設立の手続き
登録支援機関は法人成りで登録し直し。委託先の届出14日と手数料2.8万円
結論
入管法には登録支援機関の登録を承継する規定がなく、法人成りでは会社が出入国在留管理庁長官の登録を新たに受けます。手数料は2万8,400円(施行令4条)です。個人の登録は支援業務の廃止を届け出ると効力を失います(19条の29)。さらに、支援を委託している受入れ企業(特定技能所属機関)は、委託契約の終了と新たな締結のたびに14日以内に届け出る必要があるので、顧客企業の数だけ届出が発生します。
- 登録は5年ごとの更新制(19条の23第2項)。更新の手数料は1万1,100円
- 会社の登録では役員全員が拒否事由(拘禁刑以上の刑の執行後5年を経過しない者など)の審査を受ける(19条の26第1項12号)
- 東京23区・40歳未満・経費300万円の試算で、個人事業税(5%)がかかる場合の損益分岐は1,266万円、かからない場合は2,198万円
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
特定技能外国人の受入れ企業から支援業務の委託を受けている登録支援機関は、個人でも登録を受けられます。法人成りでは、この登録は会社へ移りません。会社が新たに登録を受け、委託契約も結び直すことになります。
手続きの重さは、自分の登録よりも顧客企業の側の届出にあります。この記事では、承継の規定がない条文の構造、会社の登録の費用、受入れ企業ごとに発生する届出と期限を確認し、最後に損益分岐を計算エンジンで出します。
登録支援機関の登録は、人ごとに受ける
入管法は、受入れ企業(特定技能所属機関)から契約により委託を受けて、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施の業務(支援業務)を行う者は、出入国在留管理庁長官の登録を受けることができると定めています(19条の23第1項)。受入れ企業が支援を外部に全部委託できるのは、登録支援機関に対してだけです(2条の5第5項)。
登録は5年ごとの更新制で(19条の23第2項)、手数料は次のとおりです(施行令4条)。
| 手続き | 手数料 |
|---|---|
| 新規の登録 | 28,400円 |
| 登録の更新 | 11,100円 |
承継の規定はなく、廃止の届出で登録が切れる
登録支援機関の款(19条の23〜19条の35)には、相続や事業譲渡で登録を引き継ぐ条文がありません。個人の登録支援機関が支援業務を廃止したときは届け出て、その届出があると登録は効力を失います(19条の29第1項・2項)。
個人と、その人が設立した会社は別の申請者なので、法人成りでは会社が新規に登録を申請します。申請書には名称・住所・代表者の氏名、支援業務を行う事務所の所在地、支援業務の内容と実施方法を書きます(19条の24第1項)。
会社の申請では、役員全員が審査される
登録の拒否事由は14号まであり(19条の26第1項)、法人の場合は役員のうちに次のような者がいると登録は拒否されます(同項12号)。
- 拘禁刑以上の刑の執行後5年を経過しない者
- 入管法・技能実習法その他出入国や労働に関する法律の規定で罰金刑を受け、5年を経過しない者
- 健康保険法・厚生年金保険法などの所定の罰則で罰金刑を受け、5年を経過しない者
- 申請の日前5年以内に出入国または労働に関する法令に関し不正または著しく不当な行為をした者
健康保険法や厚生年金保険法の罰則が拒否事由に入っている点は、法人成りと無関係ではありません。会社を設立すれば社長本人も社会保険の強制加入になる(法人化すると社会保険は強制加入)ので、加入手続きを確実に済ませておく必要があります。
受入れ企業ごとに、14日以内の届出が発生する
ここが登録支援機関の法人成りで最も手間がかかる点です。
受入れ企業は、2条の5第5項の支援委託契約を締結・変更したとき、または契約が終了したとき、出入国在留管理庁長官に届け出なければなりません(19条の18第1項3号)。施行規則は、この届出を該当することとなった日から14日以内に出すよう定めています。
法人成りでは、委託の相手方が個人から会社に替わるので、受入れ企業1社ごとに次の2つが発生します。
- 個人の登録支援機関との委託契約の終了の届出(14日以内)
- 会社の登録支援機関との委託契約の締結の届出(14日以内)
顧客企業が10社あれば、20件の届出を、それぞれの企業が期限内に出す必要があります。届出を出すのは受入れ企業なので、切替えの予定は早めに各社へ伝えておく必要があります。切替日を全社でそろえ、書類を一括で用意しておくと期限の管理がしやすくなります。
空白を作らない順番
受入れ企業は、支援の全部を委託しているからこそ自社で支援計画を実施しなくてよい立場にあります。委託先の登録が切れた日に支援の担い手がいなくなる事態は避けなければなりません。
- 会社を設立する(定款の目的に登録支援機関の業務を入れる)
- 会社として登録支援機関の登録を申請する(手数料28,400円)
- 登録が出るまでは、個人の登録支援機関として支援業務を続ける
- 会社の登録が出たら、各受入れ企業と会社名義の委託契約を結び、同じ日付で個人との契約を終了する
- 受入れ企業ごとに、終了と締結の届出を14日以内に出してもらう
- すべての委託を切り替えたあと、個人の支援業務の廃止を届け出る(この届出で個人の登録が失効)
個人の登録支援機関として、登録事項(名称・住所・事務所など)に変更があったときの届出期限も、変更の日から14日以内です(19条の27第1項、施行規則)。
