設立の手続き

フロン類充塡回収業者の登録は法人成りで取り直し。回収機の名義と空白期間

結論

フロン排出抑制法には第一種フロン類充塡回収業者の登録を承継する規定がなく、法人成りでは会社が業務を行う区域の都道府県知事ごとに登録を受け直します(有効期間5年)。個人の登録は、その都道府県で業務を廃止した時点で効力を失い、30日以内に廃業等を届け出ます(33条)。無登録でフロン類の充塡・回収を業として行うと1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象なので、会社の登録が出るまで個人で業務を続ける順番になります。

  • 会社の申請では、回収設備の所有権(または使用する権原)を証する書類と登記事項証明書を添える(施行規則8条)。個人の回収機を会社へ移すか、貸すかを先に決める
  • 登録は業務を行う区域の都道府県ごと。複数の都県で業務をしていれば、その数だけ取り直す
  • 東京23区・40〜59歳・請負業(第1種5%)の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円、初年度1,341万円(都道府県の登録手数料は含まない)

業務用エアコンや冷凍・冷蔵機器の整備・廃棄でフロン類を充塡・回収するには、フロン排出抑制法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律)の登録が要ります。個人で受けたこの登録は、法人成りで会社へ移りません。

この記事では、承継の規定がない条文の構造、会社で登録を受ける前に決めておくこと(回収機の名義)、空白期間を作らない順番を確認し、最後に損益分岐を計算エンジンで出します。自動車のエアコンのフロン類を扱う第二種フロン類回収業者は別の法律(使用済自動車再資源化法)の制度です。

登録は、業務をする都道府県ごとに受ける

第一種フロン類充塡回収業を行おうとする者は、業務を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければなりません(27条1項)。事業所の所在地ではなく、業務をする区域が基準なので、複数の都県で整備・回収をしている事業者は、都県の数だけ登録を持っています。

登録の有効期間は5年です(30条1項)。登録を受けないでフロン類の充塡・回収を業として行うと、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(103条1号)。

承継の規定はなく、廃止した時点で登録が切れる

登録の条文(27条〜36条)には、相続・事業譲渡・合併で登録を引き継ぐ規定がありません。33条は、次の場合に30日以内の届出を求めています。

  • 死亡したとき(相続人)
  • 法人が合併で消滅、破産・その他の理由で解散したとき(代表役員・破産管財人・清算人)
  • その登録に係る都道府県の区域内で第一種フロン類充塡回収業を廃止したとき(個人ならその個人)

そして33条2項は、これらに該当するに至ったときに登録は効力を失うと定めています。届出の日ではなく、廃止した時点で切れます。法人成りは個人が業務を廃止する場合に当たり、会社は新規の登録を受けます。

会社の申請で審査されること

会社の登録申請では、代表者の氏名、事業所、扱う第一種特定製品とフロン類の種類、事業所ごとの回収設備の種類と能力を書きます(27条2項)。添付書類は次のとおりです(施行規則8条1項)。

添付書類法人成りでの準備
登記事項証明書会社の設立登記後に取得
回収設備の所有権(ない場合は使用する権原)を証する書類個人の回収機を会社に譲渡するか、賃貸借契約を結ぶ
回収設備の種類と能力の説明書類50kg以上の機器を扱うなら毎分200g以上の回収能力(施行規則9条3号)
欠格事由に当たらないことの説明書類会社と役員全員の分

回収機の名義が、法人成りで最初に決めるべき点です。会社が所有するなら個人から会社への譲渡(売買または現物出資)、個人の所有のまま使うなら会社との賃貸借契約が、使用権原の裏づけになります。資産の移し方の比較は法人成りの資産引継ぎで整理しました。

役員のうちに、フロン排出抑制法などの違反で罰金以上の刑から2年を経過しない者、登録取消しから2年を経過しない者などがいると、会社の登録は拒否されます(29条1項6号)。

空白期間を作らない順番

  1. 会社を設立する(定款の目的にフロン類の充塡・回収、空調設備の整備などを入れる)
  2. 回収機を会社に譲渡するか、会社と賃貸借契約を結ぶ
  3. 業務をする都道府県ごとに、会社として登録を申請する
  4. 会社の登録が出るまでは、個人の登録で業務を続ける
  5. 会社の登録が出たら、整備の発注者との契約を会社に切り替える
  6. 個人の業務を廃止し、30日以内に都道府県ごとに廃業等を届け出る

会社の登録後は、引取証明書(45条)や充塡・回収の記録(47条1項)も会社の名義で作成します。毎年度の充塡量・回収量の報告(47条3項)も、会社が登録業者として行います。

請負業の個人事業税と損益分岐

空調設備の整備やフロン類の回収の請負は、個人事業税の請負業(第1種事業・税率5%)です(地方税法72条の2第8項)。事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化するとかからなくなります。代わりに役員報酬に社会保険料がかかります。

部材・ボンベ・車両・回収機の償却などの経費を年800万円と置き、事業所得ごとに個人のままと法人化の差を計算しました。登録の申請手数料は都道府県の条例で定められているため、表には含めていません。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用込み)
600万円月42万円−34.0万円−44.0万円
800万円月45万円−18.9万円−28.9万円
1,000万円月45万円−10.0万円−20.0万円
1,200万円月54万円−4.3万円−14.3万円
1,500万円月54万円+26.1万円+16.1万円
2,000万円月90万円+65.8万円+55.8万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 800 --business type1 --age 40to64 --note '請負業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費800万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は請負業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円を差し引いた額。都道府県の登録手数料は含まない。2026年(令和8年)分基準の概算

損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、2年目以降が1,243万円、初年度が1,341万円です。複数の都県で登録を受け直す場合は、その手数料の分だけ初年度の分岐点が上がります。分岐点の近くでは、法人化の差額は所得1万円あたり1,000円程度しか増えないので、数万円の手数料でも分岐点は数十万円動きます。

空調工事を電気工事とあわせて請けている場合、電気工事業の登録はフロン類の登録と違って、事業の全部を譲渡すれば会社が承継できます(電気工事業の法人成り)。同じ現場の仕事でも、登録ごとに手続きの型が違う点に注意が要ります。自分の売上と経費で判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。

まとめ

  • 第一種フロン類充塡回収業者の登録には承継の規定がなく、法人成りでは会社が業務をする都道府県ごとに登録を受け直す(有効期間5年)
  • 個人の登録は業務を廃止した時点で効力を失う。30日以内に廃業等の届出
  • 会社の申請には回収設備の所有権・使用権原を証する書類が要る。回収機の名義を先に決める
  • 無登録の充塡・回収は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。会社の登録が出るまで個人で業務を続ける
  • 東京23区・40〜59歳の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円、初年度1,341万円

よくある質問

個人の登録番号のまま、会社でフロンの回収を請け負えますか。

できません。登録は申請した人に対するもので、承継の規定がありません。会社が登録を受けないでフロン類の充塡・回収を業として行うと、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(103条1号)。

回収機は個人の名義のままでも、会社で登録できますか。

申請には、申請者が回収設備の所有権を有すること、所有権がない場合は使用する権原を有することを証する書類を添えます(施行規則8条1項2号)。個人から会社への賃貸借契約などで使用権原を示す方法もあります。

毎年の充塡量・回収量の報告は、法人成りの年はどうなりますか。

第一種フロン類充塡回収業者は、毎年度、前年度の充塡量・回収量を都道府県知事に報告します(47条3項)。登録業者が個人から会社に替わるので、それぞれの登録業者として行った分の扱いを都道府県に確認しておくと確実です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。