)
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。