個人事業税と損益分岐
支援業務の受託が個人事業税の法定業種のどれに当たるかは、事業の実態に応じて都道府県が判断します。ここでは請負業(第1種・5%)に当たる場合と、法定業種に当たらない場合の両方を計算しました。事務所費・通訳の外注・交通費などの経費を年300万円と置いています。
まず請負業として課税される場合です。初年度には会社の登録手数料28,400円も差し引いています。
| 事業所得(売上−経費) | 最適な役員報酬 | 2年目以降 | 初年度(設立費用・登録手数料込み) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 月42万円 | −37.6万円 | −50.5万円 |
| 800万円 | 月54万円 | −24.1万円 | −37.0万円 |
| 1,000万円 | 月54万円 | −14.7万円 | −27.5万円 |
| 1,200万円 | 月54万円 | −6.6万円 | −19.4万円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | +23.9万円 | +11.0万円 |
| 2,000万円 | 月90万円 | +67.3万円 | +54.5万円 |
※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 300 --business type1 --age under40 --fee 28400 --note '請負業(第1種・5%)として試算' で再生成)で算出。経費300万円、東京都・東京23区、単身・40歳未満、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は請負業(第1種・5%)として試算。初年度は合同会社の設立費用10.0万円と許認可の取り直し費用28,400円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算
損益分岐(事業所得・青色申告特別控除の前)を、個人事業税の有無で比べると次のとおりです。
| 個人事業税 | 2年目以降 | 初年度(設立費用・登録手数料込み) |
|---|---|---|
| 請負業として課税(5%) | 1,266万円 | 1,391万円 |
| 法定業種に当たらず非課税 | 2,198万円 | 2,416万円 |
※ 上と同じスクリプトで --business exempt に変えて算出
個人事業税は法人化すると消える税なので、5%かかっている人は分岐点が900万円以上下がります。自分の事業がどちらかは、事業所得が事業主控除の290万円を超えている年に、都道府県から個人事業税の納税通知書が届いているかで確かめられます。業種ごとの扱いは個人事業税は業種でいくら変わるかにまとめました。
自分の売上と経費で判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。人材ビジネスの許可の扱いは有料職業紹介の法人成り・労働者派遣の法人成りでも整理しました。
まとめ
- 登録支援機関の登録には承継の規定がなく、法人成りでは会社が新規に登録を受ける(手数料28,400円、5年更新)
- 個人の登録は支援業務の廃止の届出で効力を失う。会社の登録が出てから委託を切り替え、最後に廃止届を出す
- 受入れ企業は、委託契約の終了と締結のそれぞれについて14日以内に届け出る。顧客企業の数だけ届出が発生する
- 会社の登録では役員全員が審査され、健康保険法・厚生年金保険法の罰則も拒否事由に含まれる
- 東京23区・40歳未満・経費300万円の試算で、損益分岐は個人事業税ありで1,266万円、なしで2,198万円
よくある質問
個人の登録番号のまま、会社として支援業務を受託できますか。
できません。登録は申請した人に対するもので、入管法には登録を引き継ぐ規定がありません。会社として受託するには、会社が登録を受けてから委託契約を結び直します。
受入れ企業との委託契約は、会社名義に変更するだけで済みますか。
契約の相手方が個人から会社に替わるので、受入れ企業は個人との契約の終了と会社との契約の締結について、それぞれ該当した日から14日以内に地方出入国在留管理局へ届け出ます(19条の18第1項3号、施行規則)。
社長本人が支援責任者・支援担当者を続けられますか。
会社の役員や職員として支援業務の体制に入れます。ただし体制の要件は法務省令(19条の26第1項14号)で定められており、登録申請の際に審査されます。
出典
- e-Gov法令検索 出入国管理及び難民認定法 第2条の5(特定技能雇用契約等)・第19条の18(特定技能所属機関による届出)・第19条の23(登録支援機関の登録)・第19条の24(登録の申請)・第19条の26(登録の拒否)・第19条の27(変更の届出等)・第19条の29(支援業務の休廃止の届出)・第19条の32(登録の取消し)
- e-Gov法令検索 出入国管理及び難民認定法施行令 第4条(登録支援機関の登録の申請に係る手数料の額)
- e-Gov法令検索 出入国管理及び難民認定法施行規則(特定技能所属機関の届出の期限・登録支援機関の変更の届出)
- e-Gov法令検索 地方税法 第72条の2第8項(第一種事業)・第72条の49の17(個人事業税の税率)
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。